Azure SQLの運用者が「What’s New in SQL Server 2022 – SQL Server」を読むときの結論は、SQL Server 2022の新機能をそのままAzure SQLへ一括適用するのではなく、Azure SQL DatabaseとAzure SQL Managed Instanceで影響範囲を分けて確認することです。特に確認すべきなのは、Query Storeとインテリジェントなクエリ処理、Managed Instance link、セキュリティ関連機能、互換性レベル、ドライバー更新、既知の問題です。SQL Server 2022は開発言語、データ型、オンプレミス/クラウド環境、OSの選択肢を広げるリリースとして位置付けられていますが、Azure SQLではPaaSとして自動管理される部分と、利用者が設定を確認すべき部分が分かれます。(Microsoft Learn)
Azure SQLで見る「What’s New in SQL Server 2022 – SQL Server」の要点
Microsoft Learnの「What’s New in SQL Server 2022」は、SQL Server 2022(16.x)の新機能と機能強化をまとめた公式ページです。主なカテゴリは、分析、可用性、セキュリティ、パフォーマンス、Query Storeとインテリジェントなクエリ処理、管理、プラットフォーム、T-SQL言語機能です。(Microsoft Learn)
Azure SQLで読む場合は、次のように整理すると実務判断に落とし込みやすくなります。
| 確認領域 | Azure SQLでの見方 | 主な確認ポイント |
|---|---|---|
| Query Store / IQP | Azure SQL DatabaseとAzure SQL Managed Instanceの性能改善・チューニングに直結 | Query Storeが有効か、読み書きモードか、互換性レベルが適切か |
| Managed Instance link | 主にAzure SQL Managed Instanceへの移行・DRで重要 | SQL Server 2022との双方向フェールオーバー、更新ポリシー、ネットワーク要件 |
| セキュリティ | Defender、Microsoft Entra認証、Ledger、Always Encryptedなどを確認 | 認証方式、監査、暗号化、最小権限、ドライバーの暗号化設定 |
| パフォーマンス | 一部はAzure SQL Database / Managed Instanceにも含まれる | ログ拡張、VLF、Query Store、待機統計、スケール設定 |
| 開発者向けT-SQL | 新しい関数や構文でSQLを簡潔にできる | 互換性レベル、対象サービスでのサポート、既存SQLへの影響 |
| 移行・展開 | SQL ServerからAzure SQLへの移行方式に影響 | Azure SQL DatabaseかManaged Instanceか、BACPAC・DMS・MI linkの選択 |
重要なのは、Azure SQL DatabaseとAzure SQL Managed Instanceは同じAzure SQLファミリーでも、サポートされる機能や管理できる範囲が異なる点です。Azure SQL DatabaseとSQL Managed InstanceはSQL Serverの最新安定版と共通のコードベースを持ちますが、PaaSでは高可用性や管理面に影響する一部機能が制限または別方式で提供されます。(Microsoft Learn)
まず押さえるべき対象者と影響範囲
この記事の内容を優先して確認すべきなのは、次のような立場の人です。
| 対象者 | 影響を受けやすい作業 | 優先して見るべき項目 |
|---|---|---|
| DBA / インフラ管理者 | 移行、バックアップ、DR、監視、メンテナンス | Managed Instance link、更新ポリシー、Query Store、既知の問題 |
| アプリ開発者 | SQLの書き換え、接続設定、性能改善 | T-SQL新機能、Query Store hints、ドライバー、暗号化設定 |
| セキュリティ担当者 | 認証、監査、権限、脆弱性管理 | Microsoft Entra認証、Defender、Ledger、Always Encrypted |
| クラウドアーキテクト | Azure SQL Database / Managed Instanceの選定 | 機能比較、移行方式、可用性、スケール、コスト |
Azure SQL Databaseは、パッチ適用、バックアップ、基盤監視などをMicrosoftが管理するフルマネージドPaaSです。SQL Serverの新機能はAzure SQL Databaseへ先行して提供されることもあり、利用者はインフラ管理よりもアプリケーション、性能、スキーマ、監視に集中できます。(Microsoft Learn)
一方、Azure SQL Managed Instanceは、SQL Serverとの互換性を重視したPaaSです。SQL Server Agent、クロスデータベースクエリ、ネイティブバックアップ/復元など、SQL Serverに近い機能を使いたい場合に選びやすいサービスです。Microsoft Learnでは、Azure SQL Managed Instanceは最新のSQL Server Database Engineに近い互換性を持ち、既存SQL Serverアプリケーションのリフト&シフトに向くと説明されています。(Microsoft Learn)
Query Storeとインテリジェントなクエリ処理は最優先で確認する
SQL Server 2022の新機能で、Azure SQL利用者が最も実務的に確認すべきなのがQuery Storeとインテリジェントなクエリ処理です。
SQL Server 2022では、Query Store hints、メモリ許可フィードバックの永続化、パラメーター依存プラン最適化、DOPフィードバック、カーディナリティ推定フィードバックなどが整理されています。Query Store hintsは、アプリケーションコードを変更せずにQuery Store経由でクエリプランを調整できる機能で、以前からAzure SQL DatabaseとAzure SQL Managed Instanceで利用でき、SQL Server 2022にも導入されています。(Microsoft Learn)
管理者が確認すべきこと
Query Store関連の機能は「存在する」だけでは不十分です。実際に効果を得るには、対象データベースでQuery Storeが有効になっているか、読み書き可能か、互換性レベルが適切かを確認する必要があります。
SELECT
name,
compatibility_level
FROM sys.databases
WHERE name = DB_NAME();
SELECT
desired_state_desc,
actual_state_desc,
readonly_reason,
current_storage_size_mb,
max_storage_size_mb
FROM sys.database_query_store_options;
特に移行案件では、既存SQL Serverから復元・アップグレードされたデータベースが以前のQuery Store設定を保持する場合があります。Microsoft Learnでも、復元されたデータベースやインプレースアップグレードされたデータベースは以前のQuery Store設定を保持すると説明されています。(Microsoft Learn)
つまり、Azure SQLへ移行したあとに「SQL Server 2022相当の最適化が効くはず」と考えるのではなく、移行後にQuery Storeの状態を明示的に確認することが重要です。
開発者が得られるメリット
開発者にとってのメリットは、SQLを大きく書き換えずに性能問題へ対処できる選択肢が増えることです。
たとえば、特定のクエリだけ実行プランが不安定になる場合、従来はアプリケーション側SQLの変更、ヒント句の追加、インデックス変更などが必要でした。Query Store hintsを使える環境では、アプリケーションコードに手を入れずにクエリ単位でヒントを適用できるため、緊急対応や段階的な改善に向いています。
ただし、Query Store hintsは万能ではありません。根本原因が統計情報の古さ、インデックス不足、パラメーター設計、過剰な並列処理、データ分布の偏りにある場合は、Query Store hintsだけで恒久対応にしないほうが安全です。まずQuery Storeで実行回数、CPU、Duration、待機統計を確認し、必要に応じてスキーマ設計やSQL設計を見直します。
Azure SQL DatabaseとManaged Instanceで異なる確認ポイント
Azure SQL DatabaseとAzure SQL Managed Instanceは、どちらもAzure SQLファミリーですが、SQL Server 2022の新機能を確認するときの観点が違います。
| 項目 | Azure SQL Database | Azure SQL Managed Instance |
|---|---|---|
| SQL Server互換性 | 多くのSQL機能をサポートするが、インスタンス管理機能は制限あり | SQL Serverに近い互換性を重視 |
| データベース互換性レベル | 100〜160 | 100〜160 |
| Query Store | サポート | サポート |
| Managed Instance link | 対象外 | 対象 |
| SQL Server Agent | なし。Elastic Jobsなどを検討 | あり |
| ネイティブRESTORE | なし。自動バックアップやBACPACなどを利用 | Azure Blob Storage上のバックアップから復元可能 |
| Azure Synapse Link for SQL | サポート | 機能比較上は対象外 |
| サーバーレベル機能 | 制限あり | SQL Serverに近いが差分あり |
Azure SQL DatabaseとAzure SQL Managed Instanceの機能比較では、Query Store、Ledger、Microsoft Entra認証、Columnstore indexesなどは両方で利用可能とされています。一方、Managed Instance linkはAzure SQL Managed Instance側の機能であり、Azure SQL Databaseにはありません。(Microsoft Learn)
この違いを理解せずに設計すると、たとえば「SQL ServerからAzure SQLへ移行する」とだけ決めてしまい、あとからSQL Server Agent、クロスデータベース処理、リンクサーバー、復元方式、DR要件で手戻りが発生します。
Managed Instance linkは移行・災害対策の中心機能
SQL Server 2022とAzure SQL Managed Instanceを組み合わせる場合、Managed Instance linkは重要な確認項目です。
Managed Instance linkは、SQL ServerとAzure SQL Managed Instanceの間でほぼリアルタイムにデータをレプリケートする機能です。読み取り専用ワークロードのAzure側オフロード、分析処理、移行、災害対策などに利用できます。SQL Server 2022以降では、オンラインDRやSQL Serverへのフェールバック、Azure SQL Managed InstanceからSQL Serverへのリンク構成も可能です。(Microsoft Learn)
SQL Server 2022で変わる実務上の意味
SQL Server 2016〜2019では、Managed Instance linkは基本的にSQL ServerからAzure SQL Managed Instanceへの一方向レプリケーションとして扱います。一方、SQL Server 2022では、条件を満たせば双方向フェールオーバーやフェールバックを含むDR設計が可能になります。(Microsoft Learn)
移行担当者にとっては、次の判断が重要です。
| 判断項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 移行先 | Azure SQL Databaseで足りるか、Managed Instanceが必要か |
| ダウンタイム許容 | BACPACやDMSでよいか、Managed Instance linkが必要か |
| DR要件 | Azureへ片方向でよいか、SQL Serverへフェールバックが必要か |
| SQL Serverバージョン | SQL Server 2022以降か、2016〜2019か |
| 更新ポリシー | SQL Server 2022 update policyが必要か、Always-up-to-dateでよいか |
| ネットワーク | VPN、ExpressRoute、VNet、証明書、エンドポイント要件を満たすか |
Managed Instance linkには制限もあります。たとえば、1つのリンクは1データベース単位で構成され、システムデータベース、サーバーレベルオブジェクト、SQL Server Agentジョブ、ログインはレプリケートされません。また、複数ログファイルを持つデータベースや、Managed Instance側でサポートされない機能を使うデータベースは注意が必要です。(Microsoft Learn)
Azure SQL Managed Instanceの更新ポリシーは展開前に決める
Azure SQL Managed Instanceでは、更新ポリシーが重要です。Microsoft Learnでは、Azure SQL Managed Instanceの更新ポリシーとして、SQL Server 2025 update policy、SQL Server 2022 update policy、Always-up-to-date update policyが説明されています。SQL Server 2022 update policyは、既存および新規のManaged Instanceで既定の更新ポリシーです。(Microsoft Learn)
特に注意すべきなのは、Always-up-to-date update policyへ変更すると、SQL Server 2022 update policyへ戻せない点です。最新機能を早く使える一方で、SQL Server 2022への復元や、SQL Server 2022との双方向フェールオーバーなど、SQL Server 2022とのデータベース形式の整合性に依存する利点を失う可能性があります。(Microsoft Learn)
更新ポリシーの確認例
Azure SQL Managed Instanceでは、T-SQLで現在の更新種別を確認できます。
SELECT SERVERPROPERTY('ProductUpdateType') AS product_update_type;
CUはSQL Server 2022またはSQL Server 2025の累積更新プログラムベースの更新ポリシー、ContinuousはAlways-up-to-date update policyを示します。実際のポリシー判断では、Azureポータルの「Updates and maintenance」も併せて確認します。(Microsoft Learn)
本番環境でSQL Server 2022とのフェールバックや復元が要件に入る場合は、安易にAlways-up-to-dateへ変更しないほうが安全です。逆に、開発環境や検証環境ではAlways-up-to-dateを使い、新機能の評価を先行させる構成も現実的です。
セキュリティ関連の変更は接続方式まで確認する
SQL Server 2022の新機能では、Microsoft Defender for Cloud連携、Microsoft Purview連携、Ledger、Microsoft Entra認証、Always Encrypted with secure enclaves、細かな権限管理、TDS 8.0などがセキュリティ領域の重要項目です。(Microsoft Learn)
Azure SQLでは、次の観点で確認します。
| 項目 | 確認すべき内容 |
|---|---|
| Microsoft Entra認証 | SQL認証だけに依存していないか。管理者、アプリ、運用者の認証方式を分けているか |
| Defender for SQL | 脆弱性評価、脅威検出、アラート運用が設計されているか |
| 監査 | 監査ログの保存先、保持期間、検知ルール、調査フローがあるか |
| Always Encrypted | 暗号化対象列、キー管理、アプリ側ドライバー対応を確認しているか |
| Ledger | 改ざん検知が必要な監査テーブルや証跡に使うべきか |
| 接続暗号化 | ドライバー、接続文字列、証明書検証、TLS要件を確認しているか |
SQL Server 2022のリリースノートには、Encrypt=Strictを使う接続でRPC呼び出しが失敗する可能性がある既知の問題も記載されています。これはRTMに関する既知の問題ですが、接続暗号化を強化する場合は、SQL Server側のビルド、クライアントドライバー、接続文字列、証明書検証をセットで確認するべきです。(Microsoft Learn)
古いSQL Server Native Client前提のアプリは見直す
SQL Server 2022では、SQL Server Native Client(SNAC)が同梱されません。SQL Server Native Clientや旧Microsoft OLE DB Provider for SQL Serverは、新規開発では推奨されておらず、Microsoft ODBC Driver for SQL ServerやMicrosoft OLE DB Driver for SQL Serverの利用が案内されています。(Microsoft Learn)
Azure SQL移行で見落としやすいのが、データベース本体ではなくアプリケーション接続部品です。
次のような環境では、事前に棚卸しします。
| よくある接続方式 | 確認ポイント |
|---|---|
| ODBC接続 | Microsoft ODBC Driver for SQL Serverのバージョン |
| OLE DB接続 | MSOLEDBSQLを利用しているか |
| 古い.NET Frameworkアプリ | 接続文字列の暗号化設定、TLS対応 |
| Access / Excel / VBA連携 | 参照しているドライバー名、32bit/64bit差分 |
| レガシーバッチ | sqlcmd、PowerShell、SSIS、ODBC DSNの設定 |
特にAzure SQLでは暗号化接続、証明書検証、ファイアウォール、Private Link、Microsoft Entra認証など、接続周りの条件がオンプレミスSQL Serverより厳密になりがちです。SQLだけを移行しても、古いドライバーが原因で本番切り替え時に接続できないケースがあります。
T-SQL新機能は「読みやすいSQL」に効く
SQL Server 2022では、DATETRUNC、GREATEST、LEAST、IS [NOT] DISTINCT FROM、GENERATE_SERIES、DATE_BUCKET、JSON_OBJECT、JSON_ARRAY、STRING_SPLITのordinal拡張、ビット操作関数など、開発者にとって使いやすいT-SQL機能が追加されています。(Microsoft Learn)
月別集計を簡潔にする
SELECT
DATETRUNC(month, OrderDate) AS month_start,
COUNT(*) AS order_count,
SUM(Amount) AS total_amount
FROM dbo.Orders
GROUP BY DATETRUNC(month, OrderDate)
ORDER BY month_start;
従来はDATEFROMPARTSやCONVERTを組み合わせて月初日を作るケースがありました。DATETRUNCを使うと、意図が読みやすくなります。
NULLを含む比較を安全に書く
SELECT *
FROM dbo.Customer
WHERE OptionalCode IS NOT DISTINCT FROM @OptionalCode;
=ではNULL同士を一致として扱えません。IS NOT DISTINCT FROMを使うと、NULLを含む比較ロジックを明確に書けます。
連番テーブルを使わず日付リストを作る
DECLARE @start date = '2026-01-01';
DECLARE @end date = '2026-01-31';
SELECT
DATEADD(day, value, @start) AS target_date
FROM GENERATE_SERIES(0, DATEDIFF(day, @start, @end));
カレンダーテーブルを作らずに短期間の日付リストを作れるため、欠損日を補う集計や検証SQLで役立ちます。
ただし、本番SQLへ導入する前に、対象のAzure SQLサービス、データベース互換性レベル、アプリケーションのSQL生成ライブラリ、ORMの対応状況を確認してください。新しい構文を使うと、古い検証環境や移行元SQL Serverでは実行できない場合があります。
パフォーマンス改善は「自動で効く部分」と「監視が必要な部分」に分ける
SQL Server 2022のパフォーマンス関連では、システムページラッチの競合改善、バッファープールスキャン、列ストアインデックス、VLFアルゴリズム、トランザクションログ拡張時のファイル瞬時初期化などが説明されています。一部の変更はAzure SQL DatabaseやAzure SQL Managed Instanceにも含まれています。(Microsoft Learn)
Azure SQLで重要なのは、これらを「何もしなくてもすべて解決する」と考えないことです。
| 改善領域 | 利用者が確認すべきこと |
|---|---|
| Query Store / IQP | 実行プランの変化、回帰、Query Store容量 |
| ログ書き込み | トランザクションログの増加、サービス階層のログスループット |
| tempdb負荷 | 一時テーブル、ソート、ハッシュ、バージョンストア |
| 列ストア | フィルター条件、データ型、セグメント除去、圧縮効果 |
| メモリ | メモリ許可、並列度、待機統計、スケール設定 |
| Azure SQL Database Hyperscale | 名前付きレプリカ、ログ生成率、フェールオーバー時の挙動 |
たとえば、Query StoreやDOPフィードバックがあるからといって、過剰な並列処理や不適切なインデックス設計を放置してよいわけではありません。Azure SQLではサービス階層の変更で性能を上げられますが、クエリ設計やインデックス設計の問題をスケールアップだけで隠すと、コストが増え続けます。
既知の問題はリリースノートとセットで確認する
「What’s New in SQL Server 2022」は新機能の概要を把握するページです。実際に展開する前には、SQL Server 2022リリースノートと累積更新プログラムの情報も確認する必要があります。
リリースノートには、SQL Server 2022の要件、制限事項、既知の問題がまとめられています。たとえば、SQL Server 2022 CU24およびCU24 GDRでは、MSDASQLを使うリンクサーバークエリがエラー7416で失敗する可能性がある既知の問題が記載されています。(Microsoft Learn)
また、Azure SQL Managed Instanceから生成されたSQL Server 2022データベースで、インデックス削除後にDBCC CHECKDBが不整合を報告する可能性がある既知の問題も記載されています。これは、Azure SQL Managed InstanceからSQL Server 2022へ戻す、または復元する設計では無視できません。(Microsoft Learn)
本番展開前の確認順序は、次のようにすると漏れを減らせます。
| 順序 | 確認内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 1 | SQL Server 2022新機能ページ | 追加機能と全体像を把握 |
| 2 | Azure SQLの機能比較 | Azure SQL Database / Managed Instanceで使えるか確認 |
| 3 | Azure SQLのWhat’s new | Azure側の最新提供状況を確認 |
| 4 | SQL Server 2022リリースノート | 既知の問題、制限、回避策を確認 |
| 5 | 最新ビルド情報 | CU / GDR適用状況を確認 |
| 6 | 検証環境 | 実データ、実アプリ、実ドライバーで確認 |
SQL Server 2022の最新更新情報では、SQL Server 2022のGDR、CU、CU+GDRのビルド番号が一覧化されています。2026年5月時点では、SQL Server 2022のCU24+GDRやGDRの情報も掲載されているため、移行元SQL Serverのビルド確認に使えます。(Microsoft Learn)
Azure SQLへ展開する前のチェックリスト
Azure SQL DatabaseまたはAzure SQL Managed Instanceへ展開する前に、最低限次の項目を確認します。
| チェック項目 | 確認方法 | 判断基準 |
|---|---|---|
| 対象サービス | Azure SQL DatabaseかManaged Instanceか | SQL Server Agent、復元、リンク、クロスDB要件で判断 |
| 互換性レベル | sys.databases | 新機能を使うDBで想定レベルになっているか |
| Query Store | sys.database_query_store_options | ONか、読み書き可能か、容量不足で停止していないか |
| Managed Instance更新ポリシー | Azureポータル、SERVERPROPERTY | SQL Server 2022との復元・フェールバック要件に合うか |
| 接続ドライバー | アプリ設定、ODBC DSN、依存ライブラリ | SNACや古いOLE DBに依存していないか |
| 認証方式 | Microsoft Entra、SQL認証、アプリID | 最小権限とMFA、運用アカウント分離ができているか |
| 暗号化 | TDE、Always Encrypted、TLS | 証明書、キー管理、ドライバー対応が整っているか |
| 移行方式 | DMS、BACPAC、BCP、MI link、LRS | ダウンタイム、データ量、DR要件に合うか |
| 監視 | Azure Monitor、Query Store、監査ログ | 切り替え後の異常検知ができるか |
| 既知の問題 | リリースノート、CU情報 | 該当ビルド・構成に既知の不具合がないか |
特にManaged Instance linkを使う場合は、ネットワーク、証明書、TDEキー、サーバーレベルオブジェクト、ジョブ、ログイン、レプリケーション構成を個別に確認します。リンク機能はデータベース単位のレプリケーションであり、SQL Serverインスタンス全体を丸ごと移す機能ではありません。(Microsoft Learn)
移行計画では「Azure SQL Databaseで足りるか」を先に判断する
SQL Server 2022の新機能をきっかけにAzure SQLへ移行する場合、最初に決めるべきなのはサービス選定です。
Azure SQL Databaseは、単一データベース、エラスティックプール、Hyperscaleなどを使い、アプリケーション単位でスケールしやすい構成に向いています。SQL Server Agentやインスタンスレベル機能が不要で、アプリケーションをクラウドネイティブに寄せられるなら有力です。
Azure SQL Managed Instanceは、SQL Serverとの互換性、SQL Server Agent、ネイティブバックアップ/復元、Managed Instance link、クロスデータベース機能などが必要な場合に向いています。Microsoft Learnの機能比較でも、SQL ServerからAzure SQL Managed Instanceへのオンライン移行方式としてManaged Instance link、Log Replay Service、Azure Database Migration Service、トランザクションレプリケーションなどが整理されています。(Microsoft Learn)
判断の目安は次の通りです。
| 要件 | 向いている選択肢 |
|---|---|
| モダンな単一アプリ、PaaS管理を最大化したい | Azure SQL Database |
| 多数DBを持つ既存SQL Serverを低変更で移行したい | Azure SQL Managed Instance |
| SQL Server Agentジョブが多い | Azure SQL Managed Instance |
| クロスデータベースクエリが多い | Azure SQL Managed Instance |
| SQL Serverへフェールバックしたい | SQL Server 2022 update policyのManaged Instance |
| アプリ単位でスケールし、運用を軽くしたい | Azure SQL Database |
| 既存SQL Server機能をほぼ維持したい | Azure SQL Managed InstanceまたはSQL Server on Azure VM |
開発・検証環境で先に試すべきこと
本番展開前に、開発・検証環境で次の3つを試すと、移行後の問題を早期に発見できます。
Query Storeを使った性能ベースライン取得
移行前後で同じ代表クエリを実行し、CPU、Duration、論理読み取り、待機統計、実行プランを比較します。Query Storeがあると、移行後の計画回帰や実行時間の悪化を見つけやすくなります。
新しいT-SQL構文の段階導入
DATETRUNCやIS NOT DISTINCT FROMのような構文は便利ですが、すぐ本番SQLへ全面導入するのではなく、互換性レベルと対象環境を確認してから段階的に使います。古いSQL Serverとの併用期間がある場合、共通SQLとして実行できない可能性があります。
ドライバーと接続文字列の更新
Azure SQL移行では、接続先ホスト名、暗号化、証明書、タイムアウト、リトライ、Private Link、Microsoft Entra認証などが影響します。古い接続ライブラリを温存したまま移行すると、データベース側ではなくアプリ側で障害が起きます。
特にクラウド接続では、一時的な接続断に備えたリトライ設計も重要です。接続できるかだけでなく、フェールオーバー、メンテナンス、スケール変更時にアプリがどう動くかまで確認します。
まとめ:次に取るべき行動
Azure SQLで「What’s New in SQL Server 2022 – SQL Server」を確認する目的は、新機能を眺めることではなく、自社のAzure SQL設計・移行・運用にどの設定確認が必要かを洗い出すことです。
最初にやるべきことは、次の3つです。
- Azure SQL DatabaseとAzure SQL Managed Instanceのどちらが要件に合うかを確認する
- Query Store、互換性レベル、Managed Instance更新ポリシー、接続ドライバーを棚卸しする
- リリースノートと最新ビルド情報を確認し、検証環境で移行・フェールオーバー・性能を試す
SQL Server 2022の新機能は、Azure SQLの性能改善、セキュリティ強化、移行設計に大きく関わります。ただし、Azure SQLではサービスごとに使える機能、管理できる範囲、設定すべき項目が違います。新機能を導入する前に、対象サービス、互換性レベル、Query Store、更新ポリシー、ドライバー、既知の問題を確認すれば、本番移行時の手戻りを大きく減らせます。

コメント