印刷ボタンを押してから1枚目が出るまで長く待たされる、1枚出るたびにプリンターが止まる――この症状は、プリンターの故障とは限りません。印刷品質や用紙設定、画像の多い文書、Wi-Fiの通信状態、プリンタードライバー、ファームウェアなどが原因になることがあります。
最短で原因を見つけるには、設定を手当たり次第に変更するのではなく、同じ文書・同じページを使い、画質、文書内容、接続方式を1項目ずつ比較することが重要です。Microsoftも、Windows 11で印刷が遅い場合の確認項目として、印刷品質と用紙設定、有線接続との比較、ファームウェア、文書の複雑さ、スプール設定を挙げています。([マイクロソフト サポート][1])
印刷が遅いときに画質・接続・文書を切り分ける方法
「印刷が遅い」と感じても、実際に時間がかかっている場所によって、確認すべき項目は異なります。
まずは、次のどの症状に近いかを確認してください。
| 症状 | 疑いやすい原因 | 最初に行う比較 |
|---|---|---|
| 印刷を押してから1枚目が出るまで遅い | 文書の変換処理、通信、ドライバー、スプール処理 | 単純な1ページ文書を印刷する |
| 1枚目は出るが、次のページまで長く止まる | 高画質設定、画像処理、プリンター内部の処理 | 標準画質と高画質を比較する |
| 写真やPDFだけ遅い | 高解像度画像、複雑なページ構成 | 文字だけの文書と比較する |
| Wi-Fi接続時だけ遅い | 無線LANの通信遅延や不安定さ | USBまたは有線LANで比較する |
| すべての文書、すべてのPCで遅い | プリンター本体、ネットワーク、ファームウェア | 本体のテスト印刷を確認する |
| 特定のPCだけ遅い | ドライバー、アプリ、PC側の接続設定 | 別のPCから同じ文書を印刷する |
原因を正しく切り分けるため、テスト中は複数の設定を同時に変えないようにします。
まず「どこで待たされているか」を記録する
印刷速度を調べるときは、単に「遅かった」と判断するのではなく、次の時間を分けて確認します。
- 印刷ボタンを押した時刻
- 印刷ジョブが印刷待ち一覧に表示された時刻
- プリンターが動き始めた時刻
- 1枚目が排出された時刻
- 2枚目以降が排出される間隔
例えば、印刷待ち一覧にはすぐ表示されるのにプリンターが動かない場合は、通信やプリンター内部の処理を疑います。
一方、印刷待ち一覧に表示されるまで時間がかかる場合は、文書を作成したアプリやプリンタードライバーが、印刷データを作る段階で時間を使っている可能性があります。
秒単位で厳密に計測する必要はありません。「印刷開始まで約40秒」「1枚ごとに約20秒停止」など、比較できる形で記録しておけば十分です。
同じ文書で印刷品質と用紙設定を比較する
最初に確認したいのが、印刷品質と用紙種類です。
Windows 11では、一般的に次の場所から設定を確認できます。
- [スタート]を開く
- [設定]を開く
- [Bluetooth とデバイス]を選択する
- [プリンターとスキャナー]を開く
- 使用しているプリンターを選択する
- [印刷設定]または[プリンターのプロパティ]を開く
画面名や項目の配置は、プリンターメーカーやドライバーによって異なります。
比較する設定
同じページを使い、次のように1項目ずつ比較します。
| 比較前 | 比較後 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 高画質・きれい・最高品質 | 標準・普通 | 画質処理が原因か |
| 写真用紙・厚紙 | 実際に使用している普通紙 | 用紙設定の不一致がないか |
| カラー | モノクロまたはグレースケール | カラー処理が影響しているか |
| 両面印刷 | 片面印刷 | 用紙反転の待ち時間か |
Microsoftの案内でも、不必要に高い印刷品質を避け、プリンターにセットした用紙と用紙種類の設定を一致させることが推奨されています。([マイクロソフト サポート][1])
ただし、速度を上げるために実際とは異なる用紙種類を選ぶのは適切ではありません。普通紙を使用しているのに写真用紙や厚紙が設定されている場合は修正しますが、厚紙を使用しているのに普通紙へ変更すると、印刷品質の低下や給紙不良につながる可能性があります。
標準画質で速くなった場合
標準画質に変更して明確に速くなった場合は、故障ではなく、高画質印刷に必要な処理が原因だった可能性があります。
文書の用途に応じて、次のように使い分けると実用的です。
- 社内確認用や下書き:標準または下書き
- 一般的な提出文書:標準
- 写真、図面、最終成果物:高画質
普段の文書まで常に最高画質で印刷する必要はありません。
文字だけの文書と画像の多い文書を比較する
次に、文書の内容による違いを確認します。
次の2種類を用意してください。
- 文字だけを入力したA4・1ページの文書
- 遅い症状が出る元の文書
文字だけの文書はすぐ印刷できるのに、写真、地図、スキャン画像、図形を多く含む文書だけ遅い場合は、文書の処理負荷が原因と考えられます。
Microsoftも、高解像度画像を含む大きなファイルやページは印刷が遅くなることがあり、画像の圧縮、文書の簡略化、標準または下書きモードの利用を対処法として挙げています。([マイクロソフト サポート][1])
画像の多い文書を確認する方法
いきなり文書全体を修正するのではなく、次の順番で試します。
- 遅い文書から1ページだけ印刷する
- 画像が少ないページと多いページを比較する
- 標準画質へ変更して同じページを印刷する
- 別のアプリで開ける文書なら、別アプリから同じページを印刷する
- 必要に応じて画像を圧縮したコピーを作り、速度を比較する
特定の1ページだけ極端に遅い場合は、そのページに配置された画像や図形が影響している可能性があります。
ファイル容量だけでは判断しない
ファイルサイズが小さくても、1ページに高解像度画像、透過処理、複数の図形などが重なっていると、印刷時の処理に時間がかかる場合があります。
反対に、ページ数が多くても、文字中心の文書なら比較的速く処理できることがあります。そのため、「何MBあるか」だけではなく、どのページで遅くなるかを確認することが重要です。
Wi-FiとUSB・有線LANを比較する
ネットワークプリンターをWi-Fiで使用している場合は、可能であれば一時的にUSBまたは有線LAN接続と比較します。
Microsoftも、Wi-Fi接続で印刷が遅い場合は、USBまたはイーサネットへ一時的に切り替え、ネットワーク遅延が原因かを確認する方法を案内しています。([マイクロソフト サポート][1])
比較時は、次の条件をそろえてください。
- 同じPCを使う
- 同じ文書の同じページを使う
- 印刷品質を変えない
- 用紙設定を変えない
- 他の印刷ジョブがない状態で試す
有線接続で速くなった場合
USBまたは有線LANで明確に速くなった場合は、プリンター本体よりも、Wi-Fiやネットワーク経路に原因がある可能性が高くなります。
次の項目を確認します。
- プリンターと無線LANルーターの距離が離れすぎていないか
- プリンター周辺でWi-Fiが不安定になっていないか
- 中継機や複数のアクセスポイントを経由していないか
- 他のPCからも同じように遅いか
- 印刷サーバーや共有PCを経由していないか
職場や学校では、プリンターへ直接送信しているように見えても、実際にはプリントサーバーを経由している場合があります。管理されたネットワークでは、ポートや接続先を勝手に変更せず、比較結果を管理者へ伝えてください。
USBでも遅い場合
USB接続でも同じように遅ければ、Wi-Fiだけが原因とは考えにくくなります。
次に確認する対象は、文書、印刷品質、ドライバー、ファームウェア、プリンター本体です。
プリンター本体のテスト印刷と比較する
プリンター本体の操作パネルから、設定情報やネットワーク情報などのテストページを印刷できる機種では、本体だけで印刷した場合の速度も確認します。
- 本体のテストページは速いが、PCからの印刷だけ遅い
→ 文書、ドライバー、接続経路を疑う - 本体のテストページも遅い
→ 本体設定、用紙設定、静音モード、ファームウェア、保守状態などを確認する
複合機の場合は、コピーの速度とPCからの印刷速度を比べる方法もあります。コピーは正常なのにPCからの印刷だけ遅い場合は、印刷データがプリンターへ届くまでの経路に原因があると切り分けやすくなります。
ただし、コピーと印刷では内部処理が同じとは限らないため、あくまで判断材料の一つとして使用してください。
Windows 11対応のプリンタードライバーを確認する
文書や接続方式に関係なく遅い場合は、プリンタードライバーを確認します。
特に確認したいのは、次のようなケースです。
- Windows 11へ更新してから遅くなった
- プリンターを追加した直後から遅い
- PCを交換してから遅い
- 同じ機種でも特定のPCだけ遅い
- メーカー独自の印刷設定が表示されない
ドライバーの確認手順
- プリンター本体の正確な型番を確認する
- プリンターメーカーの公式サポートサイトを開く
- Windows 11対応ドライバーの有無を確認する
- 現在使用しているドライバー名やバージョンと比較する
- 必要な場合だけ、メーカーの手順に従って更新する
Windowsが自動的に用意したドライバーで印刷できていても、メーカー提供のドライバーとは、利用できる機能や処理方式が異なる場合があります。ただし、メーカー製ドライバーへ変更すれば必ず高速になるわけではありません。
ドライバーを変更する前に、現在のドライバー名、ポート、接続方式を記録しておくと、問題が悪化した場合に元へ戻しやすくなります。
ドライバーは、非公式のダウンロードサイトではなく、プリンターメーカーまたはWindows Updateから入手してください。
プリンターのファームウェアを確認する
ファームウェアは、プリンター本体を動かすためのソフトウェアです。メーカーから性能や安定性に関する更新が提供されている場合があります。
Microsoftも、印刷速度の遅延に対する確認項目として、メーカーのサポートサイトから利用可能なファームウェア更新を確認する方法を案内しています。([マイクロソフト サポート][1])
更新するときは、次の点に注意してください。
- 型番が完全に一致していることを確認する
- 更新中にプリンターの電源を切らない
- USBケーブルやLANケーブルを抜かない
- メーカーの手順を省略しない
- 業務用複合機では管理者や保守業者へ確認する
「印刷が遅い」という理由だけで、未確認のファームウェアをすぐ適用するのではなく、対応内容や対象機種を確認してから実行します。
スプール設定は最後に比較する
スプールとは、印刷データをいったんPC側へ保存し、順番にプリンターへ送る仕組みです。
Windows 11では、一般的に次の場所から確認できます。
- [設定]を開く
- [Bluetooth とデバイス]を選択する
- [プリンターとスキャナー]を開く
- 対象のプリンターを選択する
- [プリンターのプロパティ]を開く
- [詳細設定]タブを開く
Microsoftの案内では、文書をスプールする設定、最後のページがスプールされた後に印刷を開始する設定、スプール済み文書を先に印刷する設定が紹介されています。([マイクロソフト サポート][1])
ただし、スプール設定を変更すれば、必ず印刷が速くなるわけではありません。
特に「最後のページがスプールされた後に印刷を開始する」設定は、印刷途中の停止を減らせる可能性がある一方、文書全体の準備を待ってから印刷するため、1枚目が出るまでの時間が長くなることがあります。
スプール設定を試すときの注意点
- 変更前の設定を記録する
- 一度に1項目だけ変更する
- 同じ文書で変更前後を比較する
- 開始までの時間とページ間隔を別々に記録する
- 改善しなければ元へ戻す
「プリンターに直接印刷データを送る」を選べる場合もありますが、これが常に高速とは限りません。アプリが印刷処理を待たされたり、ネットワーク接続で不安定になったりすることもあるため、根拠なく変更しないようにします。
共有プリンターや組織管理のPCでは、設定変更が他の利用者へ影響する可能性があります。管理者権限を求められる場合は、無理に変更しないでください。
比較結果から次の対処を決める
ここまでのテスト結果を、次の表に当てはめてください。
| 比較結果 | 原因として考えやすい場所 | 次の対応 |
|---|---|---|
| 標準画質にすると速い | 印刷品質設定 | 通常文書は標準画質で運用する |
| 文字文書は速く、画像文書は遅い | 文書や画像の処理 | 画像圧縮、ページ分割、標準画質を試す |
| USBは速く、Wi-Fiは遅い | 無線LANやネットワーク | 設置場所や通信経路を確認する |
| 別のPCでは速い | 特定PCのドライバーやアプリ | 対応ドライバーを確認する |
| すべてのPCで遅い | プリンター、ネットワーク、ファームウェア | 本体設定と更新情報を確認する |
| 本体テスト印刷も遅い | プリンター本体側 | 保守業者やメーカーへ相談する |
| スプール完了後は止まらないが開始が遅い | スプール開始条件 | 開始優先か連続性優先かを決める |
原因が特定できない場合も、比較結果を残しておけば、メーカーや管理者へ具体的に相談できます。
「遅いです」だけではなく、次のように伝えると状況が伝わりやすくなります。
文字だけの1ページは約10秒で印刷できますが、画像入りPDFは1枚目まで約50秒、ページ間も約20秒かかります。USB接続でも同じで、標準画質にするとページ間隔は短くなります。
いきなり初期化や再設定をしない
印刷できているにもかかわらず速度だけが遅い場合、最初からプリンターの削除、Windowsの初期化、ネットワーク設定のリセットまで行う必要はありません。
先に確認する順番は次のとおりです。
- 遅い場所を記録する
- 印刷品質と用紙設定を比較する
- 単純な文書と画像の多い文書を比較する
- Wi-FiとUSB・有線LANを比較する
- 対応ドライバーとファームウェアを確認する
- 必要な場合だけスプール設定を比較する
この順番なら、設定を大きく変更せずに、文書、通信、PC、プリンター本体のどこで時間がかかっているかを絞り込めます。
Windows 11で印刷が遅いときは、まず同じ文書を標準画質で印刷し、次に文字だけの文書、最後に有線接続と比較してください。どの比較で速度が変わったかが分かれば、無関係な再インストールやリセットを避けながら、必要な対処だけを選べます。
[1]: https://support.microsoft.com/ja-jp/windows/hardware/printer/troubleshoot-slow-printing-issues-in-windows “Windows での印刷に関する問題のトラブルシューティング | Microsoft Support”

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