C++における非同期プログラミングは、現代のソフトウェア開発において重要な技術の一つです。複数のタスクを同時に実行することで、プログラムの効率を大幅に向上させることができます。しかし、非同期処理中に例外が発生した場合、その扱いが難しくなることがあります。本記事では、C++における非同期プログラミングの基本から、非同期タスクで発生する例外の伝播方法とその対策について詳しく解説します。これにより、安全かつ効率的な非同期プログラミングの実践に役立てていただけることを目指します。
非同期プログラミングの基本
非同期プログラミングは、プログラムが一度に複数のタスクを実行できるようにする技術です。これは、CPUの使用率を最大化し、プログラムの応答性を向上させるために重要です。非同期処理を行うことで、重い計算処理やI/O操作などの時間がかかるタスクがバックグラウンドで実行されるため、メインスレッドがブロックされることなく他の作業を継続できるようになります。
同期処理との違い
同期処理では、各タスクが順番に実行され、次のタスクは前のタスクが完了するまで待機します。これに対し、非同期処理ではタスクが並行して実行され、タスクの完了を待つことなく次のタスクを開始できます。
非同期プログラミングの利点
- 効率的なリソース利用: CPUのアイドル時間を減らし、リソースを有効に活用します。
- 応答性の向上: ユーザーインターフェイスの応答性が向上し、ユーザー体験が向上します。
- スケーラビリティ: 大規模なアプリケーションでも効率的に動作し、スケールすることができます。
非同期プログラミングのデメリット
- デバッグの難しさ: 非同期コードはデバッグが難しく、特に並行して発生する問題のトラブルシューティングが困難です。
- 複雑さの増加: コードの複雑さが増し、メンテナンスが難しくなる可能性があります。
これらの基本概念を理解することが、非同期プログラミングを効果的に活用するための第一歩です。次に、C++における具体的な非同期処理の実装方法について見ていきましょう。
C++における非同期処理の実装方法
C++では、非同期処理を実装するために標準ライブラリである<future>
ヘッダーを使用します。このヘッダーには、非同期タスクを管理するための便利なクラスや関数が含まれています。特に重要なのはstd::async
とstd::thread
です。
std::asyncの使用方法
std::async
は、指定した関数を非同期に実行するための便利な関数です。以下に基本的な使用例を示します。
#include <iostream>
#include <future>
// 非同期に実行する関数
int compute(int x) {
return x * x;
}
int main() {
// std::asyncを使って非同期タスクを開始
std::future<int> result = std::async(std::launch::async, compute, 5);
// 結果を取得
int value = result.get();
std::cout << "Result: " << value << std::endl;
return 0;
}
このコードでは、compute
関数が非同期に実行され、その結果をstd::future
オブジェクトを通じて取得しています。result.get()
が呼ばれるまで、メインスレッドは他の作業を続けることができます。
std::threadの使用方法
std::thread
を使用すると、さらに低レベルな制御が可能です。以下に基本的な使用例を示します。
#include <iostream>
#include <thread>
// 非同期に実行する関数
void compute(int x, int& result) {
result = x * x;
}
int main() {
int result;
// std::threadを使って非同期タスクを開始
std::thread t(compute, 5, std::ref(result));
// スレッドが完了するのを待機
t.join();
std::cout << "Result: " << result << std::endl;
return 0;
}
このコードでは、compute
関数が新しいスレッドで実行されます。t.join()
が呼ばれるまでメインスレッドは待機し、スレッドの完了を待ちます。
非同期処理の選択
std::async
: 簡単に非同期処理を実装できるため、一般的な用途に向いています。std::thread
: 低レベルな制御が必要な場合や、細かいスレッド管理が必要な場合に適しています。
これらの方法を使用して、C++で非同期処理を効果的に実装することができます。次に、非同期処理中に発生する例外のリスクとその影響について説明します。
非同期処理中の例外発生のリスク
非同期プログラミングにおいて、例外処理は特に重要です。非同期タスク中に例外が発生すると、適切に処理されない限り、プログラム全体の動作に悪影響を及ぼす可能性があります。ここでは、非同期処理中に例外が発生するリスクとその影響について説明します。
例外発生のリスク
非同期タスクは、通常の同期タスクと同様に、例外が発生するリスクを伴います。しかし、非同期タスクでは、これらの例外がメインスレッドから離れた場所で発生するため、適切に処理しないと以下のような問題が発生することがあります。
- 未処理の例外: 非同期タスクで発生した例外が未処理のままになると、プログラムがクラッシュする可能性があります。
- デッドロック: 非同期タスクが例外によって中断されると、共有リソースがロックされたままになり、デッドロックが発生することがあります。
- リソースリーク: 例外が発生した場合、メモリやファイルハンドルなどのリソースが解放されずにリークする可能性があります。
例外の影響
非同期タスクで発生した例外は、タスクの完了状態やプログラムの整合性に直接影響を与えます。具体的には、以下のような影響があります。
- タスクの失敗: 非同期タスクが例外によって中断されると、そのタスクの結果が得られなくなります。
- 連鎖的なエラー: 一つの非同期タスクの失敗が、他のタスクやシステム全体に連鎖的なエラーを引き起こすことがあります。
- プログラムの不安定化: 未処理の例外が積み重なると、プログラム全体が不安定になり、予期しない動作やクラッシュを引き起こすことがあります。
例外の対策
非同期プログラミングでの例外対策として、以下の方法が推奨されます。
- 例外のキャッチと処理: 非同期タスク内でtry-catchブロックを使用して、例外をキャッチし、適切に処理する。
- std::futureとstd::promiseの使用: 例外をstd::futureやstd::promiseを通じてメインスレッドに伝播させ、そこで処理する。
- リソース管理: 例外が発生した場合でもリソースが適切に解放されるように、スマートポインタやスコープガードを使用する。
これらの対策を講じることで、非同期タスク中に発生する例外のリスクを最小限に抑え、プログラムの安定性を向上させることができます。次に、非同期タスクで発生した例外をどのように伝播させ、処理するかについて詳しく見ていきましょう。
例外の伝播と処理方法
非同期タスクで発生した例外を適切に処理するためには、例外を伝播させ、メインスレッドや他の制御ブロックでキャッチする方法を理解することが重要です。ここでは、非同期タスク内で発生した例外をどのように伝播させ、処理するかについて説明します。
std::futureによる例外の伝播
非同期タスクで発生した例外は、std::future
を通じてメインスレッドに伝播させることができます。std::future
は、非同期タスクの結果を保持するオブジェクトであり、例外もその一部として保持されます。
以下は、std::async
を使用して例外を伝播させる例です。
#include <iostream>
#include <future>
#include <stdexcept>
int compute(int x) {
if (x < 0) {
throw std::invalid_argument("Negative value not allowed");
}
return x * x;
}
int main() {
try {
std::future<int> result = std::async(std::launch::async, compute, -5);
int value = result.get(); // ここで例外が再スローされる
std::cout << "Result: " << value << std::endl;
} catch (const std::exception& e) {
std::cerr << "Exception caught: " << e.what() << std::endl;
}
return 0;
}
このコードでは、compute
関数内で例外がスローされると、std::future
オブジェクトにその例外が保存されます。result.get()
が呼ばれると、その時点で例外が再スローされ、メインスレッドでキャッチすることができます。
std::promiseを使った例外の伝播
std::promise
とstd::future
を組み合わせて使用することで、さらに柔軟な例外伝播が可能になります。std::promise
は、結果や例外を保持し、std::future
を通じてそれを取得するためのオブジェクトです。
以下は、std::promise
を使用した例外伝播の例です。
#include <iostream>
#include <future>
#include <stdexcept>
void compute(std::promise<int>& prom, int x) {
try {
if (x < 0) {
throw std::invalid_argument("Negative value not allowed");
}
prom.set_value(x * x);
} catch (...) {
prom.set_exception(std::current_exception());
}
}
int main() {
std::promise<int> prom;
std::future<int> result = prom.get_future();
std::thread t(compute, std::ref(prom), -5);
t.detach();
try {
int value = result.get(); // ここで例外が再スローされる
std::cout << "Result: " << value << std::endl;
} catch (const std::exception& e) {
std::cerr << "Exception caught: " << e.what() << std::endl;
}
return 0;
}
このコードでは、compute
関数内で例外がスローされると、std::promise
オブジェクトに例外が設定されます。result.get()
が呼ばれると、その時点で例外が再スローされ、メインスレッドでキャッチすることができます。
例外処理のベストプラクティス
- 例外のキャッチと再スロー: 非同期タスク内で例外をキャッチし、必要に応じて再スローします。
- リソース管理: スコープガードやスマートポインタを使用して、例外発生時にリソースが適切に解放されるようにします。
- ロギングとエラーハンドリング: 例外情報をロギングし、適切なエラーハンドリングを行います。
これらの方法を使用して、非同期タスクで発生する例外を適切に伝播させ、処理することができます。次に、std::future
を使った具体的な例外の捕捉方法について詳しく見ていきましょう。
std::futureを使った例外の捕捉
std::future
は、非同期タスクの結果を待機し取得するための強力なツールです。また、非同期タスクで発生した例外も同様に捕捉することができます。ここでは、std::future
を使った具体的な例外の捕捉方法について詳しく説明します。
例外を伴う非同期タスクの実装
std::async
を使用して非同期タスクを実行し、そのタスク内で例外が発生した場合にそれをstd::future
経由で捕捉する基本的な方法を見てみましょう。
#include <iostream>
#include <future>
#include <stdexcept>
int compute(int x) {
if (x < 0) {
throw std::invalid_argument("Negative value not allowed");
}
return x * x;
}
int main() {
// std::asyncを使って非同期タスクを開始
std::future<int> result = std::async(std::launch::async, compute, -5);
try {
// get()を呼ぶと、非同期タスク内で発生した例外が再スローされる
int value = result.get();
std::cout << "Result: " << value << std::endl;
} catch (const std::exception& e) {
std::cerr << "Exception caught: " << e.what() << std::endl;
}
return 0;
}
このコードでは、compute
関数内で例外がスローされると、std::future
オブジェクトにその例外が保存されます。result.get()
を呼び出すと、その時点で例外が再スローされ、catch
ブロックで捕捉されます。
非同期タスクの例外を適切に処理する方法
非同期タスクで発生した例外を適切に処理するためには、以下の手順を踏むことが重要です。
- 例外のキャッチと伝播:
非同期タスク内で発生した例外をキャッチし、std::promise
を使用してメインスレッドに伝播させることができます。 - メインスレッドでの例外捕捉:
std::future
のget()
メソッドを使用して非同期タスクの結果を取得し、例外をキャッチします。 - 例外処理のロジック:
例外が発生した場合の処理ロジックを適切に設計し、エラーメッセージの表示やリソースのクリーンアップを行います。
例外捕捉の具体例
以下は、例外捕捉の具体例です。
#include <iostream>
#include <future>
#include <stdexcept>
#include <thread>
void compute(std::promise<int>& prom, int x) {
try {
if (x < 0) {
throw std::invalid_argument("Negative value not allowed");
}
prom.set_value(x * x);
} catch (...) {
prom.set_exception(std::current_exception());
}
}
int main() {
std::promise<int> prom;
std::future<int> result = prom.get_future();
std::thread t(compute, std::ref(prom), -5);
t.detach();
try {
int value = result.get();
std::cout << "Result: " << value << std::endl;
} catch (const std::exception& e) {
std::cerr << "Exception caught: " << e.what() << std::endl;
}
return 0;
}
この例では、compute
関数内で発生した例外がstd::promise
を介してstd::future
に伝播され、メインスレッドで再スローされます。result.get()
を呼び出すことで例外が捕捉され、適切なエラーメッセージが表示されます。
まとめ
std::future
を使用することで、非同期タスク内で発生した例外を安全かつ効果的に捕捉することができます。これにより、非同期プログラミングの複雑さを軽減し、プログラムの信頼性を向上させることができます。次に、std::promise
を使った例外の伝播方法について詳しく説明します。
std::promiseを使った例外の伝播
std::promise
は、非同期タスクの結果を設定し、その結果をstd::future
を通じて取得するためのオブジェクトです。これを利用して、非同期タスク内で発生した例外を伝播させることができます。ここでは、std::promise
を使った例外の伝播方法について詳しく説明します。
std::promiseの基本的な使い方
std::promise
とstd::future
を組み合わせて、非同期タスクの結果や例外をメインスレッドに伝播させる基本的な方法を見てみましょう。
#include <iostream>
#include <future>
#include <stdexcept>
#include <thread>
void compute(std::promise<int>& prom, int x) {
try {
if (x < 0) {
throw std::invalid_argument("Negative value not allowed");
}
prom.set_value(x * x);
} catch (...) {
prom.set_exception(std::current_exception());
}
}
int main() {
std::promise<int> prom;
std::future<int> result = prom.get_future();
std::thread t(compute, std::ref(prom), -5);
t.detach();
try {
int value = result.get();
std::cout << "Result: " << value << std::endl;
} catch (const std::exception& e) {
std::cerr << "Exception caught: " << e.what() << std::endl;
}
return 0;
}
このコードでは、compute
関数内で例外がスローされると、std::promise
オブジェクトにその例外が設定されます。prom.set_exception(std::current_exception())
を呼び出すことで、現在の例外がstd::promise
に保存されます。そして、メインスレッドのresult.get()
が呼ばれると、その時点で例外が再スローされ、catch
ブロックで捕捉されます。
非同期タスクの例外処理におけるベストプラクティス
std::promise
を使った例外処理には、いくつかのベストプラクティスがあります。
- 明示的な例外キャッチ: 非同期タスク内で例外を明示的にキャッチし、
std::promise
に設定します。 - 例外の再スロー: メインスレッドで
std::future
を使用して例外を再スローし、適切に処理します。 - リソースの確保と解放: 非同期タスク内で使用するリソースを適切に確保し、例外発生時にも確実に解放するためのコードを記述します。
具体例: std::promiseによる非同期例外処理
以下に、std::promise
を使用して非同期タスク内で発生した例外を伝播させ、メインスレッドで処理する具体的な例を示します。
#include <iostream>
#include <future>
#include <stdexcept>
#include <thread>
void asyncTask(std::promise<int>& prom, int x) {
try {
if (x == 0) {
throw std::runtime_error("Division by zero error");
}
prom.set_value(10 / x);
} catch (...) {
prom.set_exception(std::current_exception());
}
}
int main() {
std::promise<int> prom;
std::future<int> result = prom.get_future();
std::thread t(asyncTask, std::ref(prom), 0);
t.detach();
try {
int value = result.get(); // ここで例外が再スローされる
std::cout << "Result: " << value << std::endl;
} catch (const std::exception& e) {
std::cerr << "Exception caught: " << e.what() << std::endl;
}
return 0;
}
このコードでは、asyncTask
関数内でstd::runtime_error
例外がスローされ、std::promise
オブジェクトにその例外が設定されます。メインスレッドのresult.get()
が呼ばれると、その時点で例外が再スローされ、catch
ブロックで捕捉されます。
まとめ
std::promise
を使用することで、非同期タスク内で発生した例外を効果的にメインスレッドに伝播させることができます。これにより、非同期プログラミングの信頼性と安全性が向上します。次に、非同期タスクのデバッグ方法について詳しく見ていきましょう。
非同期タスクのデバッグ方法
非同期プログラミングは、並行して実行されるタスクの管理が必要であり、同期プログラミングよりも複雑です。そのため、非同期タスクで発生する問題のデバッグは困難ですが、適切なツールと方法を使用すれば効率的にデバッグできます。ここでは、非同期タスクのデバッグ方法と推奨されるツールについて説明します。
デバッグの基本原則
非同期タスクをデバッグする際の基本原則として、以下のポイントに注意する必要があります。
- ログ出力の活用: 各タスクの開始、終了、および重要なイベントをログに記録し、タスクの進行状況を追跡します。
- 一貫性のあるエラーハンドリング: 非同期タスク内で例外をキャッチし、適切に処理するコードを記述します。
- デッドロックの検出: 共有リソースへのアクセスが適切に管理されていることを確認し、デッドロックを防止します。
デバッグツールの紹介
以下は、非同期プログラミングのデバッグに役立つツールと技術です。
GDB(GNU Debugger)
GDBは、C++プログラムのデバッグに広く使用されるツールです。非同期タスクのデバッグにも有効で、スレッドの状態を確認したり、ブレークポイントを設定したりすることができます。
# プログラムのデバッグ開始
gdb ./my_program
Valgrind
Valgrindは、メモリリークやスレッドの競合状態を検出するためのツールです。非同期タスクでのリソース管理に問題がないかをチェックするのに役立ちます。
# Valgrindを使ってプログラムを実行
valgrind --tool=helgrind ./my_program
Thread Sanitizer
Thread Sanitizerは、スレッド関連の問題を検出するためのツールで、競合状態やデッドロックを検出します。GCCやClangのコンパイラでサポートされています。
# Thread Sanitizerを有効にしてコンパイル
g++ -fsanitize=thread -g -o my_program my_program.cpp
# プログラムの実行
./my_program
デバッグ手法の具体例
非同期タスクのデバッグ手法について、具体的な例を示します。
#include <iostream>
#include <future>
#include <stdexcept>
#include <thread>
#include <chrono>
// デバッグ用のログ出力関数
void log(const std::string& message) {
auto now = std::chrono::system_clock::to_time_t(std::chrono::system_clock::now());
std::cerr << std::ctime(&now) << ": " << message << std::endl;
}
void asyncTask(std::promise<int>& prom, int x) {
log("Task started");
try {
if (x == 0) {
throw std::runtime_error("Division by zero error");
}
prom.set_value(10 / x);
} catch (...) {
prom.set_exception(std::current_exception());
}
log("Task completed");
}
int main() {
log("Main thread started");
std::promise<int> prom;
std::future<int> result = prom.get_future();
std::thread t(asyncTask, std::ref(prom), 0);
t.detach();
try {
int value = result.get();
std::cout << "Result: " << value << std::endl;
} catch (const std::exception& e) {
std::cerr << "Exception caught: " << e.what() << std::endl;
}
log("Main thread completed");
return 0;
}
このコードでは、log
関数を使用して各タスクの状態を記録しています。これにより、非同期タスクの進行状況を追跡し、問題の発生場所を特定するのに役立ちます。
非同期デバッグのヒント
- 分割してデバッグ: 複雑な非同期コードを小さな部分に分割し、それぞれを個別にデバッグします。
- 再現可能なテストケース: 問題を再現可能なテストケースとして切り出し、デバッグを容易にします。
- 競合状態の監視: 競合状態が発生しやすい箇所を重点的に監視し、適切なロック機構を導入します。
これらの手法とツールを活用することで、非同期タスクのデバッグを効率的に行い、プログラムの信頼性を向上させることができます。次に、実践的な例外処理の例について詳しく見ていきましょう。
実践的な例外処理の例
非同期プログラミングでは、実際に発生する可能性のある例外を効果的に処理することが重要です。ここでは、実践的な例外処理の例をいくつか紹介し、非同期タスクにおける堅牢な例外処理の方法について解説します。
非同期タスクにおける例外の捕捉と再スロー
非同期タスクで発生した例外を捕捉し、それを再スローする方法を実践的な例を用いて説明します。
#include <iostream>
#include <future>
#include <stdexcept>
#include <thread>
void performCalculation(std::promise<int>& prom, int x) {
try {
if (x < 0) {
throw std::invalid_argument("Negative value not allowed");
}
if (x == 0) {
throw std::runtime_error("Division by zero error");
}
prom.set_value(100 / x);
} catch (...) {
prom.set_exception(std::current_exception());
}
}
int main() {
std::promise<int> prom;
std::future<int> result = prom.get_future();
std::thread t(performCalculation, std::ref(prom), -10);
t.detach();
try {
int value = result.get();
std::cout << "Calculation result: " << value << std::endl;
} catch (const std::invalid_argument& e) {
std::cerr << "Invalid argument exception: " << e.what() << std::endl;
} catch (const std::runtime_error& e) {
std::cerr << "Runtime error: " << e.what() << std::endl;
} catch (const std::exception& e) {
std::cerr << "Exception caught: " << e.what() << std::endl;
}
return 0;
}
この例では、performCalculation
関数内で複数の例外が発生する可能性があります。各例外はstd::promise
を通じてstd::future
に設定され、メインスレッドで適切にキャッチされます。
複数の非同期タスクにおける例外処理
複数の非同期タスクを同時に実行し、それぞれのタスクで発生する例外を処理する方法について説明します。
#include <iostream>
#include <future>
#include <vector>
#include <stdexcept>
void computeSquare(std::promise<int>& prom, int x) {
try {
if (x < 0) {
throw std::invalid_argument("Negative value not allowed");
}
prom.set_value(x * x);
} catch (...) {
prom.set_exception(std::current_exception());
}
}
int main() {
const int taskCount = 3;
std::vector<std::promise<int>> promises(taskCount);
std::vector<std::future<int>> futures;
std::vector<std::thread> threads;
for (int i = 0; i < taskCount; ++i) {
futures.push_back(promises[i].get_future());
threads.push_back(std::thread(computeSquare, std::ref(promises[i]), i - 1)); // 例外を発生させるために-1, 0, 1を使用
}
for (auto& t : threads) {
t.detach();
}
for (int i = 0; i < taskCount; ++i) {
try {
int result = futures[i].get();
std::cout << "Task " << i << " result: " << result << std::endl;
} catch (const std::invalid_argument& e) {
std::cerr << "Task " << i << " invalid argument exception: " << e.what() << std::endl;
} catch (const std::exception& e) {
std::cerr << "Task " << i << " exception caught: " << e.what() << std::endl;
}
}
return 0;
}
この例では、3つの非同期タスクを同時に実行し、それぞれのタスクで発生する例外を個別に処理しています。i - 1
を引数として渡すことで、例外を発生させるケースを作り出しています。
リソース管理と例外処理
非同期タスクで発生する例外に対してリソース管理を適切に行う方法について説明します。リソース管理は、特にファイル操作やネットワーク接続などの外部リソースを扱う場合に重要です。
#include <iostream>
#include <fstream>
#include <future>
#include <stdexcept>
#include <thread>
void readFileContent(std::promise<std::string>& prom, const std::string& filename) {
try {
std::ifstream file(filename);
if (!file.is_open()) {
throw std::runtime_error("Failed to open file");
}
std::string content((std::istreambuf_iterator<char>(file)), std::istreambuf_iterator<char>());
prom.set_value(content);
} catch (...) {
prom.set_exception(std::current_exception());
}
}
int main() {
std::promise<std::string> prom;
std::future<std::string> result = prom.get_future();
std::thread t(readFileContent, std::ref(prom), "nonexistent_file.txt");
t.detach();
try {
std::string content = result.get();
std::cout << "File content: " << content << std::endl;
} catch (const std::exception& e) {
std::cerr << "Exception caught: " << e.what() << std::endl;
}
return 0;
}
この例では、ファイルを読み取る非同期タスクを実行しています。ファイルが開けなかった場合に例外をスローし、std::promise
を通じてメインスレッドでその例外を捕捉します。
まとめ
非同期プログラミングにおける例外処理は、プログラムの信頼性と安定性を保つために不可欠です。std::promise
とstd::future
を活用することで、非同期タスクで発生する例外を効果的に伝播させ、適切に処理することができます。次に、読者が理解を深めるための応用例と演習問題を提供します。
応用例と演習問題
C++の非同期プログラミングと例外処理に関する理解を深めるために、いくつかの応用例と演習問題を紹介します。これらの例と問題を通じて、実践的なスキルを磨きましょう。
応用例: 並行して複数のタスクを実行する
非同期タスクを並行して実行し、それぞれのタスクの結果を集約する例です。
#include <iostream>
#include <vector>
#include <future>
#include <thread>
#include <stdexcept>
// 非同期に実行するタスク
int compute(int x) {
if (x < 0) {
throw std::invalid_argument("Negative value not allowed");
}
return x * x;
}
int main() {
const int taskCount = 5;
std::vector<std::future<int>> futures;
for (int i = 0; i < taskCount; ++i) {
futures.push_back(std::async(std::launch::async, compute, i - 2)); // -2, -1, 0, 1, 2
}
for (int i = 0; i < taskCount; ++i) {
try {
int result = futures[i].get();
std::cout << "Task " << i << " result: " << result << std::endl;
} catch (const std::invalid_argument& e) {
std::cerr << "Task " << i << " invalid argument exception: " << e.what() << std::endl;
} catch (const std::exception& e) {
std::cerr << "Task " << i << " exception caught: " << e.what() << std::endl;
}
}
return 0;
}
この応用例では、5つの非同期タスクを並行して実行し、それぞれのタスクの結果を集約しています。タスクの一部は例外をスローし、その例外が適切に処理される様子を示しています。
演習問題 1: 非同期タスクのチェーン実行
複数の非同期タスクをチェーン状に実行し、各タスクの結果を次のタスクに渡すプログラムを作成してください。
要件:
std::promise
とstd::future
を使用する。- 最初のタスクが整数を生成し、その整数を次のタスクに渡して平方根を計算する。
- 最後のタスクで結果を表示する。
// ここにコードを記述してください
演習問題 2: 非同期ファイル読み込みと処理
複数のファイルを非同期に読み込み、それぞれのファイルの内容を処理するプログラムを作成してください。
要件:
std::async
を使用する。- 各ファイルの読み込みが成功したかどうかをチェックする。
- 読み込んだ内容をコンソールに出力する。
// ここにコードを記述してください
演習問題 3: 非同期Webリクエストの実行
非同期に複数のWebリクエストを実行し、それぞれのレスポンスを処理するプログラムを作成してください。
要件:
- 非同期リクエストを送信するために、任意のHTTPライブラリを使用する。
- 各リクエストの成功・失敗をチェックする。
- 成功したリクエストのレスポンスを解析して出力する。
// ここにコードを記述してください
演習問題 4: 非同期データベースクエリの実行
非同期に複数のデータベースクエリを実行し、その結果を処理するプログラムを作成してください。
要件:
- データベース接続とクエリ実行のために、適切なライブラリを使用する。
- クエリの結果を受け取り、処理する。
- エラーハンドリングを適切に行う。
// ここにコードを記述してください
これらの応用例と演習問題を通じて、非同期プログラミングと例外処理の実践的なスキルを身につけてください。次に、この記事のまとめを行います。
まとめ
本記事では、C++の非同期プログラミングにおける例外の伝播方法と対策について詳しく解説しました。非同期タスクの実装方法、例外のリスク、例外の伝播と処理方法、非同期タスクのデバッグ方法、そして実践的な例外処理の例と演習問題を通じて、非同期プログラミングの基礎から応用までをカバーしました。
非同期プログラミングは、複雑でデバッグが難しい面がありますが、適切なツールとテクニックを使用することで、安全かつ効率的なプログラムを作成することが可能です。この記事を参考にして、C++の非同期プログラミングスキルをさらに高めてください。
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