AZ-900 の演習で Azure ポータルの「Size(サイズ)」選択や Linux 仮想マシン作成が失敗するのは、学生向け無料サブスクリプション特有の制限(利用可能なサイズ、クォータ、リージョン在庫、ポリシー)や入力要件の違反が原因であることが多い。本記事では、原因の切り分け方と具体的な対処手順をまとめます。
今回の状況(質問概要)
大学のクラウドコンピューティング授業で、AZ-900: Microsoft Azure Fundamentals の学習パスに含まれる演習を、Azure 学生向け無料アカウントで実施している。ところが次の 2 つの演習で、ポータル操作が途中から進まない・デプロイが失敗する、という状況です。
- Exercise – Create an Azure resource(Azure リソースの作成):リソース作成の途中、「Size(サイズ)」の選択画面でエラーが出て先に進めない
- Exercise – Create an Azure virtual machine(Azure 仮想マシンの作成) / Task 2: Create a Linux virtual machine:Linux VM 作成時に、複数のエラーが発生してデプロイが完了しない
同じ演習を「従量課金サブスクリプション」で行うと通るのに、学生サブスクリプションだと詰まるケースは珍しくありません。原因は Azure 側の障害よりも、サブスクリプションの制限・リージョン在庫・入力要件のいずれかであることが多いです。
Q&A スレッドでの「公式回答」のポイント
質問の元になっている Microsoft Q&A フォーラムでは、次のような扱いになっていました。
- Microsoft Q&A は、Microsoft Learn/認定試験(AZ-900 を含む)のコンテンツや演習に関するサポートは対象外とされることがある
- そのためスレッド内では、技術的な原因の特定や解決ではなく、専用サポート窓口・フォーラムの案内が「解決」として受け付けられている
案内されている問い合わせ先の例は次のとおりです(目的別に窓口が分かれます)。
- Microsoft 認定試験(内容全般)のフォーラム
- Microsoft 認定試験の「受験登録」に関するフォーラム
- 割引・バウチャーに関するフォーラム
- Pearson VUE サポート(試験配信プラットフォームに関する問い合わせ)
つまり、スレッドの範囲では「このエラーはこれが原因です」と断定できる情報は得られていません。ここから先は、授業・演習を進めるために、Azure 側の“よくある原因”を潰していくアプローチが現実的です。
ここからが本題:学生アカウントで起きがちな原因を“パターン化”する
学生向け無料サブスクリプションでの演習は、次の 5 パターンに集約できます。まずは自分がどれに当てはまるかを見つけると、解決が早くなります。
| パターン | 典型症状 | 代表的なエラーの匂い | 最短の打ち手 |
|---|---|---|---|
| 利用できないサイズ(SKU)を選んでいる | Size 画面で選べない/選ぶと落ちる | SKU / size not available | 小さい一般的なサイズ(B1s / B1ms、場合によっては D2s_v3 など)へ |
| リージョン在庫(キャパシティ)不足 | 同じ設定でもリージョンを変えると通る | SkuNotAvailable / AllocationFailed | リージョン変更(まずこれ) |
| クォータ超過(vCPU 上限など) | 前に作った VM が残っていると起きやすい | QuotaExceeded / exceed quota | 不要リソース削除 → サイズ縮小 |
| 入力要件違反(ユーザー名/SSH/パスワード) | Validation failed 系、同じ画面で必ず失敗 | InvalidParameter / Authentication | azureuser、SSH 再生成、複雑なパスワード |
| 無料枠クレジット上限・課金制限 | 昨日まで作れたのに突然作れない/課金関連の警告が出る | billing / credits / spending limit の文言 | Cost Management + Billing でクレジット確認、授業側へ相談 |
| ポリシー・サブスク制限(学校・組織側) | 全員同じエラー、許可されたリージョンが限定 | Deny / not allowed by policy | 許可範囲で実施、管理者へ依頼 |
最短で原因を切り分ける:エラーコード別「早見表」
“サイズが選べない” “VM が作れない” という現象だけでは判断できません。Azure では、デプロイ失敗時に必ず何らかのエラーコード(または類似の文言)が出ます。まずは リソースグループ → デプロイ(または アクティビティログ)からエラー詳細を開き、下の表に当てはめてください。
| エラー(例) | 意味 | まずやること | 次の一手 |
|---|---|---|---|
| SkuNotAvailable | そのサイズがそのリージョンで割り当て不可 | リージョンを変更 | 別サイズ(B 系)でも試す |
| AllocationFailed | 割り当て(在庫)に失敗 | リージョン変更 | 可用性ゾーン等の条件を外す |
| QuotaExceeded / Operation would exceed quota | vCPU 等のクォータ超過 | 不要な VM/ディスク/IP を削除 | さらに小さいサイズにする |
| InvalidParameter | 入力値が要件を満たしていない | ユーザー名・パスワード・SSH を確認 | 新規で SSH 鍵を作り直す |
| Denied / not allowed by policy | ポリシーで禁止されている | ポリシー(許可リージョン等)を確認 | 管理者に解除/例外を依頼 |
| … provider is not registered | リソースプロバイダー未登録 | サブスクのリソースプロバイダーを登録 | もう一度デプロイ |
| Terms not accepted / Purchase eligibility | イメージ規約未同意・購入資格問題 | 標準イメージへ変更 | 必要なら規約同意 |
ケースA:Size(サイズ)選択画面でエラーが出て先に進めない
ポータル上で「サイズ選択」まで進めるのに、一覧が出ない・選択できない・選択した瞬間に弾かれる場合は、次の順番で潰すのが最短です。
最短手順
- リージョンを変える 同じサイズでもリージョンによって割り当て状況が変わります。演習で指定がなければ、まずは別リージョン(例:学習で利用例が多いリージョン)に変更して再表示します。
- サイズのフィルターを外す/「推奨」ではなく「すべて」を見る サイズ選択画面には vCPU、メモリ、シリーズなどのフィルターがあり、条件が噛み合わないと一覧が極端に絞られることがあります。フィルターをリセットし、表示を広げてください。
- サイズを小さくする(B1s / B1ms から。授業指定があれば D2s_v3 など) 授業・演習では性能は不要です。クォータや在庫に当たりにくい小規模サイズから通し、目的が達成できたら後で変更する方が確実です。
- クォータを確認する Azure ポータルで サブスクリプション → 使用状況 + クォータ を開き、対象リージョンの vCPU 上限(Total Regional vCPUs など)を確認します。上限が小さい・残りが少ない場合は、不要 VM を削除するのが先です。
どうしても一覧が出ないときの「代替確認」
UI の問題なのか、そもそもそのリージョンでサイズが使えないのかを切り分けるには、CLI でサイズ一覧を確認すると早いです(授業で CLI が許可されている場合)。
# 例:指定リージョンで選べるサイズ一覧を表示
az vm list-sizes --location eastus --output table
サイズ選びの現実解(演習用の目安)
「演習を通す」目的なら、次の考え方が安全です。
- まずは B 系など小規模・一般的なサイズ
- 可用性ゾーンなど、割り当て条件が増えるオプションは外す
- リージョンは授業で固定できるなら固定する(全員が同じ条件になる)
| 優先順位 | 選び方 | 避けたい選び方 |
|---|---|---|
| 最優先 | 小さいサイズで作れるかを確認 | いきなり高性能サイズを選ぶ |
| 次点 | 同一リージョン・最小構成でデプロイ | 既存 VNet を流用してリージョンが混ざる |
| 最後 | 必要になったらサイズ変更 | オプション盛り盛りで原因不明にする |
ケースB:Linux 仮想マシン作成でエラーが複数発生する
Linux VM は、サイズ以外の要件が多いので、エラーが連鎖しがちです。ここでは「授業で再現しやすい順」に並べます。
リージョンが揃っていない(VNet/ディスク/VM)
VM だけ別リージョンで作ろうとして、既存の VNet(別リージョン)を選ぶと失敗する、というのは非常によくあります。VM が使うリソースは同一リージョンで揃えるのが原則です。
- 迷ったら「新しいリソースグループ」を作り、その中で全て同じリージョンで作り直す
- 授業で配布された VNet を使う場合は、その VNet のリージョンを先に確認する
ユーザー名・パスワード・SSH 公開鍵が要件違反
入力要件違反は、エラーが分かりにくい割に解決は単純です。次のポイントに寄せると成功率が上がります。
| 項目 | よくある失敗 | 通すコツ |
|---|---|---|
| 管理者ユーザー名 | root / admin などの予約語 | azureuser など一般的な名前にする |
| 認証方式 | パスワードで短い・単純なものを使う | 可能なら SSH 公開鍵を使用 |
| SSH 公開鍵 | 貼り付け時に改行が崩れる、秘密鍵を貼る | ssh-keygen で新規生成し .pub の 1 行を貼る |
# 公開鍵(ed25519)の例
ssh-keygen -t ed25519 -C "az900-lab"
# ~/.ssh/id_ed25519.pub の中身を貼り付け
リソース プロバイダーが未登録
サブスクリプションを作った直後は、Compute/Network/Storage などのプロバイダーが未登録で失敗することがあります。エラー詳細に「not registered」や「登録されていない」旨が出たら、次を確認します。
- Azure ポータル → サブスクリプション → リソース プロバイダー
- Microsoft.Compute / Microsoft.Network / Microsoft.Storage を登録
マーケットプレースの規約・購入資格の問題
学生サブスクリプションでは、特定のイメージ(特にサードパーティ製)で「購入資格がない」系のエラーが出ることがあります。授業・演習では、まずは次のように寄せるのが安全です。
- Ubuntu LTS などの標準的な Linux イメージを選ぶ
- 規約同意が必要な場合は、画面の指示に従って同意する
無料枠のクレジット上限・一時的な課金制限に当たっていないか
学生向け無料アカウントでは、利用できるクレジット(残高)に上限がある、または「支払い制限(Spending limit)」が有効になっていることがあります。クレジット枯渇や制限がかかっている状態だと、サイズやリージョンを変えても VM の新規作成が通らない場合があります。
- Azure ポータルの Cost Management + Billing(コスト管理 + 請求) で、クレジット残高やサブスクリプション状態を確認する
- 授業や組織のポリシーで課金が制限されている場合は、先生・管理者に「学生アカウントで VM 作成が必要」だと伝えて確認する
- どうしても解消しない場合は、Microsoft Learn のサンドボックスがある演習はサンドボックスへ切り替える
ポイントは、クォータ超過は「削除・サイズ縮小」で改善しやすい一方、クレジット枯渇や課金制限は削除しても回復しないことがある点です。エラー文に billing/credits/spending limit が見えたら、早めにここを疑ってください。
クォータ/在庫/ポリシーが絡むと「別のエラーが次々出る」
同じ手順を繰り返すたびにエラー内容が変わる場合、環境が揺れているのではなく、複数の制約に順番に当たっている可能性が高いです。こういうときは、次の“固定”が効きます。
- リージョンを 1 つに固定(授業で指定があるならそれに合わせる)
- VM サイズを小さく固定(B1s など)
- OS イメージを固定(Ubuntu LTS など)
- 成功するまで追加オプションを増やさない
Azure ポータルで「ここを見る」と早い
エラー画面だけでは情報が足りません。次の場所を押さえると、原因が一気に特定できます。
| 場所 | 分かること | メモしておくと良いもの |
|---|---|---|
| リソースグループ → デプロイ | 失敗した操作、エラーコード、失敗リソース | エラーコード(SkuNotAvailable 等) |
| リソースグループ → アクティビティログ | 時系列の履歴、Correlation ID | Correlation ID、発生時刻 |
| サブスクリプション → 使用状況 + クォータ | リージョン別の上限(vCPU など) | 対象リージョンの上限と残量 |
| Cost Management + Billing(コスト管理 + 請求) | クレジット残高、課金制限、サブスクリプションの状態 | クレジット残高、課金関連の警告が出ていないか |
| サブスクリプション → ポリシー | 許可/禁止(リージョンや SKU 制限) | Deny の内容(Allowed locations 等) |
| サブスクリプション → リソース プロバイダー | Compute/Network/Storage の登録状態 | 未登録のプロバイダー名 |
演習後に残りがちな「削除漏れ」リソース一覧
学生アカウントではクォータが小さいことが多く、リソースが残るほど次の演習で詰まります。VM を削除したのに制限に当たる場合は、次が残っていないか確認してください。
| 残りがちなもの | なぜ残る? | 削除のコツ |
|---|---|---|
| マネージド ディスク | VM 削除時に「関連リソースを保持」した | リソースグループ内でディスクを検索して削除 |
| パブリック IP | VM と別リソースとして残る | IP アドレス リソースを削除 |
| NIC(ネットワークインターフェース) | VM と分離されて残ることがある | NIC を削除 |
| NSG(ネットワーク セキュリティ グループ) | 自動作成され、VM 削除後も残る | 授業用なら不要な NSG を整理 |
| VNet | VM を消してもネットワークは残る | 演習単位でリソースグループを分け、RG ごと削除が楽 |
演習をスムーズに回す運用上のおすすめ
個人学習なら試行錯誤で済みますが、授業では「同じところで全員が止まる」ことが最大のコストになります。現実的に効く運用ポイントを整理します。
先生・TA 側:成功パターンを固定して配布する
- リージョンと VM サイズを事前に指定する(例:リージョンは 1 つ、サイズは B1s)
- 授業開始前に、その組み合わせで学生アカウントでも作れるか検証する
- 手順書は「選択肢を減らす」(選択肢が増えるほど変数が増えて原因特定が難しくなる)
受講生側:演習が終わったらリソースグループごと削除する
演習用途なら、最終的に残す必要のあるリソースはほとんどありません。迷うなら、演習単位で作ったリソースグループを丸ごと削除すると、クォータ詰まりを防げます。
Microsoft Learn のサンドボックスがある場合は優先して使う
モジュールによっては Microsoft Learn のサンドボックスが用意されている場合があります。サンドボックスは学習用に用意された一時環境で、個人サブスクリプションの制限に左右されにくいのが利点です。授業でトラブルを減らしたい場合、サンドボックスがある演習はそちらを優先するのが効果的です。
問い合わせをするときに準備すると早い情報(テンプレ)
Training / Certification の窓口でも Azure 側でも、情報が揃っているほど回答が具体的になります。次を控えてから問い合わせると往復が減ります。
| 項目 | 例 | どこで確認するか |
|---|---|---|
| 演習名(モジュール名) | Exercise – Create an Azure virtual machine / Task 2 | Microsoft Learn のページ |
| サブスクリプション種別 | Azure 学生向け無料(Azure for Students など) | Azure ポータルのサブスクリプション |
| リージョン | East US など | 作成画面、リソース概要 |
| 選んだサイズと OS | Standard_B1s + Ubuntu | VM 作成画面 |
| エラーコード | SkuNotAvailable / QuotaExceeded / InvalidParameter | リソースグループ → デプロイ |
| Correlation ID | xxxx-xxxx-xxxx | アクティビティログ |
| 発生日時 | YYYY/MM/DD HH:MM(現地時刻) | アクティビティログ |
| スクリーンショット | サイズ選択画面、エラー詳細 | 画面キャプチャ |
よくある質問
学生向け無料アカウントでも、AZ-900 の演習は必ずできますか?
「必ず」とは言い切れません。演習が想定している環境(従量課金サブスクリプション)と、学生サブスクリプションの制限が噛み合わないことがあります。ただし多くの場合、リージョンを変える・サイズを小さくする・最小構成にすることで通せます。
サイズ選択で詰まったら、最初の一手は何ですか?
最初の一手はリージョン変更が効果的です。次に、サイズを B1s/B1ms などの小さいものへ変更し、それでもダメならクォータと残リソースを確認します。
VM を停止しているのに、なぜ次の VM が作れないのですか?
停止していても、ディスクやパブリック IP、NIC などのリソースが残っていると、別の制限や上限に当たることがあります。演習用途なら、完了後にリソースグループごと削除するのが安全です。
授業で全員が同じエラーになるのはなぜ?
同じリージョン・同じ時間帯にアクセスが集中すると、リージョンのキャパシティ不足が表面化しやすくなります。また、学校側が Azure Policy で利用できるリージョンや SKU を制限している場合、全員が同じ制限に当たります。先生側で「成功するリージョンとサイズ」を固定すると、トラブルが減ります。
まとめ:技術対処と“問い合わせ”を両輪で進める
今回のように、AZ-900 演習で「サイズ選択ができない」「Linux VM が作れない」場合、Microsoft Q&A では Learn/認定系の演習がサポート対象外になり、問い合わせ先の案内で終わることがあります。授業を前に進めるには、まずは Azure 側で SKU(サイズ)・リージョン在庫・クォータ・入力要件・ポリシーを順番に潰すのが現実的です。
それでも解消しない場合は、デプロイ詳細のエラーコードと Correlation ID を添えて、Training / Certification の窓口へ「演習手順の不具合」として問い合わせると、解決までの往復が減ります。

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