Universal Printでスキャンできるようになると聞いて、「今の複合機はそのまま使えるのか」「scan to emailや共有フォルダー運用を置き換えられるのか」「管理者はいつ何を準備すべきか」が気になる方は多いはずです。結論から言うと、Scan with Universal Printは、通常のスキャン対応MFPで文書をスキャンし、準備完了通知をメールで受け取ってダウンロードする新機能です。Microsoft 365 Roadmapでは、プレビューが2026年12月、一般提供が2027年6月予定とされていますが、ロードマップ上の時期は変更される可能性があります。(microsoft.com)
現時点で管理者がすべきことは、すぐに既存のスキャン基盤を廃止することではありません。まずは複合機、Universal Print接続方式、ユーザー権限、スキャンデータの保管・通知・監査要件を棚卸しし、2026年12月のプレビューで実機検証できる状態を作ることが重要です。
Microsoftの「Universal Print: Scan with Universal Print」は何が変わるのか
「Universal Print: Scan with Universal Print」は、Universal Printにスキャン体験を追加する予定のロードマップ項目です。Microsoftの公開情報では、ユーザーが通常のスキャン対応多機能プリンターで文書をスキャンし、スキャン結果をダウンロードできる状態になったらメール通知を受け取る、と説明されています。対象製品はUniversal Printで、状態はIn development、対象クラウドはWorldwide、GCC、GCC High、DoD、対象プラットフォームはDesktop、Mac、Webです。(microsoft.com)
この変更のポイントは、印刷だけでなく、紙文書をデジタル化した後の受け渡しにもUniversal Printが関わる可能性が出てきたことです。従来の複合機スキャンでは、SMTPで自分宛てに送る、共有フォルダーに保存する、端末に直接取り込む、といった運用が多く見られます。Scan with Universal Printでは、少なくとも「スキャン完了をメールで通知し、利用者がダウンロードする」というクラウド前提の流れが示されています。
ただし、現時点の公式説明は短く、保存先、保持期間、ファイル形式、最大サイズ、OCR対応、管理ポリシー、監査ログ、既存のMicrosoft Graph APIとの関係などは明示されていません。そのため、記事執筆時点では「スキャンtoメールを完全に置き換える機能」と断定せず、既存スキャン運用の一部を置き換える候補として評価するのが安全です。
公式情報から分かること
| 項目 | 現時点で分かっている内容 |
|---|---|
| 機能名 | Universal Print: Scan with Universal Print |
| ロードマップID | 519572 |
| 概要 | スキャン対応MFPで文書をスキャンし、準備完了時にメール通知を受け取ってダウンロードできる |
| 対象サービス | Universal Print |
| ステータス | In development |
| プレビュー予定 | 2026年12月 |
| 一般提供予定 | 2027年6月 |
| 対象クラウド | Worldwide、GCC、GCC High、DoD |
| 対象プラットフォーム | Desktop、Mac、Web |
| 作成日・更新日 | 作成は2025年10月、更新は2026年5月上旬 |
Microsoft 365 Roadmapは、商用機能の予定時期と概要を示すページであり、掲載情報は変更される可能性があります。機能が一般提供、キャンセル、延期された場合は、ロードマップから情報が削除されることもあります。(microsoft.com)
既存のスキャン運用と何が違うのか
Scan with Universal Printの価値を判断するには、今のスキャン運用と比較すると分かりやすくなります。
| 運用方式 | 主な流れ | 利点 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| Scan to Email | 複合機からSMTP経由でメール送信 | ユーザーに馴染みがある。導入済みの環境が多い | SMTP設定、送信制限、添付ファイルサイズ、サービスアカウント、誤送信対策が課題になりやすい |
| Scan to Folder | 複合機から共有フォルダーへ保存 | 部門単位の保管に向く | SMB、権限、VPN、ファイルサーバー運用、個人情報の置きっぱなしに注意 |
| Scan to OneDrive/SharePoint | クラウドストレージへ保存 | Microsoft 365の権限管理と組み合わせやすい | 複合機側の対応、認証方式、保存先設計が必要 |
| Scan with Universal Print | スキャン後、メール通知からダウンロード | Universal Print管理下でスキャン体験を整理できる可能性がある | 保存先、保持期間、監査、機種対応などはプレビューで確認が必要 |
特に注目したいのは、「メールにスキャンファイルを添付する」とは書かれていない点です。公式説明では「scan is ready to download」とされているため、通知メールを受け取り、そこからダウンロードする方式と読むのが自然です。これにより、大容量添付や複合機のSMTP設定負荷を減らせる可能性がありますが、実際の挙動はプレビューで確認する必要があります。(microsoft.com)
影響を受けやすい対象者
エンドユーザー
エンドユーザーにとっては、スキャン結果を探す場所が変わる可能性があります。従来は「自分のメールボックスに添付ファイルが届く」「共有フォルダーを開く」運用だった場合、今後は「スキャン完了通知を受け取り、リンクまたは画面からダウンロードする」流れになるかもしれません。
現場で混乱しやすいのは、以下のような場面です。
- スキャンしたのにメール通知が届かない
- 通知は届いたが、どこからダウンロードするか分からない
- 代理でスキャンした文書を、部門メンバーにどう共有するか分からない
- 紙の原稿を誰のアカウントにひも付けてスキャンすべきか迷う
- スキャン後のファイル名や保存ルールが統一されない
そのため、導入時は「スキャンする人」「受け取る人」「保存する場所」を業務単位で決めておく必要があります。特に総務、人事、経理、医療・教育・行政系の窓口業務など、個人情報や機密情報を扱う部門では、便利さよりも権限と保管ルールを優先して設計すべきです。
Microsoft 365管理者
管理者は、Universal Printの既存構成に加えて、スキャンデータの取り扱いを確認する必要があります。Universal Printを利用するには、対象ユーザーとIT管理者に適切なライセンスと管理者ロールを割り当てる必要があります。Microsoft Learnでは、Universal Printのセットアップ手順として、ライセンス確認、ユーザー・管理者へのライセンス割り当て、管理ロールの割り当てが示されています。(Microsoft Learn)
また、Universal Printでは、プリンターがUniversal Print readyであれば直接登録でき、そうでないプリンターはコネクタ経由で登録します。既存の複合機がスキャン機能でも同じ接続方式に対応するかは、プレビュー時に機種ごとに確認が必要です。(Microsoft Learn)
セキュリティ・コンプライアンス担当者
Scan with Universal Printは紙文書のデジタル化に関わるため、セキュリティ担当者の確認が欠かせません。特に以下は、プレビュー時に必ず確認したい項目です。
| 確認項目 | 見るべきポイント |
|---|---|
| スキャンデータの保存先 | Microsoft 365内のどこに一時保存されるのか。地域、保持期間、削除条件はどうなるのか |
| アクセス権 | スキャンした本人だけが取得できるのか。代理操作、共有、管理者アクセスはどう扱われるのか |
| 通知メール | 送信元、件名、リンクの有効期限、フィッシング対策の教育が必要か |
| 監査ログ | 誰が、いつ、どの複合機で、どのデータをスキャンしたか追跡できるか |
| DLP・秘密度ラベル | スキャンファイルに対して情報保護ポリシーを適用できるか |
| 退職者・異動者 | 通知後にユーザーが無効化された場合、ファイルへアクセスできるか |
| ゲスト・共有メールボックス | 共有利用や外部ユーザー利用を許可するのか |
ここでの失敗パターンは、「メール通知が届くなら安全だろう」と判断してしまうことです。実際には、スキャン文書は契約書、本人確認書類、請求書、診療情報、成績情報などを含む可能性があります。通知方式よりも、誰が取得でき、どれくらい残り、どう監査できるかを先に確認してください。
開発者・ISV・業務アプリ担当者
開発者にとっては、スキャン結果を業務アプリへ取り込めるかが関心事になります。現行のMicrosoft GraphにはUniversal Printのクラウド印刷APIがあり、印刷ジョブ作成、アップロードセッション、プリンター管理、レポートなどの用途が説明されています。(Microsoft Learn)
一方で、Scan with Universal Print向けのスキャンAPI、イベント通知、ファイル取得API、権限スコープなどは、この記事執筆時点のロードマップ情報だけでは確認できません。開発者は、次のような前提で設計しないことが大切です。
- スキャンデータをGraph APIで必ず取得できると決めつける
- ダウンロードURLが長期有効だと想定する
- スキャンファイルの保存先がOneDriveまたはSharePointだと決めつける
- OCR済みPDFや検索可能PDFが標準で作られると想定する
- アプリケーション権限やサービスプリンシパルで処理できると想定する
業務アプリに組み込む場合は、2026年12月のプレビューでAPI仕様、権限モデル、イベント通知、ファイル保持期間を確認し、既存のscan-to-folder連携とは別ルートとしてPoCを設計するのが現実的です。
管理者が今から確認すべき設定と棚卸し
Scan with Universal PrintはまだIn developmentですが、準備は今から進められます。特に複合機の数が多い企業、拠点が多い企業、官公庁・教育機関・医療機関のように紙文書が多い組織では、プレビュー開始後に慌てて棚卸しすると間に合いません。
複合機とスキャン経路を一覧化する
まずは、現在のスキャン経路を可視化します。管理台帳には、最低限以下を記録してください。
| 項目 | 記録例 |
|---|---|
| 設置場所 | 東京本社 3階 総務エリア |
| メーカー・機種 | スキャン対応MFPの型番 |
| 現在のスキャン方式 | SMTP送信、共有フォルダー、OneDrive連携、USB保存など |
| 認証方式 | 本体ログイン、ICカード、共通アカウント、認証なし |
| 主な利用部門 | 総務、人事、経理、営業、受付など |
| 扱う文書 | 契約書、請求書、本人確認書類、申請書など |
| Universal Print登録状況 | 直接登録、コネクタ経由、未登録 |
| 廃止候補の設定 | 古いSMTPサーバー、共有フォルダー、ローカル保存先 |
棚卸しで重要なのは、プリンターとして使っているかではなく、スキャナーとして何に使っているかです。印刷利用が少ない複合機でも、経理や人事ではスキャンが業務の中心になっている場合があります。
Universal Printのライセンスと利用者を確認する
Universal Printは、対象のMicrosoft 365、Windows Enterprise、教育機関向け、政府機関向けサブスクリプションなどに含まれる場合があり、単体サブスクリプションとして購入することもできます。Microsoft Learnでは、Universal Printのアクセスには、利用権と印刷ボリュームという2つの要素があると説明されています。(Microsoft Learn)
Scan with Universal Printがスキャン利用をどのようにライセンス・利用量へ反映するかは、現時点のロードマップ情報だけでは明確ではありません。そのため、次の観点をプレビューで確認しましょう。
- スキャン利用にUniversal Printライセンスが必要か
- 管理者にも同じくUniversal Print対象ライセンスが必要か
- スキャンは印刷ジョブ数にカウントされるのか
- 大量スキャン時に制限や追加料金の考え方があるのか
- GCC、GCC High、DoDで商用クラウドと同じ条件か
特に、月末に請求書や申請書を大量スキャンする部門では、印刷とは別にピーク時間帯の負荷を想定して検証する必要があります。
Universal Print readyかコネクタ経由かを確認する
Universal Printでは、Universal Print readyプリンターは追加ソフトウェアなしで直接登録でき、非対応プリンターはUniversal Print connectorを使って登録します。Microsoft Learnでは、コネクタはUniversal Printに直接対応していないプリンターを使うための橋渡しであり、プリンター登録、状態報告、印刷ジョブ配信を行うと説明されています。(Microsoft Learn)
Scan with Universal Printで注意すべきなのは、印刷で登録できている複合機が、スキャン機能でも自動的に対応するとは限らない点です。プレビューでは、以下のパターンごとに実機確認してください。
| 接続方式 | 確認すべきこと |
|---|---|
| Universal Print ready複合機 | ファームウェア更新だけでスキャン機能に対応するか |
| コネクタ経由の複合機 | コネクタ経由でスキャン機能も扱えるか |
| 古いMFP | スキャン機能の制限、認証方式、ファイル形式に問題がないか |
| 拠点設置MFP | ネットワーク、通知、認証、帯域に問題がないか |
| 共用MFP | 個人のスキャン結果が他人に見えないか |
Universal Print connectorの状態を確認する
Universal Print connectorを使っている場合は、コネクタのバージョンと稼働環境も確認しておきましょう。Microsoft Learnでは、connector 2.0の手動インストールまたは自動更新に.NET Framework 4.8以降が必要とされ、古いバージョンについては2024年9月1日以降、MicrosoftサポートがUniversal Print問題を支援する前に2.0へのアップグレードが必要になると説明されています。(Microsoft Learn)
Scan with Universal Printがコネクタをどう使うかは未確定でも、Universal Print基盤として古いコネクタを残しておくメリットはほとんどありません。2026年中に以下を確認しておくと、プレビュー検証がスムーズになります。
- connector 2.0へ更新済みか
- .NET Framework 4.8以降が導入済みか
- コネクタPCまたはサーバーのOSがサポート上問題ないか
- 拠点ごとのコネクタ台数に余裕があるか
- 障害時の再登録・復旧手順が文書化されているか
- コネクタが一時的にファイルを扱う場合のディスク容量と保護策があるか
ネットワークと通知の到達性を確認する
Universal Printのセットアップでは、ユーザー端末とプリンターがMicrosoftの各エンドポイントへアクセスできる必要があります。Microsoft Learnでは、Commercial、GCC、GCC High、DoDごとに、Print service、Registration service、Discovery service、Notification service、Graph service、Microsoft Entra IDなどのエンドポイントが示されています。(Microsoft Learn)
Scan with Universal Printでは、スキャン完了通知が重要になります。プレビューでは、特に次を確認してください。
- 通知メールが迷惑メールや隔離に入らないか
- メールセキュリティ製品がダウンロードリンクを書き換えて問題を起こさないか
- プリンター、コネクタ、ユーザー端末が必要なエンドポイントへ接続できるか
- 閉域網、プロキシ、SSLインスペクション環境で問題がないか
- GCC、GCC High、DoDのテナントで商用クラウドと同じ手順で動くか
特にゼロトラストやCASBを導入している組織では、「メール通知は届くがダウンロードできない」「管理者端末では動くが一般ユーザー端末では動かない」といった差分が出やすくなります。
移行計画は「廃止」ではなく「併用」から始める
Scan with Universal Printは、既存のスキャン運用を一気に置き換えるより、併用から始めるのが安全です。特にscan to emailやscan to folderは、現場の業務手順に深く組み込まれていることがあります。
移行の基本ステップ
| フェーズ | 時期の目安 | やること |
|---|---|---|
| 棚卸し | 2026年内 | 複合機、スキャン方式、利用部門、文書種別、セキュリティ要件を整理 |
| 技術検証 | 2026年12月のプレビュー以降 | 対応機種、通知、ダウンロード、権限、監査、保持期間を確認 |
| 小規模PoC | プレビュー期間中 | 情シス、総務、経理など少数部門で実運用に近いテスト |
| 業務設計 | PoC後 | ファイル命名、保存先、共有手順、例外対応、問い合わせ窓口を決定 |
| 段階展開 | GA前後 | 拠点・部門単位で展開。既存方式は一定期間残す |
| 旧方式の整理 | 安定稼働後 | 不要なSMTP設定、共有フォルダー、サービスアカウントを廃止 |
一番避けたいのは、一般提供直後に「便利そうだから全社で有効化」し、その後に部門ごとの例外が噴出するパターンです。スキャンは印刷よりも情報漏えいリスクが高い場合があります。紙をデジタル化した瞬間から、ファイル共有、転送、保存、削除の管理対象になるためです。
PoCで使うべきテストケース
プレビューが始まったら、単に「1枚スキャンできた」で終わらせず、実務に近い条件で確認してください。
| テストケース | 確認ポイント |
|---|---|
| 1枚のA4文書 | 基本動作、通知速度、ダウンロード手順 |
| 30枚以上の連続スキャン | ファイルサイズ、タイムアウト、通知遅延 |
| カラー原稿 | 画質、容量、形式 |
| 機密文書 | アクセス制御、誤送信対策、監査 |
| 代理スキャン | 本人以外が操作した場合の所有者・通知先 |
| 共有端末 | 複数ユーザーが同じMFPを使う場合の認証 |
| 退職・異動ユーザー | 通知後のアクセス無効化 |
| メール隔離環境 | Defenderやメールゲートウェイによるリンク処理 |
| モバイル・Mac利用者 | Desktop、Mac、Webそれぞれの導線 |
PoCの結果は、機能評価だけでなく、既存運用の見直しにも使えます。たとえば「総務は個人宛て通知でよいが、経理は部門フォルダーへの保存が必要」「受付では共有アカウントではなく個人認証が必要」といった違いが明確になります。
展開時に失敗しやすいポイント
「メールで届く」と誤解して教育しない
Scan with Universal Printの説明は、メール通知を受け取ってダウンロードするという内容です。つまり、従来のように添付ファイルがそのまま届く運用とは異なる可能性があります。(microsoft.com)
ユーザー向けには、次のように具体的な案内が必要です。
- スキャン後、どの件名のメールが届くか
- 通知メールからどこをクリックするか
- ダウンロードしたファイルをどこへ保存するか
- 誤って別の人の文書をスキャンした場合、誰へ連絡するか
- 通知が届かない場合、何分待ってから問い合わせるか
「メールが来ます」だけでは不十分です。スキャン文書は業務処理の起点になるため、問い合わせ窓口と一次切り分け手順まで用意しましょう。
共用複合機の本人確認を軽視する
共用MFPでは、誰がスキャンした文書を誰が受け取るのかが重要です。認証なしで操作できる複合機の場合、スキャン結果の所有者や通知先をどう決めるのかが問題になります。
プレビューでは、以下を確認してください。
- MFP本体でユーザー認証が必要か
- Microsoft Entra IDとの関連付けが必要か
- ICカード認証やPIN認証と連携できるか
- 共有アカウントでスキャンした場合の通知先はどうなるか
- 操作中に前のユーザーのセッションが残らないか
特に受付、窓口、学校、病院、店舗バックヤードのように複数人が短時間で同じMFPを使う場所では、本人確認の設計が展開品質を左右します。
既存のscan to emailをすぐ廃止する
既存のscan to emailやscan to folderには、すでに業務上の例外対応が組み込まれている場合があります。たとえば、取引先にPDFを直接送る、部署の共有フォルダーに自動保存する、特定システムがフォルダーを監視して処理する、といった運用です。
Scan with Universal Printを導入しても、以下のような用途はすぐに置き換えられない可能性があります。
- FAX代替として外部宛てにPDFを送る
- OCRシステムが共有フォルダーを監視している
- ワークフローシステムが特定フォルダーから取り込む
- 複数人で同じスキャンファイルを即時確認する
- 電子帳簿保存法対応など、保存先と命名規則が厳格に決まっている
移行時は、既存方式を「残す」「置き換える」「部門ごとに併用する」に分類しましょう。
監査ログと保持期間を後回しにする
紙文書のスキャンは、情報漏えいの入口にもなります。誰でも紙を置いてスキャンできる環境では、文書の持ち出しがデジタル化によって容易になるためです。
プレビューで確認すべき監査項目は、少なくとも以下です。
- スキャン実行者
- 使用したMFP
- 実行日時
- ファイル取得者
- ダウンロード日時
- 失敗時のログ
- 管理者による閲覧・削除可否
- Purviewの監査ログやDLPとの連携可否
2026年以降のUniversal Print関連ロードマップでは、監査ログ強化の項目も別途予定されていますが、Scan with Universal Printのスキャン操作がどの範囲で記録されるかは、プレビュー時に個別確認が必要です。
部門別の活用シーン
総務・受付
総務や受付では、来客書類、申請書、備品関連書類などを扱うことがあります。Scan with Universal Printを使えば、スキャン完了通知を受けて自分でダウンロードする流れに整理できる可能性があります。
ただし、共用MFPで複数人が使う場合は、通知先の誤りが大きなリスクになります。受付用の共有運用にするのか、担当者ごとの個人認証にするのかを決めてから展開してください。
経理
経理では、請求書、領収書、支払依頼書など、保存ルールが重要な文書を扱います。単にスキャンしてダウンロードできるだけでは不十分で、保存先、命名規則、証跡、承認フローとの接続が必要です。
Scan with Universal Printを評価する際は、電子帳票システムや会計システムへの取り込み方法を確認しましょう。ダウンロード後に手作業で保存する運用にすると、ファイル名の揺れや保存漏れが起きやすくなります。
人事・労務
人事では、本人確認書類、雇用契約書、評価資料など、特に機密性の高い文書を扱います。Scan with Universal Printを使う場合は、通知先が本人または担当者に限定されるか、ダウンロードリンクの有効期限やアクセス制御がどうなるかを必ず確認してください。
人事部門では、便利さよりも「誤配信しない」「不要に残さない」「監査できる」を優先するべきです。
教育機関・官公庁
教育機関や官公庁では、紙文書が多く、拠点や窓口ごとに複合機が分散していることがあります。ロードマップ上ではGCC、GCC High、DoDも対象クラウドに含まれていますが、各クラウドでの提供時期や詳細挙動は、実際のプレビュー・提供情報で確認する必要があります。(microsoft.com)
複数拠点に展開する場合は、1拠点で動いた設定を全拠点に横展開するのではなく、ネットワーク、認証、MFP機種、利用部門ごとの違いを確認してから展開しましょう。
開発者が確認すべきAPI・連携上の注意点
Scan with Universal Printを業務アプリと連携したい場合、現時点では過度な作り込みを避けるべきです。Universal PrintのGraph APIは、クラウド印刷インフラの管理や印刷ジョブ送信を支援するAPIとして説明されていますが、Scan with Universal Print専用のスキャン取得APIが公開されるかどうかは、このロードマップ情報だけでは判断できません。(Microsoft Learn)
開発チームは、プレビュー開始時に以下を確認してください。
| 確認項目 | 開発上の意味 |
|---|---|
| スキャンデータ取得API | 業務アプリへ自動取り込みできるか |
| 権限スコープ | ユーザー委任のみか、アプリケーション権限に対応するか |
| イベント通知 | スキャン完了をWebhookなどで検知できるか |
| ファイル形式 | PDF、画像、複数ページ、圧縮形式の扱い |
| 保持期間 | 後続処理が失敗した場合に再取得できるか |
| エラー処理 | MFP、クラウド、メール通知、ダウンロードのどこで失敗したか判別できるか |
| 監査 | アプリが取得した後の追跡責任をどう分担するか |
業務アプリ側では、既存のscan-to-folder監視処理をすぐ廃止せず、Scan with Universal Printを別入力チャネルとして扱う設計が現実的です。正式仕様が見えてから、共通の取り込み基盤へ統合する流れにすると、仕様変更による手戻りを抑えられます。
導入前チェックリスト
Scan with Universal Printの展開を検討する管理者は、以下のチェックリストを使って準備を進めてください。
| 分類 | チェック項目 | 優先度 |
|---|---|---|
| ロードマップ | プレビューとGA予定を管理台帳に登録したか | 高 |
| 機器 | スキャン対応MFPの機種、設置場所、利用部門を一覧化したか | 高 |
| 接続方式 | Universal Print readyか、コネクタ経由か、未登録かを確認したか | 高 |
| ライセンス | 利用者と管理者のUniversal Print対象ライセンスを確認したか | 高 |
| コネクタ | connector 2.0、.NET Framework 4.8以降、稼働OSを確認したか | 中 |
| ネットワーク | Universal Print関連エンドポイントへの接続を確認したか | 高 |
| 通知 | メール通知が迷惑メール・隔離・リンク保護で止まらないか確認したか | 高 |
| セキュリティ | 保存先、保持期間、アクセス権、監査ログの確認項目を定義したか | 高 |
| 業務 | 部門ごとのスキャン文書と保存ルールを整理したか | 高 |
| 教育 | ユーザー向け手順、FAQ、問い合わせ先を準備したか | 中 |
| 移行 | 既存のscan to email、scan to folderを残す期間を決めたか | 中 |
| 開発 | API・自動連携の前提をプレビューで検証する計画があるか | 中 |
まず取るべき行動
Scan with Universal Printは、Universal Printを単なるクラウド印刷基盤から、紙文書のデジタル化プロセスにも関わるサービスへ広げる可能性がある機能です。ただし、現時点で分かっている公式情報は、スキャン対応MFPで文書をスキャンし、準備完了メールを受け取ってダウンロードする、という概要と、プレビュー・一般提供の予定時期に限られます。(microsoft.com)
今すぐやるべきことは、既存スキャン運用の廃止ではありません。まず、MFPの棚卸し、Universal Print接続方式、ライセンス、コネクタ、ネットワーク、セキュリティ要件を整理してください。そのうえで、2026年12月のプレビューでは、少数部門で実機検証し、通知、権限、監査、保存、業務アプリ連携を確認します。
特に重要なのは、スキャンを「便利な入力機能」としてだけ見ないことです。スキャンは、紙に書かれた情報をクラウド上のファイルに変える業務です。誰が取り込み、誰が取得し、どこに保存し、いつ削除するのか。このルールを先に決めておけば、Scan with Universal Printを安全かつ実務に合う形で展開できます。

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