Azure「Extend Windows File Servers with Azure File Sync」の変更点【2026年6月13日】

2026年6月13日(日本時間)に、Microsoft Learnの「Extend Windows File Servers with Azure File Sync」が更新されました。結論からいうと、今回確認できる変更はチュートリアルの手順更新が中心です。Azure File Syncの同期方式、API、料金体系、既存環境の強制移行が変更されたわけではありません。

重要な変更は、Azure File Syncで使用する共有を「SMBのクラシック ファイル共有」と明確にしたことと、Windows Server 2019に固定されていた説明を、対応するWindows ServerとOS別エージェントを選ぶ内容に変更したことです。既存環境を作り直す必要はありませんが、新規構築手順や社内Runbookに古い画面名、OS、MSIファイル名を記載している場合は更新が必要です。(GitHub)

なお、Azure File Syncエージェントのv18とv19は、今回の文書更新とは別に2026年5月13日で期限を迎えています。該当バージョンでは同期が停止するため、管理者はチュートリアルの差分確認より先にエージェントのバージョンを確認してください。(Microsoft Learn)

目次

Azure File SyncでWindowsファイルサーバーを拡張する仕組み

Azure File Syncは、Windows Server上のファイルをAzure Filesへ同期しながら、利用者には従来のWindowsファイルサーバーとしてアクセスさせるサービスです。

Azure上のファイル共有がデータの中心となる「クラウドエンドポイント」、Windows Server上のフォルダーが「サーバーエンドポイント」になります。複数拠点のWindows Serverを同じ同期グループに追加すれば、Azure Filesを介してファイルを同期できます。

公式チュートリアルではAzure VMを使用していますが、主な対象はオンプレミスのWindowsファイルサーバーです。基本的な構築順序は次のとおりです。

  1. Azureストレージアカウントとファイル共有を作成する
  2. Storage Sync Serviceを作成する
  3. Windows ServerへAzure File Syncエージェントをインストールする
  4. Windows ServerをStorage Sync Serviceへ登録する
  5. 同期グループとクラウドエンドポイントを作成する
  6. Windows Server上のパスをサーバーエンドポイントとして追加する

この基本構成は、2026年6月13日の更新後も変わっていません。(Microsoft Learn)

2026年6月13日に変更された内容

項目更新前更新後実務への影響
Azure Filesの作成ストレージアカウントとファイル共有の作成手順を記事内に記載「Create a classic file share」の手順を参照新しいAzure Filesのリソース形式と取り違えないことが重要
ファイル共有の種類通常のファイル共有として説明SMBのクラシック ファイル共有と明記Azure File Sync対応の共有を選びやすくなった
アクセス層Transaction optimizedを使用Transaction optimizedを引き続き使用チュートリアルの初期同期に関する設定は変わらない
Windows ServerWindows Server 2019 Datacenter Gen2を指定対応するWindows Serverを選択2019以外でも手順を適用しやすくなった
エージェントWindows Server 2019用MSIを指定OSに対応するStorage Sync AgentのMSIを選択MSI名を固定した自動化処理は見直しが必要
ファイル共有の容量チュートリアルでは5TiBで十分と記載5TiBの記述を削除容量上限や料金変更ではなく、固定値の案内を削除したもの
サービス構成Storage Sync Service、同期グループ、エンドポイントを作成変更なし既存環境の再構築は不要

公式リポジトリの更新内容は「storage account and file share instructions」の更新で、Markdown文書と画像の変更です。Azure File Syncサービス自体のリリースや料金改定、廃止期限の追加は、この差分には含まれていません。(GitHub)

最も重要な変更は「クラシック ファイル共有」の明確化

現在のAzure Filesには、次の2つのリソース形式があります。

ファイル共有リソースプロバイダーSMBAzure File Sync
クラシック ファイル共有Microsoft.Storage対応対応
新しいトップレベルのファイル共有Microsoft.FileShares現時点では非対応非対応

新しいMicrosoft.FileShares形式は、ストレージアカウントを作らずにファイル共有を直接リソースグループへ配置できます。ただし、現時点ではNFS向けであり、Azure File Syncには対応していません。

そのため、Azure File Syncを構築するときは、Azureポータルで次の経路を選びます。

ストレージアカウント → データ ストレージ → クラシック ファイル共有

ポータル検索から新しいトップレベルの「File share」を直接作成すると、Azure File Syncのクラウドエンドポイントとして選択できない可能性があります。今回の更新は、この選択ミスを防ぐ意味が大きいと考えられます。(Microsoft Learn)

「クラシック」という名称でも、直ちに廃止されるわけではありません。Microsoftは、残る機能差が解消されるまでクラシック形式の非推奨化を開始しない方針を示しています。既存のAzure File Sync環境を新しいMicrosoft.FileShares形式へ移行する必要もありません。(Microsoft Learn)

Windows Server 2019固定から対応OS別の手順へ変更

旧チュートリアルでは、Azure VMのイメージとしてWindows Server 2019 Datacenter Gen2を選び、エージェントもWindows Server 2019用のMSIファイルを指定していました。

更新後は、利用するWindows Serverに対応したVMイメージとエージェントを選ぶ説明に変わっています。2026年6月時点の公式リリースノートでは、Azure File Syncエージェントは次のWindows Serverをサポートしています。

  • Windows Server 2016
  • Windows Server 2019
  • Windows Server 2022
  • Windows Server 2025

新規構築では、OSのバージョンだけでなく、ダウンロードするエージェントの対象OSも一致させてください。StorageSyncAgent_WS2019.msiなどのファイル名を社内手順書やスクリプトへ直接記述している場合は、OS判定を行う処理へ変更するのが安全です。(GitHub)

誰に影響する変更なのか

対象影響度必要な対応
Azure File Syncを新規構築する管理者高SMBのクラシック ファイル共有を選ぶ
既存のAzure File Sync利用者低今回の更新だけを理由に再構築する必要はない
構築手順書やRunbookの管理者中Windows Server 2019、旧画面名、固定MSI名を見直す
ARM、Bicep、PowerShellなどの自動化担当者中Microsoft.Storage配下のファイル共有を作成しているか確認する
Windowsファイルサーバーの一般利用者低通常は共有パスや操作方法の変更はない
Microsoft.FileShares形式を検討している担当者高Azure File Syncが必要ならクラシック形式へ設計を変更する
エージェントv18またはv19の利用者緊急サポート中のエージェントへ更新する

既存の同期グループ、クラウドエンドポイント、サーバーエンドポイントには、今回の文書変更を原因とする設定変更は求められていません。利用者側のドライブ割り当てやUNCパスを変更する必要も通常ありません。(GitHub)

新規構築時に確認する設定

ファイル共有の種類

Azure File Syncでは、ストレージアカウント内に作成するクラシック ファイル共有を使用します。プロトコルはSMBを選択してください。

課金モデルとアクセス層

更新後のチュートリアルでは、従量課金型のクラシック ファイル共有を作成し、アクセス層をTransaction optimizedに設定します。

Transaction optimizedは、保存容量の単価よりもトランザクション単価を抑えたい処理に向いています。初期同期やデータ移行では大量のファイル操作が発生するため、従量課金型を選ぶ場合は合理的な設定です。

ただし、チュートリアルの設定をそのまま本番環境の標準にしないことが重要です。Microsoftは新規ファイル共有全般ではProvisioned v2を推奨しています。従量課金型を使用する場合も、初期同期後に数日から数週間の通常利用を計測し、Transaction optimized、Hot、Coolのどれが安いかを料金計算ツールで比較してください。(Microsoft Learn)

サーバーエンドポイント

サーバーエンドポイントには、Windows Server上の実際の共有フォルダーを指定します。事前に次の点を確認します。

  • 対象ボリュームがNTFSである
  • サーバーエンドポイント同士が入れ子になっていない
  • OSやアプリケーションのページファイルを配置していない
  • システムボリュームでクラウド階層化を使用しない
  • 同期対象にEFS暗号化ファイルや再解析ポイントなどの非対応データが含まれていない

Azure File SyncはReFS、FAT、FAT32上のサーバーエンドポイントをサポートしていません。(Microsoft Learn)

クラウド階層化

今回のチュートリアルでは、サーバーエンドポイント作成時のCloud Tieringを無効のままにします。これは手順を単純化するための設定であり、本番環境で常に無効にすべきという意味ではありません。

ローカルディスク容量を節約したい場合はクラウド階層化を有効にし、頻繁に使うファイルだけをWindows Serverへキャッシュします。一方、全データを常にローカルへ保持したい環境や、回線障害時も全ファイルを開く必要がある環境では無効化を検討します。(Microsoft Learn)

Azure File Syncエージェントの確認と更新

2026年6月時点で、公式リリースノートに掲載されている最新バージョンはv22.3.0.0です。v20、v21、v22系はサポート対象として掲載されています。

一方、v18とv19は2026年5月13日が有効期限です。期限後はStorage Sync Serviceへ接続できず、Azureファイル共有との同期が停止します。(Microsoft Learn)

エージェントは、Azureポータルの次の場所で確認します。

Storage Sync Service → Registered servers

各サーバーの状態とエージェントバージョンを確認し、v18またはv19が残っている場合は直ちに更新してください。

自動更新ポリシーは、Windows Server上の管理者PowerShellで確認できます。

cd 'C:\Program Files\Azure\StorageSyncAgent'
Import-Module .\StorageSync.Management.ServerCmdlets.dll
Get-StorageSyncAgentAutoUpdatePolicy

エージェントには、有効期限が近づいたときに更新するモードと、新しいバージョンを早期に導入するモードがあります。ただし、有効期限直前の自動更新だけに依存せず、Microsoft Updateによる修正プログラムの適用も継続してください。エージェントのダウングレードはサポートされていません。(Microsoft Learn)

Azure Monitorでは「Agent Version Expiration Information」を条件にしたアラートも設定できます。期限の90日前から警告を受け取れるため、複数サーバーを管理している環境では設定しておくと更新漏れを防げます。(Microsoft Learn)

Windows Serverを更新・移行するときの注意点

Windows Serverを新しいバージョンへインプレースアップグレードする場合は、次の順番で作業します。

  1. Azure File Syncエージェントをアンインストールする
  2. Windows Serverを再起動する
  3. OSをアップグレードする
  4. 新しいOSに対応するAzure File Syncエージェントをインストールする
  5. Azureポータルでサーバー状態が正常に戻ったことを確認する

エージェントをアンインストールしても、登録情報やサーバーエンドポイントの設定は維持されます。

一方、OSアップグレード前にサーバーの登録解除を行ってはいけません。登録解除するとサーバーエンドポイントが削除され、クラウド階層化されたファイルがローカル上で孤立するおそれがあります。(Microsoft Learn)

既存のWindowsファイルサーバーをAzure File Syncへ移行する場合は、元のサーバーにエージェントを導入して初期アップロードを完了させた後、追加サーバーや新しい共有先へ利用者を切り替えます。この方法なら、利用者が元の共有を使い続けた状態で同期を進めやすく、停止時間を抑えられます。(Microsoft Learn)

料金で確認すべき項目

今回のチュートリアル更新には、Azure File Syncの料金改定は含まれていません。Azure File Syncの概算費用は、次の要素を合計して確認します。

費用項目確認内容
Azure File Syncのサーバー料金クラウドエンドポイントへ接続するサーバー数
Azure Filesの料金保存容量、IOPS、スループット、トランザクション
データ転送Azureから外部へ転送するデータ量
スナップショットやバックアップ保持容量、保持期間、バックアップポリシー
クラウド階層化ファイルの呼び戻しによるトランザクションや転送量

Storage Sync Serviceごとに、同期サーバー1台分は無料とされています。2台目以降は固定の月額サーバー料金に加え、同期によって発生するAzure Filesの操作料金などがかかります。料金はリージョン、通貨、契約形態によって変わるため、固定金額を社内資料へ転記せず、Azure料金計算ツールで最新条件を確認してください。(Microsoft Azure)

無料枠だけを目的にStorage Sync Serviceを細かく分割するのは避けるべきです。1台のWindows Serverは1つのStorage Sync Serviceにしか登録できず、異なるStorage Sync Serviceのサーバー同士は同期できないため、管理や同期トポロジーが複雑になります。(Microsoft Learn)

また、Software Assurance対象ライセンスを持ち、Windows ServerをAzure Arcへ接続し、Azure File Syncエージェントv22以降を使用する環境では、2026年1月からサーバー単位料金の割引対象となる場合があります。該当する組織は、Azure Arcへの接続状態とエージェントバージョンを併せて確認してください。(Microsoft Learn)

今回の変更に対応期限はあるか

2026年6月13日のチュートリアル更新そのものには、設定変更の期限、強制移行日、サービス廃止日は設定されていません。

ただし、エージェントにはバージョンごとの有効期限があります。主要バージョンは初回リリースから最低12カ月サポートされ、主要バージョン間には最低3カ月の重複期間が設けられます。有効期限が近いサーバーには、少なくとも3カ月前から警告が表示されます。(Microsoft Learn)

現在の優先順位は次のとおりです。

  1. v18またはv19のエージェントが残っていないか確認する
  2. 新規構築手順を「SMBのクラシック ファイル共有」へ修正する
  3. Windows Server 2019やMSI名を固定したスクリプトを見直す
  4. Transaction optimizedを本番でも継続すべきか利用実績から判断する
  5. Azure Monitorでエージェント期限アラートを設定する

今回の変更で最も注意すべきなのは、Azure File Syncそのものの仕様変更ではなく、Azure Filesの新旧リソース形式を取り違えないことです。新規環境ではクラシック ファイル共有を選び、既存環境ではエージェントのサポート期限を確認すれば、不要な再構築や同期停止を避けられます。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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