Azure SQLの運用中に「Cumulative Update 24 for SQL Server 2022(KB5080999)」という公式情報を見つけた場合、最初に押さえるべき結論はシンプルです。Azure SQL Databaseだけを使っている場合、管理者がCU24を手動で適用する作業は基本的にありません。一方で、Azure SQL Managed Instance、SQL Server on Azure VM、オンプレミスSQL ServerとAzure SQLを連携している環境では、更新ポリシー、リンク、レプリケーション、可用性グループ、既知の問題を確認する必要があります。
Cumulative Update 24 for SQL Server 2022(KB5080999)は、SQL Server 2022向けの累積更新プログラムです。リリース日は2026年3月12日、SQL Serverのビルドは16.0.4245.2で、SQL Server 2022 CU23以降に提供された14件の修正を含みます。Microsoft Learnの英語版では最終更新日が2026年5月26日と表示されているため、日本語圏では「2026年5月下旬に更新されたCU24関連の公式情報」として扱うと、リリース日との混同を避けられます。(Microsoft Learn)
まず結論:Azure SQLで見るべき影響はサービス種別で変わる
Cumulative Update 24 for SQL Server 2022(KB5080999)は、主にSQL Server 2022 on Windows / Linuxを対象とする更新です。Azure SQLという名前だけで判断すると誤解しやすいため、まず自分の環境がどれに該当するかを切り分けてください。(Microsoft Learn)
| 利用しているサービス | CU24を手動適用するか | 管理者が確認すべきこと |
|---|---|---|
| Azure SQL Database | 原則不要 | アプリの互換性、クエリ挙動、機能差分を確認 |
| Azure SQL Managed Instance | 通常はサービス側の更新ポリシーで管理 | SQL Server 2022更新ポリシー、Always-up-to-date、Managed Instance link、バックアップ/復元の互換性を確認 |
| SQL Server on Azure VM | 必要になる場合がある | Azure Update Manager、WSUS、Microsoft Update、手動適用方針を確認 |
| オンプレミスSQL Server 2022 | 必要になる場合がある | CU適用計画、Always On、レプリケーション、リンクサーバー、ロールバック手順を確認 |
| オンプレミスSQL ServerとAzure SQL Managed Instanceのハイブリッド構成 | 影響あり | MI link、フェールバック、レプリケーション、ビルド差分を確認 |
Azure SQL Databaseは、常にSQL Database Engineの最新の安定版とパッチ適用済みOS上で稼働するサービスとして説明されています。そのため、オンプレミスSQL ServerのようにKBファイルをダウンロードしてAzure SQL Databaseへ適用する、という運用にはなりません。(Microsoft Learn)
ただし、「手動適用しない」ことと「影響がない」ことは別です。Azure SQL Databaseでも、T-SQLの挙動、クエリ最適化、接続方式、アプリケーション側の依存機能は確認が必要です。特にオンプレミスSQL Server 2022からAzure SQLへ移行する計画がある場合、CU24の修正内容とAzure SQL側の互換性を同時に見ておくと、移行後の障害を減らせます。
Cumulative Update 24 for SQL Server 2022(KB5080999)の基本情報
KB5080999は、SQL Server 2022 CU24を説明する公式KBです。主なポイントは、SQL Server本体のビルドが16.0.4245.2、Analysis Servicesのビルドが16.0.43.252であること、そしてCU23以降の14件の修正を含むことです。(Microsoft Learn)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| KB番号 | KB5080999 |
| 更新名 | Cumulative Update 24 for SQL Server 2022 |
| リリース日 | 2026年3月12日 |
| SQL Serverビルド | 16.0.4245.2 |
| SQL Serverファイルバージョン | 2022.160.4245.2 |
| Analysis Servicesビルド | 16.0.43.252 |
| 対象 | SQL Server 2022 on Windows、SQL Server 2022 on Linux |
| 主な内容 | SQL Server 2022 CU23以降の修正14件 |
注意したいのは、CU24が「記事作成時点の最新CU」とは限らない点です。Microsoft LearnのSQL Server 2022ビルド一覧では、CU25がLatestとして掲載され、CU24はその一つ前の累積更新として掲載されています。今から新規に適用計画を立てる場合は、CU24に固定する理由があるか、最新CUへ進めるべきかを必ず確認してください。(Microsoft Learn)
CU24で変更・修正された主な領域
CU24の修正は、レプリケーション、可用性、バックアップ/復元、クエリ処理、全文検索、Linux関連、セキュリティ基盤などに分かれます。すべての環境に同じ影響があるわけではありませんが、以下の領域に該当する環境では事前検証の優先度を上げるべきです。(Microsoft Learn)
| 修正領域 | 代表的な変更点 | 確認すべき環境 |
|---|---|---|
| レプリケーション | sp_adddistributorに@multi_subnet_failoverのオプション追加、AG配下のディストリビューター名解決に関する修正 | トランザクションレプリケーション、AGとディストリビューターを組み合わせている環境 |
| 高可用性/災害対策 | Contained Availability Groupの作成・復元・再起動・フェールオーバー関連の修正 | Always On、Contained AG、Log Shippingを使う環境 |
| バックアップ/復元 | インメモリソートバッファ計算に関する無限ループ問題の修正 | 大規模バックアップ/復元、巨大データ処理を行う環境 |
| クエリ処理 | Hekatonから非Hekatonスタックへ切り替わる際の例外修正 | In-Memory OLTPを使うアプリ |
| アクセスメソッド | 40億行を超える行セットのソート失敗に関する修正 | 大量データ分析、ETL、集計処理 |
| 全文検索 | sp_fulltext_service 'batch_timeout'によるバッチタイムアウト設定の追加 | Full-Text Searchを使う検索機能 |
| セキュリティ基盤 | セキュリティ関連メタデータテーブルの競合緩和 | ログイン・権限参照が多い高負荷環境 |
| Linux関連 | sys.dm_os_linux_disk_statsの列名修正、シンボリックリンク対応、Bulkadmin関連の設定追加 | SQL Server 2022 on Linux |
実務では、「自社が使っている機能に関係する修正だけを見る」のが効率的です。たとえば、Azure SQL Managed Instanceへの移行検証をしている企業で、オンプレミスSQL Server 2022側にAlways Onとレプリケーションがあるなら、CU24のHADR・レプリケーション修正は優先的に確認します。逆に、単体の小規模SQL Serverで全文検索もAGも使っていない場合、影響範囲は比較的限定されます。
Azure SQL Database利用者が確認すべきポイント
Azure SQL Databaseを使っている場合、KB5080999のインストーラーを自分で適用する必要はありません。Azure SQL DatabaseはPaaSとして提供されるため、エンジンとOSの更新はMicrosoft側で管理されます。(Microsoft Learn)
ただし、次のようなケースではCU24の情報を「移行・互換性確認の材料」として見る価値があります。
| ケース | 確認ポイント |
|---|---|
| SQL Server 2022からAzure SQL Databaseへ移行予定 | 移行元SQL ServerのCUレベル、互換性レベル、使用しているT-SQL機能を確認 |
アプリがSESSION_CONTEXTを使っている | セッション状態、接続プール、並列実行時のテストを実施 |
| 大量データ処理や検索機能がある | ソート、全文検索、タイムアウト、実行計画の変化を検証 |
| オンプレミスとAzure SQLを併用している | 移行前後で同じクエリの結果・性能・例外発生有無を比較 |
特に、マルチテナントアプリでSESSION_CONTEXTを使ってテナントIDやユーザーIDを保持している場合は要注意です。SQL Serverの既知問題として、SESSION_CONTEXTが並列実行プラン内で実行され、セッションが再利用される条件では、誤った結果やアクセス違反が発生する可能性が説明されています。(Microsoft Learn)
Azure SQL Managed Instance利用者への影響
Azure SQL Managed Instanceでは、CU24を単体パッチとして管理者が直接インストールするというより、更新ポリシーとSQL Server互換性を確認することが重要です。
Microsoftのドキュメントでは、Azure SQL Managed InstanceのSQL Server 2022更新ポリシーは、内部データベース形式をSQL Server 2022と揃え、SQL Server 2022向けの最新更新を受け取るものと説明されています。また、SQL Server 2022とAzure SQL Managed Instance間のリアルタイムデータレプリケーション、双方向フェールオーバー、災害対策に関係するlink機能にも関わります。(Microsoft Learn)
| 更新ポリシー | 特徴 | 選ぶべきケース |
|---|---|---|
| SQL Server 2022更新ポリシー | SQL Server 2022とデータベース形式を揃える。SQL Server 2022への復元やlink構成に有利 | SQL Server 2022とのフェールバック、移行、ハイブリッドDRが必要 |
| Always-up-to-date | Azure SQL Managed Instanceの新機能・最新更新を受けやすい | SQL Server 2022への戻しやlink要件より、新機能・改善を優先する |
| SQL Server 2025更新ポリシー | SQL Server 2025系との互換性を意識した選択肢 | SQL Server 2025との連携や新しいT-SQL機能を使いたい |
重要なのは、Always-up-to-dateへ変更すると、SQL Server 2022またはSQL Server 2025更新ポリシーへ戻せない点です。SQL Server 2022へバックアップを戻す、SQL Server 2022とのManaged Instance linkを使う、フェールバックを想定する、といった要件があるなら、更新ポリシー変更を急ぐべきではありません。(Microsoft Learn)
SQL Server on Azure VM利用者はCU24の直接対象になり得る
SQL Server on Azure VMは、Azure上で動いていても中身は利用者が管理するSQL Serverです。そのため、SQL Server 2022をVM上で運用している場合、CU24やそれ以降のCU/GDRは直接の運用対象になります。
Microsoftは、SQL Server on Azure VM向けにAzure Update Managerを使ってSQL Serverの累積更新、SQL Server更新、OS更新を管理できると説明しています。一方で、Azure Update ManagerとAutomated Patchingを同時に有効化すると、スケジュール競合や意図しない変更が発生する可能性があるため、併用しないよう注意が必要です。(Microsoft Learn)
SQL Server on Azure VMで確認すべき項目は次のとおりです。
| 確認項目 | 実務での見方 |
|---|---|
| 現在のビルド | 16.0.4245.2未満か、CU24以降かを確認 |
| 更新管理方式 | Azure Update Manager、WSUS、Microsoft Update、手動適用のどれかを明確化 |
| Automated Patchingの有無 | Azure Update Managerと二重管理になっていないか確認 |
| メンテナンスウィンドウ | 再起動、フェールオーバー、アプリ停止時間を見積もる |
| 既知問題 | SESSION_CONTEXT、MSDASQLリンクサーバー、AGリスナーのログを重点確認 |
| ロールバック | アンインストール手順、スナップショット、バックアップ復元手順を準備 |
既知の問題:本番適用前に必ず見るべき3点
CU24には既知の問題も記載されています。修正内容だけを見て適用を急ぐのではなく、自社環境が該当するかを先に確認してください。
SESSION_CONTEXTを使うクエリで誤結果やAVが起きる可能性
SESSION_CONTEXTを使うクエリが並列実行プランで実行される場合、誤った結果やアクセス違反のダンプが発生する可能性があります。Microsoftは回避策として、トレースフラグ11042によりSESSION_CONTEXTを直列実行させる方法を示しています。(Microsoft Learn)
実務で影響を受けやすいのは、次のようなアプリです。
| 使い方 | 影響の見方 |
|---|---|
| マルチテナントのテナントID保持 | 別テナントのデータ参照につながらないかを重点テスト |
| Row-Level Securityの条件に利用 | 権限制御やフィルタ条件が崩れないか確認 |
| 接続プール利用アプリ | セッション再利用時の値の残り方を確認 |
| ORMや共通DBアクセス層で利用 | アプリ側から見えにくいため、コード検索とSQLトレースで確認 |
特に危険なのは、「エラーが出る」よりも「結果が正しくない」ケースです。検索API、権限判定、請求データ、監査ログなどでSESSION_CONTEXTを使っている場合は、単純な疎通テストではなく、データ分離や権限境界のテストまで行うべきです。
MSDASQLを使うリンクサーバーでエラー7416が発生する可能性
CU24の既知問題として、MSDASQLプロバイダーを使い、プロバイダー文字列@provstrを指定したリンクサーバークエリが、エラー7416で失敗する場合があります。Microsoftは、不要なら@provstrを削除する、またはUser IDをプロバイダー文字列へ追加する回避策を示しています。なお、影響ユーザーへsysadmin権限を付与する方法も回避にはなり得ますが、Microsoftは推奨していません。(Microsoft Learn)
本番前には、少なくとも以下を確認してください。
SELECT
name,
product,
provider,
data_source,
provider_string,
is_linked
FROM sys.servers
WHERE is_linked = 1
AND provider = 'MSDASQL';
確認すべきなのは、管理者アカウントで成功するかどうかではありません。実際にアプリが使うログイン、バッチが使うログイン、レポートツールが使うログインで成功するかを確認してください。エラー7416は、sysadminでは再現しにくく、一般権限のユーザーで初めて発覚することがあります。
Availability Groupリスナーでエラー10013がログに出る可能性
CU24の既知問題として、可用性グループのリスナー構成がある場合、SQL Serverサービス起動時やフェールオーバー時に、リスナー関連のエラー10013がSQL Serverエラーログへ出力される可能性があります。Microsoftは、この問題はログ出力にとどまり、リスナー接続の機能には影響しないと説明していますが、修正は調査中としています。(Microsoft Learn)
運用上は、「ログにエラーが出るが接続は正常」という状態を監視システムが障害として誤検知しないかを確認しましょう。監視ルールでエラー10013を一律に重大障害扱いしている場合、CU適用直後にアラートが増える可能性があります。
適用判断:CU24を選ぶべきか、最新CUを選ぶべきか
CU24の記事を見ている場合でも、今から適用するなら「CU24で止める理由」があるかを確認してください。Microsoftのビルド一覧ではCU25がLatestとして掲載されているため、通常は最新CU、または自社の検証済み最新ビルドを基準に計画するのが自然です。(Microsoft Learn)
| 判断軸 | CU24を検討するケース | 最新CUを検討するケース |
|---|---|---|
| ベンダーサポート | 業務アプリやミドルウェアがCU24までを認定済み | ベンダーが最新CUを許容している |
| 障害対応 | CU24に含まれる修正が該当障害に直接効く | CU24以降の修正も取り込みたい |
| 検証状況 | 検証環境でCU24のみ確認済み | 検証をこれから始める |
| セキュリティ運用 | GDR/CUの適用方針が社内で固定されている | 最新の累積更新を定期適用する運用 |
| 可用性要件 | 短期的に安定優先でビルドを固定したい | 長期的な保守性とサポート性を優先したい |
Microsoftは、SQL Serverの更新について、最新のセキュリティ更新や重要更新を適時適用することを推奨しています。また、インストール済みSQL ServerにはGDR、SP、CUなどの最新のセキュリティ更新・重要更新を適用することが推奨されています。(Microsoft Learn)
展開前に管理者が確認すべきチェックリスト
CU24またはそれ以降のCUを展開する前に、次の順番で確認すると抜け漏れを減らせます。
現在のSQL Serverビルドを確認する
SQL Server on Azure VMやオンプレミスSQL Serverでは、まず現在のビルドを確認します。
SELECT
@@VERSION AS VersionText,
SERVERPROPERTY('ProductVersion') AS ProductVersion,
SERVERPROPERTY('ProductLevel') AS ProductLevel,
SERVERPROPERTY('Edition') AS Edition,
SERVERPROPERTY('EngineEdition') AS EngineEdition;
CU24のSQL Serverビルドは16.0.4245.2です。これより前のCUから更新する場合、CU24の修正だけでなく、間に含まれる累積修正の影響も確認してください。SQL ServerのCUは累積更新であり、新しいCUには同じSQL Serverバージョンの以前のCUに含まれていた修正も含まれます。(Microsoft Learn)
機能利用状況を棚卸しする
次の機能を使っている場合は、通常より丁寧に検証してください。
| 機能・構成 | 確認内容 |
|---|---|
| Always On Availability Groups | ローリングアップデート順序、同期状態、手動フェールオーバー手順 |
| Contained Availability Group | 再起動後の接続、構成専用レプリカ、復元シナリオ |
| レプリケーション | ディストリビューター、パブリッシャー、サブスクライバーのビルド関係 |
| Log Shipping | フェールオーバー後のモニターサーバー挙動 |
| Linked Server + MSDASQL | 一般ユーザーでのエラー7416再現有無 |
| SESSION_CONTEXT | 並列実行、接続プール、権限制御への影響 |
| Full-Text Search | バッチタイムアウト、インデックス作成時間、検索遅延 |
| SQL Server on Linux | Linux固有DMV、シンボリックリンク、権限設定 |
Always On環境ではローリング更新を前提にする
Always On可用性グループでは、セカンダリレプリカから順に更新し、同期状態を確認したうえで手動フェールオーバーを行い、最後に元のプライマリを更新する流れが基本です。Microsoftは、ローリング更新によりプライマリのダウンタイムを単一の手動フェールオーバー程度に抑えられると説明していますが、更新中のセカンダリはフェールオーバーや読み取り用途に使えない時間があるため、業務影響の見積もりが必要です。(Microsoft Learn)
更新前には、少なくとも以下を実施します。
| 作業 | 目的 |
|---|---|
| フルバックアップ取得 | 更新失敗・ロールバックに備える |
DBCC CHECKDB実行 | 既存の整合性問題を更新作業に持ち込まない |
| 手動フェールオーバー演習 | 本番作業時の手順ミスを減らす |
| 同期状態の確認 | データ損失を避ける |
| アプリ接続先確認 | リスナー、接続文字列、DNS、タイムアウトを確認 |
| 監視ルール確認 | エラー10013などの既知ログを誤検知しないようにする |
Always Onでは、更新中にバージョンが混在する状態を長期間維持しないことも重要です。Microsoftは、ローリング更新以外で同じ可用性グループ内に異なるSQL Serverバージョンを混在させる状態を長く続けるべきではないと説明しています。(Microsoft Learn)
フェールオーバークラスターではパッシブノードから更新する
SQL Server Failover Cluster Instanceを使っている場合は、各ノードを順番に更新します。Microsoftは、パッシブノードから更新し、その後アクティブノードを更新する手順を示しており、適切なローリング更新によりダウンタイムを限定できます。(Microsoft Learn)
実務では、SQL Server本体だけでなく、OS更新、ドライバー、ストレージ、クラスターネットワーク、ウイルス対策ソフトの除外設定も合わせて確認してください。CU適用そのものは成功しても、再起動後にクラスターロールが戻らない、ディスク監視が失敗する、リスナー名解決で詰まる、といった運用トラブルが起きることがあります。
レプリケーション構成ではサーバー間のバージョン関係を見る
レプリケーション環境では、ディストリビューター、パブリッシャー、サブスクライバーのどこへ更新を適用するかを整理します。Microsoftは、レプリケーショントポロジでホットフィックスを適用する対象として、Distributor、Publisher、Subscriber、Web serverを挙げ、DistributorとPublisherのバージョン関係にも注意点を示しています。(Microsoft Learn)
特にCU24では、レプリケーション関連の修正が含まれています。AG配下のディストリビューター、マルチサブネット、照合順序が大文字小文字を区別する環境では、検証環境でエージェント起動、初期同期、再初期化、フェールオーバー後の配布動作を確認してください。
開発者が確認すべきアプリケーション側の観点
CU適用はインフラ作業に見えますが、障害として表面化するのはアプリケーション側であることが多いです。開発者は、次の観点で回帰テストを用意しておくと安全です。
| 観点 | テスト内容 |
|---|---|
| 認証・認可 | ログイン、権限制御、テナント分離、Row-Level Security |
| 接続プール | セッション再利用時のSESSION_CONTEXT、一時テーブル、SETオプション |
| 外部連携 | リンクサーバー、ODBC、ETL、BIツール、帳票基盤 |
| 大量データ処理 | 40億行級のソート、大量集計、バッチ処理、メモリ使用量 |
| 検索機能 | Full-Text Searchのインデックス作成、検索応答時間、タイムアウト |
| In-Memory OLTP | Hekatonを使うトランザクション、ストアドプロシージャ、例外発生有無 |
| Linux運用 | ファイルパス、シンボリックリンク、権限、監視スクリプト |
アプリケーションテストでは、「画面が開くか」だけでなく「同じ条件で同じ結果が返るか」を確認してください。特にSESSION_CONTEXTのようなセッション依存機能は、単体SQLでは再現せず、アプリサーバー経由の接続プールで初めて問題化することがあります。
Azure SQL Managed Instanceへの移行・ハイブリッド構成での注意点
SQL Server 2022とAzure SQL Managed Instanceを組み合わせて移行・DRを構成している場合、CU24は単なる修正パッチではなく、互換性計画の一部として扱うべきです。
Managed Instance linkでは、SQL Managed InstanceからSQL Server 2022セカンダリへのリンク構成が、SQL Server 2022 CU10以降かつSQL Server 2022更新ポリシーのSQL Managed Instanceでサポートされると説明されています。CU24はCU10より新しいため要件上は満たしますが、本番ではSQL Server側とManaged Instance側の更新ポリシー、フェールバック可否、バックアップ復元先をセットで確認してください。(Microsoft Learn)
| 移行・連携シナリオ | 注意点 |
|---|---|
| SQL Server 2022からAzure SQL Managed Instanceへ移行 | SQL Server側のCU、MIの更新ポリシー、互換性レベルを確認 |
| Managed Instance linkでDR構成 | SQL Server 2022更新ポリシーが必要か、フェールバック要件があるかを確認 |
| MIからSQL Server 2022へ戻す可能性がある | Always-up-to-dateへ変更すると戻せない制約に注意 |
| 本番はSQL Server 2022互換、開発は最新機能を使いたい | 環境ごとに更新ポリシーを分ける設計を検討 |
| 監査・規制要件でオンプレ復元が必要 | バックアップ/復元の互換性を先に確認 |
Azure SQL Managed InstanceのAlways-up-to-date更新ポリシーは新機能や改善を取り込みやすい一方で、一度有効にするとSQL Server 2022更新ポリシーへ戻せません。移行プロジェクトでは「新しいほうがよい」と単純に判断せず、戻し先、DR、監査、契約上の要件まで確認してから選択することが重要です。(Microsoft Learn)
本番展開の手順例
SQL Server on Azure VMまたはオンプレミスSQL Server 2022へCU24以降を展開する場合、次の流れで進めると安全です。
| 手順 | 実施内容 | 失敗しやすいポイント |
|---|---|---|
| 事前棚卸し | SQL Serverビルド、Edition、OS、AG、レプリケーション、リンクサーバーを確認 | 管理対象外の古いインスタンスを見落とす |
| 既知問題確認 | SESSION_CONTEXT、MSDASQL、AGリスナーを重点確認 | 管理者アカウントだけでテストしてしまう |
| 検証環境適用 | 本番に近いデータ量・接続方式でテスト | 小さなテストDBだけで判断する |
| 性能比較 | 主要クエリ、バッチ、検索、ETLの実行時間を比較 | 平常時と月次処理で負荷が違う |
| バックアップ | フルバックアップ、システムDB、構成情報を取得 | 復元手順を試していない |
| メンテナンス実施 | セカンダリから順に更新、必要に応じてフェールオーバー | 監視やジョブ停止を忘れる |
| 事後確認 | ビルド確認、エラーログ、アプリログ、ジョブ成功を確認 | 更新成功だけ見て業務処理を確認しない |
本番適用後は、次のような確認を行います。
SELECT
SERVERPROPERTY('ProductVersion') AS ProductVersion,
SERVERPROPERTY('ProductLevel') AS ProductLevel,
SERVERPROPERTY('Edition') AS Edition;
SQL Server on Azure VMやオンプレミスSQL Serverでは、エラーログも確認します。
EXEC xp_readerrorlog 0, 1, N'7416';
EXEC xp_readerrorlog 0, 1, N'10013';
EXEC xp_readerrorlog 0, 1, N'SESSION_CONTEXT';
xp_readerrorlogは環境や権限によって使えない場合があります。その場合は、SQL Server Management Studio、Azure Monitor、Log Analytics、監視ツール側で同等のログ検索を行ってください。
よくある疑問
Azure SQL DatabaseにKB5080999を適用する必要はありますか?
通常はありません。Azure SQL DatabaseはPaaSとしてMicrosoft側がエンジンとOSを管理するため、利用者がSQL Server 2022 CU24の更新プログラムをダウンロードして適用する運用ではありません。(Microsoft Learn)
ただし、オンプレミスSQL Server 2022からAzure SQL Databaseへ移行する場合は、移行元のCUレベルを確認してください。移行前後でクエリ結果、性能、互換性レベル、使用できない機能を検証する必要があります。
Azure SQL Managed InstanceではCU24を意識すべきですか?
意識すべきです。ただし、見るべきポイントは「CU24を手動適用するか」ではなく、Managed Instanceの更新ポリシー、SQL Server 2022との互換性、Managed Instance link、バックアップ復元、フェールバック要件です。SQL Server 2022更新ポリシーではSQL Server 2022との形式互換やlink機能が重要になります。(Microsoft Learn)
CU24を適用すれば最新状態になりますか?
記事作成時点のMicrosoft Learnのビルド一覧では、SQL Server 2022 CU25がLatestとして掲載されています。そのため、CU24は重要な累積更新ですが、最新CUとは限りません。新規に更新計画を立てる場合は、CU24ではなく最新CUを適用対象にするか、社内検証やベンダーサポートの都合でCU24に固定するかを判断してください。(Microsoft Learn)
既知の問題があるならCU24は避けるべきですか?
一概には言えません。SESSION_CONTEXT、MSDASQLリンクサーバー、AGリスナーの既知問題に該当する環境では慎重な検証が必要です。一方で、CU24には多数の修正も含まれます。重要なのは、既知問題の有無だけで判断するのではなく、自社の機能利用状況、回避策、最新CU/GDRの状況、ロールバック手順を含めて判断することです。
CU適用後に再起動は必要ですか?
CU24の公式情報では、適用後にコンピューターの再起動が必要になる場合があると説明されています。高可用性構成では、再起動を前提にメンテナンスウィンドウ、フェールオーバー順序、アプリ接続先、監視抑止を設計してください。(Microsoft Learn)
まとめ:次に取るべき行動
Cumulative Update 24 for SQL Server 2022(KB5080999)は、SQL Server 2022向けの重要な累積更新ですが、Azure SQL利用者が全員同じ対応をするものではありません。
Azure SQL Databaseだけを使っているなら、CU24の手動適用ではなく、アプリケーション互換性と移行元SQL Serverの状態を確認します。Azure SQL Managed Instanceを使っているなら、SQL Server 2022更新ポリシー、Always-up-to-date、Managed Instance link、バックアップ/復元の制約を確認します。SQL Server on Azure VMやオンプレミスSQL Server 2022を管理しているなら、CU24または最新CUの適用計画、既知問題、Always On、レプリケーション、リンクサーバー、ロールバック手順を具体化してください。
最初に行うべきことは、次の3つです。
- 自社環境がAzure SQL Database、Azure SQL Managed Instance、SQL Server on Azure VMのどれに該当するかを分類する
- SQL Server 2022を自分で管理している環境では、現在のビルドと最新CU/GDRを確認する
SESSION_CONTEXT、MSDASQLリンクサーバー、Always On、レプリケーションを使っているかを棚卸しし、検証環境で再現テストを行う
この順番で確認すれば、CU24の情報を単なる更新ニュースとして読むだけでなく、Azure SQL運用・移行・展開計画に落とし込めます。

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