Windows 11 の AI 機能(Recall など)をグループポリシーで無効化したいのに、GPO エディターに「Windows AI」フォルダーが出てこない――この症状は、管理端末が参照している ADMX/ADML が古い、または Central Store(SYSVOL)が更新されていないことが原因で起きるケースがほとんどです。
「Windows AI」が出ないときの正体
GPO(グループポリシー)で表示される「管理用テンプレート」は、実体としては ADMX(定義ファイル) と ADML(言語ファイル) で成り立っています。ここが古いままだと、新しい機能(Recall など)のポリシーが UI に現れません。
特にドメイン環境では、次の落とし穴が頻発します。
- Central Store を使っているのに、ローカル(C:\Windows\PolicyDefinitions)だけ更新している(→表示は変わらない)
- ADMX だけコピーして ADML をコピーしていない(→表示が欠ける/検索で出ない/カテゴリが崩れる)
- 新しい Windows 11 テンプレートを入れたつもりが、実は古い WindowsCopilot.admx を上書きしてしまっている(→「Windows AI」自体が出ない)
- 端末側の OS が未対応(→ポリシーは見えても効かない/そもそも対象機能が存在しない)
Microsoft Learn の「WindowsAI Policy CSP」では、Recall 関連の GPO が Windows Components > Windows AI 配下にマッピングされ、かつ ADMX ファイル名が WindowsCopilot.admx であることまで明示されています。つまり「Windows AI」フォルダーが無い場合、まず疑うべきは WindowsCopilot.admx(+対応する ADML)が最新でないことです。
Windows AIで制御できる主な項目
Recall は「勝手に有効化されるのでは?」と心配されがちですが、Microsoft Learn では Recall はユーザーの同意が必要な opt-inであり、管理者は「ユーザーに選択肢を与える/禁止する」方向で制御できる、という整理になっています。
また、Recall を管理する代表的なポリシーは次の 2 つが軸です。
| ポリシー(GPO 表示名) | 場所 | 推奨設定(無効化目的) | 効果の要点 | レジストリ(確認用) |
|---|---|---|---|---|
| Allow Recall to be enabled | コンピューターの構成 管理用テンプレート Windows コンポーネント Windows AI | 無効 | Recall のオプションコンポーネントを利用不可にし、Recall の bits を削除。既存スナップショットがあれば削除。再起動が必要。 | HKLM\SOFTWARE\Policies\Microsoft\Windows\WindowsAIAllowRecallEnablement(DWORD)= 0 |
| Turn off saving snapshots for use with Recall | コンピューターの構成 / ユーザーの構成 管理用テンプレート Windows コンポーネント Windows AI | 有効 | スナップショット保存を禁止し、既存スナップショットがあれば削除。 | HKLM\SOFTWARE\Policies\Microsoft\Windows\WindowsAIDisableAIDataAnalysis(DWORD)= 1 |
上の表の根拠は、Microsoft Learn の Policy CSP が「GPO でのパス」「レジストリ キー/値名」「ADMX ファイル名(WindowsCopilot.admx)」まで対応付けている点です。
注意点として、Recall 関連ポリシーは Windows 11 24H2 + 特定の更新プログラムが前提になっているものがあります。たとえば AllowRecallEnablement / DisableAIDataAnalysis は、WindowsAI Policy CSP 上で「Windows 11, version 24H2 with KB5055627 [10.0.26100.3915] and later」と記載されています。端末側がこの条件を満たさない場合、ポリシーを定義できても期待通りに動かないことがあります。
原因を切り分けるチェックリスト
「Windows AI フォルダーが出ない」問題は、原因を 2 つに分けて考えると解決が早いです。
| 切り分け観点 | よくある状態 | まず確認すること | 次にやること |
|---|---|---|---|
| 管理端末側の問題 (GPO エディターが新しい定義を読めていない) | GPO に「Windows AI」が出ない/検索しても Recall が出ない | Central Store を使っていないか 使っているなら中身が古くないか | Central Store を最新 ADMX/ADML に更新 |
| クライアント側の問題 (OS が未対応/機能が存在しない) | GPO では設定できるのに、端末の挙動が変わらない | 対象端末が Windows 11 24H2 + 必要 KB を満たすか | 更新適用/機能要件の確認 |
今回の質問は「そもそもポリシー項目が見つからない」なので、まずは 99% 管理端末側(ADMX/ADML の参照先)の問題です。
解決手順 ADMXとADMLを最新化する
管理端末が参照する定義ファイルを確認する
ドメイン環境で最重要なのは、GPMC がどこから ADMX を読んでいるかを把握することです。
- Central Store が存在する場合:GPMC は基本的に SYSVOL の PolicyDefinitions を参照します。
- Central Store が無い場合:管理端末の
C:\Windows\PolicyDefinitionsを参照します。
Central Store の作成/運用について Microsoft Learn は、SYSVOL 配下に PolicyDefinitions フォルダーを作り、そこに ADMX/ADML を置く方式を案内しています。
最新テンプレートを入手する
入手ルートは大きく 2 つあります。実務では 公式の ADMX パッケージを使うほうが、再現性と監査性が高くおすすめです。
| 入手ルート | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| Microsoft 公式の ADMX パッケージ(MSI) | 配布元が明確/バージョン管理しやすい/複数人運用に向く | OS 更新に追従して定期的に更新が必要 |
| 最新更新済み Windows 11 の C:\Windows\PolicyDefinitions から取得 | 手元の環境に入っている「現物」から拾える | 取得元端末の更新状況に依存/拾い漏れが起きやすい |
Windows 11 の ADMX は Microsoft Download Center から提供されており、たとえば Windows 11 25H2 向けのテンプレートは「Administrative Templates (.admx) for Windows 11 2025 Update (25H2)」として配布されています。
なお、Recall を含む Windows AI 系の定義は WindowsCopilot.admx に入っていることが Microsoft Learn のマッピングで明示されています。ここが欠けている/古いと「Windows AI」フォルダーが出ません。
Central Storeに配置する
ドメイン管理なら、Central Store(SYSVOL)にまとめるのが定石です。Microsoft Learn でも、Central Store は GPO ツールが既定で参照し、内容はドメイン コントローラー間で複製されると説明されています。
配置先の例は次の通りです(ドメイン名は読み替えてください)。
| 種類 | パス例 | ポイント |
|---|---|---|
| Central Store | \\contoso.com\SYSVOL\contoso.com\policies\PolicyDefinitions | ここに .admx を置き、言語別フォルダー(例:ja-JP)に .adml を置く |
| 言語別 ADML | \\contoso.com\SYSVOL\contoso.com\policies\PolicyDefinitions\ja-JP | 管理端末の表示言語に合わせて必要分を用意 |
Central Store の作り方として Microsoft Learn は、PolicyDefinitions フォルダーを SYSVOL 配下に作成し、ソース PC(Windows 10/11 の C:\Windows\PolicyDefinitions または MSI 展開先)から ADMX/ADML をコピーする流れを案内しています。
また、既存の Central Store を運用中なら、いきなり上書きせずに PolicyDefinitions-24H2 のような バージョン付きフォルダーで新セットを作ってから切り替える方法も提案されています(ロールバックしやすく安全)。
重要:Microsoft Learn では、ADMX ダウンロード パッケージを使った運用は Central Store シナリオで扱い、c:\Windows\PolicyDefinitions の置き換えはサポートされない旨の注意もあります。ドメイン運用では「Central Store を正」に揃えるのが無難です。
GPOエディター側で表示を確認する
Central Store を更新したら、GPMC の編集画面をいったん閉じて開き直します。次に、以下の観点で確認します。
- コンピューターの構成 と ユーザーの構成 の両方で「Windows AI」を探す
- ツリーで見つからない場合は、管理用テンプレートの検索・フィルター機能で Recall をキーワード検索する
- WindowsCopilot.admx / WindowsCopilot.adml が Central Store に存在するか再確認する
「Windows AI」が出ないままなら、Central Store に入れたファイルが別のテンプレートで上書きされていないか(特に WindowsCopilot.admx)を疑ってください。WindowsAI Policy CSP では、Recall 関連ポリシーは WindowsCopilot.admx にマッピングされています。
Recallを確実に無効化する推奨設定
「無効化」の目的が「ユーザーに使わせない」「端末に痕跡を残さない」に近い場合、まずは次の 2 つをセットで入れるのが分かりやすいです。
- Allow Recall to be enabled:無効
- Turn off saving snapshots for use with Recall:有効
Microsoft Learn では、Allow Recall to be enabled を無効にすると Recall の bits が削除され、既に保存済みのスナップショットも削除され、さらに削除には再起動が必要と説明されています。
また、「Turn off saving snapshots…」は、既存のスナップショットがある場合に削除されること、管理者はユーザーの代わりにスナップショット保存を有効化できないこと(ユーザーの opt-in が必要)など、運用上の重要ポイントが明記されています。
補足として、Microsoft Learn の Recall 管理ページでは「商用管理デバイスでは既定で Recall は削除される」とも書かれており、組織によっては “既定のままでも Recall は使えない” 状態になっている可能性があります。ただし、監査や方針の明文化の観点では、GPO で明示的に禁止しておく方がトラブルになりにくいです。
適用確認 gpresultとレジストリで検証
「ポリシーを入れたのに効かない」を最短で潰すには、GPO が当たっているかと端末側の値が入っているかを分けて確認します。
| 確認したいこと | 代表コマンド | 期待値 |
|---|---|---|
| GPO が端末に適用されているか | gpupdate /forcegpresult /h C:\Temp\gpresult.html | 該当 GPO が「適用された GPO」に出る |
| レジストリ値が入ったか | reg query "HKLM\SOFTWARE\Policies\Microsoft\Windows\WindowsAI" /v AllowRecallEnablementreg query "HKLM\SOFTWARE\Policies\Microsoft\Windows\WindowsAI" /v DisableAIDataAnalysis | AllowRecallEnablement=0、DisableAIDataAnalysis=1 |
| 再起動が必要な変更か | (端末再起動) | Recall の削除や一部フィルター系は再起動後に反映 |
レジストリ確認のパス/値名は Microsoft Learn の WindowsAI Policy CSP が GPO マッピングとして提示している情報と一致します。
端末要件も要注意です。WindowsAI Policy CSP 上では、AllowRecallEnablement / DisableAIDataAnalysis は「Windows 11 24H2 + KB5055627 以降」と明示されています。検証端末がこの条件を満たさないと、値が入っても挙動が変わらない可能性があります。
よくあるハマりどころと対処
Central Storeがあるのにローカルだけ更新していた
もっとも多いパターンです。Central Store がある場合、GPMC は基本的に SYSVOL の PolicyDefinitions を参照します。ローカルだけ更新しても表示が変わらないので、必ず Central Store 側を更新してください。
ADMLのコピー漏れで表示が崩れている
ADMX は言語非依存、ADML は言語依存です。Microsoft Learn でも、ADML は en-US や ja-JP のような言語別フォルダーに置くことが説明されています。日本語環境の管理端末なら ja-JP を忘れないでください。
WindowsCopilot.admxが古いまま
「Windows AI」カテゴリ名から WindowsAI.admx を探してしまうのですが、Recall の GPO マッピングは WindowsCopilot.admx に入っていることが Microsoft Learn で明示されています。テンプレート更新の際は、Central Store 内の WindowsCopilot.admx と ja-JP\WindowsCopilot.adml が最新かを重点的に確認してください。
ポリシーが見えても端末が未対応で効かない
AI 系は更新の影響を強く受けます。WindowsAI Policy CSP では OS/KB の前提が明記されているため、対象端末のビルドと KB レベルを揃えたうえで評価してください。
プレビュー扱いの項目が混ざる
WindowsAI Policy CSP 自体に「Insider Preview ビルドでのみ適用の設定が含まれる」「プレビューで変更され得る」といった注意があり、Recall 以外の周辺設定も揺れやすい領域です。運用では、まずは Recall 無効化の最小セットに絞り、段階的に追加する方が安全です。
代替策 Intuneやレジストリで強制する
どうしても「GPO に項目が出るのを待てない」「一時的にブロックしたい」場合は、公式に公開されているマッピングを使って 同じ値を入れるという手が取れます。
IntuneなどMDMでCSPを使う
Recall には WindowsAI Policy CSP が用意されており、たとえば次の OMA-URI が該当します(Device スコープ)。
./Device/Vendor/MSFT/Policy/Config/WindowsAI/AllowRecallEnablement./Device/Vendor/MSFT/Policy/Config/WindowsAI/DisableAIDataAnalysis
どちらも Microsoft Learn で GPO と対応付けが示されています。
GPPのレジストリで同じ値を入れる
ドメイン環境なら「グループポリシーの基本設定(GPP)」でレジストリを配布する方法もあります。Microsoft Learn のマッピングに従うなら、確認すべきキーは次です。
HKLM\SOFTWARE\Policies\Microsoft\Windows\WindowsAIAllowRecallEnablement(DWORD)= 0DisableAIDataAnalysis(DWORD)= 1
ただしこれは “UI に出ない状態でも値だけ合わせる応急処置” です。長期運用は、Central Store を更新して GPO から管理できる状態に戻すのが王道です。
運用のコツ AI系ポリシーは更新が前提
AI 系の管理項目は増減しやすく、同じ「Windows AI」配下でも機能ごとに前提(エディション、OS バージョン、KB、Insider のみなど)が混ざります。Microsoft Learn の Recall 管理ページでも、ストレージやフィルター、DLP などのポリシーは Enterprise/Education 限定のものがある、と整理されています。
現場で安定させるためのおすすめは次の 3 点です。
- Central Store を定期更新し、ADMX/ADML の世代を揃える
- パイロット OUで挙動確認してから全社展開する
- 「設定したつもり」を防ぐために、gpresult とレジストリで確認する運用を固定化する
まとめ
「Windows AI」フォルダーが GPO に出てこないときは、まず WindowsCopilot.admx(+ADML)を含む ADMX/ADML が、GPMC が参照する場所に最新として揃っているかを疑うのが最短ルートです。ドメイン環境なら Central Store(SYSVOL)を正として更新し、表示が出たら Recall を無効化する最小セット(Allow Recall to be enabled を無効、Turn off saving snapshots を有効)を適用し、gpresult とレジストリで検証してください。

コメント