Azure Site RecoveryがPerformance Plus Managed DisksにGA対応:変更点と移行チェックリスト

2026年5月30日の公式更新で、Azure Site RecoveryはPerformance Plusを有効化したAzureマネージドディスクを使う仮想マシンのレプリケーションに一般提供として対応しました。結論から言うと、Premium SSD、Standard SSD、Standard HDDでPerformance Plusを使っているVMも、Azure-to-Azureのディザスターリカバリー構成に組み込みやすくなります。

ただし、「Performance Plus対応ディスクなら何も確認せずASRに追加してよい」という更新ではありません。高IOPS・高スループットのディスクはデータ変更量も大きくなりやすいため、管理者はキャッシュ用ストレージアカウント、データ変更率、テストフェールオーバー、既存ディスクの移行方法を事前に確認する必要があります。Microsoft Learnでは、ASRがPerformance Plusのプロパティをレプリケーション、テストフェールオーバー、フェールオーバー時に保持すると説明されています。(Microsoft Learn)

目次

Azure Site RecoveryのPerformance Plus Managed Disks対応で何が変わったか

今回の更新により、Azure Site RecoveryはPerformance Plusを有効化したマネージドディスクを持つAzure VMを、Azureリージョン間の災害対策に利用できるようになりました。対象は、Performance Plus機能を使うPremium SSD、Standard SSD、Standard HDDのマネージドディスクです。(Microsoft Learn)

特に重要なのは、ASRが単に「レプリケーションできる」だけでなく、Performance Plusのプロパティをセカンダリリージョン側にも保持する点です。これにより、フェールオーバー後のディスクがソース側と同じPerformance Plus構成を引き継ぎ、DR環境で想定外にディスク性能が落ちるリスクを減らせます。(Microsoft Learn)

観点変更前に起こりやすかった課題今回のGA対応後に期待できること
DR対象の拡大高IOPS向けにPerformance Plusを使うVMをASR構成に入れる際、対応可否の確認が必要だったPerformance Plus有効ディスクを持つVMもAzure-to-Azure DRの設計対象にしやすい
フェールオーバー後の性能セカンダリ側でディスク性能設定が維持されるか確認が必要だったレプリケーション、テストフェールオーバー、フェールオーバー時にPerformance Plusプロパティが保持される
DRテスト本番とDR側の性能差を手作業で確認する必要があったテストフェールオーバーで、DR側ディスクの性能設定を検証しやすくなる
運用設計高負荷ディスクの変更率にASRが追従できるかが焦点だった対応範囲は広がるが、データ変更率とキャッシュ用ストレージの確認は引き続き必須

対象になるディスクとシナリオ

今回の対象は、Performance Plusが有効化されたAzureマネージドディスクを使用するAzure VMです。ASRのサポートマトリックスでも、Performance Plus diskはPremium SSD、Standard SSD、Standard HDDを使うVMでサポートされると記載されています。併せて、レプリケーション時はpremium storage accountを使う必要がある点も明記されています。(Microsoft Learn)

Performance Plusそのものは、Azure Premium SSD、Standard SSD、Standard HDDのIOPSとスループット上限を引き上げる機能です。Microsoft Learnでは、513GiB以上の対象ディスクで有効化でき、データベースやトランザクション系など高いIOPSとスループットが必要なワークロードに向くと説明されています。(Microsoft Learn)

項目確認内容
対象ディスクPremium SSD、Standard SSD、Standard HDDのマネージドディスク
Performance Plusの主な用途データベース、トランザクション処理、検索基盤、ログ処理など高IOPS・高スループットが必要なワークロード
ASRの主な対象シナリオAzure VMを別Azureリージョンへ保護するAzure-to-Azure DR
重要な前提Performance Plus有効ディスクでは、ASRのレプリケーションにpremium storage accountが必要
検証すべき点ディスク性能だけでなく、データ変更率、キャッシュ用ストレージ、ターゲットリージョンのクォータ、テストフェールオーバー結果

影響を受ける管理者・開発者

今回の更新で最も恩恵を受けるのは、I/O負荷の高いAzure VMを運用しているチームです。たとえば、SQL Serverなどのデータベース、検索インデックス、ログ集約基盤、バッチ処理、会計・販売管理などの業務アプリケーションでPerformance Plusを使っている場合、DR設計の選択肢が広がります。

一方で、管理者や開発者が見るべきポイントは少し異なります。

立場確認すべきこと実務での判断基準
インフラ管理者Performance Plus有効ディスクを持つVMの棚卸しDR対象VMか、RPO/RTO要件があるか
Azure管理者Recovery Services vault、キャッシュ用ストレージ、ターゲットリージョンpremium storage accountを使っているか、リージョンとサブスクリプション制約に問題がないか
アプリ運用担当フェールオーバー後の性能とアプリ起動確認テストフェールオーバーで応答時間、接続先、依存サービスを確認できるか
開発者・DevOps担当IaC、スクリプト、リリース手順ディスク作成時にPerformance Plusを有効化し、ASR設定手順と分離して管理できているか
セキュリティ担当暗号化、ネットワーク制限、ストレージアクセスストレージファイアウォールや信頼されたMicrosoftサービスの許可設定がASRを妨げていないか

まず実施すべき棚卸し

最初に行うべきことは、Performance Plusを使っているディスクと、そのディスクを持つVMがDR対象かどうかを確認することです。ディスクのSKUだけを見ても不十分です。Performance Plusが有効か、ディスクサイズが要件を満たしているか、VMがASRで保護済みかまで見ます。

Azure CLIでディスクの状態を確認する例は次のとおりです。

az disk list \
  --query "[].{name:name, resourceGroup:resourceGroup, sku:sku.name, sizeGiB:diskSizeGb, performancePlus:performancePlus}" \
  -o table

確認時は、次のような表に整理すると移行判断がしやすくなります。

確認項目見る場所判断ポイント
Performance Plusの有効状態DiskのプロパティperformancePlusがtrueか
ディスクSKUDiskのSKUPremium SSD、Standard SSD、Standard HDDか
ディスクサイズDiskのサイズPerformance Plus対象サイズか
VMのASR保護状態Recovery Services vaultのReplicated itemsすでに保護済みか、新規に保護する必要があるか
レプリケーション正常性Replicated itemのHealthWarningやCriticalがないか
データ変更率ASRの監視、Azure Monitor、アプリ側I/OメトリックNormal Churnで足りるか、High Churnが必要か
キャッシュ用ストレージASRのStorage settingsPerformance Plus有効ディスクに対してpremium storage accountを使っているか

棚卸しで重要なのは、「高性能ディスクを使っているVM」ではなく、DR時に同じ性能で復旧しないと業務影響が大きいVMを優先することです。たとえば、夜間バッチだけが重い検証用VMより、日中の注文処理や認証基盤に関係するVMを先に確認します。

設定時に注意すべきポイント

premium storage accountの指定を見落とさない

ASRの公式更新では、Performance Plus有効ディスクは高IOPSかつデータ変更量が大きくなりやすいため、premium storage accountのみをサポートすると説明されています。サポートマトリックスでも、Performance Plus diskを使うVMではレプリケーション時にpremium storage accountを使うよう明記されています。(Microsoft Learn) (Microsoft Learn)

ここを見落とすと、レプリケーションの有効化や再保護で失敗したり、RPOが悪化したりする可能性があります。特に既存のASR構成でStandardのキャッシュ用ストレージアカウントを使っている場合は、Performance Plus対応ディスクを追加する前に設計を見直してください。

データ変更率はNormal Churnで足りるとは限らない

Performance Plusはディスク性能を引き上げるため、アプリケーションの書き込み量も増える可能性があります。ASRのHigh Churnサポートでは、通常のNormal ChurnはVMあたり最大54MB/s、High ChurnはVMあたり最大100MB/sのデータ変更率を扱う構成として説明されています。High ChurnではPremium Block Blobストレージアカウントをキャッシュ用に使います。(Microsoft Learn)

判断基準はシンプルです。通常時の平均I/Oだけでなく、月次締め処理、夜間バッチ、インデックス再作成、ログ急増、データ移行など、ピーク時の書き込み量を見てください。平均値だけで設計すると、障害時に復旧ポイントが想定より遅れる原因になります。

Performance Plusは既存ディスクへ後から気軽に付ける機能ではない

Performance Plusは、対象ディスクであれば追加料金なしで有効化できますが、Microsoft Learnでは有効化できるタイミングがディスク作成時に限られると説明されています。既存ディスクに適用したい場合は、スナップショットから新しいディスクを作成するなどの移行手順が必要です。(Microsoft Learn)

そのため、既存VMをPerformance Plus化してASRに組み込む場合は、次の順序で考えると安全です。

フェーズ作業内容注意点
事前確認対象ディスク、VM依存関係、メンテナンス可能時間を確認OSディスク交換やディスク差し替えは停止や再起動を伴う可能性がある
ディスク移行スナップショットからPerformance Plus有効ディスクを作成本番データの整合性を取るため、アプリ停止や静止点の設計が必要
VM反映新ディスクをVMに接続、必要に応じてディスク交換LUN、マウントポイント、ドライブ文字、アプリ設定を確認
ASR構成Recovery Services vaultでレプリケーションを構成premium storage accountとデータ変更率を確認
DR検証テストフェールオーバーを実施DR側ディスクのPerformance Plus状態、アプリ起動、性能を確認

Azure CLIとPowerShellの対応範囲を混同しない

Performance Plusディスクの作成にはAzure CLIやAzure PowerShellの例が公式ドキュメントに掲載されています。一方、Azure-to-AzureのASRサポートマトリックスでは、デプロイ方法としてAzure portal、Azure PowerShell、REST APIはサポートされるものの、Azure CLIは現在サポートされていないと記載されています。(Microsoft Learn) (Microsoft Learn)

つまり、ディスク作成はCLIで自動化できても、ASR構成まで同じazコマンドで完結できるとは限りません。運用手順書やIaCでは、ディスク作成の自動化とASRレプリケーション設定の自動化を分けて管理してください。

既存環境へ適用する場合の進め方

新規VMでPerformance PlusとASRを使う場合

新規構築なら、最初からPerformance Plus有効ディスクを作成し、VMに接続したうえでASRを有効化するのが最も分かりやすい方法です。構築時には、ディスクのSKUとサイズ、ターゲットリージョン、Recovery Services vault、キャッシュ用ストレージアカウントをまとめて設計します。

実務では、次の順序で進めると手戻りを減らせます。

手順作業確認ポイント
1Performance Plus対象ディスクを作成SKU、サイズ、Performance Plus有効状態
2VMへ接続してアプリを構成OS、マウント、DBファイル配置、キャッシュ設定
3ASRを有効化ターゲットリージョン、サブスクリプション、ネットワーク、キャッシュ用ストレージ
4初期レプリケーション完了を確認Replication health、RPO、エラー有無
5テストフェールオーバーDR側VMの起動、ディスク設定、アプリ応答、依存サービス

すでにPerformance Plusを使っているVMをASRに追加する場合

既存VMがPerformance Plus有効ディスクを使っている場合は、まずASRの保護状態を確認します。未保護であれば、今回のGA対応を前提にAzure-to-Azure DRへの追加を検討できます。

ただし、すでにASRで保護済みのVMについては、設定変更を急がないほうが安全です。Recovery Services vaultでレプリケーション正常性を確認し、テストフェールオーバーでDR側にPerformance Plusプロパティが引き継がれるかを確認します。ASRのテストフェールオーバーは、本番環境や継続中のレプリケーションに影響を与えずにDR戦略を検証するための機能です。(Microsoft Learn)

既存ディスクをPerformance Plus化してからASRを使う場合

現在Performance Plusを使っていない既存ディスクに対しては、単純な設定変更ではなく、スナップショットから新しいディスクを作成する移行計画が必要になります。データベースディスクの場合は、スナップショット取得前にバックアップ、トランザクションログ、アプリ停止、整合性チェックを含めて設計してください。

このパターンで失敗しやすいのは、ディスク移行とASR設定を同じ変更作業に詰め込みすぎることです。まずPerformance Plusディスクとして本番VMが安定稼働することを確認し、その後ASRの有効化とテストフェールオーバーを実施するほうが、問題の切り分けがしやすくなります。

テストフェールオーバーで確認すべき項目

今回の更新では、ASRがPerformance Plusプロパティをテストフェールオーバー時にも保持するとされています。だからこそ、テストフェールオーバーは「起動できるか」だけでなく、性能設定が維持されているかまで確認する必要があります。(Microsoft Learn)

確認項目確認方法合格基準
VM起動Azure portalのVM状態、ブート診断DR側VMが正常起動する
ディスクSKUDR側VMに接続されたディスクのSKU確認ソース側と想定どおり一致する
Performance PlusDR側ディスクのプロパティ確認Performance Plusが保持されている
アプリ起動サービス、ログ、ヘルスチェックアプリケーションがエラーなく起動する
性能簡易負荷テスト、DB応答、I/Oメトリック本番想定の最低性能を満たす
ネットワークVNet、NSG、DNS、Private Endpoint本番と切り離した安全な経路で検証できる
復旧手順手順書、担当者、所要時間誰が実施しても同じ流れで復旧できる

テスト用ネットワークは、本番ネットワークと分離しておくのが基本です。特にActive Directory、DNS、DB接続、外部API連携があるシステムでは、テストフェールオーバーしたVMが本番システムに誤接続しないように設計してください。

コスト面で見落としやすいポイント

Performance Plus自体は対象ディスクで追加料金なしとされていますが、DR構成全体のコストが増えないという意味ではありません。ASRでは、保護インスタンスの料金に加えて、Azure Storage、ストレージトランザクション、データ転送、復旧VMのコンピュート料金などが発生する可能性があります。(Microsoft Learn)

さらに、High Churnを使う場合はPremium Block Blobストレージアカウントを使うため、Normal Churnよりコスト影響が大きくなる可能性があります。Microsoft Learnでも、High ChurnではPremium Block Blobストレージアカウントや追加のデータ転送によるコスト影響に注意するよう説明されています。(Microsoft Learn)

コスト試算では、次の3点を分けて見積もると実態に近づきます。

コスト項目見積もりの観点
ASR保護コスト保護対象VM数、保護期間
ストレージコストキャッシュ用ストレージ、レプリカディスク、スナップショット、トランザクション
障害・テスト時コストテストフェールオーバーVM、実フェールオーバー時のCompute、ネットワーク転送

よくある失敗と回避策

ディスクSKUだけを見て判断してしまう

Premium SSDだからPerformance Plusが有効とは限りません。逆に、Standard SSDやStandard HDDでもPerformance Plusの対象になる場合があります。必ずディスクのPerformance Plusプロパティを確認してください。

キャッシュ用ストレージを標準構成のままにする

Performance Plus有効ディスクでは、ASRのレプリケーションにpremium storage accountが必要です。既存のASR環境を流用する場合、キャッシュ用ストレージアカウントの種類を必ず見直してください。(Microsoft Learn)

RPOだけを見てテストを終えてしまう

DRテストではRPOだけでなく、フェールオーバー後のディスク性能、アプリ応答、依存サービス、復旧手順の再現性まで確認します。Performance Plus対応の本質は、DR側でも性能前提を崩さないことです。

既存ディスクに後から有効化できると思い込む

Performance Plusはディスク作成時に有効化する機能です。既存ディスクで使いたい場合は、スナップショットから新しいディスクを作成する移行設計が必要です。(Microsoft Learn)

自動化方式を一つに決め打ちする

ディスク作成とASR構成では、利用できる自動化手段が異なります。ディスク作成はAzure CLIやPowerShellで扱えても、Azure-to-Azure ASRのデプロイ方法としてAzure CLIは現在サポート対象外です。運用スクリプトは責務を分けて設計してください。(Microsoft Learn)

管理者が次に取るべき行動

今回の更新を受けて、まずは全VMへ一斉にASRを有効化するのではなく、重要度の高いVMから順に確認します。特に、Performance Plusを使うほどI/O要件が高いVMは、業務上の重要度も高いケースが多いため、DR設計の優先度を上げる価値があります。

最初に行うべき作業は次の4つです。

優先度作業目的
高Performance Plus有効ディスクの棚卸し対象VMを特定する
高ASRの保護状態とキャッシュ用ストレージ確認premium storage account要件を満たすか確認する
中データ変更率とピークI/Oの確認Normal ChurnかHigh Churnかを判断する
中テストフェールオーバー計画の作成DR側の性能、起動、アプリ動作を検証する

Performance Plus Managed DisksへのASR対応は、高性能なAzure VMをDR設計に組み込みやすくする重要な更新です。一方で、実務ではディスク性能だけでなく、レプリケーションの追従性、キャッシュ用ストレージ、コスト、テストフェールオーバーまで含めて確認しなければ、障害時に期待どおり復旧できません。

まずは対象ディスクを棚卸しし、重要VMからテストフェールオーバーを実施してください。その結果をもとに、ASRの運用手順書、IaC、監視項目、コスト見積もりを更新するのが、今回のGA対応を安全に活用する最短ルートです。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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