Azure Monitor dashboards with Grafanaは、Azure Portal内でGrafanaダッシュボードを作成・編集・共有できる機能です。2026年5月13日の公式更新で、Public、Government(Fairfax)、China向けの一般提供として整理されました。結論から言うと、Azure Monitorのメトリック、ログ、Prometheus、Application Insightsなどを日常監視する用途なら、まずこの機能を標準候補にして問題ありません。Azure Managed Grafanaや自前Grafanaを新たに立てずに、Azure Portal上でGrafanaの可視化を使えるためです。MicrosoftのAzure Updatesでも、本件はAzure Monitorの「Launched」「General Availability」として掲載されています。(Microsoft Azure)
一方で、すべてのGrafana用途を置き換える機能ではありません。外部データソース、Grafanaアラート、定期レポート、Private Link、追加プラグインなどが必要な場合は、引き続きAzure Managed Grafanaを選ぶべきです。この記事では、今回のGAで何が変わるのか、管理者・開発者が確認すべき設定、移行判断、展開時の注意点を実務目線で整理します。
Azure Monitor dashboards with GrafanaのGAで何が変わるのか
今回のポイントは、Azure Monitor dashboards with Grafanaが「試験的に試す機能」ではなく、運用環境で使う前提の機能として扱いやすくなったことです。Azure Updatesの「Launched」は、Azureの更新情報上では、運用環境で利用できる完全リリース済みの製品・機能を示します。(Microsoft Azure)
Azure Monitor dashboards with Grafanaは、Azure Monitorで収集されたデータをGrafanaダッシュボードとしてAzure Portal内に直接表示する機能です。Microsoft Learnでは、追加コストや構成要件なしで自動的に利用できる選択肢として説明されています。(Microsoft Learn)
| 変更点 | 実務上の意味 | まず確認すること |
|---|---|---|
| 一般提供として利用可能 | 本番監視の標準化候補にできる | 利用中のクラウド環境がPublic、Government(Fairfax)、Chinaのどれか |
| Azure Portal内でGrafanaを利用 | Grafanaサーバーの構築・保守を減らせる | 既存のAzure Monitorデータで足りるか |
| 事前構築済みダッシュボードを利用可能 | ストレージ、Key Vault、AKS、Application Insightsなどの監視を早く始められる | テンプレートをそのまま使うか、コピーして編集するか |
| Azure RBACで管理 | Azureの既存権限設計に組み込みやすい | 閲覧者・編集者・データソース権限を分けて設計する |
| ARM/Bicepやタグ管理に対応 | ダッシュボードをAzureリソースとして扱える | 命名規則、タグ、IaC管理方針を決める |
| Azure Managed Grafanaへコピー可能 | 高度なGrafana要件へ段階的に移行できる | コピー対象がユーザー保存済みダッシュボードか |
この更新を「GrafanaをAzure内で使えるようになった」だけで捉えると、判断を誤ります。重要なのは、Azure Monitorの監視データを使った日常的な可視化が、Azure Portalの標準操作に近づいたことです。
影響範囲:管理者、開発者、SREで見るべきポイント
Azure Monitor dashboards with Grafanaの影響は、監視画面を作る担当者だけに限られません。運用チーム、開発チーム、クラウド管理者、セキュリティ担当者の作業分担にも影響します。
管理者への影響
管理者にとって最も大きい変化は、Grafana用の追加インフラを用意しなくても、Azure Portalからダッシュボードを作成・共有できる点です。Azure Monitor dashboards with Grafanaでは、事前構築済みダッシュボードの利用、Grafanaコミュニティダッシュボードのインポート、Azure RBACやARM/Bicepによる管理が可能とされています。(Microsoft Learn)
ただし、共有リンクを送るだけでは十分ではありません。ダッシュボードを表示するにはReaderロール、編集にはContributorが必要で、さらにダッシュボード内で使うデータソースへのアクセス権も必要です。Azure MonitorデータにはMonitoring Reader、PrometheusデータにはMonitoring Data Readerが必要になるため、権限設計を分けて確認してください。(Microsoft Learn)
開発者への影響
開発者にとっては、Application Insightsやログ、トレース、メトリックをGrafanaのパネルで扱いやすくなる点がメリットです。Application Insights向けのGrafanaダッシュボードでは、Azure Portal内でGrafanaエクスペリエンスが統合され、メトリック、ログ、トレースに対する可視化やクライアント側変換を使えます。(Microsoft Learn)
たとえば、アプリの応答遅延が増えた場合、Application Insightsのパフォーマンス、依存関係、失敗に関するダッシュボードを起点に確認できます。既存のAzure Portalのメトリック画面だけでは見づらかった相関を、Grafanaのパネル構成でまとめやすくなります。
SRE・運用チームへの影響
SREや運用チームでは、AKSやPrometheusメトリックとの組み合わせが特に重要です。AKS向けには、Azure Monitor managed service for Prometheusで収集したクラスター指標、Azure Monitor Logsのコンテナログ、Kubernetes APIやETCDなどのコントロールプレーン関連、ネットワークフロー、GPU監視向けのダッシュボードが説明されています。(Microsoft Learn)
障害対応では、テンプレートをそのまま使うよりも、サービス単位のSLOや重要リソースを中心にコピーを作り、パネルを絞り込むほうが実用的です。画面が多すぎるダッシュボードは、障害時に原因特定を遅らせます。
対応データソースと向いている監視シナリオ
Azure Monitor dashboards with Grafanaは、Azure Monitor Metrics、Azure Monitor managed service for Prometheus、Azure Monitor Logs、Azure Monitor Traces、Azure Resource Graph、Azure Data Explorerをサポートしています。外部SaaSやAzure外の独自データソースを広く扱いたい場合は、Azure Managed Grafanaの検討が必要です。(Microsoft Learn)
| 監視対象 | 向いている使い方 | 注意点 |
|---|---|---|
| Azureリソースのメトリック | CPU、メモリ、可用性、接続数などを定点監視する | しきい値通知が必要ならAzure Monitorアラートと併用する |
| Azure Monitor Logs | KQLでログを集計し、パネル化する | ログ量と保持期間によってコストが変わる |
| Application Insights | アプリの失敗、依存関係、パフォーマンス、トレースを可視化する | リソーススコープとタグに注意する |
| AKS / Prometheus | クラスター、Pod、ノード、GPU、ネットワークを可視化する | PrometheusデータへのRBAC確認が必要 |
| Azure Database for PostgreSQL | CPU、メモリ、接続、I/O、WAL、ログ相関を確認する | ログを見たい場合は診断設定の確認が必要 |
| Azure Resource Graph | サブスクリプション横断でリソース状態を把握する | 権限範囲外のリソースは見えない |
PostgreSQLについては、Azure Database for PostgreSQL向けにGrafanaダッシュボードがAzure Portalにネイティブ統合され、個別のGrafanaインスタンスをデプロイまたは管理せずに主要なメトリックとログを可視化できると説明されています。ログをダッシュボードで扱うには、Azure Monitor Logsへ送る診断設定が前提になります。(Microsoft Learn)
Azure Managed Grafanaとの違い
Azure Monitor dashboards with GrafanaとAzure Managed Grafanaは、名前が似ていますが目的が違います。
Azure Monitor dashboards with Grafanaは、Azure MonitorデータをAzure Portalで手軽に可視化するための機能です。一方、Azure Managed Grafanaは、より広いデータソース、Grafanaアラート、定期レポート、プライベートネットワーク、追加プラグインなどを必要とする場合に使うフルマネージドGrafanaサービスです。Microsoft Learnでも、Azure Monitorデータだけを使う場合はAzure Monitor dashboards with Grafanaが第一候補、外部データソースやアラート、スケジュールレポートなどが必要な場合はAzure Managed Grafanaを選ぶと整理されています。(Microsoft Learn)
| 判断基準 | Azure Monitor dashboards with Grafana | Azure Managed Grafana |
|---|---|---|
| 主な用途 | Azure Monitorデータの可視化 | 複数データソースを含む本格的なGrafana運用 |
| アクセス | Azure Portal | Grafana Web UI |
| 追加コスト | Grafana体験自体は追加コストなし | SKUや利用形態に応じたコストが発生 |
| データソース | Azure Monitor、Prometheus、Logs、Traces、Resource Graph、ADXなど | Azure Monitorに加え、OSS・Enterprise系データソースも利用可能 |
| Grafanaアラート | 非対応 | 対応 |
| 定期レポート | 非対応 | 対応 |
| Private Link | 非対応 | 対応 |
| 追加プラグイン | Azure管理対象に限定 | 要件に応じて拡張しやすい |
| 向いている組織 | Azure中心で素早く標準監視したい組織 | 複数クラウド、外部SaaS、厳格なネットワーク要件がある組織 |
実務では、最初からAzure Managed Grafanaを選ぶ必要があるかを見極めることが大切です。Azure Monitorの範囲で完結する監視なら、Azure Monitor dashboards with Grafanaで始めるほうが、導入も権限管理もシンプルになります。
導入前に確認すべき設定
データが十分に生成されているか
ダッシュボードを開いてもデータが表示されない場合、権限不足だけでなく、そもそも対象リソースに十分な監視データがないことがあります。Microsoft Learnの前提条件では、少なくとも15分間にわたってデータを生成したAzureリソースを実行することが挙げられています。(Microsoft Learn)
検証時は、作成直後のリソースではなく、一定時間動かしたアプリ、AKSクラスター、PostgreSQLサーバーなどで試すと原因を切り分けやすくなります。
RBACをダッシュボードとデータソースで分けて確認する
よくある失敗は、「ダッシュボードリソースの閲覧権限はあるが、データソースを読む権限がない」状態です。たとえば、ダッシュボード自体は開けても、Log AnalyticsワークスペースやAzure Monitor Workspaceへの権限が不足していると、パネルが空になることがあります。
確認すべき権限は次の3つです。
- ダッシュボードリソースを表示・編集する権限
- メトリック、ログ、Prometheusなどデータソースを読む権限
- ダッシュボードを保存するサブスクリプション・リソースグループへの作成権限
共有時には、リンクの共有だけでなく、Azure RBACの割り当てまでセットで確認してください。
テンプレートは直接編集せず、コピーしてから使う
Azure管理テンプレートダッシュボードは、よく使うAzureリソース向けに事前プロビジョニングされ、自動更新されるダッシュボードです。Azure Portalでは、Azure Monitorから「Dashboards with Grafana」を開き、対象のサブスクリプションとリソースグループを選んで表示できます。(Microsoft Learn)
運用で使う場合は、まず「名前を付けて保存」でコピーを作り、自社の監視観点に合わせて編集するのがおすすめです。テンプレートそのものに依存しすぎると、チーム固有のSLO、サービス名、障害対応手順との対応が曖昧になります。
タグと命名規則を決める
保存済みダッシュボードはAzureリソースとして扱われます。GrafanaタグはAzureタグとして管理され、保存済みダッシュボードにタグを追加する場合は、GrafanaDashboardTagsキーにカンマ区切りで値を設定します。また、AKSなど特定リソースのコンテキストで表示させるには、GrafanaDashboardResourceTypeのようなタグが関係します。(Microsoft Learn)
おすすめの命名規則は、次のような形式です。
grafana-{system}-{environment}-{resource-type}
例:
grafana-payments-prod-aks
grafana-webapp-prod-appinsights
grafana-db-prod-postgresql
タグには、少なくとも以下を入れておくと運用しやすくなります。
- system
- environment
- owner
- costCenter
- dashboardPurpose
- incidentPriority
実際の導入手順
Azure Monitor dashboards with Grafanaを試す流れはシンプルです。まずは新規作成よりも、Azure管理テンプレートから始めるほうが失敗しにくいです。
| 手順 | 作業 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 1 | Azure PortalでAzure Monitorを開く | 対象テナント・サブスクリプションが正しいか |
| 2 | 「Dashboards with Grafana」を選択する | 利用できるテンプレートが表示されるか |
| 3 | 監視対象に近いテンプレートを選ぶ | AKS、App Insights、PostgreSQLなど対象に合うか |
| 4 | サブスクリプションとリソースグループを選ぶ | 対象リソースにデータがあるか |
| 5 | 「Save As」でコピーを作成する | 元テンプレートを壊さず編集できるか |
| 6 | パネル、クエリ、変数を編集する | 障害対応時に必要な情報だけに絞れているか |
| 7 | Azure RBACで共有する | 表示・編集・データソース権限が揃っているか |
| 8 | ARM/BicepまたはJSONでエクスポートする | 環境間展開やバックアップに使えるか |
新しいダッシュボードを作る場合は、Grafanaインターフェイス内で新規ダッシュボードを作成し、最初のパネルでAzure Monitor、Azure Data Explorer、Prometheusなどのサポート対象データソースを選びます。(Microsoft Learn)
既存GrafanaやAzure Managed Grafanaから移行すべきか
既存Grafanaをすぐに廃止する必要はありません。移行判断は、「今のダッシュボードがAzure Monitorデータだけで成立しているか」で分けると明確です。
移行しやすいケース
次のような場合は、Azure Monitor dashboards with Grafanaへの移行または併用を検討しやすいです。
- Azure Monitor MetricsとLogsが中心
- AKSのPrometheusメトリックが中心
- Application Insightsの可視化が中心
- ダッシュボード閲覧者がAzure Portal利用者に限られる
- Grafanaアラートや定期レポートを使っていない
- 外部データソースや独自プラグインが少ない
この場合、まずは既存の重要ダッシュボードを1つ選び、Azure Portal内で再現できるかを検証します。完全再現にこだわらず、障害対応で本当に使うパネルだけを移すのが現実的です。
移行しないほうがよいケース
次の要件がある場合、Azure Managed Grafanaを維持したほうがよい可能性があります。
- Grafanaアラートを運用の中核にしている
- 定期レポートを関係者へ配信している
- Datadog、Prometheus自前環境、外部DBなど複数データソースを統合している
- Private Linkや固定送信元IPが必要
- OSSプラグインやEnterprise機能に依存している
- Azure Portalにアクセスできない利用者へダッシュボードを共有したい
Azure Monitor dashboards with Grafanaは、GrafanaのすべてをAzure Portalへ移す機能ではありません。Azure Monitorデータの可視化を低負荷で始める機能、と位置づけると判断しやすくなります。
Azure Managed Grafanaへコピーする場合の注意点
Azure Monitor dashboards with Grafanaで作ったダッシュボードは、必要に応じてAzure Managed Grafanaへコピーできます。ただし、コピーできるのはユーザーが保存したダッシュボードです。Azure管理テンプレートを直接コピーするのではなく、いったん保存してユーザー保存済みダッシュボードにする必要があります。(Microsoft Learn)
特に注意すべき点は次の3つです。
| 注意点 | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| データソースは移行されない | コピー処理はデータソースの作成・構成・マッピングを行わない | コピー後にAzure Managed Grafana側でデータソースを確認する |
| 同じIDのダッシュボードは上書きされる可能性がある | ターゲットに同一IDのダッシュボードがあると上書きされる | コピー前にUIDとフォルダーを確認する |
| Azure管理テンプレートは直接コピーできない | テンプレートは静的コンテンツでARMリソースではない | 先に「Save As」で保存する |
コピー後にパネルが表示されない場合、まずデータソース設定と認証方法を確認してください。Azure Monitor dashboards with Grafanaでは現在のユーザーのIDでデータソースに認証するため、Azure Managed Grafana側でも同じ挙動にしたい場合は、認証方式の選択に注意が必要です。(Microsoft Learn)
運用時に失敗しやすいポイント
共有リンクだけで権限付与したつもりになる
ダッシュボード共有では、リンクを渡すだけでは不十分です。閲覧者にはダッシュボードへのReaderロールが必要で、編集者にはContributorが必要です。さらに、利用されているデータソースへのアクセス権も必要です。(Microsoft Learn)
運用チーム、開発チーム、監査担当者など、利用者ごとに必要な権限を分けてください。全員にContributorを付与する設計は、誤編集や削除のリスクを高めます。
アラートやレポートも使えると思い込む
Azure Monitor dashboards with Grafanaは、Grafanaアラート、レポート、Library panels、Snapshots、Playlists、App pluginsをサポートしていません。これらが必要な場合はAzure Managed Grafanaを利用する必要があります。(Microsoft Learn)
アラートはAzure Monitorアラートで設計し、可視化はGrafanaダッシュボードで行う、という役割分担にすると整理しやすくなります。
ログが出ない原因をGrafana側だけで探す
PostgreSQLやアプリケーションログを表示したい場合、診断設定やLog Analyticsへの送信設定が前提になることがあります。ログが表示されないときは、Grafanaのパネルだけでなく、Azure Monitor Logs側にデータが入っているかを先に確認してください。
Azure Monitor dashboards with Grafana自体にも診断設定を追加でき、更新イベントなどをLog Analyticsワークスペース、ストレージアカウント、Event Hubsなどへ送信できます。診断設定の作成後、データフロー開始まで最大90分かかることがあると説明されています。(Microsoft Learn)
ダッシュボードを作りすぎる
Grafanaは表現力が高い分、ダッシュボードが増えすぎる問題が起きやすいです。監視の標準化では、数よりも用途の明確さが重要です。
おすすめは、次の3階層で整理する方法です。
| 種類 | 目的 | 例 |
|---|---|---|
| Overview | サービス全体の状態を数分で把握する | 稼働状況、エラー率、レイテンシ、主要依存関係 |
| Drilldown | 原因調査に使う | AKSノード、Pod、依存サービス、DB接続数 |
| Component | 個別リソースの詳細を見る | PostgreSQL、Application Insights、Storage、Key Vault |
障害対応時に最初に開くダッシュボードを1つ決め、その画面から深掘りできるように設計すると、運用で使われるダッシュボードになります。
管理者向けチェックリスト
展開前には、以下を確認してください。
| 確認項目 | チェック内容 |
|---|---|
| 対象クラウド | Public、Government(Fairfax)、Chinaのどの環境で使うか |
| 対象リソース | AKS、Application Insights、PostgreSQL、Container Appsなど優先順位を決めたか |
| データソース | Metrics、Logs、Prometheus、Traces、Resource Graph、ADXのどれを使うか |
| RBAC | 閲覧者、編集者、管理者、データソース閲覧権限を分けたか |
| 保存先 | ダッシュボードを保存するサブスクリプションとリソースグループを決めたか |
| タグ | owner、environment、system、purposeなどを標準化したか |
| 診断設定 | ダッシュボード更新イベントを監査できるか |
| IaC | ARM/BicepまたはJSONエクスポートで再展開できるか |
| 移行判断 | Azure Managed Grafanaに残すべきダッシュボードを分けたか |
| 運用ルール | 誰が編集し、誰がレビューし、いつ棚卸しするか決めたか |
特にGovernment(Fairfax)やChina環境では、商用Azureと同じ前提で展開せず、ポータル、リージョン、組織の外部連携ポリシー、監査要件を事前に確認してください。Grafanaコミュニティギャラリーの利用や外部参照を制限している組織では、JSONやARM/Bicepを内部管理する運用のほうが安全です。
開発者・SRE向けの実用例
Application Insightsで障害対応を速くする
Webアプリでエラー率が急増した場合、Application Insightsの失敗、依存関係、パフォーマンス系ダッシュボードを起点にします。Azure Portal内でGrafanaパネルを作れるため、リクエスト数、失敗率、依存サービスの遅延、例外の傾向を1画面にまとめやすくなります。
Application Insights向けのGrafana体験では、事前構築済みダッシュボードの利用、ダッシュボードの作成・編集、Azureリソースとしての保存・共有、Grafana Exploreによるアドホックなデータ探索が説明されています。(Microsoft Learn)
AKSでPrometheusメトリックとログを並べて見る
AKSでは、Prometheusメトリックだけを見ても原因が分からないことがあります。たとえば、Pod再起動、ノード圧迫、APIサーバーの遅延、ネットワークフローの異常は、メトリックとログを組み合わせて見る必要があります。
Azure Monitor dashboards with GrafanaのAKS関連ダッシュボードでは、Prometheusメトリック、コンテナログ、コントロールプレーン、ネットワーク、GPU監視などが対象として説明されています。(Microsoft Learn)
PostgreSQLで性能劣化を早期に見つける
Azure Database for PostgreSQLでは、CPU、メモリ、接続、ストレージ、WAL、I/O、トランザクションなどをGrafanaダッシュボードで確認できます。さらに、ログがAzure Monitor Logsに送られていれば、高CPUイベントと遅いクエリを時刻で突き合わせる運用がしやすくなります。(Microsoft Learn)
本番環境では、次のようなパネルを用意しておくと実用的です。
| パネル | 見るべき状態 |
|---|---|
| CPU使用率 | 突発的な上昇か、継続的な高止まりか |
| メモリ使用量 | クエリや接続増加との相関 |
| Active connections | アプリ側の接続プール異常 |
| Disk I/O | 遅延やスループット低下 |
| Storage / WAL | 容量逼迫やレプリケーション関連の兆候 |
| Slow query logs | 性能劣化の原因候補 |
今回のGA後に取るべき次の行動
まずは、既存のAzure Monitorブック、Azure Portalのメトリック画面、Grafana、Azure Managed Grafanaのダッシュボードを棚卸ししてください。そのうえで、次の順番で進めるのが現実的です。
1つ目は、Azure Monitorデータだけで成立する監視画面を1つ選び、Azure Monitor dashboards with Grafanaで再作成することです。最初から全社展開せず、AKS、Application Insights、PostgreSQLのいずれか1領域で試すと効果を測りやすくなります。
2つ目は、RBACと共有ルールを先に決めることです。誰でも編集できるダッシュボードは、短期的には便利でも、長期的には信頼性が落ちます。
3つ目は、Azure Managed Grafanaに残す用途を明確にすることです。アラート、外部データソース、定期レポート、Private Linkが必要なものは、無理にAzure Monitor dashboards with Grafanaへ寄せないほうが安全です。
Azure Monitor dashboards with GrafanaのGAは、Grafana運用をすべて置き換える発表ではなく、Azure Monitor中心の可観測性をAzure Portal内で扱いやすくする更新です。管理者は権限とガバナンスを整え、開発者とSREは重要な監視画面からコピー・編集していくことで、少ない負担で監視体験を改善できます。

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