Azure Synapse Link for Azure Cosmos DB NoSQLは、2029年3月31日に提供終了します。また、新しいAzure Cosmos DB for NoSQLアカウントでは、すでに2026年3月31日以降、Azure Synapse Linkを有効化できません。
既存環境は終了日までサポートされますが、Microsoftは移行先として「Microsoft FabricのAzure Cosmos DBミラーリング」を推奨しています。Azure Cosmos DBやAzure Synapse Analytics自体が廃止されるわけではなく、対象は両サービスを接続する分析機能です。(マイクロソフト Azure)
この記事では、2026年6月10日に公開された公式情報をもとに、影響を受ける環境の見分け方、設定の確認方法、移行手順、料金、期限までに注意すべきポイントを整理します。
Azure Synapse Link for Azure Cosmos DB NoSQLの廃止内容
今回の発表内容は、次のとおりです。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 公式情報の公開日 | 2026年6月10日 |
| 新規アカウントでの有効化 | 2026年3月31日以降は不可 |
| 既存環境のサポート期限 | 2029年3月31日 |
| 推奨される移行先 | Microsoft FabricのAzure Cosmos DBミラーリング |
| 廃止対象 | Azure Synapse Link for Azure Cosmos DB NoSQL |
| 廃止対象ではないもの | Azure Cosmos DB、Azure Synapse Analytics全体 |
新規アカウントでの有効化停止日は、公式発表日より前の2026年3月31日です。これから新しい分析基盤を構築する場合、Azure Synapse Linkを前提とした設計はできません。
既存利用者も、2029年3月31日まで使い続けることを目的にするのではなく、それまでに移行と動作確認を完了させる必要があります。(マイクロソフト Azure)
何が変わるのか
Azure Synapse Link for Azure Cosmos DBは、Azure Cosmos DBのトランザクション処理とは別に分析用データを保持し、Azure Synapse SQLやApache Sparkから分析できる機能です。
移行後は、Microsoft Fabricのミラーリングを利用して、Azure Cosmos DBのデータをOneLakeへ継続的に複製します。分析先もAzure Synapse Analytics中心の構成から、FabricのSQL分析エンドポイント、Spark、Power BI DirectLakeなどを利用する構成へ変わります。(Microsoft Learn)
| 比較項目 | Azure Synapse Link | Azure Cosmos DBミラーリング |
|---|---|---|
| 分析データの保存先 | Azure Cosmos DBの分析ストア | Microsoft FabricのOneLake |
| 主な分析手段 | Synapse SQL serverless、Synapse Spark | Fabric SQL分析エンドポイント、Fabric Spark、Power BI |
| データ連携方式 | 分析ストアへ同期 | 継続的バックアップを利用して複製 |
| 必要な基盤 | Azure Synapse Analytics | Microsoft Fabric容量とワークスペース |
| 新規採用 | 非推奨、新規アカウントでは有効化不可 | Microsoftの推奨移行先 |
ミラーリングは単純な設定変更ではありません。データの保存先、クエリの接続先、アクセス権限、Power BIの接続方法などが変わるため、実質的には分析基盤の移行として計画する必要があります。
影響を受けるユーザーと環境
Azure Cosmos DBを利用していても、すべての環境が直ちに影響を受けるわけではありません。
| 利用状況 | 影響と必要な対応 |
|---|---|
| Azure Cosmos DBのトランザクションAPIだけを利用 | 今回の廃止による直接的な影響は基本的にない |
| 分析ストアを有効化している | 移行対象となる可能性が高い |
| Synapse SQLからCosmos DBを参照している | クエリ接続先やSQLの移行が必要 |
Synapse Sparkでcosmos.olapなどを利用している | Fabric Sparkへの移行とコード検証が必要 |
| Power BIでSynapse Link経由のデータを利用している | データモデル、更新方法、DirectLake利用可否の確認が必要 |
| 新規のAzure Cosmos DBアカウントで分析基盤を構築する | Azure Synapse LinkではなくFabricミラーリングを検討する |
| 分析ストアに長期履歴を残している | 履歴データの退避やバックフィルが必要になる可能性がある |
特に見落としやすいのが、Azure Synapse Analytics上のパイプラインやノートブックだけでなく、Power BIレポート、定期バッチ、独自アプリケーションが分析ストアを参照しているケースです。
Azure Cosmos DBの画面だけを確認するのではなく、データの利用先まで一覧化してください。
Azure Synapse Linkの利用状況を確認する手順
Azure Cosmos DBアカウントを洗い出す
最初に、対象となるサブスクリプション内のAzure Cosmos DB for NoSQLアカウントを一覧化します。
管理対象が多い場合は、次の情報を台帳にまとめると移行漏れを防げます。
- サブスクリプション名
- リソースグループ名
- Azure Cosmos DBアカウント名
- データベース名
- コンテナー名
- Azure Synapse Linkの利用有無
- 分析ストアの保持期間
- 接続先のSynapseワークスペース
- 利用しているレポート、ノートブック、パイプライン
- システム担当者と業務担当者
コンテナーのTTL設定を確認する
Azure CLIでは、次のコマンドでコンテナーのトランザクションTTLと分析ストアTTLを確認できます。
az cosmosdb sql container show \
--resource-group <resource-group> \
--account-name <account-name> \
--database-name <database-name> \
--name <container-name> \
--query "{name:name, defaultTtl:resource.defaultTtl, analyticalStorageTtl:resource.analyticalStorageTtl}"
主に確認する値は次の2つです。
| 項目 | 意味 |
|---|---|
defaultTtl | トランザクションストアにデータを保持する期間 |
analyticalStorageTtl | 分析ストアにデータを保持する期間 |
analyticalStorageTtlに-1または正の秒数が設定されている場合は、分析ストアが有効になっている可能性があります。
-1は無期限保持、正の数値は秒単位の保持期間です。0を設定すると分析ストアが無効化され、保存されている分析データが削除されるため、移行確認前に変更してはいけません。(Microsoft Learn)
分析ストアを参照する処理を検索する
Azure Synapse Analyticsやソースコード内で、次の項目を検索します。
- Cosmos DBのリンクサービス
- Synapse SQL serverlessのビューや
OPENROWSET - Synapse Sparkのノートブック
cosmos.olapを利用する処理- Power BIのデータソース設定
- Azure Data FactoryやSynapseパイプライン
- 分析ストアを参照する独自アプリケーション
- スキーマ変換や列名変更を行う処理
「現在は使われていないと思われる接続」も、削除前に実行履歴や利用部門を確認してください。月次・四半期処理だけで使われている可能性があります。
移行方法はデータの保持期間で判断する
Microsoftの移行ガイドでは、主に2つの移行パターンが示されています。
標準移行
トランザクションストアに必要なデータがすべて残っている場合は、標準移行を選択できます。
たとえば、次のような環境です。
- トランザクションTTLと分析ストアTTLがどちらも無期限
- 分析に必要な期間より、トランザクションストアの保持期間が長い
- 過去データを別のデータレイクやバックアップに保存している
この場合は、Fabricミラーリングで現在のAzure Cosmos DBデータを複製し、利用先を順番に切り替えます。
履歴データを保全する移行
分析ストアの保持期間がトランザクションストアより長い場合は、標準移行だけでは過去データが失われます。
たとえば、次の設定を考えます。
- トランザクションTTL:30日
- 分析ストアTTL:365日
この場合、31日前から365日前までのデータは分析ストアにしか存在しません。Fabricミラーリングは現在のトランザクションストアを基に複製するため、この履歴は自動的に移行されません。
履歴を残すには、分析ストアから過去データをDeltaテーブルなどへ書き出し、Fabricのミラーリングデータと統合する必要があります。公式ガイドでは、切り替え時刻を決め、履歴データと切り替え後のミラーデータをSQLビューで結合する方法が案内されています。(Microsoft Learn)
Microsoft Fabricへ移行する手順
前提条件と制限を確認する
Azure Cosmos DBミラーリングを利用するには、主に次の準備が必要です。
- Azure Cosmos DB for NoSQLアカウント
- Microsoft Fabric容量
- Fabricワークスペースへの必要な権限
- Azure Cosmos DBの継続的バックアップ
- ネットワークと認証方式の確認
現時点の公式ドキュメントでは、ミラーリングはAzure Cosmos DB for NoSQLが対象です。また、7日間または30日間の継続的バックアップが必要で、複数リージョン書き込みなど、継続的バックアップ側の制限を受けます。(Microsoft Learn)
プライベートエンドポイントや仮想ネットワークを利用している場合は、Network ACL Bypassを含めた接続設計も確認してください。
Fabricでミラーリングを作成する
Fabricワークスペースで「Mirrored Azure Cosmos DB」を作成し、対象のAzure Cosmos DBアカウントへ接続します。
作成後、初期複製が完了するまで待ち、次の項目を検証します。
- コンテナーごとの件数
- 最新レコードの反映状況
- 日時や数値のデータ型
- 配列や入れ子になったJSONの展開結果
- 欠損値やスキーマ変更の扱い
- クエリの応答時間
- Power BIレポートの集計結果
- 利用者ごとのアクセス権限
単純な件数比較だけでは不十分です。業務で利用する集計値や代表的な検索条件でも、旧環境と新環境の結果を比較してください。
旧環境と並行稼働する
Azure Cosmos DBミラーリングは分析ストアを使用しないため、Azure Synapse Linkと並行して動かせます。移行期間中は、旧環境を残したまま新環境の検証が可能です。(Microsoft Learn)
ただし、並行稼働中はAzure Synapse AnalyticsとMicrosoft Fabricの両方に費用が発生する可能性があります。検証期間と終了条件を先に決めておくことが重要です。
クエリとレポートを切り替える
検証が完了した処理から、利用先を切り替えます。
- Synapse SQLのクエリをFabric SQL分析エンドポイントへ移行
- Synapse SparkノートブックをFabricノートブックへ移行
- Power BIの接続先をFabricへ変更
- パイプラインや定期処理の接続情報を更新
- 監視、アラート、障害対応手順を更新
SQL構文が似ていても、データ型や入れ子構造の見え方、サポートされる機能が同一とは限りません。既存SQLをそのままコピーして完了と判断せず、結果と性能をテストしてください。
履歴データを移行する
分析ストアだけに残っている履歴がある場合は、切り替え時刻を決めて過去データを書き出します。
重複や欠落を防ぐには、次のように範囲を分けます。
- 切り替え時刻より前:履歴用Deltaテーブル
- 切り替え時刻以降:ミラーリングされたテーブル
両方を統合するビューを作成し、レポートやアプリケーションからは統合後のビューを参照させます。
検証完了後にAzure Synapse Linkを停止する
次の確認がすべて終わってから、分析ストアを無効化します。
- 必要な履歴データを移行した
- レポートと集計結果が一致している
- 定期処理が新環境で正常に完了した
- 障害時の復旧手順を確認した
- 利用部門から切り替え承認を得た
- 旧環境へ戻す必要がないと判断した
分析ストアのTTLを0にすると、保存されていたデータは削除されます。移行前の試験として安易に設定しないでください。(Microsoft Learn)
移行時に見落としやすい設定
継続的バックアップを有効化できるか
Fabricミラーリングは、Azure Cosmos DBの継続的バックアップを利用します。
既存アカウントの構成によっては、継続的バックアップへの切り替えに制約があります。特に複数リージョン書き込み、過去の分析ストア設定、バックアップポリシーは事前確認が必要です。
現在の本番アカウントをそのまま変更できない場合は、別アカウントへのデータ移行を含めた構成変更が必要になる可能性があります。
認証情報の更新手順
Fabricからの接続にアカウントキーを利用する場合、Azure Cosmos DB側でキーをローテーションした後にFabricの接続情報も更新しなければ、ミラーリングが停止する可能性があります。
Microsoft Entra IDを利用する場合も、対応するロールと権限範囲を確認してください。マネージドIDや読み取り専用キーなど、希望する認証方式が利用できるとは限りません。(Microsoft Learn)
セキュリティ要件
移行前に次の点を確認します。
- OneLake側のデータ暗号化要件
- カスタマーマネージドキーの要否
- Fabricワークスペースへの参加者
- SQL分析エンドポイントの共有範囲
- 開発、検証、本番ワークスペースの分離
- 個人情報や機密情報へのアクセス制御
- 監査ログの保存方法
Fabricワークスペースへの権限付与が、ミラーリングされたデータへのアクセス権に影響します。Azure側だけでなく、Fabric側の権限棚卸しも必要です。
停止と再開の挙動
ミラーリングを停止して再開すると、対象テーブルが再同期される場合があります。大量データを扱う環境では、再同期に必要な時間、容量、業務への影響を検証しておきましょう。(Microsoft Learn)
移行に伴う料金の考え方
今回の廃止により、自動的に一律の追加料金が発生するわけではありません。ただし、移行先では料金の構成が変わります。
| フェーズ | 主に確認する料金 |
|---|---|
| 現行環境 | Cosmos DB分析ストア、Synapse SQLやSparkなどのコンピューティング |
| 並行稼働中 | 現行環境の料金に加えてFabric容量、クエリ処理、ストレージ |
| 移行完了後 | Fabric容量、SQL・Spark・Power BIの処理、OneLakeストレージ |
| 旧環境停止後 | 不要になった分析ストアやSynapseリソースが残っていないか |
Fabricのミラーリング用ストレージには、購入しているFabric容量に応じた無料枠があります。無料枠を超えた場合やFabric容量を一時停止している場合は、OneLakeストレージ料金が発生する可能性があります。料金条件はリージョンや契約によって変わるため、実際のデータ量とクエリ負荷で試算してください。(マイクロソフト Azure)
また、ミラーリングによる複製処理は、Azure Cosmos DBのトランザクション処理に対する追加のRequest Unit消費を発生させないと案内されています。ただし、Fabric上で実行するSQL、Spark、Power BIなどの処理には、それぞれのコンピューティング料金が関係します。(Microsoft Learn)
料金を比較するときは、ストレージ単価だけでなく、次の項目を含めます。
- Fabric容量の常時稼働時間
- Power BIの利用形態
- SQLとSparkの実行量
- 履歴データの保存容量
- 並行稼働期間
- 移行作業やクエリ改修の工数
- 監視、バックアップ、運用変更のコスト
2029年3月31日までの推奨スケジュール
2029年3月31日は、移行を開始する日ではなく、移行を完了しておくべき最終期限です。
実務上は、次のスケジュールを目安にすると余裕を持って進められます。
| 時期の目安 | 実施内容 |
|---|---|
| 2026年中 | 利用環境、TTL、依存システム、データ量の棚卸し |
| 2026年後半から2027年 | Fabricミラーリングの概念実証、性能と料金の比較 |
| 2027年から2028年 | 履歴データ移行、SQL・ノートブック・レポートの改修 |
| 2028年中 | 本番の並行稼働と段階的な切り替え |
| 2029年1月まで | 本番移行を完了し、旧環境停止の承認を取得 |
| 2029年2月から3月 | 残存リソース、権限、料金、監視設定の最終確認 |
内部期限を2029年3月31日と同日にすると、性能問題やデータ不整合が見つかった際に修正する時間がありません。少なくとも数か月の予備期間を設けるのが安全です。
よくある疑問
Azure Cosmos DB自体が使えなくなるのか
Azure Cosmos DB自体の廃止ではありません。
今回の対象は、Azure Cosmos DB for NoSQLのデータをAzure Synapse Analyticsから分析するためのAzure Synapse Linkです。通常のアプリケーションからAzure Cosmos DBへ読み書きする処理は、今回の発表だけを理由に停止するものではありません。
Azure Synapse Analyticsも2029年に廃止されるのか
今回の発表は、Azure Synapse Analytics全体の廃止を意味しません。
ただし、Azure Synapse Linkを利用しているSQLクエリ、Sparkノートブック、パイプラインなどは、接続先や処理方式の変更が必要になります。
既存環境は2029年まで何もしなくてよいのか
2029年3月31日までは既存利用者へのサポートが案内されていますが、移行作業を先送りするのは危険です。
履歴データが多い環境、複数のPower BIレポートが接続している環境、プライベートネットワークや複数リージョン書き込みを利用している環境では、設計変更に時間がかかる可能性があります。
Fabricミラーリングへ切り替えるだけで移行できるのか
データの複製だけであれば比較的少ない操作で開始できますが、分析基盤全体の移行は別です。
クエリ、Power BI、Spark、権限、監視、料金管理、履歴データの扱いを個別に確認する必要があります。特に分析ストアにしか残っていない過去データは、自動では移行されません。
移行先の制限に現在の構成が対応していない場合はどうするか
分析ストアを無効化せず、現在のネットワーク構成、バックアップ方式、リージョン構成、暗号化要件を整理してください。
Fabricミラーリングをそのまま利用できない場合は、別のAzure Cosmos DBアカウントへの移行、データパイプラインによるOneLakeへの連携など、代替構成をMicrosoftまたは構築パートナーと検討する必要があります。
まず実施すべきこと
Azure Synapse Link for Azure Cosmos DB NoSQLを利用している可能性がある場合は、次の3点から着手してください。
- Azure Cosmos DBコンテナーの
analyticalStorageTtlを確認する - Synapse SQL、Spark、Power BI、パイプラインの依存関係を一覧化する
- トランザクションTTLと分析ストアTTLを比較し、標準移行か履歴保全移行かを判断する
新規アカウントではすでにAzure Synapse Linkを有効化できません。既存環境についても、2029年3月31日の直前ではなく、Fabricミラーリングとの並行稼働と業務データの検証を早めに開始することが重要です。

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