Rustのベクターを徹底解説!動的拡張と容量管理の仕組みとは?

Rustのプログラミング言語において、ベクター(Vec)は最も頻繁に使用されるコレクションの一つです。その強みは、動的にサイズを変更できる柔軟性と、メモリ効率の高い設計にあります。データが増減しても効率的に処理を行うため、ベクターは多くのアプリケーションやアルゴリズムの基盤となります。本記事では、Rustのベクターに焦点を当て、その動的拡張の仕組みと容量管理について詳しく解説します。これを通じて、効率的なコーディングのための理解を深めていきましょう。

目次
  1. ベクターの基本概念と特性
    1. 動的サイズ変更
    2. 型安全性
    3. ヒープメモリの使用
    4. 標準的な操作メソッド
  2. 動的拡張の仕組み
    1. メモリ容量の二倍化戦略
    2. 再割り当てのコスト
    3. 容量の変更とメソッド
    4. 動的拡張の利点
  3. 容量管理のメカニズム
    1. 現在の容量と要素数の分離
    2. 容量の効率的な拡張
    3. 容量を手動で制御するメソッド
    4. ベクターの容量管理の利点
  4. ベクターのメモリ割り当てと再割り当て
    1. ヒープメモリの初期割り当て
    2. 再割り当てのプロセス
    3. 再割り当てが発生するタイミング
    4. 再割り当てのコストを最小化する方法
    5. メモリ割り当ての利点と注意点
  5. 実践例:ベクターを用いた動的配列の作成
    1. 基本的な動的配列の作成
    2. イテレーションを使用したデータ操作
    3. 条件に基づく動的な配列拡張
    4. ベクターのデータ型を利用した柔軟な動的配列
    5. 動的配列の活用例
  6. 容量の事前確保の利点と使用例
    1. 容量の事前確保の利点
    2. 事前確保のメソッド
    3. 容量事前確保の実践例
    4. 事前確保を活用すべき場面
    5. 容量の事前確保の注意点
  7. ベクター操作のパフォーマンス最適化
    1. パフォーマンス最適化の基本戦略
    2. コピーの削減
    3. パラレル処理の活用
    4. ソートの最適化
    5. ベクターの消去とリサイズ
    6. 最適化のまとめ
  8. ベクターの使用における注意点とトラブルシューティング
    1. 注意点
    2. トラブルシューティング
    3. まとめ
  9. 応用例:ベクターを活用したプログラム設計
    1. 1. ベクターを用いたスタックの実装
    2. 2. ベクターによるグラフの表現
    3. 3. 動的配列を用いたテキストバッファ
    4. 4. ユーザー定義型の管理
    5. 5. ベクターを活用した並列処理
    6. 応用の利点
  10. まとめ

ベクターの基本概念と特性


Rustのベクター(Vec)は、同じ型のデータを格納する動的配列です。初期サイズを指定する必要はなく、必要に応じて自動的にサイズを変更する柔軟性を持ちます。標準ライブラリの一部であるstd::vec::Vecとして提供され、以下のような特性を備えています。

動的サイズ変更


ベクターは動的にサイズを変更できるため、事前にサイズを固定する必要がありません。これにより、要素数が不明な状態でも柔軟に使用できます。

型安全性


ベクターに格納できるのは、宣言時に指定した型の要素のみです。この型安全性により、コンパイル時にエラーを検出でき、信頼性の高いコードを書くことが可能です。

ヒープメモリの使用


ベクターはヒープ領域にメモリを割り当てます。これにより、大量のデータを効率的に管理でき、スタックのメモリ制限を回避できます。

標準的な操作メソッド


Rustのベクターは、要素の追加(push)、削除(pop)、アクセス(get[])、反復処理(iter)など、直感的で使いやすいメソッドを豊富に提供しています。

ベクターはRustの効率的なデータ管理の基盤として非常に重要であり、初心者から上級者まで頻繁に利用されています。以降の記事では、これらの特性がどのように実現されているかを掘り下げていきます。

動的拡張の仕組み


Rustのベクター(Vec)は、データ量の増減に応じて自動的にサイズを調整する仕組みを持っています。この動的拡張の設計は、メモリ効率と処理速度のバランスを保つように工夫されています。

メモリ容量の二倍化戦略


ベクターの初期状態では、一定の容量を確保します。この容量がいっぱいになると、新しいメモリ領域を確保し、既存のデータをその領域にコピーします。この際、新しい容量は元の容量の約2倍になるように設計されています。これにより、頻繁な再割り当てを防ぎ、効率的な拡張が可能になります。

再割り当てのコスト


データをコピーする操作にはコストが伴いますが、この頻度を抑えるために、容量を倍増させる戦略が採用されています。このアプローチにより、拡張操作のオーバーヘッドは平均化され、長期的なパフォーマンスが向上します。

容量の変更とメソッド


Rustのベクターは、動的拡張を手動で制御するためのメソッドも提供しています。たとえば、Vec::reserveメソッドを使用して、必要な容量を事前に確保することが可能です。また、Vec::shrink_to_fitメソッドで未使用の容量を解放することもできます。

let mut vec = Vec::new();
vec.push(1); // 初期容量が割り当てられる
vec.push(2); // 容量がまだ十分
vec.push(3); // 容量が不足すると再割り当てが発生

動的拡張の利点

  • 柔軟性: 必要に応じてサイズを変更できるため、事前に容量を決定する必要がありません。
  • パフォーマンス: 効率的な二倍化戦略により、大規模データの操作にも耐えられます。

動的拡張はベクターを強力なデータ構造にする要因の一つであり、Rustの高いパフォーマンスを支える重要な要素です。

容量管理のメカニズム


Rustのベクター(Vec)は、データ量に応じて動的に容量を拡張するだけでなく、無駄なメモリ使用を最小限に抑えるための容量管理機能も備えています。このセクションでは、ベクターの容量管理の仕組みについて詳しく解説します。

現在の容量と要素数の分離


ベクターには2つの重要なプロパティがあります。

  • 現在の要素数(len): ベクターに現在格納されている要素の数。
  • 容量(capacity): 再割り当てを必要とせずに格納可能な最大要素数。

これらは必ずしも一致せず、ベクターはcapacitylenよりも大きい状態でメモリを管理します。これにより、頻繁な再割り当てを回避します。

let mut vec = Vec::with_capacity(10);
assert_eq!(vec.len(), 0); // 要素数
assert_eq!(vec.capacity(), 10); // 容量

容量の効率的な拡張


Rustのベクターは、容量が不足する場合に以下の手順で効率的に拡張を行います。

  1. 現在の容量の確認: 新しい要素を追加する際に、現在の容量をチェックします。
  2. 再割り当ての実行: 必要に応じて倍増した容量を持つ新しいメモリ領域を確保します。
  3. データのコピー: 既存のデータを新しい領域にコピーします。

容量を手動で制御するメソッド


Rustは容量管理を調整するための便利なメソッドを提供しています。

  • reserve: 必要な容量を事前に確保し、再割り当ての回数を減らします。
  • shrink_to_fit: 未使用の容量を解放し、使用量を減らします。
let mut vec = Vec::new();
vec.reserve(100); // 100個分の容量を確保
assert!(vec.capacity() >= 100);

vec.shrink_to_fit(); // 実際の要素数に合わせて容量を縮小

ベクターの容量管理の利点

  • メモリ効率: 必要な容量以上のメモリを使用せず、無駄を最小限に抑えます。
  • パフォーマンス向上: 再割り当ての回数を減らすことで処理速度を向上させます。
  • 柔軟性: プログラマーが容量を制御するためのメソッドを自由に活用できます。

ベクターの容量管理は、大量のデータを扱うアプリケーションで効率的なリソース利用を可能にする重要な機能です。次のセクションでは、メモリ割り当ての具体的なプロセスについて掘り下げます。

ベクターのメモリ割り当てと再割り当て


Rustのベクター(Vec)は、効率的なメモリ割り当てと再割り当ての仕組みを通じて、動的なデータ管理を実現しています。このセクションでは、メモリ割り当ての具体的なプロセスと、そのパフォーマンスへの影響について説明します。

ヒープメモリの初期割り当て


ベクターを作成すると、Rustは必要に応じてヒープメモリを割り当てます。初期状態ではメモリは割り当てられない場合もあり、最初の要素が追加されるタイミングで容量が確保されることが一般的です。

let mut vec: Vec<i32> = Vec::new(); // 初期段階ではメモリは割り当てられない
vec.push(1); // 最初の要素追加時にメモリが確保される

再割り当てのプロセス


ベクターの容量が不足した場合、Rustは以下の手順で再割り当てを行います。

  1. 新しい容量の計算: 現在の容量を基に新しい容量(通常は倍増)を計算します。
  2. 新しいメモリ領域の確保: ヒープに新しい領域を割り当てます。
  3. データの移動: 既存のデータを新しい領域にコピーします。
  4. 古い領域の解放: 古いメモリ領域を解放します。

このプロセスは計算コストがかかりますが、容量を倍増させる戦略により、再割り当ての頻度を最小限に抑えます。

再割り当てが発生するタイミング


再割り当ては以下のような状況で発生します。

  • 要素を追加する際に、現在の容量を超える場合。
  • 容量が明示的に拡張される場合(例: reserveメソッドの使用)。
let mut vec = Vec::with_capacity(2);
vec.push(1);
vec.push(2); // 容量が2に達する
vec.push(3); // 容量を再割り当て(4に倍増)

再割り当てのコストを最小化する方法


再割り当てのコストは以下の方法で軽減できます。

  • reserveメソッドの活用: 事前に容量を確保しておくことで再割り当てを減らします。
  • 適切な容量の見積もり: データサイズが事前にわかっている場合、初期容量を設定することでパフォーマンスが向上します。
let mut vec = Vec::with_capacity(100); // 事前に100個分の容量を確保

メモリ割り当ての利点と注意点

  • 利点: 必要なメモリのみを確保し、効率的な動的管理が可能。
  • 注意点: 再割り当てはコストが高いため、頻繁に発生しないような設計が推奨されます。

メモリ割り当てと再割り当ての仕組みを理解することで、ベクターを使用するコードのパフォーマンスを大幅に向上させることができます。次のセクションでは、実践的なコード例を通じて動的配列の作成方法を学びます。

実践例:ベクターを用いた動的配列の作成


Rustのベクター(Vec)は動的な配列を構築するための強力なツールです。このセクションでは、ベクターを使用して動的配列を作成し、データを操作する具体的なコード例を紹介します。

基本的な動的配列の作成


以下は、ベクターを使用して整数の動的配列を作成する例です。Vec::newを使用して空のベクターを生成し、データを動的に追加します。

fn main() {
    let mut numbers = Vec::new(); // 空のベクターを作成
    numbers.push(10); // 要素を追加
    numbers.push(20);
    numbers.push(30);

    println!("{:?}", numbers); // 出力: [10, 20, 30]
}

イテレーションを使用したデータ操作


ベクターは、要素の反復処理に便利なforループやイテレーターをサポートしています。

fn main() {
    let numbers = vec![1, 2, 3, 4, 5]; // 初期化済みベクター
    for num in &numbers {
        println!("{}", num); // 各要素を出力
    }
}

条件に基づく動的な配列拡張


以下は、条件に応じてデータを追加する例です。動的配列の利点を活かし、ユーザーの入力や計算結果に基づいて要素を増減します。

fn main() {
    let mut dynamic_array = Vec::new();

    for i in 0..10 {
        if i % 2 == 0 {
            dynamic_array.push(i); // 偶数のみを追加
        }
    }

    println!("{:?}", dynamic_array); // 出力: [0, 2, 4, 6, 8]
}

ベクターのデータ型を利用した柔軟な動的配列


ベクターは任意のデータ型を格納可能です。以下は構造体を格納する例です。

struct Point {
    x: i32,
    y: i32,
}

fn main() {
    let mut points = Vec::new();

    points.push(Point { x: 1, y: 2 });
    points.push(Point { x: 3, y: 4 });

    for point in &points {
        println!("Point: ({}, {})", point.x, point.y);
    }
}

動的配列の活用例


ベクターを用いた動的配列は、以下のような場面で役立ちます。

  • ユーザー入力の格納
  • データ分析結果の一時的な保存
  • グラフやツリー構造の動的構築

これらの例を通じて、Rustのベクターがどれだけ柔軟で使いやすいかが実感できたでしょう。次のセクションでは、容量の事前確保の利点と具体例を解説します。

容量の事前確保の利点と使用例


Rustのベクター(Vec)は、データを動的に拡張する仕組みを持っていますが、データの追加が頻繁に行われる場合、再割り当てがパフォーマンスのボトルネックになる可能性があります。これを解決する手法として、容量の事前確保があります。このセクションでは、容量の事前確保の利点とその使用例を解説します。

容量の事前確保の利点

  1. 再割り当ての回避: 必要な容量をあらかじめ確保することで、再割り当てを防ぎます。
  2. パフォーマンスの向上: 再割り当てに伴うメモリ割り当てやデータコピーのコストを削減します。
  3. 予測可能な動作: 容量不足によるパフォーマンス低下を防ぎ、コードの動作をより安定させます。

事前確保のメソッド


Rustのベクターは、Vec::with_capacityVec::reserveの2つの主要メソッドを提供しています。

  1. Vec::with_capacity
    初期化時に必要な容量を確保します。
   fn main() {
       let mut vec = Vec::with_capacity(100); // 初期容量を100に設定
       vec.push(1);
       println!("Capacity: {}", vec.capacity()); // 出力: Capacity: 100
   }
  1. Vec::reserve
    既存のベクターに追加容量を確保します。
   fn main() {
       let mut vec = Vec::new();
       vec.reserve(50); // 追加で50個分の容量を確保
       println!("Capacity: {}", vec.capacity()); // 出力: Capacity: 50
   }

容量事前確保の実践例


以下は、大量のデータを処理する際に容量を事前に確保する例です。

fn main() {
    let data = vec![1, 2, 3, 4, 5];
    let mut result = Vec::with_capacity(data.len()); // データ数に基づいて容量を確保

    for &item in &data {
        result.push(item * 2); // 計算結果を追加
    }

    println!("{:?}", result); // 出力: [2, 4, 6, 8, 10]
}

事前確保を活用すべき場面

  • 大規模データの処理: 数千、数百万件のデータを扱う場合。
  • リアルタイム処理: 再割り当てによるパフォーマンス低下が許容されない場合。
  • 計算済みのデータセット: サイズが予測可能な場合。

容量の事前確保の注意点

  • 必要以上の容量を確保するとメモリの無駄遣いになるため、適切なサイズを見積もることが重要です。
  • 小規模データでは、事前確保の効果が顕著でない場合もあります。

容量の事前確保を活用することで、Rustのベクターをさらに効率的に利用できます。次のセクションでは、ベクター操作のパフォーマンス最適化について掘り下げます。

ベクター操作のパフォーマンス最適化


Rustのベクター(Vec)は柔軟で便利なデータ構造ですが、大量のデータを操作する際にはパフォーマンスを意識する必要があります。このセクションでは、ベクター操作を最適化するためのベストプラクティスを解説します。

パフォーマンス最適化の基本戦略

  1. 容量の事前確保
    データの追加が頻繁に発生する場合、事前に十分な容量を確保することで再割り当てを回避できます。
   let mut vec = Vec::with_capacity(1000);
   for i in 0..1000 {
       vec.push(i);
   }
  1. スライスの活用
    ベクターの一部を操作する際にはスライスを活用することで、不要なコピーを避けることができます。
   let vec = vec![1, 2, 3, 4, 5];
   let slice = &vec[1..4]; // スライスを作成
   println!("{:?}", slice); // 出力: [2, 3, 4]
  1. イテレーターの利用
    ベクターのデータを操作する際には、反復処理にイテレーターを活用することで効率性を向上できます。
   let vec = vec![1, 2, 3, 4, 5];
   let sum: i32 = vec.iter().sum();
   println!("Sum: {}", sum); // 出力: Sum: 15

コピーの削減


ベクター操作では、不要なデータコピーを避けることが重要です。cloneto_vecの乱用はパフォーマンス低下の原因となります。

// 効率的な操作
let vec = vec![1, 2, 3, 4, 5];
let reference = &vec; // ベクターの参照を使用

パラレル処理の活用


大量のデータを操作する場合、パラレル処理によって処理時間を短縮できます。Rustではrayonクレートを使用して簡単に並列処理を実現できます。

use rayon::prelude::*;

fn main() {
    let vec: Vec<i32> = (0..1000000).collect();
    let sum: i32 = vec.par_iter().sum(); // 並列処理で合計を計算
    println!("Sum: {}", sum);
}

ソートの最適化


Rustのベクターには、効率的なソートメソッドsortが提供されていますが、大規模データではカスタムソートやパラレルソートを検討することも効果的です。

let mut vec = vec![5, 3, 1, 4, 2];
vec.sort();
println!("{:?}", vec); // 出力: [1, 2, 3, 4, 5]

ベクターの消去とリサイズ


ベクターの要素を削除する場合、インデックス指定による消去(remove)やクリア(clear)を効果的に利用できます。

let mut vec = vec![1, 2, 3, 4, 5];
vec.remove(2); // インデックス2の要素を削除
println!("{:?}", vec); // 出力: [1, 2, 4, 5]

最適化のまとめ

  • 容量の事前確保とスライスを活用してメモリ効率を向上。
  • イテレーターやパラレル処理で計算処理を高速化。
  • データコピーを最小化して無駄を削減。

これらの最適化手法を活用することで、ベクターの操作を効率化し、高いパフォーマンスを維持できます。次のセクションでは、ベクター使用時の注意点とトラブルシューティングについて解説します。

ベクターの使用における注意点とトラブルシューティング


Rustのベクター(Vec)は強力で柔軟なデータ構造ですが、使用する際には注意すべき点がいくつかあります。このセクションでは、ベクターを使用する際の一般的な問題と、その解決方法を解説します。

注意点

1. メモリ管理の影響


ベクターはヒープメモリを使用するため、大量のデータを扱う場合には注意が必要です。特に、メモリ不足がパフォーマンスに影響を与える可能性があります。
対策: 事前に容量を確保する(Vec::with_capacityVec::reserveを使用)。

2. インデックス操作のリスク


インデックスを使用して要素にアクセスする際、不正なインデックスを指定するとパニック(panic)が発生します。

let vec = vec![1, 2, 3];
let out_of_bounds = vec[3]; // パニックが発生

対策: getメソッドを使用し、オプション型で安全にアクセスする。

if let Some(value) = vec.get(3) {
    println!("{}", value);
} else {
    println!("Index out of bounds");
}

3. 可変ベクターの借用


ベクターを可変で借用している間は、他の操作が制限されます。この制約を破ろうとするとコンパイルエラーが発生します。

let mut vec = vec![1, 2, 3];
let first = &vec[0]; // 不変参照
vec.push(4); // 可変参照 → コンパイルエラー

対策: 借用のルールを理解し、必要に応じてベクターの操作順序を調整します。

4. ベクターの削除操作


要素を削除するとインデックスが変更されるため、ループ内での削除操作は注意が必要です。

let mut vec = vec![1, 2, 3, 4];
for i in 0..vec.len() {
    vec.remove(i); // インデックスがずれる → パニック
}

対策: 逆順で削除するか、retainを使用する。

vec.retain(|&x| x % 2 == 0); // 条件に合わない要素を削除

トラブルシューティング

1. 再割り当てによるパフォーマンス低下


問題: データの追加に伴い頻繁に再割り当てが発生する。
解決方法: Vec::reserveで容量を事前に確保する。

2. 借用に関するエラー


問題: ベクターを参照しながら変更しようとしてエラーが発生。
解決方法: 借用のルールに従い、操作順序を修正するか参照をスコープ外に移動。

3. パニックの発生


問題: インデックスが範囲外でアクセスしてパニックが発生。
解決方法: getメソッドを使用して範囲を確認する。

まとめ

  • ベクターの安全な操作にはメモリ管理と借用ルールの理解が必要です。
  • トラブルが発生した場合は、エラーメッセージを元にコードの設計を見直します。

これらの注意点を意識することで、Rustのベクターを効果的に利用し、エラーやパフォーマンス問題を回避することができます。次のセクションでは、ベクターを活用した応用例を解説します。

応用例:ベクターを活用したプログラム設計


Rustのベクター(Vec)は、その柔軟性とパフォーマンスから、多種多様なプログラム設計で活用されています。このセクションでは、ベクターを利用したいくつかの実践的な応用例を紹介します。

1. ベクターを用いたスタックの実装


ベクターはスタック構造の実装に適しています。以下はLIFO(後入れ先出し)のスタックを実装した例です。

struct Stack<T> {
    items: Vec<T>,
}

impl<T> Stack<T> {
    fn new() -> Self {
        Stack { items: Vec::new() }
    }

    fn push(&mut self, item: T) {
        self.items.push(item);
    }

    fn pop(&mut self) -> Option<T> {
        self.items.pop()
    }

    fn peek(&self) -> Option<&T> {
        self.items.last()
    }
}

fn main() {
    let mut stack = Stack::new();
    stack.push(1);
    stack.push(2);
    println!("{:?}", stack.pop()); // 出力: Some(2)
}

2. ベクターによるグラフの表現


ベクターは隣接リスト形式のグラフ表現にも利用できます。

fn main() {
    let mut graph: Vec<Vec<i32>> = vec![vec![]; 5]; // 5ノードのグラフ
    graph[0].push(1); // ノード0からノード1へのエッジ
    graph[1].push(2); // ノード1からノード2へのエッジ
    println!("{:?}", graph); // 出力: [[1], [2], [], [], []]
}

3. 動的配列を用いたテキストバッファ


ベクターはテキスト編集バッファとしても活用可能です。

fn main() {
    let mut buffer = Vec::new();
    buffer.push('H');
    buffer.push('e');
    buffer.push('l');
    buffer.push('l');
    buffer.push('o');
    println!("{}", buffer.iter().collect::<String>()); // 出力: Hello
}

4. ユーザー定義型の管理


ベクターを用いてユーザー定義型のオブジェクトを動的に管理できます。

struct User {
    id: u32,
    name: String,
}

fn main() {
    let mut users = Vec::new();
    users.push(User { id: 1, name: String::from("Alice") });
    users.push(User { id: 2, name: String::from("Bob") });

    for user in &users {
        println!("User {}: {}", user.id, user.name);
    }
}

5. ベクターを活用した並列処理


大量のデータを並列処理する場合、ベクターとrayonクレートの組み合わせが有効です。

use rayon::prelude::*;

fn main() {
    let vec: Vec<i32> = (1..=1000).collect();
    let sum: i32 = vec.par_iter().map(|&x| x * 2).sum();
    println!("Sum: {}", sum);
}

応用の利点

  • 簡単な実装: ベクターを使用することで複雑なデータ構造を簡単に実現可能。
  • 効率的な操作: 動的拡張や容量管理により、パフォーマンスを確保。
  • 汎用性: スタック、グラフ、バッファなど多様な用途で利用可能。

これらの応用例を参考に、Rustのベクターを効果的に活用したプログラムを設計してみてください。次のセクションでは記事のまとめを行います。

まとめ


本記事では、Rustのベクター(Vec)の動的拡張と容量管理の仕組みを中心に、その基本的な特性から応用例まで詳しく解説しました。ベクターは、動的配列としての柔軟性とメモリ管理の効率性を兼ね備え、多くのプログラムで重要な役割を果たします。

動的拡張や容量管理、最適化手法を理解し、再割り当てのコストやインデックス操作のリスクを適切に管理することで、パフォーマンスの高いアプリケーションを開発できます。また、応用例としてスタックの実装や並列処理の利用など、多くの実践的な利用シーンを紹介しました。

Rustのベクターを活用することで、効率的で柔軟なデータ管理を実現し、信頼性の高いプログラム設計が可能になります。この記事を参考に、より深いRustプログラミングのスキルを身につけてください。

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目次
  1. ベクターの基本概念と特性
    1. 動的サイズ変更
    2. 型安全性
    3. ヒープメモリの使用
    4. 標準的な操作メソッド
  2. 動的拡張の仕組み
    1. メモリ容量の二倍化戦略
    2. 再割り当てのコスト
    3. 容量の変更とメソッド
    4. 動的拡張の利点
  3. 容量管理のメカニズム
    1. 現在の容量と要素数の分離
    2. 容量の効率的な拡張
    3. 容量を手動で制御するメソッド
    4. ベクターの容量管理の利点
  4. ベクターのメモリ割り当てと再割り当て
    1. ヒープメモリの初期割り当て
    2. 再割り当てのプロセス
    3. 再割り当てが発生するタイミング
    4. 再割り当てのコストを最小化する方法
    5. メモリ割り当ての利点と注意点
  5. 実践例:ベクターを用いた動的配列の作成
    1. 基本的な動的配列の作成
    2. イテレーションを使用したデータ操作
    3. 条件に基づく動的な配列拡張
    4. ベクターのデータ型を利用した柔軟な動的配列
    5. 動的配列の活用例
  6. 容量の事前確保の利点と使用例
    1. 容量の事前確保の利点
    2. 事前確保のメソッド
    3. 容量事前確保の実践例
    4. 事前確保を活用すべき場面
    5. 容量の事前確保の注意点
  7. ベクター操作のパフォーマンス最適化
    1. パフォーマンス最適化の基本戦略
    2. コピーの削減
    3. パラレル処理の活用
    4. ソートの最適化
    5. ベクターの消去とリサイズ
    6. 最適化のまとめ
  8. ベクターの使用における注意点とトラブルシューティング
    1. 注意点
    2. トラブルシューティング
    3. まとめ
  9. 応用例:ベクターを活用したプログラム設計
    1. 1. ベクターを用いたスタックの実装
    2. 2. ベクターによるグラフの表現
    3. 3. 動的配列を用いたテキストバッファ
    4. 4. ユーザー定義型の管理
    5. 5. ベクターを活用した並列処理
    6. 応用の利点
  10. まとめ