Rustでクロスプラットフォーム対応コードをテストする方法を徹底解説

Rustは、その安全性とパフォーマンスで注目されているプログラミング言語ですが、クロスプラットフォーム対応のソフトウェアを開発する際には、複数のOSで正しく動作することを確認する必要があります。Windows、Linux、macOSなど、異なる環境で同じコードが正常に機能するかテストすることは、バグの早期発見やユーザー体験の向上に不可欠です。本記事では、Rustでクロスプラットフォーム対応のコードをテストするための方法やテクニック、ツールの活用法について解説します。クロスプラットフォームテストの重要性から、実践的なセットアップ、トラブルシューティングまで、効果的なアプローチを学びましょう。

目次
  1. クロスプラットフォームテストの必要性
    1. 互換性の確保
    2. ユーザー体験の向上
    3. メンテナンスコストの削減
  2. Rustにおけるテストフレームワークの基本
    1. 標準テストフレームワーク
    2. 外部テストライブラリ
    3. 統合テスト
  3. クロスプラットフォームテストのセットアップ方法
    1. テスト環境の準備
    2. Cargoでテストの基本設定
    3. OSごとのテスト設定
    4. クロスコンパイルツールの活用
    5. テストの結果確認
  4. OSごとの依存関係の管理
    1. Cargoの`target`セクションを活用する
    2. 条件付きコンパイルで依存関係を使い分ける
    3. ビルドスクリプトで依存関係をカスタマイズ
    4. 依存関係のバージョン管理
    5. 依存関係のトラブルシューティング
  5. 条件付きコンパイルを活用したテスト
    1. 条件付きコンパイルの基本
    2. 複数条件の指定
    3. テスト関数内での条件分岐
    4. 条件付きコンパイルと依存関係
    5. 実際のテスト実行
    6. まとめ
  6. CI/CDを利用したクロスプラットフォームテスト
    1. GitHub Actionsを使ったクロスプラットフォームテスト
    2. GitLab CIを使ったクロスプラットフォームテスト
    3. CI/CDの利点
    4. トラブルシューティングのポイント
    5. まとめ
  7. トラブルシューティングとよくある問題
    1. 1. パスとファイルシステムの問題
    2. 2. 改行コードの違い
    3. 3. 環境変数の違い
    4. 4. 依存関係のビルドエラー
    5. 5. ネットワーク関連の問題
    6. 6. 権限とユーザーアクセスの問題
    7. 7. テストの並列実行による競合
    8. まとめ
  8. 実際の応用例とサンプルコード
    1. 1. クロスプラットフォーム対応関数の作成
    2. 2. 条件付きコンパイルを使用したOSごとのテスト
    3. 3. GitHub Actionsでのクロスプラットフォームテスト
    4. 4. 実行結果
    5. 5. エラー発生時の修正例
    6. まとめ
  9. まとめ

クロスプラットフォームテストの必要性


ソフトウェア開発において、複数のOSで動作するアプリケーションを作成する場合、クロスプラットフォームテストは欠かせません。RustはシステムレベルのプログラムやWebアプリケーションなど、幅広い用途に利用されているため、特定のOSでしか動作しないコードは、ユーザー基盤を狭めてしまいます。

互換性の確保


異なるOS(Windows、Linux、macOS)では、ファイルシステムのパス、ネットワークスタック、システムAPIなどの仕様が異なります。クロスプラットフォームテストを行うことで、すべての対象環境で互換性が保たれていることを確認できます。

ユーザー体験の向上


エンドユーザーは、どのOSであってもソフトウェアが同じように動作することを期待します。テストを通じて、環境依存の不具合やクラッシュを防ぎ、ユーザー体験を向上させます。

メンテナンスコストの削減


開発の初期段階からクロスプラットフォームテストを行うことで、後から大きな修正が必要になるリスクを軽減できます。バグを早期に発見することで、長期的なメンテナンスコストが削減されます。

Rustはその言語設計上、クロスプラットフォーム対応がしやすいですが、OSごとの細かな差異を無視することはできません。これらの差異を考慮し、テストを通じて問題を解決することが、安定したソフトウェア開発の鍵となります。

Rustにおけるテストフレームワークの基本


Rustでは、クロスプラットフォームなテストを行うための標準的なフレームワークや外部ライブラリが充実しています。これらを活用することで、効率よくテストを実施できます。

標準テストフレームワーク


Rustにはデフォルトでテスト機能が備わっており、Cargoを使用して簡単にテストを実行できます。

基本的なテストの書き方:

#[cfg(test)]
mod tests {
    #[test]
    fn it_works() {
        assert_eq!(2 + 2, 4);
    }
}

Cargoコマンドでテストを実行します。

cargo test

外部テストライブラリ


より高度なテストが必要な場合は、外部ライブラリを活用できます。代表的なライブラリは以下の通りです。

  • rstest
    パラメータ化テストやフィクスチャをサポートするライブラリ。
  #[cfg(test)]
  use rstest::rstest;

  #[rstest]
  #[case(2, 2, 4)]
  #[case(3, 3, 6)]
  fn add_test(#[case] a: i32, #[case] b: i32, #[case] expected: i32) {
      assert_eq!(a + b, expected);
  }
  • proptest
    プロパティベーステストを実現するライブラリ。大量のランダムな入力に対してテストを行います。
  #[cfg(test)]
  use proptest::prelude::*;

  proptest! {
      #[test]
      fn test_addition(a in 0..1000, b in 0..1000) {
          assert_eq!(a + b, b + a);
      }
  }

統合テスト


Rustでは、統合テスト用のディレクトリを作成し、複数のモジュールや関数が連携して正しく動作するかを確認します。

統合テストの例:
tests/integration_test.rs

use my_project::add;

#[test]
fn test_add_function() {
    assert_eq!(add(2, 3), 5);
}

これらのテストフレームワークを活用することで、クロスプラットフォーム対応のRustコードを効果的にテストし、品質の高いソフトウェアを開発できます。

クロスプラットフォームテストのセットアップ方法


Rustでクロスプラットフォーム対応のテストを行うためには、適切なセットアップが必要です。Cargoを活用することで、複数のOS向けに効率よくテストを実行できます。

テスト環境の準備


まず、Rustの開発環境が正しくインストールされていることを確認します。以下のコマンドでRustがインストールされているか確認できます。

rustc --version
cargo --version

最新のRustツールチェーンをインストールする場合:

rustup update

Cargoでテストの基本設定


Cargoプロジェクトを作成する場合は、以下のコマンドを実行します。

cargo new my_project
cd my_project

テスト用のモジュールをsrc/lib.rsに記述します。

pub fn add(a: i32, b: i32) -> i32 {
    a + b
}

#[cfg(test)]
mod tests {
    use super::*;

    #[test]
    fn test_add() {
        assert_eq!(add(2, 3), 5);
    }
}

テストを実行するには、以下のコマンドを使用します。

cargo test

OSごとのテスト設定


異なるOS向けにテストをカスタマイズする場合、cfgアトリビュートを使用します。

Windows向けのテスト:

#[cfg(target_os = "windows")]
#[test]
fn windows_specific_test() {
    assert_eq!(1 + 1, 2);
}

Linux向けのテスト:

#[cfg(target_os = "linux")]
#[test]
fn linux_specific_test() {
    assert_eq!(2 + 2, 4);
}

クロスコンパイルツールの活用


異なるOS向けにテストをビルドするには、crossというツールを利用するのが便利です。crossはDockerを使ってクロスコンパイルを簡単に実現します。

インストール方法:

cargo install cross

テストの実行:

cross test --target x86_64-unknown-linux-gnu

テストの結果確認


テスト結果はコンソールに出力されます。成功・失敗の結果を確認し、クロスプラットフォームで正しく動作しているか検証しましょう。

running 1 test
test tests::test_add ... ok

これらのステップを踏むことで、Rustのクロスプラットフォーム対応コードを効率的にテストし、安定したソフトウェアを開発できます。

OSごとの依存関係の管理


Rustでクロスプラットフォーム対応のコードを開発する際、OSごとの依存関係を適切に管理することが重要です。Windows、Linux、macOSなど、各OSには特有のライブラリやAPIが存在するため、依存関係を明確に分けて管理する方法を解説します。

Cargoの`target`セクションを活用する


CargoのCargo.tomlファイルで、特定のOS向けの依存関係を指定できます。

例:WindowsとLinux向けに異なる依存関係を指定する場合:

[dependencies]
# 共通の依存関係
serde = "1.0"

[target.’cfg(target_os = “windows”)’.dependencies]

winapi = “0.3”

[target.’cfg(target_os = “linux”)’.dependencies]

libc = “0.2”

この設定により、Windowsではwinapi、Linuxではlibcが依存関係として追加されます。

条件付きコンパイルで依存関係を使い分ける


ソースコード内で条件付きコンパイルを利用し、OSごとに異なる依存関係やコードを適用できます。

#[cfg(target_os = "windows")]
fn platform_specific_function() {
    println!("This is Windows specific code.");
}

#[cfg(target_os = "linux")]
fn platform_specific_function() {
    println!("This is Linux specific code.");
}

関数呼び出し時には、環境に応じたコードが自動的に適用されます。

ビルドスクリプトで依存関係をカスタマイズ


build.rsを使うと、ビルド時に依存関係を動的に設定できます。

例:OSごとにビルド時の設定を変更する:

// build.rs
fn main() {
    if cfg!(target_os = "windows") {
        println!("cargo:rustc-link-lib=dylib=windows_specific_lib");
    } else if cfg!(target_os = "linux") {
        println!("cargo:rustc-link-lib=dylib=linux_specific_lib");
    }
}

この設定により、ビルド時にOSに応じたライブラリがリンクされます。

依存関係のバージョン管理


クロスプラットフォーム開発では、依存関係のバージョンを固定しておくことで、環境の違いによる問題を軽減できます。

Cargo.lockの活用:

cargo generate-lockfile

これにより、すべての依存関係のバージョンが固定され、異なる環境でも同じバージョンでビルドが行えます。

依存関係のトラブルシューティング


依存関係の問題が発生した場合は、以下のコマンドで依存関係ツリーを確認しましょう。

cargo tree

これにより、依存関係の詳細や競合の有無を確認できます。

OSごとの依存関係を適切に管理することで、クロスプラットフォーム対応のRustコードを安定して開発でき、メンテナンスの負担も軽減されます。

条件付きコンパイルを活用したテスト


Rustでは、条件付きコンパイル(Conditional Compilation)を活用することで、OSごとに異なるテストやコードを実行できます。これにより、クロスプラットフォーム対応のテストが効率的に行えます。

条件付きコンパイルの基本


Rustのcfgアトリビュートを使うことで、特定の条件下でのみテストを実行できます。例えば、WindowsとLinuxで異なるテストを用意する場合、以下のように記述します。

Windows向けのテスト:

#[cfg(test)]
#[cfg(target_os = "windows")]
mod windows_tests {
    #[test]
    fn test_windows_functionality() {
        assert_eq!(1 + 1, 2);
    }
}

Linux向けのテスト:

#[cfg(test)]
#[cfg(target_os = "linux")]
mod linux_tests {
    #[test]
    fn test_linux_functionality() {
        assert_eq!(2 + 2, 4);
    }
}

複数条件の指定


条件を組み合わせて指定することも可能です。例えば、WindowsまたはmacOSでのみテストを実行したい場合:

#[cfg(test)]
#[cfg(any(target_os = "windows", target_os = "macos"))]
mod windows_macos_tests {
    #[test]
    fn test_common_for_windows_macos() {
        assert!(true);
    }
}

テスト関数内での条件分岐


テスト関数内で条件分岐を行い、特定のOS向けの処理を含めることもできます。

#[cfg(test)]
mod tests {
    #[test]
    fn test_cross_platform() {
        if cfg!(target_os = "windows") {
            println!("Running test on Windows");
        } else if cfg!(target_os = "linux") {
            println!("Running test on Linux");
        } else {
            println!("Running test on another OS");
        }

        assert_eq!(2 + 2, 4);
    }
}

条件付きコンパイルと依存関係


特定のOSでのみ依存関係を必要とする場合、Cargo.tomlで条件付き依存関係を指定します。

[target.'cfg(target_os = "windows")'.dependencies]
winapi = "0.3"

[target.’cfg(target_os = “linux”)’.dependencies]

libc = “0.2”

実際のテスト実行


テストを実行する際は、各OSで以下のコマンドを使います。

cargo test

クロスコンパイルでのテスト:
異なるOS向けにクロスコンパイルしてテストを実行する場合、crossツールを使います。

cross test --target x86_64-unknown-linux-gnu

まとめ


条件付きコンパイルを活用することで、OSごとに特化したテストを柔軟に実装できます。これにより、クロスプラットフォーム開発におけるテストカバレッジを高め、環境依存の問題を早期に発見・修正できるようになります。

CI/CDを利用したクロスプラットフォームテスト


CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)を導入することで、Rustのクロスプラットフォームテストを自動化し、開発効率と品質を向上させることができます。ここでは、代表的なCI/CDツールであるGitHub ActionsGitLab CIを使用したクロスプラットフォームテストの構築手順を解説します。

GitHub Actionsを使ったクロスプラットフォームテスト


GitHub Actionsを使用すれば、Windows、Linux、macOSでのテストを並列に自動実行できます。

GitHub Actionsの設定ファイル例:
.github/workflows/ci.yml

name: CI

on:
  push:
    branches: [main]
  pull_request:
    branches: [main]

jobs:
  test:
    name: Run tests on ${{ matrix.os }}
    runs-on: ${{ matrix.os }}
    strategy:
      matrix:
        os: [ubuntu-latest, windows-latest, macos-latest]

    steps:
      - name: Checkout repository
        uses: actions/checkout@v3

      - name: Install Rust
        uses: actions-rs/toolchain@v1
        with:
          toolchain: stable
          profile: minimal
          override: true

      - name: Run tests
        run: cargo test

ポイント:

  • strategy.matrixを使って、複数のOS(Linux、Windows、macOS)でテストを並行して実行します。
  • actions/checkoutでリポジトリをチェックアウトし、actions-rs/toolchainでRustをインストールします。

GitLab CIを使ったクロスプラットフォームテスト


GitLab CIでも、複数のOS向けにテストを自動実行できます。

GitLab CIの設定ファイル例:
.gitlab-ci.yml

stages:
  - test

test_linux:
  stage: test
  image: rust:latest
  script:
    - cargo test

test_windows:
  stage: test
  tags:
    - windows
  script:
    - cargo test

test_macos:
  stage: test
  tags:
    - macos
  script:
    - cargo test

ポイント:

  • 各OSごとにジョブを定義し、Linux用にはRust公式Dockerイメージを使用しています。
  • WindowsやmacOS向けには、Runnerが対応している環境が必要です。

CI/CDの利点

  1. 自動化による効率化:コードが変更されるたびに自動でテストが実行されるため、手動でのテスト作業が不要になります。
  2. 早期バグ検出:複数のOSでテストすることで、環境依存のバグを早期に発見できます。
  3. 品質保証:継続的にテストを行うことで、コードの品質を維持しやすくなります。
  4. ビルドの一貫性:CI/CDパイプラインにより、すべての開発者が同じテスト環境を利用できます。

トラブルシューティングのポイント

  • 依存関係の問題:各OSに特有のライブラリや依存関係がある場合、CI設定でインストールコマンドを追加します。
  • タイムアウト:テストが長時間かかる場合、CIツールのタイムアウト設定を確認・調整します。
  • エラーログの確認:失敗した場合は、ログを詳細に確認し、問題の原因を特定します。

まとめ


GitHub ActionsやGitLab CIを活用することで、Rustのクロスプラットフォームテストを自動化し、安定したソフトウェア開発が可能になります。CI/CDパイプラインを構築することで、開発者が安心してコードを変更でき、バグの早期発見と修正が実現できます。

トラブルシューティングとよくある問題


クロスプラットフォームテストを行う際には、OSごとの違いにより様々な問題が発生することがあります。ここでは、Rustでクロスプラットフォームテストを行う際に直面しやすい問題とその解決方法について解説します。

1. パスとファイルシステムの問題


WindowsとUnix系OS(LinuxやmacOS)ではファイルパスの区切り文字が異なります。

問題例:

let path = "/home/user/file.txt"; // Windowsでは無効なパス

解決方法:
std::path::Pathstd::path::PathBufを使用し、OSごとのパスの違いを吸収します。

use std::path::Path;

let path = Path::new("file.txt");

2. 改行コードの違い

  • Windows\r\n
  • Linux/macOS\n

問題例:

let content = "Hello, World!\n";
assert_eq!(content, "Hello, World!\r\n"); // 失敗

解決方法:
テスト内で改行コードを正規化するようにします。

let content = "Hello, World!\n".replace("\r\n", "\n");
assert_eq!(content, "Hello, World!\n");

3. 環境変数の違い


OSによって環境変数の設定やアクセス方法が異なることがあります。

問題例:

let home = std::env::var("HOME").unwrap(); // Windowsでは"HOME"が存在しない

解決方法:
OSごとに異なる環境変数を参照します。

let home = if cfg!(target_os = "windows") {
    std::env::var("USERPROFILE").unwrap()
} else {
    std::env::var("HOME").unwrap()
};

4. 依存関係のビルドエラー


外部ライブラリが特定のOSに依存している場合、ビルドエラーが発生することがあります。

解決方法:
Cargoのtargetセクションを使用し、OSごとに依存関係を分けます。

[target.'cfg(target_os = "windows")'.dependencies]
winapi = "0.3"

[target.’cfg(target_os = “linux”)’.dependencies]

libc = “0.2”

5. ネットワーク関連の問題


ファイアウォール設定やネットワークAPIの違いにより、OSごとに動作が異なる場合があります。

解決方法:
ネットワークテスト時にタイムアウトを設定したり、条件付きコンパイルでOSごとのコードを分けます。

#[cfg(target_os = "windows")]
fn windows_network_test() {
    // Windows向けのネットワークコード
}

#[cfg(target_os = "linux")]
fn linux_network_test() {
    // Linux向けのネットワークコード
}

6. 権限とユーザーアクセスの問題


WindowsとUnix系OSではファイルやディレクトリの権限設定が異なります。

解決方法:
テスト用のファイル作成時に権限を明示的に指定するか、条件付きで処理を分けます。

#[cfg(target_os = "unix")]
use std::os::unix::fs::PermissionsExt;

let mut file = File::create("test_file.txt").unwrap();
#[cfg(target_os = "unix")]
file.set_permissions(Permissions::from_mode(0o644)).unwrap();

7. テストの並列実行による競合


複数のテストが同時にファイルやリソースにアクセスすると競合が発生することがあります。

解決方法:

  • テストを順次実行するために、cargo test -- --test-threads=1を使用します。
  • 一時ディレクトリを使用し、各テストで独立したリソースを作成します。

まとめ


クロスプラットフォームテストでは、OSごとの違いを考慮しながら問題に対応することが重要です。条件付きコンパイルや環境変数、依存関係の管理を活用し、効率的にトラブルシューティングを行いましょう。これにより、すべてのプラットフォームで安定して動作するRustアプリケーションを開発できます。

実際の応用例とサンプルコード


ここでは、Rustでクロスプラットフォーム対応コードをテストする実践的な例とサンプルコードを紹介します。具体的に、OSごとに異なる動作を持つ関数をテストし、それをCI/CDで自動化する方法を解説します。

1. クロスプラットフォーム対応関数の作成


ファイルパスを取得する関数を例に、WindowsとUnix系OSで異なる処理を実装します。

src/lib.rs

use std::path::PathBuf;

pub fn get_home_directory() -> PathBuf {
    if cfg!(target_os = "windows") {
        let home = std::env::var("USERPROFILE").unwrap();
        PathBuf::from(home)
    } else {
        let home = std::env::var("HOME").unwrap();
        PathBuf::from(home)
    }
}

#[cfg(test)]
mod tests {
    use super::*;

    #[test]
    fn test_get_home_directory() {
        let home_dir = get_home_directory();
        assert!(home_dir.exists(), "Home directory does not exist");
    }
}

この関数は、WindowsではUSERPROFILE、Unix系OSではHOME環境変数を参照し、ホームディレクトリのパスを返します。

2. 条件付きコンパイルを使用したOSごとのテスト


OSごとに異なるパスや動作をテストする場合、条件付きコンパイルを使用します。

#[cfg(test)]
mod os_specific_tests {
    use super::*;
    use std::fs;

    #[cfg(target_os = "windows")]
    #[test]
    fn test_windows_home_directory() {
        let home_dir = get_home_directory();
        assert!(home_dir.join("Documents").exists(), "Windows Documents folder not found");
    }

    #[cfg(target_os = "linux")]
    #[test]
    fn test_linux_home_directory() {
        let home_dir = get_home_directory();
        assert!(home_dir.join("Desktop").exists(), "Linux Desktop folder not found");
    }
}

3. GitHub Actionsでのクロスプラットフォームテスト


GitHub Actionsを使用して、Windows、Linux、macOSでテストを自動化します。

.github/workflows/ci.yml

name: Cross-Platform Tests

on:
  push:
    branches: [main]
  pull_request:
    branches: [main]

jobs:
  test:
    name: Test on ${{ matrix.os }}
    runs-on: ${{ matrix.os }}
    strategy:
      matrix:
        os: [ubuntu-latest, windows-latest, macos-latest]

    steps:
      - name: Checkout repository
        uses: actions/checkout@v3

      - name: Install Rust
        uses: actions-rs/toolchain@v1
        with:
          toolchain: stable
          profile: minimal
          override: true

      - name: Run tests
        run: cargo test

4. 実行結果


GitHub Actionsでテストを実行すると、以下のように各OSでのテスト結果が表示されます。

Test on ubuntu-latest
  ✓ test_get_home_directory ... ok
  ✓ test_linux_home_directory ... ok

Test on windows-latest
  ✓ test_get_home_directory ... ok
  ✓ test_windows_home_directory ... ok

Test on macos-latest
  ✓ test_get_home_directory ... ok

5. エラー発生時の修正例


もしテストが失敗した場合、GitHub Actionsのログを確認し、エラーメッセージに基づいて修正します。

例:WindowsのUSERPROFILE環境変数が未設定の場合:

thread 'test_get_home_directory' panicked at 'called `Result::unwrap()` on an `Err` value: NotPresent'

修正方法:
エラー処理を追加します。

pub fn get_home_directory() -> PathBuf {
    if cfg!(target_os = "windows") {
        std::env::var("USERPROFILE").map_or_else(
            |_| PathBuf::from("C:\\"),
            PathBuf::from,
        )
    } else {
        std::env::var("HOME").map_or_else(
            |_| PathBuf::from("/"),
            PathBuf::from,
        )
    }
}

まとめ


この応用例では、Rustでクロスプラットフォーム対応のコードを作成し、条件付きコンパイルを利用したテストとCI/CDでの自動化を行いました。これにより、Windows、Linux、macOSすべてで安定した動作を保証し、環境依存の問題を効率的に解決できます。

まとめ


本記事では、Rustでクロスプラットフォーム対応コードをテストするための方法やテクニックについて解説しました。クロスプラットフォームテストの必要性から、Cargoや条件付きコンパイルを活用したテスト手法、CI/CDツール(GitHub ActionsやGitLab CI)を用いた自動化まで、実践的なステップを紹介しました。

OSごとの依存関係や環境変数の違いに対応し、トラブルシューティングのポイントを押さえることで、すべてのプラットフォームで安定して動作するRustアプリケーションの開発が可能になります。

クロスプラットフォームテストを導入することで、開発の効率と品質を向上させ、より信頼性の高いソフトウェアを提供できるようになります。Rustの強力なツール群とテスト環境を活用し、開発プロジェクトをさらに成功に導きましょう。

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目次
  1. クロスプラットフォームテストの必要性
    1. 互換性の確保
    2. ユーザー体験の向上
    3. メンテナンスコストの削減
  2. Rustにおけるテストフレームワークの基本
    1. 標準テストフレームワーク
    2. 外部テストライブラリ
    3. 統合テスト
  3. クロスプラットフォームテストのセットアップ方法
    1. テスト環境の準備
    2. Cargoでテストの基本設定
    3. OSごとのテスト設定
    4. クロスコンパイルツールの活用
    5. テストの結果確認
  4. OSごとの依存関係の管理
    1. Cargoの`target`セクションを活用する
    2. 条件付きコンパイルで依存関係を使い分ける
    3. ビルドスクリプトで依存関係をカスタマイズ
    4. 依存関係のバージョン管理
    5. 依存関係のトラブルシューティング
  5. 条件付きコンパイルを活用したテスト
    1. 条件付きコンパイルの基本
    2. 複数条件の指定
    3. テスト関数内での条件分岐
    4. 条件付きコンパイルと依存関係
    5. 実際のテスト実行
    6. まとめ
  6. CI/CDを利用したクロスプラットフォームテスト
    1. GitHub Actionsを使ったクロスプラットフォームテスト
    2. GitLab CIを使ったクロスプラットフォームテスト
    3. CI/CDの利点
    4. トラブルシューティングのポイント
    5. まとめ
  7. トラブルシューティングとよくある問題
    1. 1. パスとファイルシステムの問題
    2. 2. 改行コードの違い
    3. 3. 環境変数の違い
    4. 4. 依存関係のビルドエラー
    5. 5. ネットワーク関連の問題
    6. 6. 権限とユーザーアクセスの問題
    7. 7. テストの並列実行による競合
    8. まとめ
  8. 実際の応用例とサンプルコード
    1. 1. クロスプラットフォーム対応関数の作成
    2. 2. 条件付きコンパイルを使用したOSごとのテスト
    3. 3. GitHub Actionsでのクロスプラットフォームテスト
    4. 4. 実行結果
    5. 5. エラー発生時の修正例
    6. まとめ
  9. まとめ