「SQL Server 2022 build versions (KB5023451)」は、Azure SQL Databaseに手動適用する更新プログラムではありません。SQL Server 2022のリリース後に公開されたCU/GDRのビルド番号を確認するための公式一覧です。Azure SQLで重要なのは、利用している形態が Azure SQL Database、Azure SQL Managed Instance、SQL Server on Azure VM のどれかを切り分け、手動更新が必要か、互換性レベルやメンテナンス設計を見直すべきかを判断することです。2026年5月21日時点で確認すべき最新の大きなポイントは、SQL Server 2022 CU25のビルドが 16.0.4255.1 として掲載されている点です。(Microsoft Learn)
SQL Server 2022 build versions (KB5023451)は何を確認する公式情報か
KB5023451は、SQL Server 2022のRTM以降に公開されたビルドを、CUとGDRに分けて一覧化したMicrosoft Learnの公式情報です。記事には、CU名、SQL Serverのビルド番号、sqlservr.exeのファイルバージョン、Analysis Servicesのビルド番号、関連KB番号、リリース日が掲載されています。(Microsoft Learn)
この情報は、次のような場面で使います。
- 現在のSQL Server 2022が最新CUに近い状態か確認する
- 障害調査で「その不具合が修正済みのビルドか」を照合する
- SQL Server on Azure VMのパッチ計画を立てる
- Azure SQL Managed InstanceやAzure SQL Databaseへ移行する前に、移行元SQL Serverの状態を整理する
- 監査や運用報告で、SQL Serverの更新状態を客観的に示す
注意したいのは、KB5023451が「Azure SQL Databaseのビルド番号をユーザーが手動で上げるための記事」ではないことです。Azure SQL DatabaseはMicrosoftがSQLエンジンとOSのパッチ適用を管理するPaaSであり、ユーザーがSQL ServerのCUを直接インストールする運用ではありません。(Microsoft Learn)
Azure SQLでの影響範囲を最初に切り分ける
Azure SQLという言葉は、単一のサービス名ではなく、Azure SQL Database、Azure SQL Managed Instance、SQL Server on Azure VMなどを含むSQL関連サービス群を指します。Microsoft Learnでも、Azure SQLは単一のリソースではなくSQL関連サービスを扱う入口として説明されています。(Microsoft Learn)
そのため、KB5023451を読んだあとに取るべき行動は、利用形態によって大きく変わります。
| 利用形態 | KB5023451との関係 | 管理者が最初に確認すること |
|---|---|---|
| Azure SQL Database | CUを手動適用する対象ではない | メンテナンスウィンドウ、アプリの再接続処理、互換性レベル |
| Azure SQL Managed Instance | 更新ポリシーや互換性レベルの確認に関係する | ProductUpdateType、互換性レベル、メンテナンス設定 |
| SQL Server on Azure VM | 直接関係する。SQL Server 2022のCU/GDR適用判断に使う | 現在のビルド番号、Azure Update Manager、検証環境 |
| オンプレミスSQL ServerからAzure SQLへの移行元 | 移行前の状態確認に使う | 移行元のCU水準、互換性レベル、利用機能の差分 |
特にSQL Server on Azure VMでは、MarketplaceイメージがRTMを安定した開始点として提供され、その後のSQL Server更新は組織の要件に応じて管理者が行う前提です。Microsoftは、SQL Server on Azure VMの更新方法としてAzure Update Managerを推奨しており、CUや重要なOS更新を計画的に適用できます。(Microsoft Learn)
2026年5月21日時点の主な変更点
KB5023451の一覧では、SQL Server 2022の最新CUとして CU25 が掲載されています。CU25のSQL Serverビルドは 16.0.4255.1、sqlservr.exeのファイルバージョンは 2022.160.4255.1、リリース日は2026年5月20日です。Analysis Servicesのビルドは 16.0.43.252 とされています。(Microsoft Learn)
| 区分 | 2026年5月時点で注目すべき項目 | 実務上の見方 |
|---|---|---|
| 最新CU | CU25 / 16.0.4255.1 | SQL Server 2022をCU系列で更新している環境の最新候補 |
| 直前CU | CU24 / 16.0.4245.2 | CU25適用前の比較対象 |
| 直近GDR例 | CU24 + GDR / 16.0.4252.3、GDR / 16.0.1180.1 | GDR系列でセキュリティ更新中心に管理している環境の照合用 |
| 個別KB | CU25はKB5081477 | 詳細な修正内容や既知の問題を確認する入口 |
CU25の詳細ページでは、CU24以降の11件の修正を含むことが説明されています。修正対象には、Database Mail、msdb権限、Windows Server 2025上の拡張イベント関連、GraphデータベースのSHORTEST_PATH、XMLデータ破損、SSISのODBCコネクター、In-Memory OLTP、Linux上のバックアップクリーンアップなどが含まれます。(Microsoft Learn)
Azure SQL Databaseでは「ビルド番号」より運用設計を確認する
Azure SQL Databaseでは、SQL Server 2022 CU25のような更新をユーザーが直接インストールすることはありません。MicrosoftがSQLエンジンとOSのパッチ適用を管理し、ユーザーは基盤の更新作業ではなく、アプリケーション側の耐障害性やメンテナンス時の影響を設計します。(Microsoft Learn)
確認すべきポイントは、主に次の3つです。
| 確認項目 | なぜ重要か | 実務での対応 |
|---|---|---|
| メンテナンスウィンドウ | 計画メンテナンスの影響を業務時間外に寄せられる | 本番DBでは既定設定のままにせず、業務ピークを避ける |
| アプリの再接続処理 | メンテナンス時に短い接続断が起きる可能性がある | 接続リトライ、トランザクション再実行、タイムアウト設定を確認する |
| 互換性レベル | クエリ最適化や一部の動作に影響する | 変更前にQuery Storeや検証環境で性能差を確認する |
Azure SQL DatabaseとAzure SQL Managed Instanceにはメンテナンスウィンドウ機能がありますが、これは計画メンテナンスの影響を予測しやすくするための機能です。ハードウェア障害、クラスタの負荷分散、サービスレベル変更に伴う再構成など、すべてのフェールオーバー原因を防ぐものではありません。(Microsoft Learn)
Azure SQL Managed Instanceでは更新ポリシーを確認する
Azure SQL Managed Instanceを利用している場合は、SQL Server 2022 build versionsの一覧だけを見るのではなく、インスタンスの更新ポリシーを確認する必要があります。Azure SQL Managed Instanceには、SQL Server 2022 update policy、SQL Server 2025 update policy、Always-up-to-date update policyがあり、利用できるSQLエンジン機能の範囲に関係します。(Microsoft Learn)
更新ポリシーは、Azure portalの「Maintenance and updates」から確認できるほか、T-SQLでも確認できます。
SELECT SERVERPROPERTY('ProductUpdateType') AS product_update_type;
ProductUpdateTypeがCUの場合は、SQL Server 2022またはSQL Server 2025のようなメジャーリリースに対応するCUベースの更新です。Continuousの場合は、Always-up-to-date update policyとして、SQL Serverのリリースサイクルとは独立して新機能がAzure SQL Managed Instanceに取り込まれることを示します。(Microsoft Learn)
ここでの失敗しやすいポイントは、「Managed InstanceだからSQL Server 2022と完全に同じ」と考えてしまうことです。Managed InstanceはSQL Serverに近い互換性を持ちますが、PaaSとして管理されるため、可用性や基盤管理に関わる一部機能の扱いはSQL Server単体とは異なります。(Microsoft Learn)
SQL Server on Azure VMでは現在のビルド番号を照合する
SQL Server on Azure VMでSQL Server 2022を運用している場合、KB5023451は直接的に重要です。まず現在のビルド番号を取得し、KB5023451の一覧と照合します。
SELECT
SERVERPROPERTY('ProductVersion') AS product_version,
SERVERPROPERTY('ProductLevel') AS product_level,
SERVERPROPERTY('Edition') AS edition;
より詳細な文字列で確認したい場合は、次のクエリも使えます。
SELECT @@VERSION;
Microsoftの公式情報では、SQL Serverのバージョン確認方法としてSSMS、エラーログ、SELECT @@VERSION、SERVERPROPERTYなどが紹介されています。特に自動化や棚卸しでは、個別プロパティを取得できるSERVERPROPERTYのほうが扱いやすいです。(Microsoft Learn)
取得したProductVersionが、たとえば16.0.4245.2であればCU24、16.0.4255.1であればCU25に該当します。Azure VM上のSQL Serverでは、Azure Update Managerを使ってSQL Server CUとOS更新を計画的に適用できます。一方で、Azure Update ManagerとAutomated Patchingを同時に使うと、スケジュール競合や意図しない更新が起きる可能性があるため、更新方式は一本化するべきです。(Microsoft Learn)
CU25適用前に確認したい既知の問題
CU25の公式ページには、SESSION_CONTEXTを使うクエリが並列実行プランで動作する場合、誤った結果やアクセス違反ダンプが発生する可能性がある既知の問題が記載されています。(Microsoft Learn)
次のようなアプリケーションでは、CU25適用前の検証にSESSION_CONTEXT関連のテストを追加してください。
- ログインユーザーIDやテナントIDを
SESSION_CONTEXTに格納している - Row-Level Securityや監査処理と組み合わせている
- コネクションプールで接続を再利用している
- 大量データ処理で並列実行されやすいクエリがある
- マルチテナントSaaSでセッション情報を条件分岐に使っている
検証では、単にアプリが起動するかを見るだけでは不十分です。代表的な検索条件、権限制御、テナント分離、バッチ処理、並列度が上がりやすい集計クエリまで確認する必要があります。
互換性レベルはビルド番号と分けて管理する
SQL ServerやAzure SQLの運用で混同しやすいのが、ビルド番号 と データベース互換性レベル です。ビルド番号はエンジンの更新状態を示し、互換性レベルはT-SQLやクエリ処理の動作を指定するデータベース単位の設定です。
現在の互換性レベルは、次のクエリで確認できます。
SELECT
name,
compatibility_level
FROM sys.databases
ORDER BY name;
SQL Server 2022の互換性レベルは160ですが、Azure SQL Databaseでは新規データベースの既定互換性レベルが170、Azure SQL Managed InstanceのSQL Server 2022 update policyでは新規データベースの既定互換性レベルが150と説明されています。また、Microsoftは既存データベースの互換性レベルを自動更新しないため、変更はユーザー側の判断で行います。(Microsoft Learn)
互換性レベルを変更する場合は、次のように実行できます。
ALTER DATABASE [YourDatabaseName]
SET COMPATIBILITY_LEVEL = 160;
ただし、本番環境でいきなり変更するのは避けてください。互換性レベルを上げると、クエリ最適化の挙動が変わり、特定のクエリで実行プランが変化する可能性があります。変更前にQuery Storeで主要クエリの実行時間、CPU、論理読み取り、待機傾向を記録し、検証環境で比較してから本番へ展開するのが安全です。
移行前にKB5023451をどう使うべきか
SQL Server 2022からAzure SQL DatabaseやAzure SQL Managed Instanceへ移行する場合、KB5023451は「移行先のAzure SQLを同じビルドにするため」ではなく、「移行元SQL Serverの状態を把握するため」に使います。
移行前に確認すべき項目は次のとおりです。
| 確認項目 | 確認する理由 | 判断基準 |
|---|---|---|
| 移行元のSQL Serverビルド | 既知の不具合を抱えたまま移行しないため | KB5023451のCU/GDR一覧と照合する |
| 互換性レベル | 移行後のクエリ動作を予測するため | 既存レベルを維持するか、段階的に上げるか決める |
| 利用機能 | Azure SQL DatabaseとManaged Instanceで対応範囲が異なるため | SQL Agent、Database Mail、クロスDB処理、CLRなどを棚卸しする |
| 可用性構成 | SQL ServerのAlways OnとAzure SQLの可用性設計が異なるため | フェールオーバーグループ、Geoレプリケーション、バックアップ要件を見直す |
| アプリの接続処理 | PaaSでは短時間の接続断に備える必要があるため | リトライ、冪等性、トランザクション再実行を実装する |
Azure SQL DatabaseとAzure SQL Managed InstanceはSQL Serverと共通のコードベースを持ち、多くのSQL言語、クエリ処理、管理機能が共通しています。一方で、Azureが高可用性を管理するPaaSであるため、可用性に影響する機能やPaaSで使えない機能には制限があります。(Microsoft Learn)
展開時に失敗しやすいポイント
SQL Server 2022 CUやAzure SQL関連の更新対応では、次のような判断ミスが起きやすくなります。
| 失敗しやすいポイント | 起きる問題 | 対策 |
|---|---|---|
| Azure SQL DatabaseにCUを手動適用しようとする | そもそも適用対象ではなく、作業計画が誤る | PaaSのメンテナンス、互換性レベル、アプリ側の耐障害性を見る |
| SQL Server on Azure VMを「Azureだから自動で最新」と考える | 古いRTM/CUのまま運用し続ける | SERVERPROPERTYで棚卸しし、Azure Update Managerで管理する |
| CUとGDRの系列を混同する | 適用後のビルド番号が想定と合わない | 自社の更新方針がCU系列かGDR系列かを明確にする |
| 互換性レベルをパッチ適用と同時に上げる | 性能劣化時に原因を切り分けにくい | まずエンジン更新、次に互換性レベル変更のように段階を分ける |
| 検証環境で権限・テナント分離を見ない | SESSION_CONTEXTなどの問題を見落とす | 業務シナリオ単位で回帰テストを作る |
| Azure Update ManagerとAutomated Patchingを併用する | 更新タイミングが競合する可能性がある | 更新方式を一本化する |
SQL Server on Azure VMでは、MicrosoftがAzure Update Managerを推奨しており、Automated Patchingは新規デプロイでは使わず、Azure Update Managerへ寄せる方針が示されています。特に複数VMを管理している環境では、手動適用よりもスケジュール、準拠状態、メンテナンスウィンドウを一元管理できる方式を選ぶべきです。(Microsoft Learn)
管理者・開発者向けの実務チェックリスト
最後に、KB5023451を見たあとに実行すべき確認を、役割別に整理します。
管理者が確認すること
- Azure SQL Database、Managed Instance、SQL Server on Azure VMのどれを対象にしているか切り分ける
- SQL Server on Azure VMの場合、現在の
ProductVersionを取得してKB5023451と照合する - CU系列で運用するか、GDR系列で運用するかを明文化する
- Azure Update Managerの利用有無とメンテナンススケジュールを確認する
- 本番適用前にバックアップ、ロールバック手順、停止影響、関係者連絡を用意する
- Always On、レプリケーション、クラスタ構成がある場合はローリング更新の手順を別途確認する
開発者が確認すること
SESSION_CONTEXTを使っている箇所を洗い出す- 接続リトライ、トランザクション再実行、タイムアウト設定を確認する
- 互換性レベル変更時に影響を受ける主要クエリをQuery Storeで確認する
- テナント分離、権限制御、監査ログ、バッチ処理を回帰テストに含める
- Azure SQL Databaseへ移行する場合、SQL Server固有機能に依存していないか確認する
移行担当者が確認すること
- 移行元SQL Server 2022のCU/GDR状態を記録する
- 互換性レベルを移行前後でどう扱うか決める
- Azure SQL DatabaseとManaged Instanceのどちらが適しているか、機能差で判断する
- 移行リハーサルで性能差、接続断、権限、ジョブ、バックアップ要件を確認する
- 移行後すぐに互換性レベルを上げず、安定稼働後に段階的に検証する
次に取るべき行動
まず、対象がAzure SQL Database、Azure SQL Managed Instance、SQL Server on Azure VMのどれかを明確にしてください。Azure SQL Databaseであれば、CU適用ではなくメンテナンスウィンドウ、再接続処理、互換性レベルを確認します。Azure SQL Managed Instanceであれば、更新ポリシーと互換性レベルを確認します。SQL Server on Azure VMであれば、現在のSQL Server 2022ビルドを取得し、KB5023451の一覧と照合したうえで、Azure Update Managerなどの管理された方法で展開計画を立てます。
KB5023451は単なるビルド番号一覧ではなく、障害調査、パッチ計画、移行準備、監査対応の基準になります。特に2026年5月時点ではCU25の16.0.4255.1が重要な確認点です。自社環境のビルド番号、更新方式、互換性レベル、アプリ側の耐障害性を分けて確認することで、Azure SQL運用のリスクを実務レベルで減らせます。(Microsoft Learn)

コメント