Azure Functionsの新テンプレートギャラリーとは?VS Code Public Previewの変更点と設定手順

Azure Functionsの新しいテンプレートギャラリーは、VS Codeで新規プロジェクトを作成するときの選び方を刷新するPublic Preview機能です。従来のように言語やトリガーを順番に選ぶだけでなく、目的や言語でテンプレートを検索し、完成形に近いサンプルから開発を始められます。

今回変わるのは、主にローカルでの新規プロジェクト作成フローです。既存のFunction App、デプロイ済みコード、Azure Functionsのホスティングプランが自動的に変更されるわけではありません。そのため、すでに稼働しているシステムに緊急の移行作業は不要です。

2026年6月16日の公式発表では、検索・絞り込みが可能なビジュアルギャラリー、75件を超えるMicrosoft管理のサンプル、自然言語からプロジェクトを生成する「Generate with Copilot」が主な変更点として案内されています。(Microsoft Azure)

目次

Azure Functionsの新しいテンプレートギャラリーで変わること

Azure Functions拡張機能の「Create New Project」が、複数の選択画面を順番に進むQuick Pick形式から、テンプレートを一覧で比較できるギャラリー形式へ拡張されました。

Azure Functions拡張機能のv1.22.0では、このテンプレートギャラリーはオプトイン機能として提供されています。設定を有効にしない限り、従来のプロジェクト作成フローはそのまま利用できます。(GitHub)

比較項目従来のプロジェクト作成新しいテンプレートギャラリー
選択方法言語、ランタイム、トリガーなどを順番に選択テンプレートカードを一覧で比較
探し方表示された候補から選択言語、用途、名前、説明、タグで検索・絞り込み
開発の開始点最小構成のプロジェクトと最初の関数ユースケースに合わせたプロジェクト一式
サンプル主にトリガー単位75件を超える、すぐにデプロイ可能なサンプル
AIによる生成なし作りたいものを文章で説明してひな型を生成
適用方法標準の作成フローPublic Previewとして設定で有効化

従来のVS Codeでは、プロジェクト用フォルダーを選び、言語やHTTPトリガーなどを順番に指定して最初の関数を作成していました。新しいギャラリーでは、その前段階で「何を作りたいか」を基準に開始点を選びやすくなります。(Microsoft Learn)

言語だけでなく用途からテンプレートを探せる

テンプレートギャラリーでは、対応言語やユースケースで候補を絞り込めます。テンプレート名だけでなく、説明文やタグも検索対象です。

公式発表では、次のような用途をカバーするサンプルが示されています。

  • HTTP API
  • イベント駆動処理
  • スケジュール実行
  • データ連携
  • Durable Functionsのオーケストレーション
  • MCPサーバー
  • AI・エージェントワークロード

ただし、「全対応言語を横断した75件超のカタログ」であり、すべてのテンプレートがすべての言語に対応しているという意味ではありません。利用したい言語で絞り込んだうえで、実際に選択できる構成を確認する必要があります。(Microsoft Azure)

「関数テンプレート」より広い範囲を生成できる

従来の関数テンプレートは、HTTP TriggerやTimer Triggerなど、主に1つの関数を追加するためのひな型でした。

新しいプロジェクトテンプレートは、関数コードだけでなく、依存パッケージ、README、ローカル実行設定、デプロイ設定、Bicepなどのインフラ定義を含む場合があります。実装上も、テンプレートの取得、プロジェクトの複製、スキャフォールド生成、READMEの表示までを一連の処理として扱っています。(GitHub)

この違いは重要です。テンプレートを選ぶだけで開発開始までの時間を短縮できる一方、生成されるファイルやAzureリソースの範囲は従来より広くなる可能性があります。

Generate with Copilotでプロジェクトのひな型を生成できる

「Generate with Copilot」では、作成したいシステムを自然言語で説明し、Azure Functionsプロジェクトのひな型を生成できます。(Microsoft Azure)

例えば、次のように具体的な要件を入力すると、単に「HTTP関数を作る」と指定するより、必要な構成を伝えやすくなります。

TypeScriptでService Busキューのメッセージを処理し、
処理結果をデータベースへ保存するAzure Functionsプロジェクトを作成する。
接続情報は環境変数に分離し、ローカル実行手順をREADMEに含める。

生成結果は完成品ではなく、開発開始用のスキャフォールドです。認証、例外処理、入力検証、依存パッケージ、シークレット管理などは、人が確認してから使用してください。

誰に影響するのか

影響が大きいのは、VS CodeからAzure Functionsの新規プロジェクトを作成する開発者と、社内の標準プロジェクトを管理する担当者です。

対象影響度確認すべきこと
VS Codeで新規開発する人大拡張機能のバージョン、テンプレートの内容
初めてAzure Functionsを使う人大サンプルに含まれるリソースや前提条件
開発標準を管理する人中~大採用テンプレート、依存関係、拡張機能の更新方針
既存Function Appだけを運用する人小原則として即時対応は不要
Azure portalやCLIだけを使う人小直接的な操作変更はなし
Copilotの利用を制限している組織中GitHub Copilotの契約、サインイン、組織ポリシー

今回の実装対象は「Create New Project」です。既存プロジェクトのソースコードや、Azure上で稼働しているFunction Appが自動更新される機能ではありません。(GitHub)

テンプレートギャラリーを有効にする手順

Azure Functions拡張機能を更新する

VS Codeの拡張機能画面で「Azure Functions」を開き、v1.22.0以降へ更新します。

組織で拡張機能のバージョンを固定している場合は、個人判断で更新せず、管理者の検証後に展開してください。

VS Codeの設定を追加する

コマンドパレットから次のコマンドを実行します。

Preferences: Open Settings (JSON)

開いたsettings.jsonに、次の設定を追加します。

{
  "azureFunctions.enableTemplateGallery": true
}

既存の設定がある場合は、JSONのカンマ位置を調整してください。

この項目はVS Code拡張機能の設定です。Azure portalにあるFunction Appの「環境変数」や「構成」へ追加する設定ではありません。

新規プロジェクト作成コマンドを実行する

コマンドパレットで次のコマンドを実行します。

Azure Functions: Create New Project...

設定が有効であれば、テンプレートギャラリーが開きます。言語や用途で絞り込み、テンプレートの詳細とREADMEを確認してからプロジェクトを生成します。(GitHub)

生成先には、新規フォルダーまたは空のフォルダーを使用するのが安全です。既存プロジェクトのフォルダーを指定すると、同名ファイルの上書きや設定の競合が起きる可能性があります。Microsoft Learnでも、新規プロジェクトの作成先には空のフォルダーを使用するよう案内されています。(Microsoft Learn)

元の作成画面へ戻す方法

従来の作成フローへ戻す場合は、設定をfalseに変更するか、設定行を削除します。

{
  "azureFunctions.enableTemplateGallery": false
}

設定を無効にしても、すでに生成したプロジェクトのファイルは削除・変換されません。不要な検証用プロジェクトは、フォルダーごと削除してください。

生成後に確認すべき項目

「Ready-to-deploy」と表示されていても、「そのまま本番環境で安全に利用できる」という意味ではありません。少なくとも、次の項目を確認してからデプロイします。

確認項目主な確認内容
言語・ランタイム対象バージョン、ワーカーモデル、サポート期限
依存パッケージpackage.json、requirements.txt、.csproj、pom.xml、go.mod
トリガーHTTP、Timer、Queue、Service Busなどの種類と設定
認証・認可HTTPのAuthorization Level、マネージドID、アクセスキー
ローカル設定local.settings.jsonの接続先とシークレット
インフラ定義Bicep、Azure Developer CLI設定、Dockerfile
作成されるAzureリソースStorage、Application Insights、データベース、メッセージングサービスなど
デプロイ方法VS Codeからの直接デプロイか、CI/CD経由か
ライセンスサンプルコードや追加ライブラリの利用条件
動作確認ローカル起動、単体テスト、エラー時の挙動

local.settings.jsonには接続文字列などの機密情報が入る可能性があります。Microsoft Learnでも、ソース管理から除外するよう注意されています。(Microsoft Learn)

また、Public Preview初期の公式GitHubリポジトリでは、Python、AZD、Bicepを組み合わせた一部テンプレートについて、生成物にDockerfileが含まれているにもかかわらず、ギャラリー上でコンテナ構成が明示されない事例が報告されています。テンプレートカードの説明だけで判断せず、生成後の実ファイルを確認してください。(GitHub)

ローカルで実行・デバッグする場合は、Azure Functions Core Toolsも更新します。VS Codeのコマンドパレットから、次のコマンドを利用できます。

Azure Functions: Install or Update Azure Functions Core Tools

Core Toolsを使えば、Azureへデプロイする前にローカルで関数を起動し、ログやトリガーの動作を確認できます。(Microsoft Learn)

既存プロジェクトの更新や移行は必要か

今回のPublic Previewを理由に、既存のAzure Functionsプロジェクトを移行する必要はありません。Azure Functionsランタイムやホスティング方式の廃止ではなく、VS Codeで新規プロジェクトを作成する際の開発支援機能だからです。

既存システムへ新しいテンプレートの構成を取り入れたい場合は、次の手順が安全です。

  1. 空のフォルダーへテンプレートから新規プロジェクトを生成する
  2. 既存プロジェクトとのファイル差分を確認する
  3. 必要なコードや設定だけを選んで移植する
  4. ローカルテストとステージング環境で検証する
  5. CI/CD経由で本番環境へ反映する

本番リポジトリを生成先に指定し、テンプレートで直接上書きする方法は避けてください。

チームで継続利用する場合は、ギャラリーのテンプレートを毎回直接使うより、検証済みの生成結果を社内スターターリポジトリとして管理する方法が適しています。公式カタログは継続的に更新されるため、同じ名称のテンプレートでも将来の生成内容が変わる可能性があります。

料金は変わるのか

公式発表では、テンプレートギャラリー専用の追加料金は案内されていません。

ギャラリーの閲覧やローカルフォルダーへのプロジェクト生成だけで、Azure Functionsの実行料金が増えるものではありません。一方、生成したプロジェクトをAzureへデプロイすると、選択したホスティングプランや関連リソースに応じて通常のAzure利用料が発生します。

特に、次のリソースを含むテンプレートは、Azure Functions本体以外の料金にも注意が必要です。

  • Azure Storage
  • Application Insights
  • Azure Service Bus
  • Azure Cosmos DBなどのデータストア
  • Azure Container Registry
  • Azure Container Apps
  • AI関連サービス

検証時は専用のリソースグループを作り、予算アラートを設定すると、不要なリソースをまとめて確認・削除しやすくなります。

「Generate with Copilot」の利用条件や費用は、組織で契約しているGitHub Copilotのプランやポリシーに依存します。テンプレートギャラリーそのものと、Copilot機能の利用条件は分けて確認してください。

対応期限やGA予定はあるのか

2026年6月16日時点の公式発表では、一般提供開始日や強制移行期限は明示されていません。オプトイン設定で有効にするPublic Previewであり、従来の作成フローも引き続き利用できます。(GitHub)

Azure Updatesでは「In preview」を、すべてのAzureユーザーが非本番用途とテストに利用できる段階と定義しています。本番開発の標準フローへ組み込む前に、生成内容、安定性、セキュリティ、再現性を検証することが重要です。(Microsoft Azure)

管理者は、次の点を定期的に確認してください。

  • Azure Functions拡張機能のリリースノート
  • プレビュー設定名や既定値の変更
  • 採用テンプレートの追加・更新
  • 対応言語とランタイム
  • GitHub Copilotの組織ポリシー
  • Public Previewから一般提供への移行状況

まず非本番環境で代表的なテンプレートを試す

最初に行うべきことは、全開発者へ一斉展開することではありません。

まず1台の検証用環境でAzure Functions拡張機能を更新し、テンプレートギャラリーを有効化します。次に、実際の業務に近いテンプレートを1つ生成し、依存パッケージ、Azureリソース、認証方式、ローカル実行、デプロイ方法を確認してください。

問題がなければ、生成結果をそのまま使い続けるのではなく、不要な構成を削除して社内標準のスタータープロジェクトとして保存します。これにより、新しいテンプレートギャラリーの開発速度と、組織内で必要な再現性・統制を両立できます。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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