Governing MCP tool calls in .NET with the Agent Governance Toolkitを整理:MCP実行を安全に統制するポイント

AIエージェントがMCP経由でファイル、API、データベースなどの外部ツールを呼び出すと、便利な一方で「どのツールを誰が使えるのか」「危険な入力や出力をどう止めるのか」が課題になります。2026年4月29日にMicrosoft .NET Blogで公開された「Governing MCP tool calls in .NET with the Agent Governance Toolkit」は、この課題に対して、.NETアプリケーション内でMCPツール呼び出しをポリシーで制御する方法を示した公式更新です。(Microsoft for Developers)

結論から言うと、今回の要点は「AIエージェントにツールを自由に使わせる」のではなく、実行前のポリシー判定、ツール定義のセキュリティスキャン、出力のサニタイズ、監査ログを組み合わせて、MCP利用を統制するという方向性です。Microsoft ecosystemの管理者、.NET開発者、AIエージェント基盤を検討するプロダクト担当者にとって、MCPを本番環境で扱う際の設計指針として読んでおきたい内容です。

目次

Governing MCP tool calls in .NET with the Agent Governance Toolkitで何が変わったか

今回の公式更新は、.NETにおけるMCPツール呼び出しの「実装例」を紹介するだけではありません。AIエージェントが外部ツールを使う時代に、アプリケーション側がどこで責任を持つべきかを明確にした点が重要です。

MCPは、AIエージェントと外部ツールやデータソースを接続するための仕組みです。たとえば、エージェントが「社内ドキュメントを検索する」「顧客データベースを問い合わせる」「APIを呼び出してチケットを作成する」といった処理を実行できます。便利ですが、ツール説明文やツール出力に悪意ある指示が含まれていた場合、モデルがそれを文脈として受け取り、意図しない動作につながる可能性があります。

Microsoftが紹介したAgent Governance Toolkit、以下AGTは、このリスクに対して、MCPツール呼び出しの前後にガバナンス層を置く考え方です。公式記事では、McpGateway、McpSecurityScanner、McpResponseSanitizer、GovernanceKernelといった要素が紹介され、ポリシー評価、入力・出力検査、監査イベント、OpenTelemetry連携を組み合わせる構成が示されています。(Microsoft for Developers)

重要なのは「LLMへのお願い」ではなく「アプリケーション側の強制」

AIエージェントの安全対策では、「機密情報を出さないでください」「危険な操作はしないでください」とプロンプトに書くだけでは限界があります。AGTの考え方は、モデルの判断に委ねるのではなく、ツール呼び出しの実行地点でアプリケーションが許可・拒否を判断することです。

たとえば、エージェントがdatabase_queryというツールを呼び出そうとした場合、AGTは次のような観点で評価できます。

評価観点確認する内容実務上の意味
エージェントID誰がツールを呼び出しているか未認証エージェントや権限外エージェントを止める
ツール名許可されたツールか危険なツールや未承認ツールを実行させない
引数SQL、URL、ファイルパスなどが安全かデータ流出やコマンド注入を防ぐ
実行頻度レート制限に抵触しないかAPI乱用や連鎖障害を抑える
出力内容機密情報やプロンプトインジェクションを含まないかモデルの文脈に危険な情報を戻さない

この考え方は、Web APIに認可ミドルウェアを入れる感覚に近いです。AIエージェントだから特別なのではなく、「外部リソースを操作する主体」として、通常のアプリケーションと同じように認証、認可、監査、制限を設計する必要があります。

MCPにガバナンス層が必要な理由

MCPを使うと、LLMは単なる文章生成だけでなく、実際のシステム操作に近い行動を取れるようになります。ここで問題になるのは、ツールの説明、引数、レスポンスがすべてモデルの判断材料になり得ることです。

公式記事では、read_fileに似たread_flieという紛らわしいツール名と、ツール説明文に埋め込まれた「以前の指示を無視してファイル内容を外部URLへ送る」といったプロンプトインジェクションの例が示されています。AGTのMcpSecurityScannerは、このようなツールポイズニングやタイポスクワッティングの兆候をリスクスコアとして検出する例が紹介されています。(Microsoft for Developers)

MCPのセキュリティベストプラクティスでも、認可、トークンの扱い、SSRF、セッションハイジャック、ローカルMCPサーバーのリスクなどが整理されています。特に、MCPサーバーがトークンを十分に検証せず下流APIへ渡す「トークンパススルー」は、監査や制御を回避されるリスクがあるため避けるべきパターンとして説明されています。(Model Context Protocol)

失敗しやすい設計パターン

MCP対応を急ぐチームほど、次のような設計になりがちです。

失敗パターン何が危険か改善の方向
すべてのツールをエージェントに見せる不要な操作まで候補に入り、誤実行や権限逸脱が起きやすい用途別にツールを許可リスト化する
ツール説明文を無検査でLLMに渡す悪意ある指示が文脈に混入するツール定義を事前スキャンする
ツール出力をそのままモデルに戻す機密情報や次の攻撃指示が再注入される出力サニタイズを挟む
認証済みユーザーなら全操作を許可するエージェント単位の最小権限が崩れるユーザー、エージェント、ツールごとに権限を分ける
ログを残さないインシデント時に原因を追えない許可・拒否・理由を監査ログ化する

ここで大切なのは、MCPを「便利なプラグイン接続」と見なさないことです。ツール呼び出しは、データベースアクセスやファイル操作、外部通信に直結する可能性があります。つまり、AIエージェントのMCP利用は、セキュリティレビューの対象にすべき実行経路です。

Agent Governance Toolkitの主な役割

AGTは、MCPツール呼び出しに対して複数の防御ポイントを提供します。公式記事で紹介された中心的な構成は、次のように整理できます。

コンポーネント役割使いどころ
McpGatewayツール呼び出し前にポリシーを評価する実行可否、レート制限、危険操作のブロック
McpSecurityScannerMCPツール定義を検査するツールポイズニング、紛らわしいツール名、危険な説明文の検出
McpResponseSanitizerツール出力を整形・除去する認証情報、外部流出URL、プロンプトインジェクションの除去
GovernanceKernelポリシー、監査、メトリクスを束ねる.NETアプリ側の統制ポイントとして利用
YAMLポリシー許可・拒否・制限ルールをコード外で管理するセキュリティルールのレビューや変更管理

公式記事では、Microsoft.AgentGovernanceパッケージを追加し、GovernanceKernelでポリシーファイルを読み込む流れが紹介されています。また、AGT .NETパッケージは記事執筆時点でMITライセンス、.NET 8.0以上を対象とし、例では外部サービスなしで利用できると説明されています。(Microsoft for Developers)

ポリシーをコードではなくYAMLで管理する意味

実務上、AGTで特に重要なのは「セキュリティ判断をif文としてアプリケーションの各所に散らさない」ことです。公式記事では、セキュリティルールはバージョン管理された設定ファイルに置くべきだという考え方が示されています。(Microsoft for Developers)

たとえば、次のようなルールをYAMLで管理できます。

version: "1.0"
default_action: deny
rules:
  - name: allow-read-tools
    condition: "tool_name in allowed_tools"
    action: allow
    priority: 10

  - name: block-dangerous
    condition: "tool_name in blocked_tools"
    action: deny
    priority: 100

  - name: rate-limit-api
    condition: "tool_name == 'http_request'"
    action: rate_limit
    limit: "100/minute"

この形式にすると、開発者だけでなく、セキュリティ担当者や運用担当者もレビューしやすくなります。変更履歴もGitで追跡できるため、「いつ、誰が、どのツールを許可したのか」を確認しやすくなります。

DenyOverridesを基本にすると事故を減らしやすい

公式記事では、複数のポリシーが同時に適用される場合の競合解決として、DenyOverrides、AllowOverrides、PriorityFirstMatch、MostSpecificWinsが紹介されています。(Microsoft for Developers)

本番環境で最初に採用するなら、基本はDenyOverridesが扱いやすいです。これは「どこかのルールで拒否されたら拒否を優先する」という考え方です。

方式向いている場面注意点
DenyOverridesセキュリティ優先の本番環境許可漏れがあると業務が止まるため事前テストが必要
AllowOverrides開発・検証環境、柔軟性重視拒否ルールが上書きされる可能性がある
PriorityFirstMatchルール優先度を厳密に管理できる場合優先度設計を誤ると意図しない許可が起きる
MostSpecificWinsグローバル、テナント、エージェント単位で階層管理する場合スコープ設計を明確にしないと運用が複雑になる

特に社内データや顧客情報を扱うMCPツールでは、「明示的に許可したものだけを使える」状態から始めるのが安全です。

.NET開発者が押さえるべき実装の流れ

公式記事の実装例を実務向けに整理すると、.NETアプリケーションにAGTを導入する流れは次のようになります。

手順作業内容チェックポイント
パッケージ追加Microsoft.AgentGovernanceを追加対象プロジェクトが.NET 8.0以上か確認
ポリシー作成YAMLで許可・拒否・制限を定義初期値はdenyを基本にする
GovernanceKernel設定ポリシーパスや検出機能を有効化競合解決方式を決める
ツール呼び出し前評価EvaluateToolCallで実行可否を判定拒否時はツールを実行しない
出力サニタイズレスポンスをモデルへ戻す前に検査機密情報や外部送信URLを除去
監査ログ連携許可・拒否・理由を記録インシデント調査に使える粒度にする
メトリクス監視OpenTelemetryなどへ連携ブロック数、レイテンシ、レート制限を監視

公式記事では、GovernanceKernelを作成し、PolicyPathsにpolicies/mcp.yamlを指定し、EnablePromptInjectionDetectionやEnableCircuitBreakerなどのオプションを有効化する例が示されています。ツール呼び出し時にはEvaluateToolCallで許可判定を行い、許可された場合のみMCPクライアントでツールを呼び出す構成です。(Microsoft for Developers)

using Microsoft.AgentGovernance;

var kernel = new GovernanceKernel(new GovernanceOptions
{
    PolicyPaths = new() { "policies/mcp.yaml" },
    ConflictStrategy = ConflictResolutionStrategy.DenyOverrides,
    EnableRings = true,
    EnablePromptInjectionDetection = true,
    EnableCircuitBreaker = true,
});

var result = kernel.EvaluateToolCall(
    agentId: "my-agent",
    toolName: "database_query",
    args: new() { ["query"] = "SELECT * FROM customers" }
);

if (!result.Allowed)
{
    throw new UnauthorizedAccessException($"Tool call blocked: {result.Reason}");
}

await mcpClient.CallTool("database_query", result.SanitizedArgs);

このコードで見るべきポイントは、MCPツールを直接呼び出していないことです。必ずEvaluateToolCallを通し、許可された場合だけ実行しています。ここを省略すると、ポリシーを定義していても実際の制御点が抜けてしまいます。

Microsoft.AgentGovernance.Extensions.ModelContextProtocolにも注目

AGTのGitHub上の.NET向けREADMEでは、Microsoft.AgentGovernance.Extensions.ModelContextProtocolにより、IMcpServerBuilderへガバナンスを追加できることが説明されています。これには、ポリシー評価、MCPツール定義のスキャン、ツール呼び出しガバナンス、レスポンスサニタイズが含まれます。(GitHub)

また、READMEではMCP governanceがデフォルトで認証済みエージェントIDを要求する説明もあります。匿名フォールバックを使う場合は、明示的にRequireAuthenticatedAgentId = falseを設定する必要があるとされています。(GitHub)

これは管理者にとって重要です。MCPツールを「誰が呼んだか」が曖昧なままでは、許可・拒否の判断も監査も弱くなります。エージェントIDを認証基盤やClaimsと結びつけ、ツール実行ログに残す設計が必要です。

管理者・セキュリティ担当者は何を確認すべきか

この更新は開発者向けに見えますが、管理者やセキュリティ担当者にも関係します。MCPはAIエージェントの接続先を増やすため、組織内では「どのMCPサーバーが存在するか」「どのツールが使えるか」「誰が使っているか」を管理する必要があります。

導入前チェックリスト

AGTやMCP governanceを検討する際は、まず次の項目を確認すると判断しやすくなります。

確認項目質問未対応の場合のリスク
MCPサーバー台帳利用中・検証中のMCPサーバーを把握しているかシャドーMCPサーバーが残る
ツール一覧各MCPサーバーが提供するツールを確認しているか危険な操作が見落とされる
権限設計エージェントごとに使えるツールを分けているか最小権限が守れない
ユーザー確認重要操作で人間の承認を挟むか誤操作や不正操作を止めにくい
ログ許可・拒否・実行結果を追えるか事故時の調査が困難になる
サニタイズツール出力の機密情報を除去しているかトークンや個人情報がモデル文脈に入る
レート制限API呼び出し回数を制限しているかコスト増加や外部サービス障害につながる

特に本番環境では、「MCPサーバーを追加できる人」「ツールを承認できる人」「ポリシーを変更できる人」を分けるのが理想です。小規模チームでも、少なくともポリシー変更はPull Requestでレビューする運用にしておくと、後から監査しやすくなります。

OpenTelemetry連携は後回しにしない

公式記事では、GovernanceKernelがポリシー判断、ブロックされたツール呼び出し、レート制限、評価レイテンシなどのメトリクスをSystem.Diagnostics.Metricsで出力できると説明されています。また、監査イベントを購読してログに出す例も紹介されています。(Microsoft for Developers)

AIエージェントの運用では、問題が起きた後に「なぜこのツールが呼ばれたのか」を追えないことが大きなリスクになります。ログは単なるデバッグ情報ではなく、ガバナンスそのものです。

最低限、次の情報は記録しておくべきです。

ログ項目例
エージェントIDdid:mesh:analyst-001
ツール名database_query
判定結果allow / deny / rate_limit
拒否理由blocked_toolsに該当、プロンプトインジェクション検出など
引数の概要機密情報はマスクして記録
実行時刻ISO形式など検索しやすい形式
ポリシーバージョンどのルールで判断されたか

ここで注意したいのは、ログにツール引数をそのまま残さないことです。SQL、APIキー、アクセストークン、個人情報が含まれる可能性があります。監査に必要な情報と、保存すべきでない情報を分け、Credential Redactionを前提に設計する必要があります。

開発現場での活用シーン

AGTによるMCP tool callsの統制は、AIエージェントを本格導入する企業だけの話ではありません。小さなPoCでも、早い段階でガバナンスの考え方を入れておくと、本番移行時の手戻りを減らせます。

社内ドキュメント検索エージェント

社内WikiやSharePoint、ナレッジベースを検索するエージェントでは、読み取り系ツールだけを許可し、書き込みや外部送信を禁止するポリシーが有効です。

判断基準はシンプルです。

  • search_docsやread_documentは許可する
  • delete_documentやupdate_aclは原則拒否する
  • 外部URLへ送信するツールは別途承認制にする
  • 検索結果に機密ラベルがある場合は出力を制限する

このケースでは、最初から「便利だから全ツールを見せる」のではなく、読み取り専用のエージェントとして設計するのが安全です。

データ分析エージェント

データベースに接続して分析するエージェントでは、SQLの中身が重要です。SELECTだけを許可し、UPDATE、DELETE、DROP、INSERTを拒否するだけでも、初期リスクを下げられます。

ただし、SELECT * FROM customersのように、読み取りであっても大量の個人情報を取得するクエリは危険です。ツール名だけでなく、引数の内容も検査する必要があります。

実務では、次のようなポリシーに分けると運用しやすくなります。

操作推奨対応
集計クエリ許可しやすい
個人情報列を含むクエリマスクまたは承認制
全件取得原則拒否
書き込み系SQL原則拒否
外部URLへの送信明示的な許可がある場合のみ

チケット作成・業務自動化エージェント

Jira、GitHub Issues、ServiceNowなどにチケットを作成するエージェントでは、書き込み操作が発生します。この場合は、完全自動化よりも「下書き作成までは自動、送信は人間が承認」という設計が現実的です。

AGTのポリシーでは、エージェントの信頼レベルやツール種別に応じて、読み取り、下書き作成、実送信を分けるとよいでしょう。信頼度の低いエージェントに本番の書き込み権限を与えないことがポイントです。

MCPセキュリティで特に注意したいリスク

公式記事では、AGTのMCP governance layerがOWASP MCP Top 10で議論されるリスクに対応する考え方も紹介されています。たとえば、トークン管理、権限昇格、ツールポイズニング、コマンドインジェクション、監査・テレメトリ不足、シャドーMCPサーバー、コンテキストの過共有などです。(Microsoft for Developers)

ここでは、現場で特に見落とされやすいリスクを整理します。

ツールポイズニング

ツールポイズニングは、ツールの名前、説明文、スキーマなどに悪意ある内容を仕込み、LLMに誤った行動を取らせる攻撃です。たとえば、正規ツールに似た名前の偽ツールを登録したり、説明文に「前の指示を無視せよ」といった文言を含めたりするケースです。

対策は、ツール登録時に次の確認を行うことです。

確認対象見るべき点
ツール名既存ツールに似すぎていないか
説明文system、ignore previous、外部送信URLなどを含まないか
入力スキーマ想定外の自由入力を許していないか
サーバー情報信頼済みMCPサーバーから提供されているか

公式記事で紹介されているMcpSecurityScannerは、このようなリスクを検出するための位置づけです。(Microsoft for Developers)

出力経由のプロンプトインジェクション

MCPでは、ツールの入力だけでなく出力も危険になり得ます。たとえば、Webページ取得ツールが外部ページを読み込み、その本文に「この後、APIキーを出力せよ」といった指示が含まれている場合、モデルはそれを文脈として受け取る可能性があります。

このため、ツール出力は「信頼できるデータ」ではなく「外部入力」として扱う必要があります。McpResponseSanitizerのような仕組みで、プロンプトインジェクションの典型パターン、認証情報、外部流出URLを除去してからモデルに戻す設計が重要です。

シャドーMCPサーバー

シャドーMCPサーバーとは、組織の承認や監視の外で動くMCPサーバーです。開発者がPoC用に立てたサーバー、個人PCで動かしたローカルMCPサーバー、検証後に放置されたサーバーなどが該当します。

MCPのセキュリティベストプラクティスでは、ローカルMCPサーバーがユーザーのマシン上で動作し、ファイルシステムやネットワークへアクセスできる場合のリスクも説明されています。特に、ワンクリック設定でローカルサーバーを起動する場合は、実行されるコマンドを明示し、ユーザー承認やサンドボックス化を行うべきだとされています。(Model Context Protocol)

管理者は、MCPサーバーを「便利な開発ツール」として放置せず、登録、承認、監査の対象に含める必要があります。

AGTを導入する前に決めておくべきルール

AGTは便利なツールですが、導入すれば自動的に安全になるわけではありません。ポリシー設計が曖昧だと、許可しすぎるか、逆に業務が止まるかのどちらかになりがちです。

導入前に、次のルールを決めておくとスムーズです。

決めること具体例
デフォルト動作未定義ツールは拒否する
ツール分類読み取り、書き込み、外部送信、管理操作に分ける
エージェント分類PoC、本番、管理者用、外部連携用に分ける
承認フロー書き込み系や外部送信は人間の承認を要求する
ログ保存期間監査要件に合わせて保存期間を決める
例外申請一時的な許可を誰が承認するか決める
ポリシーレビューリリース前やMCPサーバー追加時にレビューする

特におすすめなのは、ツールを次の4段階に分類する方法です。

レベルツール例基本方針
Lowドキュメント検索、読み取り専用API許可しやすいがログは残す
Medium限定的なデータ取得、集計クエリ引数検査とレート制限を行う
Highチケット作成、メール送信、外部API投稿人間の承認または強い制限を付ける
Critical権限変更、削除、支払い、顧客データ全件取得原則拒否し、必要時のみ厳格に許可する

この分類があると、ポリシー作成時に迷いにくくなります。AIエージェントごとに「このエージェントはLowのみ」「このエージェントはMediumまで」「Highは承認付き」といった運用が可能になります。

すぐに試す場合の進め方

PoCや検証環境で試す場合は、最初から複雑なポリシーを作る必要はありません。まずは、MCPツール呼び出しの前にAGTを挟み、「何が許可され、何が拒否されるか」を観察するところから始めるのが現実的です。

おすすめの進め方は次の通りです。

フェーズやること目標
検出フェーズツール一覧と呼び出しログを収集実際に使われるツールを把握する
制限フェーズ危険ツールを拒否し、読み取り系のみ許可重大リスクを先に下げる
サニタイズフェーズツール出力から機密情報や危険パターンを除去モデル文脈への再注入を防ぐ
監査フェーズ許可・拒否理由をログ化し、メトリクス化運用で追える状態にする
本番化フェーズエージェントID、承認、例外申請を整備継続運用できる形にする

最初のポリシーは、次のような考え方で十分です。

version: "1.0"
default_action: deny
rules:
  - name: allow-safe-read-tools
    condition: "tool_name in ['search_docs', 'read_document']"
    action: allow
    priority: 10

  - name: block-write-tools
    condition: "tool_name in ['delete_file', 'send_email', 'update_record']"
    action: deny
    priority: 100

  - name: limit-http-request
    condition: "tool_name == 'http_request'"
    action: rate_limit
    limit: "30/minute"

ここで重要なのは、default_action: denyです。未確認のツールを自動的に許可しないことで、MCPサーバー追加時の事故を減らせます。

今回の更新をどう評価すべきか

「Governing MCP tool calls in .NET with the Agent Governance Toolkit」は、.NETでAIエージェントを作る開発者にとって、MCP利用を本番レベルに近づけるための実践的な更新です。

注目点は、MCPの便利さを否定せず、リスクを前提にした実装パターンを示していることです。ポリシーベースのアクセス制御、ツール定義のスキャン、レスポンスサニタイズ、監査ログ、OpenTelemetry連携は、いずれも本番運用で必要になる要素です。

一方で、AGTは法令遵守や社内統制を自動的に保証するものではありません。公式記事でも、AGTはセキュリティやプライバシープログラムを支援する技術的制御であり、法的・規制上の遵守を単体で保証するものではないと説明されています。(Microsoft for Developers)

そのため、導入時は次の順番で考えると失敗しにくくなります。

  1. MCPで接続するツールとデータを棚卸しする
  2. 読み取り、書き込み、外部送信、管理操作に分類する
  3. 未定義ツールは拒否するポリシーから始める
  4. ツール定義とツール出力を検査する
  5. エージェントID、監査ログ、メトリクスを運用に組み込む

AIエージェントの価値は、実際の業務システムと接続して初めて大きくなります。ただし、その接続点こそがリスクになります。.NETでMCP対応エージェントを開発しているなら、AGTの考え方を早い段階で取り入れ、ツール呼び出しを「できるか」だけでなく「安全に許可できるか」まで設計することが、次の実装ステップになります。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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