Azure AI Foundry移行ガイド:classic portalからMicrosoft Foundryへ変わる点と確認項目

Azure AI Foundryのclassic portalからMicrosoft Foundryへ移行する場合、最初に確認すべき結論は「画面の呼び名が変わる」だけではありません。用語、リソース構成、SDK、エージェントAPI、ポータル導線、RBAC、リージョン対応をまとめて見直す必要があります。特にazure-ai-inferenceを使っているアプリ、Assistants APIで作ったエージェント、Hubベースのプロジェクト、Azure OpenAIリソースを運用している環境は、移行計画を早めに作るべきです。Microsoftの公式移行ガイドでは、classicの用語・機能・SDK・ポータル画面を、現在のMicrosoft Foundry相当へ対応付けて移行する方針が示されています。(Microsoft Learn)

2026年5月時点で特に重要なのは、azure-ai-inferenceパッケージが2026年5月30日にリタイア予定であること、Assistants APIが2026年8月26日に終了予定であることです。どちらもコード変更を伴う可能性が高いため、管理者はリソース・権限・リージョンを、開発者はSDK・エンドポイント・API呼び出しを分けて棚卸ししてください。(Microsoft Learn)

目次

まず押さえるべき変更点

Azure AI Foundryのclassic portalから現在のMicrosoft Foundryへ移行する際の中心は、次の5つです。

確認領域何が変わるか実務での影響
名称Azure AI Studio / Azure AI FoundryからMicrosoft Foundryへ整理公式ドキュメントや画面名が混在しやすい。社内手順書の表記を統一する
リソース構成Azure OpenAI + Hub中心から、Foundry resourceとFoundry project中心へプロジェクト単位のアクセス管理、接続、開発ワークフローを見直す
APIAssistants APIからResponses API / Agents v2へThreads、Messages、Runs前提のコードは移行が必要
SDKazure-ai-inferenceや旧azure-ai-projectsから、openaiazure-ai-projects 2.x中心へrequirements、lockfile、CI、サンプルコードの更新が必要
ポータル導線Management Center中心のclassic構成から、Home / Discover / Build / Operate / Docsへ管理者・開発者向けの操作手順を更新する

Microsoft Foundryでは、プラットフォーム名がAzure AI Studio、Azure AI Foundry、Microsoft Foundryへと変化してきました。一方で、Azure上のリソースタイプは引き続きMicrosoft.CognitiveServices/accountsであり、現在のFoundry resourceはAIServices kindと子プロジェクトを中心に構成されます。名称変更だけを追うのではなく、リソースモデルとAPIの変更まで含めて確認することが重要です。(Microsoft Learn)

影響を受ける対象者

今回の移行で影響を受けるのは、開発者だけではありません。Azure AI Foundryを社内基盤として使っている場合、管理者、開発者、インフラ担当、セキュリティ担当がそれぞれ確認すべき項目があります。

対象者主な確認ポイント具体的にやること
Azure管理者 / プラットフォーム担当RBAC、プロジェクト、リージョン、クォータ、監査Foundry User、Foundry Project Manager、Foundry Ownerなどの割り当てを確認する
開発者SDK、API、エンドポイント、エージェント実装azure-ai-inference、Assistants API、azure-ai-projects 1.xの利用有無を確認する
インフラ / IaC担当Bicep、Terraform、Managed Identity、Private Linkkind: OpenAIからkind: AIServicesへの変更やDNS構成を確認する
セキュリティ担当Entra ID、APIキー、カスタムロール、ポリシーAPIキー依存を減らし、Entra IDとRBAC中心の運用へ寄せる
業務アプリ責任者本番影響、移行期限、フォールバックclassic portalで継続すべき機能と、新ポータルへ移す機能を分ける

特に注意したいのは、AzureのOwnerやContributorだけでは、Foundry上の開発操作がすべて可能になるとは限らない点です。Foundryでは管理プレーンとデータプレーンの権限を分けて考える必要があり、開発やエージェント作成にはFoundry向けのRBACロールが必要になる場合があります。(Microsoft Learn)

移行の優先順位は期限と依存機能で決める

すべてを一度に移行しようとすると、影響範囲が広がりすぎます。まずは期限が明示されているもの、次に新ポータルで見えないもの、最後にプレビュー機能への依存を確認する順番が現実的です。

優先度対象判断基準今すぐ確認すること
azure-ai-inference利用アプリ2026年5月30日にリタイア予定requirements.txtpyproject.tomlpackage-lock.json、CIログを検索
Assistants API利用エージェント2026年8月26日に終了予定Threads、Runs、Assistantsを使うコードを洗い出す
本番エージェントResponses API対応リージョンかFoundry resourceのリージョンとモデル対応を確認
Hubベースのプロジェクト新しいFoundry portalでは表示されないclassic portalで継続するか、Foundry projectsへ移行するか決める
Azure OpenAIリソースFoundry機能を使う予定があるかFoundry resourceへのアップグレード可否、Managed Identity、RBACを確認
プレビュー機能本番利用しているかGA / Previewラベルを確認し、非本番扱いにするか判断

公式ガイドでは、移行手順として「用語変更の確認」「機能比較」「SDK更新」「Assistants APIからResponses APIへの移行」「Responses API対応リージョンの確認」「新ポータルでの検証」が示されています。この順番は、そのまま社内の移行チェックリストとして使えます。(Microsoft Learn)

用語と概念の対応関係

classic portalの用語をそのまま使い続けると、現在のドキュメントやSDKサンプルと合わなくなります。移行前に、チーム内で次の対応表を共有しておくと混乱を減らせます。

classic側の概念現在のMicrosoft Foundryでの対応注意点
Foundry classic portalFoundry portalバナーのNew Foundryトグルで切り替え可能
Management CenterOperateセクション管理、クォータ、コンプライアンス、トレースがOperate側へ整理
Azure OpenAI + HubFoundry resource単一のAIServices kindと子プロジェクト中心
Azure AI ServicesFoundry ToolsSpeech、Vision、Language、Content Safetyなどを含む
Model-as-a-ServiceFoundry Direct ModelsAzureメーターによる直接課金モデルとして整理
Assistants APIResponses API2026年8月26日の終了予定に向けて移行が必要
ThreadsConversationsメッセージだけでなく、ツール呼び出しや出力も扱う
MessagesItemsItemsはMessagesの上位概念
RunsResponses通常は同期的に扱えるが、background modeでは別途状態確認が必要
Assistants / AgentsAgent Versionscreate_agent()ではなくcreate_version()中心へ
複数の個別エンドポイントProject endpoint + OpenAI v1 endpoint環境変数や接続文字列の整理が必要

Responses APIは、Chat CompletionsとAssistants APIの機能を統合する位置付けで、statefulな複数ターン応答を扱えます。移行時は「入力と出力の形が少し変わる」だけでなく、会話状態、ツール呼び出し、エージェント定義の持ち方が変わる点を確認してください。(Microsoft Learn)

SDK移行で確認すべきこと

開発者が最も早く確認すべきなのは、利用中のSDKです。ポータルを切り替えるだけなら一見動いているように見えても、古いSDKと新しいポータル体験のサンプルを混ぜると、認証エラー、エンドポイントエラー、予期しないAPI動作が起きやすくなります。

現在確認すべきもの移行先・推奨方向実務上の確認
azure-ai-inferenceopenaiリタイア予定が近いため最優先で置き換える
AzureOpenAI()OpenAI() + base_urlAzure固有クライアント前提のコードを見直す
azure-ai-projects 1.xazure-ai-projects 2.xclassic向けサンプルと新ポータル向けサンプルを混在させない
azure-ai-generativeazure-ai-projects 2.xproject client側へ機能が統合されているか確認
Hub移行でのazure-ai-ml依存azure-ai-projects 2.x中心HubベースからFoundry projectsへ移す範囲を決める
評価機能azure-ai-projects + azure-ai-evaluationremote評価とlocal評価の使い分けを確認

公式ドキュメントでは、azure-ai-inferenceからOpenAI SDKへ移行することで、Azure OpenAIとFoundry Modelsの両方で統一されたAPIパターンを使いやすくなると説明されています。APIバージョン指定についても、OpenAI v1 APIでは従来の月次api-versionパラメータ更新の負担が減ります。(Microsoft Learn)

SDK移行で失敗しやすいポイント

よくある失敗は、次の3つです。

失敗パターン原因対策
新しいサンプルを貼ったら動かないSDKが1.xのままazure-ai-projects 2.x前提か確認する
エンドポイント接続に失敗する旧来の複数エンドポイントを使い続けているProject endpointまたはOpenAI v1 endpointを環境変数に整理する
認証エラーが出るAPIキーとEntra IDの使い方を混同本番はEntra ID + RBACを基本にし、APIキーは用途を限定する

MicrosoftのRBACドキュメントでは、APIキー認証はロール制限なしの広いアクセスになるため、粒度の細かいアクセス制御にはMicrosoft Entra ID認証が推奨されています。運用環境では、SDK移行と同時に認証方式も見直すのが安全です。(Microsoft Learn)

Assistants APIからResponses API / Agents v2への移行

Assistants APIを使っている場合は、単純なメソッド名の置換では不十分です。classic側のThreads、Messages、Runsは、現在のFoundryではConversations、Items、Responsesへ考え方が変わります。

classic側現在の対応移行時の確認
Threadにメッセージを保存ConversationにItemsを保存メッセージ以外のツール呼び出しや出力をどう保持するか確認
Runを作成してポーリングResponseを作成通常応答とbackground modeを分けて実装
Assistant / Agent作成Agent version作成PromptAgentDefinitionなど定義方式を確認
create_agent()create_version()バージョン管理と公開フローを設計
Assistants API endpointResponses API endpoint404やMethodNotAllowedが出る場合はAPI先を確認

Foundry Agent Serviceの移行ガイドでは、Assistants APIからAgentsへの移行を支援するmigration toolが用意されているとされています。ただし、ツール構成、会話状態、権限、リージョン、ストレージ構成まで自動的に業務要件へ最適化されるわけではありません。既存エージェントを棚卸しし、「作り直す」「移行ツールを使う」「classic portalで一時継続する」を分けて判断してください。(Microsoft Learn)

エージェント移行で先に見るべきチェック項目

エージェント移行では、次の順番で確認すると手戻りを減らせます。

順番確認項目判断基準
1利用APIAssistants API、Threads、Runsを使っているか
2利用ツールFile Search、Code Interpreter、Web Search、Azure Functionsなどの依存
3会話状態メッセージ履歴、ファイル、ツール出力をどこに保持しているか
4リージョンResponses APIとFoundry Agent Serviceが対象リージョンで使えるか
5権限実行ユーザー、サービスプリンシパル、マネージドIDに必要ロールがあるか
6公開先Microsoft 365、Teams、個別エンドポイントへの公開有無

新しいAgent Serviceでは、Web Search、File Search、Code Interpreter、MCP tool callingなどの機能が整理されています。一方で、classic側で使っていたツールが同じ形で使えるとは限らないため、機能名だけでなく「自社の業務フローで何をしているか」を基準に移行可否を判断してください。(Microsoft Learn)

リージョン対応は移行前に必ず確認する

Responses APIとFoundry Agent Serviceは、すべてのAzureリージョンで利用できるわけではありません。公式のResponses APIドキュメントでは、対応リージョンにjapaneastが含まれていますが、Responses API対応リージョン内でもすべてのモデルが使えるとは限らないと説明されています。日本向け環境では「Japan Eastだから大丈夫」と決め打ちせず、使うモデル、API、Agent機能をセットで確認してください。(Microsoft Learn)

実務では、次のように確認します。

確認対象確認方法注意点
Foundry resourceのリージョンAzure portalまたはFoundry portalで確認既存リソースの移動は簡単ではないため初期判断が重要
Responses API対応公式のRegion Availabilityを確認対応リージョンでもモデルごとの差がある
モデルの利用可否Model catalogまたはモデル別のリージョン表を確認本番で使うモデル名とデプロイ名を明記する
Agent機能Foundry Agent Serviceの対応状況を確認エージェント、ツール、ストレージ構成まで見る
フォールバックclassic portalまたは別リージョンの利用可否を確認本番切替前に戻し先を決める

リージョンが非対応の場合、現在のFoundry portalでエージェントを作成・実行できない可能性があります。この場合は、対応リージョンに新しいFoundry resourceを作成する選択肢を検討します。(Microsoft Learn)

Azure OpenAIリソースを使っている場合の注意点

既存のAzure OpenAIリソースをFoundry resourceへアップグレードする場合、公式ドキュメントでは、既存のAzure OpenAI APIエンドポイント、APIキー、作業状態、セキュリティ構成を保持したまま移行できると説明されています。新しいFoundry resourceを必ず別途作成しなければならない、というわけではありません。(Microsoft Learn)

ただし、アップグレード前に次の点を確認してください。

確認項目内容
Managed IdentityAzure OpenAIリソースでシステム割り当てマネージドIDを有効化できるか
RBACアップグレード、プロジェクト作成、ロール割り当てに必要な権限があるか
Azure PolicyAIServices kindへの変更やネットワーク設定がポリシーでブロックされないか
Private Link / DNSopenai.azure.comだけでなく、services.ai.azure.comcognitiveservices.azure.comの名前解決が必要か
CMK顧客管理キー利用環境は通常のアップグレードで対応できるか
ロールの広がり既存のCognitive Services系ロールがFoundry機能まで広がらないか

特にPrivate Linkを使っている環境では、Foundry resourceが複数のFQDNを使う点に注意が必要です。公式ドキュメントでは、Foundry resourceは{custom-domain}.openai.azure.com{custom-domain}.services.ai.azure.com{custom-domain}.cognitiveservices.azure.comを使うとされ、アップグレード時には追加のDNSゾーン設定やPrivate Link endpointの再作成が必要になる場合があります。(Microsoft Learn)

Hubベースのプロジェクトは新ポータルで見えない点に注意

Hubベースのプロジェクトを使っている場合、新しいFoundry portalに切り替えると見えないことがあります。公式移行ガイドでは、現在のポータルはFoundry projectsのみを表示し、Hubベースのプロジェクトへアクセスする必要がある場合はclassic portalへ戻す、またはFoundry projectsへ移行する必要があると説明されています。(Microsoft Learn)

HubベースからFoundry projectsへ移行する場合、公式ドキュメントでは、新しいFoundry projectを作成し、必要に応じてエージェントや接続を移行する流れが示されています。移行対象としては、model deployments、data files、fine-tuned models、assistants、vector storesが挙げられています。一方で、Preview Agentの状態、open-source model deployments、Hub project accessは移行対象外として扱われます。(Microsoft Learn)

Hub移行で実務上やること

作業具体的な確認
既存Foundry resourceを探すclassic portalのManagement center、Azure portal、IaC定義で確認
新しいFoundry projectを作る用途別、チーム別、接続要件別に分ける
接続を再作成するツール、データソース、モデル接続をFoundry resourceまたはprojectへ作成
エージェントを移すAPI、ツール、会話状態、ストレージを確認
権限を再割り当てするユーザーとproject managed identityにFoundry Userなどを付与
classic継続範囲を決める未対応機能や移行待ち業務の退避先を明文化する

Hubベースの接続を移す場合、Azure portalだけでは接続を追加できず、Foundry portalまたはBicepテンプレートを使う必要がある点にも注意してください。(Microsoft Learn)

RBACと認証の見直し

Foundryでは、ロール名の変更も移行時の混乱要因になります。Foundry User、Foundry Owner、Foundry Account Owner、Foundry Project Managerは、以前はAzure AI User、Azure AI Owner、Azure AI Account Owner、Azure AI Project Managerと呼ばれていました。ロール名の反映途中では旧名が表示される場合がありますが、ロールIDと基本権限は変わらないと説明されています。(Microsoft Learn)

ロール主な用途実務上の使い方
Foundry UserFoundry projectでの開発、データアクション開発者やproject managed identityの基本ロール
Foundry Project Managerproject管理、開発、Foundry Userの条件付き割り当てチームリードやプロジェクト管理者
Foundry Account Ownerリソース、プロジェクト、接続、監査などの管理プラットフォーム管理者
Foundry Owner管理と開発の広い権限高権限のため付与対象を限定
Azure OwnerAzureスコープでのロール割り当てや管理初期セットアップやアップグレード作業

自動化スクリプトやIaCでロール名を直接指定している場合は、ロール名の変更タイミングで失敗する可能性があります。公式ドキュメントでは、ロール名ではなくロール定義IDを使うことが推奨されています。(Microsoft Learn)

APIキーに頼りすぎない

APIキーは実装が簡単ですが、RBACのような細かい権限制御を提供しません。運用環境では、ユーザー、アプリ、エージェント、project managed identityごとに、Entra IDとRBACで権限を設計する方が安全です。特に、エージェントがAzure AI Search、Storage、Key Vault、データベースなど外部リソースへアクセスする場合は、Foundry側のロールだけでなく、接続先リソース側のデータプレーン権限も確認してください。(Microsoft Learn)

ポータル導線の変更

classic portalでは左ペインに多くの機能がまとまっていましたが、現在のFoundry portalでは、Home、Discover、Build、Operate、Docsの5つの上位セクションに整理されています。管理作業はOperate、開発作業はBuild、モデル探索はDiscoverに分かれると理解すると迷いにくくなります。(Microsoft Learn)

やりたいことclassic portalでの場所現在のFoundry portalでの場所
モデルデプロイを見るModels + endpointsBuild > Models
Playgroundを開くPlaygroundsBuild > Models > モデルを選択
Agentsを作るAgentsBuild > Agents
モデルカタログを見るModel catalogDiscover > Model catalog
Evaluationsを見るEvaluationBuild > Evaluations
Fine-tuningを使うFine-tuningBuild > Fine-tuning
Tracing / Monitoringを見るTracingOperate > Tracing
クォータを管理するManagement Center > QuotaOperate > Quota
ユーザーと権限を管理するManagement Center > UsersOperate > Admin
全プロジェクトやリソースを見るManagement Center > All resourcesOperate > Admin
接続リソースを見るManagement Center > Connected resourcesOperate > Admin > projectを選択
Guardrails / content filtersを見るGuardrails + controlsOperate > Compliance

ポータル切り替えは、上部バナーのNew Foundryトグルから行えます。切り替え時には現在のprojectなどのコンテキストが保持されるとされていますが、Hubベースのプロジェクトや未対応リソースにアクセスする必要がある場合は、classic portalへ戻す運用を残しておくと安全です。(Microsoft Learn)

新ポータルで使える機能とclassicに残る機能

新しいMicrosoft Foundry portalはGAになっていますが、すべての機能がGAという意味ではありません。公式GA概要では、コアシナリオは本番利用向けにサポートされる一方、一部機能はPreviewのまま、また一部はclassic portalが必要とされています。(Microsoft Learn)

区分判断ポイント
両方で利用可能Foundry projects、Chat completions、Fine-tuning、Evaluations、Model catalog現行ポータルで拡張されている機能もある
新ポータル中心Responses API、Agents v2、Tool catalog、Microsoft 365 / TeamsへのAgent publishingGAとPreviewが混在するためラベル確認が必要
classic継続が必要な場合ありHub-based projects、standalone Azure OpenAI、既存Assistantsの作成・編集無理に新ポータルへ一本化しない
Preview注意Multi-agent workflows、Agent memory、Hosted agents、A2A protocolなど本番依存にする前に社内承認と代替策を用意

GA概要では、Preview機能を本番依存として扱うこと、リージョン可用性の検証を省略すること、AssistantsやAzure OpenAIワークフローのフォールバック経路を用意せずに移行することが、よくある落とし穴として挙げられています。(Microsoft Learn)

実務で使える移行手順

Azure AI Foundryの移行は、次の流れで進めると安全です。

手順作業成果物
1現状棚卸しリソース一覧、プロジェクト一覧、SDK一覧、エージェント一覧
2移行対象の分類すぐ移行、classic継続、廃止、再構築の分類表
3リージョンと機能確認Responses API、モデル、Agent機能の対応表
4権限設計ユーザー、グループ、サービスプリンシパル、managed identityのRBAC表
5SDK更新openaiazure-ai-projects 2.xへの移行ブランチ
6エージェント移行Assistants APIからResponses API / Agents v2への実装変更
7ネットワーク確認DNS、Private Link、Firewall、Azure Policyの確認結果
8検証開発環境での呼び出し、認証、監視、コスト、監査ログ確認
9本番切替段階的リリース、ロールバック手順、classic fallbackの明文化
10手順書更新新ポータル導線、トラブル対応、運用ルールの反映

最初から全機能を新ポータルへ寄せる必要はありません。公式GA概要でも、まだ新ポータルで利用できないシナリオではFoundry classic portalを継続利用できるとされています。重要なのは、classic継続を「なんとなく」残すのではなく、対象機能、期限、責任者、移行条件を明文化することです。(Microsoft Learn)

よくあるトラブルと対処法

移行時に発生しやすいエラーは、原因がある程度決まっています。切り分け表を先に用意しておくと、検証時の混乱を減らせます。

症状主な原因対処
ModuleNotFoundErrorが出るSDKバージョンが移行先と合っていないazure-ai-projects 2.xやopenaiのバージョンを確認
新ポータルにプロジェクトが表示されないHubベースのプロジェクトは表示対象外classic portalへ戻すかFoundry projectsへ移行
エンドポイント接続に失敗する旧来の複数エンドポイントを使っているProject endpointとOpenAI v1 endpointを再設定
AuthenticationErrorが出るAPIキー、Bearer token、スコープの使い方が混在Entra ID認証とトークンスコープを確認
Agentコードで404やMethodNotAllowedが出るAssistants API呼び出しをResponses API endpointへ送っているResponses API向けにコードを書き換える
Agentsが新ポータルで使えないFoundry resourceのリージョンが未対応対応リージョンにFoundry resourceを作成する
OwnerなのにAgentを作れないAzure管理権限とFoundryデータプレーン権限を混同Foundry User、Foundry Project Manager、Foundry Ownerを確認
Private network経由で接続できないFoundry向けFQDNやPrivate Link構成が不足DNSゾーンとPrivate Link endpointを見直す

公式移行ガイドでも、SDK不一致、Hubベースプロジェクトの非表示、旧エンドポイント、認証、Assistants APIとResponses APIの混在、リージョン非対応が代表的な移行トラブルとして挙げられています。(Microsoft Learn)

管理者と開発者が今日やるべきこと

移行作業を始めるなら、まず次の5つを確認してください。

1つ目は、コードベース内でazure-ai-inferenceAzureOpenAI()azure-ai-projects 1.x、Assistants API、Threads、Runsを検索することです。該当箇所が多いほど、SDKとAPIの移行を優先する必要があります。

2つ目は、Azure上のリソースがOpenAI kindなのか、AIServices kindなのか、Hubベースのプロジェクトなのかを分類することです。移行ルートはこの分類で大きく変わります。

3つ目は、Responses APIとAgent機能が現在のリージョンで利用できるかを確認することです。日本向け環境でjapaneastを使っていても、モデルごとの対応は別途確認してください。

4つ目は、RBACと認証方式を見直すことです。APIキー中心の運用は手軽ですが、Foundry移行後の権限管理ではEntra IDとRBACの設計がより重要になります。

5つ目は、新ポータルでの導線を実際に検証し、社内手順書を更新することです。管理はOperate、開発はBuild、モデル探索はDiscoverという整理に合わせて、運用チームと開発チームの手順を分けておくと移行後の問い合わせを減らせます。

Azure AI FoundryからMicrosoft Foundryへの移行は、単なる画面変更ではなく、AIアプリ開発基盤の作り替えに近い変更です。まずはSDK、Assistants API、Hubベースプロジェクト、RBAC、リージョンの5点を棚卸しし、期限が明示されているものから順に移行してください。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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