Azure Reserved VM Instancesの一部終了へ|2026年7月1日前に確認すべき影響と対応

Azure Reserved VM Instancesを使って古いVMシリーズのコストを抑えている環境では、2026年7月1日以降の購入・更新可否を必ず確認する必要があります。今回の変更は、VMそのものが同日に停止するという話ではありません。影響の中心は、対象VMシリーズに対する1年または3年の予約インスタンス割引を、新規購入・更新できなくなることです。

特に、Av2、Bv1、D/Dv2、F/Fsv2、G、Ls/Lsv2、Dv3、Ev3系を使っている管理者は、既存のRIの有効期限、利用率、今後のワークロード継続予定を確認し、Azure Savings Plan for computeへの切り替え、より新しいVMシリーズへの移行、または期限前の最終更新を判断しましょう。既存のRIは期間満了まで割引が継続しますが、満了後に何もしないと従量課金に戻り、コスト増につながる可能性があります。(Microsoft Learn)

目次

2026年7月1日から何が変わるのか

Microsoft Azureの公式情報では、2026年7月1日から一部のAzure Reserved VM Instances、つまり予約済みVMインスタンスの新規購入と更新ができなくなると案内されています。対象は「古いVMシリーズすべての即時廃止」ではなく、主に特定VMシリーズに対するRI購入・更新オプションの縮小です。(Microsoft Learn)

変更点を整理すると、次のようになります。

項目内容
変更開始日2026年7月1日
対象サービスAzure Reserved Virtual Machine Instances、Azure Virtual Machines
主な影響対象VMシリーズのRIを新規購入または更新できなくなる
既存RIの扱い既に購入済みのRIは、個別の契約期間終了まで割引が継続
VM稼働への影響RIは課金上の割引であり、2026年7月1日にVMが自動停止するわけではない
放置した場合RI満了後、対象ワークロードが従量課金に戻る可能性がある

重要なのは、「VMが動かなくなる日」と「RIを買えなくなる日」を混同しないことです。RIはあくまで課金割引の仕組みです。Microsoftのドキュメントでも、RIは実行中リソースの状態に影響しない課金上の割引であり、既存RIは期限まで有効と説明されています。(Microsoft Learn)

対象となるAzure Reserved VM Instancesの範囲

今回の変更では、対象VMシリーズによって影響するRI期間が異なります。まずは、利用中の予約が次の一覧に含まれるかを確認してください。

対象VMシリーズ2026年7月1日以降に購入・更新できなくなるRI
Av2、Amv2、Bv1、D、Ds、Dv2、Dsv2、F、Fs、Fsv2、G、Gs、Ls、Lsv21年RI
Dv3、Dsv3、Ev3、Esv31年RI、3年RI

Dv3、Dsv3、Ev3、Esv3については、VMシリーズ自体がただちに廃止されるという説明ではありません。Microsoftの移行ガイドでは、これらのVMシリーズは現時点でProduct activeとされている一方、2026年7月1日以降は1年・3年のRI割引を新規購入または更新できないと説明されています。(Microsoft Learn)

一方で、D、Ds、Dv2、Dsv2、Lsなど一部の古いシリーズには、VMサイズ自体の退役日も別途示されています。たとえばD、Ds、Dv2、Dsv2、Lsは2028年5月1日、Av2、Amv2、Bv1、F、Fs、Fsv2、G、Gs、Lsv2は2028年11月15日が退役日として案内されています。(Microsoft Learn)

影響を受ける環境の典型例

今回の告知で特に注意すべきなのは、以下のような環境です。

  • 基幹システムや社内業務システムを古いD/Dv2系、F/Fsv2系、Av2系で長期稼働している
  • コスト最適化のためにAzure Reserved VM Instancesを毎年更新している
  • Azure Virtual Desktop、バッチ処理、検証環境などでBv1やAv2を継続利用している
  • VMサイズの変更を長期間行っておらず、予約の有効期限だけを管理している
  • CSP、SIer、MSPとして顧客のRI更新を代行・提案している

特に運用現場で見落としやすいのは、VMの担当者と請求・予約の担当者が別れているケースです。インフラ担当者は「VMは問題なく動いている」と判断し、請求担当者は「RIは自動更新されるはず」と考えていると、RI満了後に想定外の従量課金へ移行するリスクがあります。

MicrosoftのPartner Center向け案内でも、対象RIの注文、VMシリーズ、有効期限を確認し、2026年7月1日前に対応することが推奨されています。自動更新が有効でも、対象RIは満了後に従量課金へ戻る可能性がある点に注意が必要です。(Microsoft Learn)

まず確認すべき設定と利用状況

管理者が最初に行うべきことは、新しいVMへ移行することではありません。まず、どの予約が、どのVM利用に、いつまで効いているかを棚卸しすることです。

Microsoftの移行ガイドでは、Azure portalのReservationsでProduct typeをVirtual Machinesに絞り込み、VM familyとReservation expiration dateを確認する手順が示されています。さらに、Cost Management + Billingで利用率とアクティブな利用状況を確認し、RI満了後もワークロードが継続するかを判断する流れが推奨されています。(Microsoft Learn)

確認項目見るべきポイント判断の目安
VM family対象VMシリーズに含まれるかAv2、Bv1、D/Dv2、F、G、Ls、Dv3、Ev3系などは要確認
RIの有効期限2026年7月1日前後で満了するか期限前なら更新・移行判断の猶予が短い
RI利用率予約が十分に使われているか利用率が低い場合はSavings Planや構成見直しを検討
ワークロード継続予定満了後も同じVMを使うか継続するなら代替の割引策が必要
VM移行可否OS、アプリ、ストレージ、ネットワーク要件新世代VMへの移行テストが必要
権限予約を表示・購入・変更できるかOwner、Reservation purchaser、課金管理者などを確認

Azure portalでは、Reservations画面で予約の一覧と利用率を確認できます。利用率を見るには、予約に対するAzure RBACアクセス、または課金管理者としての権限が必要です。(Microsoft Learn)

管理者が取るべき3つの選択肢

対象のAzure Reserved VM Instancesを見つけたら、次に判断すべきことは大きく3つです。どれが正解かは、ワークロードの安定性、移行余力、コスト管理方針によって変わります。

Azure Savings Plan for computeへ移行する

今後もAzure上でコンピュート利用が継続するものの、VMサイズやリージョン、サービス構成が変わる可能性がある場合は、Azure Savings Plan for computeが有力な選択肢です。

Savings Planは、1年または3年の期間で一定の時間あたり利用額をコミットする割引モデルです。RIのように特定のVMファミリやリージョンに強く固定されるのではなく、対象となるコンピュート利用に柔軟に適用されます。Microsoftは、Savings Planを「動的または変更の多いワークロードに向く」割引モデルとして説明しています。(Microsoft Learn)

向いているケースは次の通りです。

  • 今後VMサイズやリージョンを変更する可能性がある
  • App Service、Container Apps、Azure Functions Premiumなども含めてコンピュート支出を最適化したい
  • 古いVMシリーズに固定したRI更新より、柔軟性を優先したい
  • アプリ刷新やクラウド最適化の計画が進行中

一方で、Savings Planは時間あたりの利用額に対するコミットです。コミット額を大きくしすぎると、使い切れない時間帯の余剰が発生する可能性があります。購入前には、直近数か月の対象コンピュート利用を確認し、ピークではなく継続的に発生している利用額を基準にするのが安全です。

新しいVMシリーズへ移行する

古いVMシリーズを長く使い続けている場合は、この機会に新しいVMシリーズへ移行する選択肢もあります。MicrosoftのVMサイズ移行ガイドでは、D/Ds/Dv2/Dsv2からDsv5、Dsv6、Dsv7系など、Ls/Lsv2からLsv3、Lasv3、Lsv4、Lasv4系などへの移行候補が示されています。(Microsoft Learn)

移行のメリットは、RI継続可否だけではありません。新しいVMシリーズでは、価格性能比、リージョン対応、ハードウェア機能の面で改善が期待できます。Microsoftの移行ガイドでも、新世代VMへの移行により価格性能比やリージョン可用性、最新ハードウェア機能にアクセスしやすくなると説明されています。(Microsoft Learn)

ただし、VMサイズ変更は単なるスペック表の置き換えではありません。特にv6系やv7系を検討する場合は、次の点を確認してください。

確認項目注意点
OS対応v6系ではNVMe対応やGeneration 2 VMが前提になる場合がある
ディスク構成SCSI/NVMeの違いにより、起動・データディスクの挙動を検証する
ネットワークMANA対応OSやAccelerated Networkingの要件を確認する
クォータ移行先VMシリーズのvCPUクォータが足りないと展開できない
リージョン・ゾーン目的のリージョンや可用性ゾーンで移行先サイズが利用可能か確認する
性能CPU世代、メモリ比率、IOPS、スループットを実測で確認する

Microsoftの移行ガイドでも、v6 VMではNVMe有効化、対応OS、Generation 2 VM、MANA対応OS、リージョンやゾーンの容量を確認する必要があるとされています。(Microsoft Learn)

2026年7月1日前に最後のRI更新を検討する

ワークロードが安定しており、短期的にVM移行を予定していない場合は、2026年7月1日前に対象RIの更新を検討する選択肢もあります。Microsoftの移行ガイドでは、期限前に更新されたRIは、2026年7月1日以降も契約期間満了まで有効と説明されています。(Microsoft Learn)

ただし、これは「とりあえず更新すれば安心」という意味ではありません。次の条件を満たす場合に限定して検討するのが現実的です。

  • 対象VMを今後1年程度は継続利用する見込みが高い
  • VM移行やアプリ改修の計画がまだ固まっていない
  • RI利用率が高く、割引効果が明確に出ている
  • 期限後の従量課金化を避けたい
  • 移行検証に十分な時間を確保したい

反対に、利用率が低いRI、近く廃止予定の環境、頻繁にサイズ変更する開発・検証環境では、最後の更新よりもSavings Planや構成整理を優先したほうがよい場合があります。

開発者・運用担当者が注意すべき展開上のポイント

今回の変更は請求・コスト管理の話に見えますが、開発者やSRE、インフラ運用担当者にも影響します。RI満了後のコスト増を避けるためにVM移行を急ぐと、アプリケーションの互換性や性能検証が不足しやすいためです。

ARMテンプレート、Bicep、TerraformのVMサイズを確認する

IaCでVMを展開している場合、テンプレート内に古いVMサイズが固定されている可能性があります。

たとえば、次のような指定が残っている場合は注意が必要です。

"vmSize": "Standard_D2_v2"

またはTerraformで次のように指定しているケースです。

vm_size = "Standard_F2s_v2"

対象VMシリーズのRIが更新できなくなるだけでなく、将来的なVMサイズ退役の影響も考えると、IaC内のVMサイズ指定を棚卸しし、移行先候補を明示しておくべきです。特に共通モジュールで古いVMサイズをデフォルト値にしている場合、複数環境へ影響が広がります。

自動スケールやVMSSのサイズ指定を確認する

Virtual Machine Scale Setsを使っている場合、スケールアウト時に古いVMシリーズが増える構成になっていないかを確認してください。

RIの対象外になると、スケールアウトした分が従量課金として増えやすくなります。特に、夜間バッチ、月末処理、季節性のあるアクセス増に合わせて自動スケールする環境では、RI満了後の請求額が平常時だけでは読みにくくなります。

確認すべきポイントは次の通りです。

  • VMSSのSKUが対象VMシリーズか
  • 自動スケール時の最大インスタンス数
  • ピーク時だけ使われるVMがRIやSavings Planの対象に入るか
  • 移行先VMで同じスケール条件が妥当か
  • Azure Monitorのメトリックしきい値が新VMでも適切か

ディスク、ネットワーク、OSイメージの互換性を検証する

新しいVMシリーズへ移行する場合、CPUとメモリが同等でも、ディスクコントローラーやネットワーク要件が変わることがあります。Microsoftの移行ガイドでは、VMのリサイズ手順として、停止・割り当て解除、選択したVMシリーズへのサイズ変更、起動という流れが示されています。(Microsoft Learn)

本番環境では、次の順序で検証すると安全です。

手順作業内容
事前確認現行VMのサイズ、OS、ディスク、NIC、拡張機能、バックアップ設定を記録
移行先選定CPU、メモリ、IOPS、ネットワーク、リージョン在庫、クォータを比較
検証環境作成スナップショットやバックアップから同等構成を作成
起動確認OS起動、サービス起動、ログイン、監視エージェント動作を確認
性能確認実ワークロードに近い負荷でCPU、メモリ、ディスク、ネットワークを測定
切り戻し準備旧VMサイズへ戻す条件、手順、担当者を決める
本番反映メンテナンス時間を確保し、変更後の監視を強化

「リサイズできる」ことと「業務アプリが安定稼働する」ことは別です。特にDBサーバー、SAP連携、独自ミドルウェア、古いWindows Server/Linuxディストリビューションを使うVMでは、検証環境での確認を省略しないでください。

RI満了前に作るべき対応スケジュール

Microsoftは、RI満了時点ではなく、満了の6〜12か月前から計画することを推奨しています。Savings Planの購入タイミング、アプリケーション刷新、VM移行のマイルストーンを合わせることが重要です。(Microsoft Learn)

実務では、次のようなスケジュールで進めると判断が遅れにくくなります。

時期やること
すぐ対象VMシリーズとRI有効期限を一覧化する
RI満了の6〜12か月前Savings Plan、VM移行、期限前更新のどれを選ぶか方針を決める
RI満了の3〜6か月前移行先VMの検証、クォータ申請、見積もり、関係者調整を行う
RI満了の1〜3か月前本番移行計画、メンテナンス日程、切り戻し手順を確定する
RI満了直前予約・Savings Plan・従量課金の適用状況を請求画面で確認する
RI満了後Cost Managementで実請求、利用率、想定外の従量課金を確認する

特に、2026年7月1日前に更新判断が必要なRIは、社内承認や予算確保に時間がかかることを見込むべきです。クラウドのコスト最適化は技術判断だけでなく、契約、予算、調達、顧客説明が絡むため、締切直前では選択肢が狭くなります。

判断に迷ったときの選び方

どの選択肢を取るべきか迷った場合は、次の基準で考えると整理しやすくなります。

状況推奨される対応
VM構成が安定しており、1年程度は変更予定がない2026年7月1日前のRI更新を検討
VMサイズやリージョンを今後変更する可能性があるAzure Savings Plan for computeを検討
古いVMシリーズを長期利用している新しいVMシリーズへの移行を優先
RI利用率が低いRI更新ではなくSavings Planやリソース削減を検討
アプリ刷新が近いVM移行とコスト最適化を同じ計画にまとめる
顧客環境を管理しているCSP/SIer顧客別に対象RI、有効期限、代替案を提示する

実務上のおすすめは、「RI更新だけで延命する環境」と「新世代VMへ移行する環境」を分けることです。すべてを一括移行しようとすると検証負荷が高くなります。一方で、すべてを期限前更新で先送りすると、将来の退役対応とコスト増リスクが残ります。

たとえば、業務影響が大きく移行検証に時間がかかる基幹VMは、期限前更新で猶予を確保する。一方、開発・検証環境や水平展開しやすいWebサーバーは、新しいVMシリーズやSavings Planへ早めに切り替える。こうした分割判断が現実的です。

コスト増を防ぐためのチェックリスト

最後に、今回の変更に対して管理者が実施すべき作業をチェックリストにまとめます。

チェック項目完了目安
Reservationsで対象VMシリーズのRIを抽出したすぐ
RIの有効期限、スコープ、利用率を確認したすぐ
2026年7月1日前に更新判断が必要なRIを洗い出したすぐ
対象VMの継続利用予定をアプリ担当者に確認した1〜2か月以内
Savings Planの適用候補となる継続的なコンピュート支出を確認した1〜2か月以内
新しいVMシリーズへの移行候補を選定したRI満了の6か月前まで
クォータ、リージョン、OS、NVMe、Generation 2、MANA要件を確認した検証前
IaC、VMSS、自動スケール設定のVMサイズを棚卸しした検証前
本番移行と切り戻し手順を作成した本番変更前
RI満了後の請求をCost Managementで確認した満了後

今回のAzure Reserved VM Instancesの変更は、2026年7月1日にVMが一斉停止するような障害対応型のイベントではありません。しかし、放置するとRI満了後に従量課金へ戻り、月次コストが上がる可能性があります。

まずはAzure portalのReservationsで、対象VMシリーズとRI有効期限を確認してください。そのうえで、安定稼働を優先するVMは期限前更新、柔軟性が必要なワークロードはAzure Savings Plan for compute、長期利用する環境は新世代VMへの移行を検討するのが現実的です。コスト管理と移行計画を同じタイムラインで扱うことで、予期しない請求増と将来のVM退役対応を同時に減らせます。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

コメント

コメントする

目次