AZ-900の学習を始めたのに、Microsoft Learnの「サンドボックスを有効化」ボタンが見つからない……という相談が2025年に入って一気に増えました。本記事では、2025年現在の公式情報をもとに、Learnサンドボックスがどう変わったのかを整理しつつ、代わりに自分のAzureサブスクリプションで安全かつ低コストにハンズオンを行う具体的なやり方を詳しく解説します。
AZ-900でサンドボックスが使えないのは「仕様変更」が原因
かつてのMicrosoft Learnサンドボックスとは
まず、「昔はできていたこと」を軽く振り返っておきます。
以前のMicrosoft Learnでは、多くのAzure関連モジュールに「サンドボックスを有効化」ボタンがありました。これを押すと、学習者専用の Azure テナントと「Concierge Subscription」と呼ばれるサブスクリプションが自動で払い出され、そこでのみリソースを作成して演習できる仕組みでした。
- 自分名義のAzureサブスクリプションは不要(MicrosoftアカウントだけでOK)
- サンドボックス環境は時間制限付きで、自動的にクリーンアップ
- 課金は一切発生せず、練習用として完全無料
実際、Microsoft Learnのサポート記事でも「Microsoft Learnのサンドボックスは、自分のAzureサブスクリプションを用意しなくてもトレーニング演習ができる無償環境」として案内されていました。
公式FAQで明言された「Sandboxes are no longer available」
しかし2025年10月時点のMicrosoft Learn公式FAQでは、サンドボックスに関する記述が大きく書き換えられています。
該当のFAQには、ざっくり次のような内容が書かれています(要約):
- Microsoft Learnのサンドボックスは、Azureなどを学習モジュールを通じて体験するための無償環境だった(過去形)。
- 現在、サンドボックスは提供されていない(Sandboxes are no longer available)。
- 演習を完了するには、Azureサブスクリプションへのアクセスが必要。
- まだ持っていない場合は、30日間の無料トライアルや従量課金(Pay-As-You-Go)にサインアップして利用する。
つまり、2025年現在は「Learnサンドボックスを有効化して練習する」こと自体が前提から消えている、というのが公式見解です。
コミュニティでも2025年秋以降、「AZ-900の学習中にサンドボックスボタンが消えた」「もはや使えないのでは?」というQ&Aやスレッドが相次いでいますが、これらも最終的には「自分のサブスクリプションで学習するしかない」という方向で収束しています。
以前と現在の違いをざっくり比較
| 項目 | 従来のLearnサンドボックス | 2025年現在 |
|---|---|---|
| 環境の提供元 | Microsoft Learn側が専用テナントとConcierge Subscriptionを自動で用意 | 学習者自身のAzureサブスクリプション(無料アカウント含む) |
| 利用料金 | 完全無料(サンドボックス内のみで完結) | 無料枠+$200クレジットを優先し、超過分のみ課金の可能性 |
| 有効化方法 | Learnモジュール内の「サンドボックスを有効化」ボタン | Azure無料アカウント作成や既存サブスクリプションへのログイン |
| クリーンアップ | 時間経過による自動削除が基本 | 自分でリソースを削除・管理する必要あり |
| 公式ステータス | 「無料のサンドボックス環境」として正式提供 | 公式FAQで提供終了が明言 |
この仕様変更により、AZ-900のハンズオンも「自分のAzureサブスクリプションありき」で計画する必要がある、というのが2025年時点の前提です。
AZ-900用の「Exam Sandbox」と学習用サンドボックスは別物
Exam Sandboxは「試験画面のデモ」専用
AZ-900の認定ページには、今も「Exam Sandbox」というリンクが表示されます。これはMicrosoft認定試験の画面を体験するためのデモ環境です。
公式説明では、Exam Sandboxについておおよそ次のように案内されています(意訳):
- 本番と同じ試験UIの見た目・操作感を事前に体験できる。
- ドラッグ&ドロップや並べ替えなど、試験で出てくる問題形式を実際にクリックして試せる。
- あくまでUIデモなので、採点結果やAzureリソースは関係しない。
重要なのは、Exam SandboxはAzureポータルではないという点です。ここからVMを作成したり、ストレージアカウントを作ったりすることはできません。あくまで「問題の画面」だけを触るものです。
名前が似ていて紛らわしい2つのサンドボックス
まとめると、AZ-900界隈には次の2つの「サンドボックス」が存在していました。
| 項目 | Exam Sandbox(試験用) | Learnサンドボックス(旧・学習用) |
|---|---|---|
| 目的 | 試験の操作画面に慣れるためのUIデモ | Azureリソースを実際に作成して学ぶ実習環境 |
| Azureリソースの作成 | 不可(ポータルは開かない) | 可能(Concierge Subscription内に作成) |
| 料金 | 常に無料 | 無料だったが、すでに提供終了 |
| AZ-900での役割 | 本番前に「試験画面の練習」をする | ハンズオン演習でAzure操作を体験する |
| アクセス場所 | 認定ページの「Exam Sandbox」リンクから起動 | 各Learnモジュール内の「サンドボックスを有効化」ボタン |
AZ-900の学習を始めたばかりの方がよく混同するのが、Exam Sandbox = Azure演習環境だと思ってしまうことです。しかし実際には用途がまったく違うため、以下のように使い分けるのがおすすめです。
- Azureの操作練習 → 自分のAzureサブスクリプション+Learnモジュールの手順
- 試験画面の練習 → Exam Sandbox
自分のAzureサブスクリプションでAZ-900ハンズオンを行う手順
Azure無料アカウントを作成する
Learnサンドボックスが無くなった今、最も現実的な選択肢はAzure無料アカウントを作成して学習に使うことです。Azure公式サイトでは、無料アカウントについて次のような条件が示されています(要約)。
- 新規ユーザーは最大30日間有効な$200分のクレジットを獲得
- 加えて、12か月間無料の人気サービス+常時無料サービスを利用可能
- 30日または$200を使い切ると、それ以上使うには従量課金への移行(アップグレード)が必要
- 無料アカウントのままでは勝手に課金されることはなく、継続利用する場合のみ自分でアップグレードする
サインアップの大まかな流れは以下の通りです。
- Azureの無料アカウントページにアクセスし、「無料で始める(Start free)」をクリック。
- Microsoftアカウントでサインイン(または新規作成)。
- 氏名・住所などのプロフィール情報を入力。
- SMSまたは電話による本人確認を実施。
- クレジットカード情報を入力(本人確認目的であり、この時点では請求は発生しない)。
- 利用規約を確認して完了。
この時点で、自分名義のAzureサブスクリプション(例: Free Trial)が1つ作成されます。以降、AZ-900のLearnモジュールで行う演習は、このサブスクリプション上で実施することになります。
学生なら「Azure for Students」も検討
大学生などの学生の場合は、クレジットカードなしで利用できるAzure for Studentsというプランもあります。
- 対象: 正規の学生(地域・教育機関の条件あり)
- クレジットカード不要
- 12か月間無料のサービスと、65以上の常時無料サービスを利用可能
- 最大$100相当のクレジットが付与(無料枠内でAzureを利用できる)
代表的な違いを一覧にすると、次のようなイメージです。
| プラン | 対象 | クレカ必須 | 初期クレジット | 用途のイメージ |
|---|---|---|---|---|
| Azure Free Account | 一般の新規Azureユーザー | 必須 | $200(30日間) | 個人の学習・検証全般 |
| Azure for Students | 対象となる大学生など | 不要 | $100程度+無料枠 | 学生の学習・研究用途向け |
学割が使える人はAzure for Students、それ以外はAzure Free Account、というイメージで選ぶとよいでしょう。
学習用の基本構成を決める(リソースグループや命名ルール)
自分のサブスクリプションを使う以上、後片付けしやすい構成にしておくことが重要です。おすすめの最低限構成は次のとおりです。
- AZ-900学習専用のリソースグループを1つ作る(例:
rg-az900-lab) - リージョンは自分に近い場所(例:
Japan East)を選択 - タグで用途を明示(例:
env=lab,owner=yourname,exam=az-900)
AzureのCost Managementモジュールでも、タグやリソースグループを使ってコストを分類・管理することが推奨されています。
| 種類 | 推奨名の例 | ポイント |
|---|---|---|
| サブスクリプション名 | AZ-900-Learning | 学習用途と一目で分かるようにリネームしておく |
| リソースグループ | rg-az900-lab | 演習用リソースを1か所にまとめ、削除を簡単にする |
| タグ例 | env=lab, exam=az-900 | コスト分析で学習用途だけをフィルタしやすくする |
Learnモジュールの手順を「自分のサブスクリプション」前提に読み替える
古いモジュールやブログ記事には、今でも「サンドボックスを有効化」「Concierge Subscriptionを選択」などの記述が残っています。これらは、そのままでは実行できないため、次のように読み替えればOKです。
- 「サンドボックスを有効化」 → Azureポータルにサインインし、自分のサブスクリプションを選択する。
- 「Concierge Subscription を選択」 → 自分のサブスクリプション(Free Trial/Pay-As-You-Goなど)を選択。
- 「リソースグループ learn-xxxx を作成」 → 命名ルールに沿った名前(例:
rg-az900-lab)で作成。
また、Azure無料アカウントの無料枠で使えるサービスは、一般にどのリージョンでも利用できるため、Learnの手順に書かれているリージョンと完全一致していなくても動作に問題ないことがほとんどです。
コストをおさえながらAZ-900を練習する具体テクニック
無料枠と小さいSKUを優先して使う
Azure無料アカウントでは、12か月無料・常時無料のサービスが多数用意されており、代表例として以下のようなものがあります。
- 特定のVM(B1s / B2pts v2 / B2ats v2)を合計750時間/月まで無料
- Cost Managementなど、コスト管理系サービスは常時無料
- その他、ストレージやデータベース、ネットワーク系サービスに無料枠が存在
AZ-900レベルの演習であれば、高性能なSKUは不要です。必ず最小構成+無料枠優先でリソースを選びましょう。
| 演習内容の例 | 推奨サービス / SKU | メモ |
|---|---|---|
| 仮想マシンの作成 | B1s / B2pts v2 / B2ats v2 | 無料アカウントの「750時間/月」枠の範囲内で利用可能な代表的VM。使い終わったら必ず停止または削除。 |
| ストレージアカウント(Blob) | Standard汎用v2 + LRS | 少量のデータならコストはごく僅少。不要になったらコンテナーごと削除。 |
| Webアプリのデプロイ | App Service Free/F1プラン | 簡単なWebアプリのデプロイ・スケール設定の練習に十分。 |
| サーバーレスの概念理解 | Azure Functions(従量課金プラン) | 少量の実行なら無料枠内で収まるケースが多い。 |
Cost Management + Billingで予算とアラートを設定する
「うっかり高額請求」を防ぐための最も強力な武器が、Azure Cost Management + Billingです。Azure公式ドキュメントでは、コスト分析・予算・アラート機能を総称したツール群として紹介されています。
特に学習用途で活用したいのが予算とコストアラートです。
- Azureポータルで「Cost Management + Billing」を検索して開く。
- 左メニューから「コスト管理」→「予算」を選択。
- 「+ 追加」をクリックし、対象サブスクリプションを選択。
- 月額予算(例: 1,000円)と期間を設定。
- 50% / 80% / 100% などの閾値でアラートメールが飛ぶように設定。
これにより、もし無料枠を超えるような使い方をしても、事前にメール通知で気づけるようになります。サブスクリプション全体ではなく、学習用リソースグループだけを対象にした予算を作ることも可能です。
毎回の演習後に行いたい「クリーンアップ」チェックリスト
無料枠を有効活用する最大のコツは、使い終わったリソースを確実に消すことです。特にVM・パブリックIP・ディスクは、放置するとコストがじわじわ積み重なります。
演習を終えるたびに、最低限次のチェックリストを実施しましょう。
- VMが「実行中」のまま残っていないか(不要なら削除)
- 使い終わったリソースグループを丸ごと削除できないか
- パブリックIPアドレスやディスクなど、「単体で課金されるリソース」が残っていないか
- Cost Managementの「コスト分析」で、今月の累積コストをざっと確認
リソースグループを演習ごとに分けておくと、「その回の演習で使ったものを丸ごと削除」というやり方ができるので、クリーンアップミスを減らせます。
よくある勘違い・質問の整理
Q. 古い記事には「Learnサンドボックスを有効化」と書かれているけど?
A. 2025年現在の公式FAQでは、明確に「Sandboxes are no longer available」と記載されています。
そのため、サンドボックス前提の手順が書かれているブログや書籍は、基本的に仕様変更前の情報だと考えるべきです。手順自体は参考になりますが、
- 「サンドボックス有効化」→「自分のサブスクリプションを選択」
- 「Concierge Subscription」→「Free Trial もしくは Pay-As-You-Go のサブスクリプション」
のように、環境の前提だけ読み替えて活用しましょう。
Q. Exam SandboxだけでAZ-900に合格できますか?
A. できません。Exam Sandboxはあくまで試験画面の操作体験用であり、Azureリソースを作成することはできません。
AZ-900は概念問題が多い試験ですが、Azureポータルの雰囲気を知っておくだけでも問題文のイメージがしやすくなります。最低でも以下のような構成で学習することをおすすめします。
- Microsoft LearnのAZ-900学習パス(概念理解)
- 自分のAzureサブスクリプションでの軽いハンズオン
- Exam Sandboxでの試験UI練習
Q. 学生でクレジットカードを持っていません。どうすれば?
A. 条件を満たす学生であれば、Azure for Studentsを活用するのがおすすめです。クレジットカードなしでサインアップでき、一定額のクレジットと無料枠を利用できます。
ただし、対象となる教育機関や地域などの条件がありますので、必ず公式ページの最新情報を確認してください。
Q. 無料枠を超えてしまって高額請求にならないか不安です
A. Azure無料アカウントの場合、自分から従量課金へアップグレードしない限り課金は行われません。無料クレジットを使い切ると、サブスクリプションは自動的に停止され、明示的にアップグレードしない限りサービスを新規作成できなくなります。
加えて、前述のようにCost Managementで予算とアラートを設定しておけば、「想定外の利用」にすぐ気づけます。学習中は、
- 毎回の演習後にリソースグループを削除する
- 月1回はCost Managementのコスト分析を確認する
といった運用を習慣化すると安心です。
Q. 会社のAzureサブスクリプションを学習に使ってもよい?
A. 技術的には可能ですが、必ず所属組織のポリシーを確認してから行ってください。企業環境では、
- 利用できるリージョンやサービスが制限されている
- タグ付けやリソース命名ルールが厳格に決められている
- 開発・検証・本番などの環境が明確に分かれている
といったケースが多く、「勝手に学習環境を作ったらルール違反だった」ということもありえます。もし利用を許可された場合でも、「学習用リソースグループを1つ作る」「必ず削除する」など、コストとセキュリティに配慮した使い方を徹底しましょう。
今日からできる最短ステップ(まとめ)
最後に、「とにかくAZ-900の勉強を始めたい」という方向けに、最短でとるべき行動を整理します。
- 自分に合うサブスクリプションを選ぶ
一般の方はAzure無料アカウント、学生ならAzure for Studentsを検討。 - Azureアカウントを作成
30日間の$200クレジットと12か月無料枠を確保。 - 学習専用のリソースグループを作成
例:rg-az900-lab。タグで用途を明示。 - Cost Managementで予算&アラートを設定
月額1,000円程度の予算と、50% / 80% / 100%のアラートを設定。 - Microsoft LearnのAZ-900学習パスを実行
「サンドボックス有効化」と書かれていても、自分のサブスクリプションを選んで実行。 - 演習ごとにクリーンアップ
不要なリソースグループは削除し、コストを確認。 - 本番直前にExam Sandboxを触る
試験UIの流れを一度体験し、当日の緊張を減らす。
Learnサンドボックスが終了したことで、「無料で気軽にAzureを触る」ハードルは少し上がりましたが、その代わりに自分名義のサブスクリプションを使って、より現実に近い形で学習できるようになったとも言えます。
AZ-900はクラウド入門として非常に良くできた試験です。無料枠とCost Managementを上手に使いながら、自分専用の学習環境でじっくりAzureに慣れていきましょう。

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