Azure for Studentsで仮想マシンをデプロイできるリージョンの確認方法と制限の解説

Azure for Students で仮想マシンを作ろうとしたら、「このリージョンにはデプロイできません」とエラーになった経験はないでしょうか。実は学生向けサブスクリプションには、通常の従量課金サブスクリプションとは異なるリージョン制限がかかっています。この記事では、その仕組みと自分のアカウントで使えるリージョンの具体的な確認方法、エラー時の対処までをまとめて解説します。

目次

Azure for Students で VM のリージョンが制限される理由

Azure for Students の特徴と制限の全体像

Azure for Students は、学生向けに提供されている無償クレジット付きの Azure サブスクリプションです。クレジット上限(例:12 か月で一定額のクレジット)と対象サービスが決まっており、クレジット内であれば仮想マシン(VM)やストレージ、データベースなどのサービスを実際に触ることができます。

一方で、Azure for Students には以下のような「隠れた」制限もあります。

  • 利用できるリージョン(地域)が、数個(目安:5 リージョン程度)に制限されている
  • 利用可能な VM サイズ(SKU)が制限されている場合がある
  • サブスクリプションの種類によって、そもそもコンピュート系サービスが使えないプランがある(Azure for Students Starter など)

特にこの記事のテーマである「リージョン」については、Microsoft Q&A でも「Azure for Students では通常 5 つ程度のリージョンに制限されており、その内容はサブスクリプションごとに異なる」と明記されています。

なぜサブスクリプションごとにリージョンが違うのか

Azure for Students のリージョン制限は、Azure Policy(Azure ポリシー)という仕組みで実装されています。Azure Policy では、「Allowed locations(許可されるリージョン)」ポリシーを使って、リソースを作成できるリージョンを制御できます。

Microsoft 側は、以下のような観点から学生サブスクリプションのリージョンを絞り込んでいると考えられます。

  • クラウド基盤のキャパシティ管理(特定リージョンの過負荷を防ぐ)
  • 教育用途に十分なサービスが利用できる「代表的なリージョン」に集約する意図
  • 各国・地域のデータレジデンシやコンプライアンス要件への配慮

この結果、「どのリージョンが使えるか」は個々のサブスクリプションにアサインされているポリシーによって決まるため、同じ Azure for Students でも人によって使えるリージョンが違う、という現象が起こります。

そもそも Azure の「リージョン」とは?

リージョンとは、Azure データセンターが存在する地理的な場所を指し、「Japan East」「East US」「West Europe」のような名称で表されます。1 つのリージョンの中には複数のデータセンターが存在し、冗長構成や高可用性を実現するために活用されます。

関連する用語を整理すると、次のようになります。

用語意味
リージョン (Region)「East US」「Japan East」など、特定の地理的エリア。VM やストレージなどほとんどのリソースはリージョン単位で作成される。
アベイラビリティゾーン (Availability Zone)同一リージョン内の物理的に分離されたデータセンター群。ゾーンをまたいで VM を配置することで高可用性を高められる。
ジオ / 地理 (Geography)「Asia Pacific」「Europe」など、複数リージョンをまとめた論理的な地理区分。データレジデンシ(データをどの地域に保存するか)とも関連する。

通常の従量課金サブスクリプションでは、多くのリージョンに自由にデプロイできますが、Azure for Students では後述のポリシーによりサブセットだけが選択可能な状態になっています。

Azure for Students で利用可能なリージョンの特徴

「数リージョン(目安:5)」に絞られている

Microsoft Q&A の回答例では、「Azure for Students は通常 5 つ程度のリージョンに制限されている」とされています。

実際には、以下のようなパターンがよく見られます(あくまで一例であり、あなたのサブスクリプションで必ず同じとは限りません)。

  • East US / East US 2
  • West Europe / North Europe
  • East Asia / Southeast Asia など

どのリージョンが使えるかは Microsoft 側の設定次第で変わり、同じ国・同じ学校でも人によって微妙に違うことがあります。そのため、ネット記事に「○○リージョンが使える」と書かれていても、自分のサブスクリプションで使えるかどうかは必ずポータルで確認してください。

VM 作成画面に一覧表示されるリージョン = 許可されているリージョン

Azure ポータルの「仮想マシンの作成」画面でリージョンを選ぶ際に、プルダウンに表示されるリージョンは、その時点であなたのサブスクリプションで 実際にデプロイが許可されているリージョンだけ です。

つまり、次のように理解できます。

  • プルダウンに出てくるリージョン → デプロイできる(Allowed locations に含まれている)
  • プルダウンに出てこないリージョン → そのサブスクリプションではデプロイ不可

この挙動は、Azure Policy の「Allowed locations」ポリシーが deny 効果で動作しているためで、許可されていないリージョンは UI 上の候補からそもそも除外される、または選択してもエラーになります。

自分の Azure for Students で許可されているリージョンを確認する(ポータル)

Azure ポータルから Allowed locations ポリシーを開く手順

最も簡単で確実な確認方法は、Azure ポータルで Azure Policy の割り当てを確認することです。以下の手順で、あなたのサブスクリプションに適用されている「Allowed resource deployment regions」ポリシーを確認できます。

  1. Azure ポータルにサインインする。
  2. 左上の検索ボックスで 「ポリシー」または「Azure Policy」 と入力し、「Azure ポリシー」を開く。
  3. Azure ポリシーのメニューから 「作成/オーサリング」または「割り当て(Assignments)」 を選択する。
  4. 一覧の中から、以下のような名前のポリシー割り当てを探す。
    • Allowed resource deployment regions
    • または Allowed locations
    • または日本語環境で「許可されたリソースのデプロイ リージョン」等と表示されているもの
  5. 該当するポリシー割り当てをクリックして詳細を開く。

細かな UI 表示は時期やポータルの言語設定によって変わりますが、「Allowed」「locations」「リージョン」などのキーワードで探すと見つけやすくなります。

Allowed locations パラメーターの読み取り方

ポリシー詳細画面を開くと、「パラメーター」または「Parameters」といったタブがあります。その中に、次のような項目が含まれているはずです。

  • Allowed locations
  • listOfAllowedLocations(内部名)

ここに表示されているリージョン一覧(例:eastus, westeurope, eastasia …)が、あなたのサブスクリプションでリソースをデプロイできるリージョンになります。

VM を作成する際は、この一覧に含まれるいずれかのリージョンを選ぶ必要があります。逆にいうと、ここに載っていないリージョンに VM をデプロイすることはできません。

確認ポイントどこを見るか意味
ポリシー名「Allowed resource deployment regions」などリージョン制限をかけているポリシーそのもの。
スコープ/subscriptions/<SUBSCRIPTION_ID>サブスクリプション全体に対して適用されているポリシーであることを確認。
listOfAllowedLocationsパラメーター値ここに列挙されているリージョンのみ VM を含むリソースをデプロイできる。

他にも、リソース グループ単位で別の Allowed locations ポリシーが設定されているケースもあるため、問題が解決しない場合はリソース グループのスコープでもポリシー割り当てを確認してください。

Azure CLI / PowerShell で許可リージョンを取り出す方法

ポータルだけでなく、スクリプトから Allowed locations を取得しておくと、自動化やドキュメント化にも便利です。

Azure CLI の例

Azure CLI では、次のようなコマンドで「Allowed」という名前を含むポリシーのうち、listOfAllowedLocations パラメーターを持つものを抽出し、その値を一覧表示できます。

az policy assignment list --scope /subscriptions/&lt;SUB_ID&gt; \
  --query "[?contains(displayName, 'Allowed') &amp;&amp; parameters.listOfAllowedLocations].parameters.listOfAllowedLocations.value[]" \
  -o tsv

このコマンドのポイントは次の通りです。

  • --scope /subscriptions/<SUB_ID>:指定したサブスクリプションに割り当てられているポリシーを対象にする。
  • contains(displayName, 'Allowed'):表示名に「Allowed」を含むポリシーだけを絞り込む。
  • parameters.listOfAllowedLocations.value[]:listOfAllowedLocations パラメーターの値(リージョン一覧)だけを取り出す。

なお、よく使われる az account list-locations コマンドは「Azure 全体で利用可能なリージョンの一覧」を返すだけで、あなたのサブスクリプションに課されているポリシー制限(Allowed locations)は反映されません。最終判断は必ず Azure Policy 側の設定を確認してください。

PowerShell (Az モジュール) の例

PowerShell の Az モジュールを使っている場合は、次のようなスクリプトで同様の情報を取得できます。

# サブスクリプション ID を指定
$subId = "&lt;SUB_ID&gt;"

# 該当サブスクリプションのポリシー割り当てを取得
$assignments = Get-AzPolicyAssignment -Scope "/subscriptions/$subId"

# "Allowed" を名前に含み、listOfAllowedLocations パラメーターを持つものを抽出
$allowed = $assignments |
    Where-Object {
        $_.Properties.DisplayName -like "*Allowed*" -and
        $_.Properties.Parameters.listOfAllowedLocations
    }

# 許可されているリージョン一覧を表示
$allowed.Properties.Parameters.listOfAllowedLocations.value

スクリプトを少し工夫して、取得したリージョン一覧を CSV や Markdown 形式で出力しておくと、チーム内の共有資料としても活用しやすくなります。

VM 作成画面で希望リージョンが出てこないときのチェックポイント

「VM を作成しようとしたら、選びたいリージョンがプルダウンに出てこない」「選んだらポリシーにブロックされた」というケースは非常によくあります。その際に確認したいポイントを整理しておきます。

症状主な原因対処の方向性
リージョン候補に希望リージョン自体が表示されないサブスクリプション/リソース グループの Allowed locations に含まれていないAllowed locations の値を確認し、許可されているリージョンの中から選ぶ。
リージョンは選べるが、作成時に「ポリシーにより拒否されました」とエラー別のポリシー(VM SKU、リソースタイプ制限など)でブロックされているAzure Policy の割り当てを確認し、「Not allowed resource types」「Allowed virtual machine SKUs」などのポリシー有無を調べる。
リージョンも SKU も選べるが、デプロイ結果がエラーになる一時的なキャパシティ不足やサービス側の制限別のリージョン・別 SKU で試す、時間をおいて再試行する。必要に応じてサポートに問い合わせる。
VM 作成ウィザードで「利用できるサブスクリプションがありません」と表示Azure for Students Starter など、そもそも VM が作成できないプランプラン種別を確認し、必要であれば従量課金サブスクリプションを作成・切り替える。

Allowed locations ポリシーに含まれていないケース

もっとも典型的なのは、希望リージョンが Allowed locations に含まれていないケースです。この場合、そのサブスクリプションでは技術的にデプロイ不可能 です。学生向けサブスクリプションでは、自分でポリシーを書き換えたり、許可リージョンを追加したりすることは基本的にできません。

取りうる選択肢は次の通りです。

  • 許可されているリージョンのどれかで妥協する(推奨)
  • 特定リージョンが必須な要件(例:日本リージョン限定の社外連携テストなど)がある場合は、別途従量課金サブスクリプションを用意する
  • 学校や組織の IT 管理者が管理する Azure 環境があるなら、そちらで検証を行う

リソース グループ側の Allowed locations ポリシー

組織によっては、サブスクリプション全体だけでなく「特定のリソース グループにだけ別の Allowed locations を適用する」ということもあります。例えば、サブスクリプションレベルでは eastus と westeurope が許可されているのに、特定リソース グループでは westeurope のみ許可、といったケースです。

この場合、VM をデプロイしようとしているリソース グループに対してどのポリシーが割り当てられているかを個別に確認する必要があります。

  • Azure ポータルで対象リソース グループを開く
  • 左メニューから「ポリシー」または「設定 > ポリシー」を選択
  • サブスクリプションと同様に「Allowed ~」「許可されたリソースのデプロイ リージョン」といった名前のポリシーを探す

VM サイズやサービスがリージョン未対応のケース

もう一つのよくあるパターンが、「リージョンは Allowed locations に含まれているが、そのリージョンが特定の VM サイズやサービスに対応していない」というケースです。Azure の各リージョンでは、提供されているサービスや VM SKU が微妙に異なります。

たとえば、最新の GPU 系 VM や、まだ一部リージョンでしか提供されていないサービスは、Azure for Students で許可されている代表的なリージョンには存在しないことがあります。その場合は次のようなアプローチを検討してください。

  • 同じリージョンで別の VM サイズ(SKU)を選ぶ
  • 提供リージョンが多い別サービスに置き換える(例:VM ではなく Azure Container Apps や Azure Functions など)
  • どうしても特定 SKU を使いたい場合は、別のサブスクリプション(従量課金)で検証する

Azure for Students と従量課金サブスクリプションの違い

リージョン制限の観点から、Azure for Students と従量課金サブスクリプションを簡単に比較しておきます。

項目Azure for StudentsAzure for Students Starter従量課金サブスクリプション
クレジット一定額の無料クレジットが付与される。クレジットなし、学習向けに一部サービスのみ利用可能。クレジットなし(別途キャンペーンの無料枠などはあり)。
リージョン制限Allowed locations ポリシーにより、代表的な数リージョンに限定。そもそも VM などが作れないため、リージョン選択の出番が少ない。基本的にはサービスが提供されているほぼ全てのリージョンを選択可能(組織ポリシーによる制限は別途あり)。
VM 利用一部 SKU とリージョンに制限があるが、通常の IaaS VM を利用可能。VM は利用不可。クォータの範囲でほぼ自由に利用可能(一部サイズやリージョンはサポートへの申請が必要)。
用途学生の学習・検証・課題提出など。よりライトな学習環境(アプリ開発の基礎など)。商用システム、本格的な検証・PoC、研究プロジェクトなど。

長期的に Azure を使い込んでいく場合、「学習用は Azure for Students、本格検証や特定リージョン・SKU を使うときは従量課金」 と役割分担して使うのがおすすめです。

学生向け環境でのリージョン選定のコツ

Azure for Students ではリージョンの候補が限られているとはいえ、いくつか意識しておくと良いポイントがあります。

  • ユーザーに近いリージョンを選ぶ Web アプリや API を外部公開する場合は、主な利用者がいる地域に近いリージョンを選ぶとレイテンシを抑えられます。例えば、日本国内の利用が中心なら、East Asia や Southeast Asia などが候補になることが多いでしょう。
  • 複数リージョンが許可されているなら、冗長構成も検討 学習用途でも、アクティブ/スタンバイ構成やバックアップ先として別リージョンを使う練習をしておくと、実務で役立ちます。
  • 同じリージョンに関連リソースを揃える VM、ストレージ、データベースなど、可能な限り同じリージョンに配置すると、コストとパフォーマンスの両面で効率的です。

よくある質問とトラブルシューティング

Q. Allowed locations を自分で変更できますか?

A. Azure for Students のような個人学生向けサブスクリプションでは、通常ユーザー自身がポリシーを編集する権限は付与されていません。組織が管理している Azure 環境であれば、管理者に相談してポリシー変更や例外設定(Exemption)を検討してもらう形になります。

Q. サポートに問い合わせればリージョン制限を外してもらえますか?

A. 一般的には、学生向けの無償枠サブスクリプションに対してリージョン制限を解除してもらうことは期待しない方がよいです。ビジネス用途の従量課金サブスクリプションとは扱いが異なるため、「必要なリージョンや SKU を使う場合は従量課金サブスクリプションを利用する」という形が現実的です。

Q. az account list-locations で表示されるリージョンと、VM 作成画面のリージョンが違うのはなぜ?

A. az account list-locations は Azure 全体で利用可能なリージョン一覧を返すコマンドであり、特定サブスクリプションに対するポリシー制限(Allowed locations)は考慮していません。そのため、「このコマンドで表示されるが、VM 作成画面で選べない」というリージョンが存在しえます。

Q. VM 作成時に「This policy maintains a set of best available regions…」というエラーが出ます

A. これはまさに「特定のリージョンだけ利用を許可するポリシー」によってブロックされた際の典型的なメッセージです。Q&A でも同様のエラーが報告されており、そのサブスクリプションで許可されたリージョン一覧から選び直す必要があります。

Q. どのリージョンを選べば正解ですか?

A. 「Allowed locations に含まれていること」が大前提で、その中から ユーザーに近い地域 と 必要なサービスが提供されているリージョン を選ぶのが基本です。学習用途なら、あまり難しく考えず「自分に最も近いリージョン」を選ぶだけでも十分です。

まとめ:Azure for Students のリージョン制限と上手な付き合い方

この記事で解説してきたポイントを整理すると、次のようになります。

  • Azure for Students では、通常の従量課金サブスクリプションとは異なり、利用できるリージョンが数個に制限 されている。
  • どのリージョンが使えるかはサブスクリプションごとに異なり、Azure Policy の Allowed locations ポリシー によって管理されている。
  • VM 作成画面のリージョン一覧に表示されるのは そのサブスクリプションで実際に許可されているリージョンだけ であり、表示されないリージョンにはデプロイできない。
  • 自分の許可リージョンを確認するには、Azure ポータルの「Azure ポリシー > 割り当て」から Allowed resource deployment regions / Allowed locations のパラメーターを見るのが最も確実。
  • CLI からは、az policy assignment list や PowerShell の Get-AzPolicyAssignment を使って listOfAllowedLocations パラメーターを取得できる。
  • 希望リージョンが許可されていない場合、そのサブスクリプションでは原則としてデプロイ不可であり、許可リージョンで妥協するか、別のサブスクリプション(従量課金など)を利用する必要がある。

リージョン制限は一見不便に感じられますが、クラウドガバナンスやコンプライアンスを学ぶ良い教材にもなります。まずは自分の Azure for Students サブスクリプションにどんなポリシーが設定されているかを確認し、「なぜこの設定になっているのか?」という視点で使いこなしていきましょう。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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