Azure OpenAI for generative answers 更新ポイント|Copilot Studio 管理者が確認すべき影響と移行期限

Microsoft Copilot Studio の「Connect your data to Azure OpenAI for generative answers (preview)」は、Copilot Studio のエージェントから Azure OpenAI Service 側で接続した社内データを参照し、生成回答に使うためのプレビュー機能です。結論からいうと、これは「すぐ本番導入する新機能」というより、Azure OpenAI On Your Data を使った既存構成の棚卸しと、Microsoft Foundry Agent Service/Foundry IQ への移行判断を始めるべきサインとして見るのが実務的です。Microsoft Learn では、この機能はプレビューであり、本番利用を目的としたものではなく、仕様変更の可能性があると説明されています。(Microsoft Learn)

特に重要なのは、関連する Azure OpenAI On Your Data が非推奨となり、2026年10月14日に退役予定と明記されている点です。対象ページ単体だけを見ると「Copilot Studio で Azure OpenAI をつなぐ手順」に見えますが、管理者はモデル、リージョン、Azure AI Search、Power Platform 環境、権限、移行期限をまとめて確認する必要があります。(Microsoft Learn)

目次

Azure OpenAI for generative answers の位置付け

「Connect your data to Azure OpenAI for generative answers」は、Copilot Studio のトピック内にある generative answers node から、Azure OpenAI Service 経由で接続したデータを使って回答を生成する仕組みです。Microsoft の説明では、Azure OpenAI models と Azure AI Search がデータをインデックス化し、組織のポリシーに従いながら回答を提供するとされています。(Microsoft Learn)

この機能で実現したいことは、一般的なチャットボットではなく、社内文書、FAQ、技術資料、製品情報、手順書などを根拠にした回答です。たとえば、社内サポート用エージェントに「この申請の承認条件は?」と聞いたとき、一般知識ではなく、社内規程や手順書を検索して回答させる用途が想定されます。

ただし、プレビュー機能である点は軽視できません。プレビューは早期検証とフィードバックのために提供されるもので、機能制限や仕様変更があり得ます。社外ユーザー向けの本番チャネルや、業務停止リスクの高い問い合わせ窓口にそのまま採用するのではなく、検証環境で回答品質・権限・運用負荷を確認するのが安全です。(Microsoft Learn)

今回の更新で管理者が見るべきポイント

今回のポイントは「Copilot Studio で Azure OpenAI 接続ができる」という単純な話ではありません。実務では、接続方法、データ優先順位、退役予定、リージョン制約、権限管理まで含めて判断する必要があります。

確認項目公式情報から読み取れる内容管理者の対応
機能の状態Copilot Studio のプレビュー機能で、仕様変更の可能性がある本番導入ではなく検証・影響調査として扱う
接続方式Azure OpenAI Service でデータを接続し、Copilot Studio の generative answers node から利用するAzure 側と Copilot Studio 側の担当範囲を分けて確認する
設定場所generative answers node の Data source configuration から Classic data options を使い、Azure OpenAI Service への接続を追加する新旧 UI の違いで設定場所を誤らないよう手順化する
優先順位generative answers node に定義したナレッジソースは、エージェントレベルのナレッジソースより優先されるトピック単位の回答根拠を明確に設計する
移行期限Azure OpenAI On Your Data は非推奨で、2026年10月14日に退役予定既存利用がある場合は移行計画を開始する
推奨移行先Microsoft は Foundry Agent Service と Foundry IQ への移行を推奨している新規開発は Foundry 側を優先候補として検討する

Copilot Studio の generative answers node では、トピック単位で複数の内部・外部ナレッジソースを扱えます。ただし、Azure OpenAI など一部のソースは現時点で新しい generative answers node の knowledge sources として直接扱うのではなく、Classic data option から設定する必要があると説明されています。(Microsoft Learn)

具体的な設定の流れ

Copilot Studio で Azure OpenAI を使った生成回答を構成する大まかな流れは、Azure 側でデータ接続を作り、Copilot Studio 側で generative answers node に接続する形です。公式手順では、Azure OpenAI Service in Microsoft Foundry でデータソースを AI モデルに接続し、「Deploy to」から新しい Microsoft Copilot Studio bot を選ぶと、既定環境にエージェントが作成され、Azure リソースに自動接続されると説明されています。(Microsoft Learn)

Copilot Studio 側の設定手順

手順操作実務上の注意点
1トピックに generative answers node を追加するどの問い合わせで Azure OpenAI のデータを使うかをトピック単位で決める
2Data source configuration を開くnode のプロパティまたは Data sources から開ける
3Classic data options を選択するAzure OpenAI 接続ではここを見落としやすい
4Add connection で Azure OpenAI Service への接続を作成する接続先の Azure リソース、モデル、インデックスを確認する
5Connection properties で構成とモデルデータパラメーターを編集するstrictness、取得文書数、システムメッセージなどを調整する
6トピックを保存してテストする回答内容、引用、権限、フォールバック挙動を確認する

公式ドキュメントでは、Azure OpenAI 接続で定義した情報ソースからトピックが回答を生成するようになると説明されています。また、generative answers node に設定したナレッジソースは、エージェントレベルのナレッジソースより優先され、エージェントレベルのソースはフォールバックとして機能します。(Microsoft Learn)

この優先順位は、実務ではかなり重要です。たとえば「人事規程に関する質問」トピックでは人事部の規程データだけを参照し、「ITサポート」トピックではIT手順書だけを参照するように分ければ、関係ない文書を拾って回答するリスクを下げられます。逆に、すべてをエージェントレベルのナレッジに入れてしまうと、質問の文脈によっては想定外の文書を根拠にする可能性があります。

影響範囲は Azure、Copilot Studio、Power Platform まで広がる

この変更の影響範囲は、Azure OpenAI の設定画面だけでは終わりません。少なくとも、Azure OpenAI、Azure AI Search、Copilot Studio、Power Platform 環境、Microsoft Entra ID、データガバナンスの担当者が関係します。

Azure OpenAI と Azure AI Search への影響

Azure OpenAI On Your Data は、データを取り込み、チャンク化し、Azure AI Search などの検索インデックスを使って関連情報を取得し、LLM に渡して回答を生成する構成です。公式情報では、取得、フィルタリング、再ランキング、回答生成という流れが説明されています。(Microsoft Learn)

そのため、回答品質を改善したい場合は、プロンプトだけを調整しても限界があります。検索インデックスのフィールドマッピング、文書の構造、検索方式、strictness の設定を見直す必要があります。公式情報では、フィールドマッピングが回答品質や引用品質に影響すると説明されています。(Microsoft Learn)

Copilot Studio への影響

Copilot Studio 側では、どのトピックで Azure OpenAI 接続を使うか、回答をそのまま返すか、変数に格納して Adaptive Card などで加工するかを設計する必要があります。なお、Teams に公開する場合、生成回答をカスタマイズすると引用リンクのレンダリングに注意が必要だと説明されています。(Microsoft Learn)

また、コンテンツモデレーションの強度も重要です。Copilot Studio の generative answers node ではモデレーションレベルを設定でき、低いレベルほど回答は増えますが、有害な内容を許容する可能性も高まります。既定は High と説明されています。(Microsoft Learn)

グローバル展開への影響

グローバル展開では、リージョンとテナントの確認が欠かせません。Azure OpenAI On Your Data のドキュメントでは、Foundry portal から Copilot Studio に直接デプロイするプレビュー機能は US regions のみ利用可能と説明されています。また、Azure OpenAI と Copilot Studio で使うテナントは同じである必要があるとされています。(Microsoft Learn)

日本、EU、APAC など複数地域で利用する場合は、単に「機能があるか」ではなく、データ所在地、Azure OpenAI のモデル提供リージョン、Power Platform 環境の地域、社内のデータ越境ポリシーを合わせて確認してください。ここを飛ばすと、検証では動いても、本番審査で止まる可能性があります。

移行期限と今後の選択肢

最も重要な実務ポイントは、Azure OpenAI On Your Data が非推奨で、2026年10月14日に退役予定とされていることです。さらに、Microsoft は Azure OpenAI On Your Data への新しいモデルのオンボーディングを停止しており、サポート対象モデルも限定されています。(Microsoft Learn)

公式情報では、Azure OpenAI On Your Data のワークロードは Foundry Agent Service と Foundry IQ に移行することが推奨されています。Foundry Agent Service は、モデル、ツール、ガバナンス、オーケストレーションをまとめ、会話管理、ツール呼び出し、コンテンツ安全性、ID、ネットワーク、可観測性と統合するサービスとして説明されています。(Microsoft Learn)

Foundry IQ は、エージェントが組織データに基づいて回答するためのナレッジベース機能です。Azure Blob Storage、SharePoint、OneLake、Web などのソースを扱い、アクセス権を考慮した回答や引用を返す仕組みとして説明されています。(Microsoft Learn)

既存利用者が取るべき判断

現在の状況推奨アクション
Azure OpenAI On Your Data を本番または準本番で利用中接続一覧、モデル、インデックス、利用アプリを棚卸しし、2026年10月14日までの移行計画を作る
Copilot Studio 連携を検証中プレビューとして検証しつつ、Foundry Agent Service/Foundry IQ で同等構成を試す
これから新規構築する長期運用前提なら、Azure OpenAI On Your Data 依存の設計を避け、Foundry Agent Service と Foundry IQ を優先検討する
社内FAQ程度の軽い用途Copilot Studio の標準ナレッジソースで足りるかを先に確認する
厳格な権限管理が必要Entra ID、Azure AI Search、ACL、Purview ラベル対応まで含めて設計する

移行判断では「いま動くか」ではなく「2026年10月14日以降も保守できるか」を基準にしてください。短期の検証ならプレビュー機能を使う価値はありますが、長期の本番基盤として新規採用する場合は、退役予定のあるコンポーネントに依存しすぎない設計が必要です。

設定変更で失敗しやすいポイント

Classic data options を見落とす

Copilot Studio の generative answers node には複数のナレッジソース設定がありますが、Azure OpenAI を使う場合は Classic data option から設定する必要があります。新しいナレッジソース一覧だけを見て「Azure OpenAI がない」と判断しないよう、管理者向け手順書には画面遷移を明記しておくと安全です。(Microsoft Learn)

既定環境にエージェントが作られることを見落とす

Azure OpenAI Service 側から Copilot Studio bot にデプロイする場合、エージェントは既定環境に作成されると説明されています。Power Platform の環境管理を厳格に行っている組織では、既定環境に検証用エージェントが増え、後から棚卸しが難しくなることがあります。(Microsoft Learn)

実務では、検証前に「どの環境に作成されるか」「所有者は誰か」「DLP ポリシーに抵触しないか」「公開チャネルは制限されているか」を確認しておくべきです。

strictness を回答品質の調整に使えていない

Azure OpenAI On Your Data では、strictness によって検索結果のフィルタリングの強さを調整できます。公式情報では 1 から 5 の整数で制御され、既定値は 3 と説明されています。関連情報が落ちる場合は下げ、無関係な文書が回答に混ざる場合は上げる、という調整が基本です。(Microsoft Learn)

回答品質が悪いときに、すぐモデル変更やプロンプト修正に進むのは早計です。まずは検索対象文書、フィールドマッピング、検索方式、strictness、取得文書数を確認してください。生成AIの回答品質は、モデルより前段の検索品質に大きく左右されます。

システムメッセージを権限管理の代わりにしてしまう

システムメッセージは回答スタイルや役割を指定するのに有効ですが、検索プロセスそのものを制御するものではありません。公式情報でも、システムメッセージは検索プロセスには影響せず、あくまでガイダンスであり、モデルがすべての指示に従うとは限らないと説明されています。(Microsoft Learn)

「この文書は管理職だけに見せて」とプロンプトに書くだけでは不十分です。アクセス制御は、Azure AI Search、Microsoft Entra ID、ドキュメントレベルのセキュリティフィルター、データソース側の権限で実装してください。

セキュリティと権限管理で確認すべきこと

社内データを生成AIに接続する場合、最大のリスクは「回答が間違うこと」だけではありません。ユーザーが本来見られない情報を、エージェント経由で見られてしまうことがより重大です。

Azure OpenAI On Your Data では、Azure AI Search をデータソースに選ぶ場合、ドキュメントレベルのアクセス制御がサポートされます。検索結果は、ユーザーの Microsoft Entra グループメンバーシップに基づいてトリミングされると説明されています。(Microsoft Learn)

また、データ接続では System assigned managed identity または API key を選択でき、セキュリティ上の既定は System assigned managed identity とされています。運用では、API キーの共有や長期固定を避け、可能な限りマネージド ID とロール割り当てで管理する方が監査しやすくなります。(Microsoft Learn)

管理者は少なくとも次の項目を確認してください。

  • Azure OpenAI、Azure AI Search、Blob Storage などのリソース所有者が明確か
  • Copilot Studio エージェントの所有者と公開権限が管理されているか
  • Power Platform の環境と DLP ポリシーに違反していないか
  • Azure AI Search のインデックスに不要な機密文書が入っていないか
  • Entra ID グループに基づくアクセス制御が期待通りに効いているか
  • 生成回答に引用が表示され、根拠確認ができるか
  • モデレーション設定がユースケースに対して適切か
  • ログ、監査、問い合わせ対応の運用フローが決まっているか

本番導入前の検証シナリオ

プレビュー機能を評価する場合は、単に「質問に答えられるか」だけでなく、業務で起きる失敗パターンを意図的に試すことが重要です。

検証シナリオ確認内容合格基準の例
正常なFAQ質問社内文書を根拠に正しく回答できるか引用付きで、担当者が確認して正しい
曖昧な質問不足情報を聞き返すか、誤った断定をしないか推測で断言しない
権限外データ権限のないユーザーが機密情報を取得できないか該当情報を返さない
古い文書と新しい文書の混在最新の規程を優先できるか更新日・版数に沿った回答になる
ノイズ文書の混入関係ない文書に引っ張られないかstrictness や検索設定で改善できる
引用確認回答の根拠が追跡できるか主要な主張に引用がある
多言語利用日本語文書に日本語で回答できるか用語の誤訳や抜けが少ない

特にグローバル企業では、日本語、英語、現地語の文書が混在しがちです。Azure OpenAI On Your Data のシステムメッセージでは、文書の性質や回答言語を指定する例が示されていますが、それだけで検索品質が保証されるわけではありません。言語別の文書分割、メタデータ、インデックス設計も合わせて確認してください。(Microsoft Learn)

管理者が次に取るべき行動

まず、Azure OpenAI On Your Data と Copilot Studio の連携を使っているかを棚卸ししてください。Azure OpenAI リソース、Azure AI Search インデックス、Copilot Studio エージェント、Power Platform 環境、利用モデル、公開チャネルを一覧化します。

次に、2026年10月14日の退役予定を前提に、継続利用、短期検証、移行、廃止を分類します。Microsoft が推奨する Foundry Agent Service と Foundry IQ は、エージェントの実行基盤、ナレッジベース、権限、引用、可観測性を含む方向性として確認しておくべきです。(Microsoft Learn)

新規開発では、プレビュー機能を「短期の検証手段」として使うのは有効です。ただし、本番利用を前提にするなら、退役予定のある Azure OpenAI On Your Data へ深く依存しない設計にし、Foundry Agent Service/Foundry IQ、または Copilot Studio の標準ナレッジ機能で要件を満たせるかを比較してください。

最後に、回答品質の評価を担当者任せにしないことが重要です。テスト質問、期待回答、参照すべき文書、権限パターン、NG回答例をあらかじめ作り、設定変更のたびに同じ基準で確認できるようにしましょう。生成AI連携の成否は、モデル選定だけでなく、データ整備、検索設計、権限管理、運用テストで決まります。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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