Microsoft Defender for Cloud の Secure Score で推奨事項を見ていると、タイトル末尾に「(DC only)」が付いていて戸惑うことがあります。結論から言うと、これは“ドメイン コントローラー専用”の意味です。本記事では「DC only」の正しい解釈、DC ではない VM に表示されるときの切り分け、そして Exempt(除外)で実務的に整理する方法までをまとめます。
Secure Score 推奨事項の「(DC only)」の意味
Defender for Cloud の Secure Score 推奨事項に付く「(DC only)」は、Domain Controller(ドメイン コントローラー)だけを対象とした推奨事項であることを示します。つまり、同じ Windows Server / VM であっても、役割が DC でなければ本来は“その推奨事項で評価されるべき対象”ではありません。
| 表記 | 対象 | 対象外(原則) | 実務上の読み替え |
|---|---|---|---|
| (DC only) | Active Directory のドメイン コントローラーとして動作しているサーバー/VM | メンバーサーバー、単体サーバー、AD DS 役割を持たない VM | 「DC だけが対応すべき設定。非DCに出てもまずは切り分け」 |
| 表記なし | 推奨事項の種類に応じた一般的な対象(VM/SQL/Storage など) | 推奨事項のスコープ外のリソース | 「原則として表示対象=対応候補」 |
なぜ「Audit Distribution Group Management」は DC 専用なのか
例に挙がっている “Ensure ‘Audit Distribution Group Management’ is set to include ‘Success’ (DC only)” は、Windows の「高度な監査ポリシー(Advanced Audit Policy)」にある Audit Distribution Group Management(配布グループ管理の監査) を “成功(Success)” で記録する設定を求めています。
このサブカテゴリはポイントが重要で、Microsoft の説明でも「イベントはドメイン コントローラーでのみ生成される」ことが明記されています。つまり、メンバーサーバー側で同設定をONにしても、そのサブカテゴリ自体が意味を持たず、ログも出ません。だからこそ Secure Score 側でも “(DC only)” と明示されています。
また、配布グループは「アクセス制御の権限付与に使うグループ」ではなく、あくまで配布(例:メール配布)用途の側面が強いので、監査の重要度が環境依存になりやすいのも特徴です(ただし、役員向け配布グループ等を運用している場合は、変更監査が有効になる場面があります)。
この監査で代表的に記録されるイベント例
Audit Distribution Group Management を有効にすると、配布グループ(Security disabled / Distribution group)の作成・変更・削除や、メンバー追加・削除などのイベントが DC のセキュリティログに記録されます。代表例は次の通りです。
| 操作の例 | 代表イベント ID(例) | ログが出る場所 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 配布グループの作成/変更/削除 | 4744/4745/4748、4749/4750/4753、4759/4760/4763 など | ドメイン コントローラーのみ | ローカル/グローバル/ユニバーサル等でイベントが分かれます |
| 配布グループへのメンバー追加/削除 | 4746/4747、4751/4752、4761/4762 など | ドメイン コントローラーのみ | 監査サブカテゴリが DC 専用のため |
DC ではない VM にも「(DC only)」推奨事項が出る主な原因
“DC only なのに、なぜか自分の VM に出ている” という状況は珍しくありません。実務で多いのは次のパターンです(複数が同時に起きることもあります)。
- 過去に DC だった(降格/demote した):DC を降格すると役割は外れますが、Defender for Cloud 側の判定や関連メタデータがすぐに追従しないケースがあります。
- 評価のタイムラグ(伝播遅延):推奨事項や除外(Exemption)は反映まで時間がかかることがあり、即時に表示が切り替わりません(後述)。
- 構成の痕跡が残っている:DC 運用時の設定・サービス・レジストリ等の残存で、誤判定の引き金になることがあります。
- “DC として使っていないつもり”だが AD DS 役割が残っている:機能/役割が入ったまま、または一部コンポーネントが残っていると、運用意図と実態がズレます。
- イメージ複製やテンプレート起因:DC を元にしたイメージから VM を作ったなど、環境整合性が崩れているケース。
ポイント:「(DC only)」推奨事項が出たからといって、即 “非DCでも設定しなければ” にはなりません。まずは DC 判定のズレなのか/本当に DC なのか を機械的に潰すのが最短ルートです。
まずは「本当に DC ではない」を短時間で確認するチェックリスト
切り分けでは、OS 内の状態(役割)とAD 側の状態(コンピュータアカウントの扱い)を分けて見ると迷いにくくなります。
| 確認項目 | 確認方法(例) | DC の場合に起きやすい結果 | 非DC の場合の目安 |
|---|---|---|---|
| AD DS 役割の有無 | サーバーマネージャー / PowerShell: Get-WindowsFeature AD-Domain-Services | Installed=True | Installed=False(またはそもそも機能なし) |
| NTDS サービス | PowerShell: Get-Service NTDS | サービスが存在し、稼働していることが多い | サービスが存在しない(見つからない) |
| ドメイン ロール(OS判定) | PowerShell: (Get-CimInstance Win32_ComputerSystem).DomainRole | 4/5(ドメインコントローラー系) | 0~3(ワークステーション/メンバーサーバー系) |
| AD 上の配置(OU) | ADUC でコンピュータアカウントの OU を確認 | Domain Controllers OU 配下にいる | Domain Controllers OU 以外 |
| 監査ログの発生位置 | 「配布グループ変更」操作のログがどこに出るか | DC の Security ログに出る | その VM には出ない(DC に出る) |
配布グループ管理の監査ログが DC でしか出ないこと自体が、最も強い根拠になります。Microsoft の監査ポリシー解説でも “ドメイン コントローラーでのみイベント生成” とされているため、非DC VM に推奨が出ている場合は「判定や表示の問題」を疑うのが自然です。
もし VM が DC だった場合にやるべきこと
VM が DC と判明した場合は、推奨事項の通り「Audit Distribution Group Management を Success で有効化」します。Microsoft の説明では、このサブカテゴリのイベント量は “DC で低い” とされ、運用上も比較的扱いやすい部類です。
設定の基本方針
- 推奨:ローカル設定ではなく、GPO(Group Policy)で DC に適用(Domain Controllers OU にリンク)
- 理由:DC は複数台構成が一般的で、監査ポリシーは統一が重要
- 合わせ技:ログの保存期間・転送(SIEM / Sentinel など)も同時に設計
手順イメージ(GPO)
- Group Policy Management を開き、Domain Controllers に適用する GPO を用意する
- Computer Configuration > Policies > Windows Settings > Security Settings > Advanced Audit Policy Configuration > Audit Policies > Account Management を開く
- Audit Distribution Group Management を開き、Success を有効化する
- 適用後、DC のイベントビューアー(Security)で実際にイベントが記録されることを確認する
監査ポリシーの内容はコマンドでも確認できます。監査全体の状態確認には auditpol.exe が使えます。
auditpol.exe /get /category:*
auditpol.exe /get /subcategory:"Distribution Group Management"
DC ではない VM の場合にやるべきこと
VM が DC ではないと判断できたなら、基本は次のどちらかです。
- 自然解消を待つ:評価更新のタイムラグで、時間経過で消えるケースがあります。
- Exempt(除外/免除)で整理する:明確に “適用対象外” と言えるなら、Secure Score と運用ノイズを減らすために除外を使うのが現実的です。
Defender for Cloud で推奨事項を Exempt(除外)する手順
Defender for Cloud には、推奨事項が自社にとって適用不可・あるいは別手段で軽減済みの場合に、推奨事項や特定リソースを Exempt(除外)できる仕組みがあります。除外後は、該当の推奨事項/リソースが Secure Score に影響しなくなります。
ポータルで個別に除外する(まずはここから)
- Azure ポータルで Microsoft Defender for Cloud を開く
- Recommendations(推奨事項)を開き、該当の推奨事項を選択する
- 詳細画面の Take action から Exempt を選ぶ
- Exempt 画面で次を設定する
- Scope(管理グループ/サブスクリプション/Selected resources など)
- Exemption rule name(ルール名)
- 必要に応じて有効期限(expiration)
- Category(Mitigated / Risk accepted など)
- Description(なぜ除外するのか。監査証跡として重要)
- Create を押して作成
除外が反映されるまで、最大で 24 時間程度かかる場合があります。反映後は、推奨事項(または対象リソース)が Secure Score に影響しなくなり、対象リソースは推奨事項詳細の “Not applicable” 側に整理されます。
Exempt のカテゴリ(Mitigated / Risk accepted)の選び方
Exempt には “どんな理由で除外するか” を示すカテゴリがあります。運用監査や後日の説明責任まで考えると、ここは適当に選ばないほうが安全です。
| カテゴリ | 使うとよい状況 | 説明文に書くと強い根拠 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| Resolved through 3rd party(Mitigated) | Defender for Cloud が検知できない別製品/別統制でカバーしている | 例:EDR/SIEM/GPO 統制、監査ルール、運用手順書のURL(社内)など | Mitigated で除外した場合のスコアの扱いには注意(仕様を理解して運用) |
| Risk accepted(Waiver) | リスクを認識した上で、今は対策しないと意思決定した | 例:期限、代替策、例外承認者、再評価日 | 放置に見えないよう、期限と再評価の設計が重要 |
なお、除外のカテゴリ選択によって Secure Score の見え方が変わることがあります。たとえば Mitigated として除外すると、ポイントの扱いが通常の「対応済み」とは異なる説明があり、結果としてスコアが上がるケースがある旨が案内されています。スコアだけを目的化せず、“なぜ除外するのか” を説明できる状態を優先してください。
複数の VM をまとめて除外したい場合(Exemptions をスケールで作る)
同種の VM が多数あり、個別に推奨事項から除外するのが現実的でない場合は、Defender for Cloud の Environment settings > Exemptions から “まとめて作る” 運用ができます。
- Azure ポータルで Microsoft Defender for Cloud を開く
- Environment settings > Exemptions に移動
- + Create を選ぶ
- Exemption 名、(任意で)説明、対象クラウド、スコープ(管理グループ/サブスクリプション/リソース)を選択
- カテゴリ(Mitigated / Waiver)、(任意で)有効期限を設定
- 除外したい推奨事項(またはカテゴリ)を選択して作成
「DC only が非DCに出る」というケースは、同じ基盤の VM 群で一斉に発生することがあるため、スケール除外のほうが運用が安定する場面もあります(ただし、最初に 1 台で原因切り分けをしてから適用するのが安全です)。
除外したあとに“ちゃんと反映されたか”を確認する方法
除外ルールを作ったら、反映確認までがセットです。Microsoft Learn では、ポータル上で Exempted を絞り込む方法、Inventory での確認、Azure Resource Graph(ARG)での確認例が案内されています。
Recommendations で Exempted を絞り込む
- Defender for Cloud > Recommendations を開く
- Recommendation status のフィルターで Exempted を選び、適用する
- 対象リソースを開き、除外ルールが意図通りか確認する
Inventory で除外が付いたリソースを探す
- Defender for Cloud > Inventory を開く
- Add filter から Contains exemptions を選び、Yes で絞り込む
Exempt(除外)を使う前に知っておきたい注意点
除外は便利ですが、やみくもに使うと “セキュリティ運用の見通し” が悪くなります。押さえておきたい注意点をまとめます。
- 機能がプレビュー扱いの場合がある:利用条件や表示が将来変わる可能性があります。
- 権限が必要:除外作成には Owner / Security Admin などの権限や、Azure Policy を編集できる権限が必要です。
- MCSB(Microsoft Cloud Security Benchmark)との依存:除外は MCSB イニシアチブに依存して評価・表示される旨が案内されています。環境側で前提が崩れていると、表示が不完全になることがあります。
- すべての推奨事項が除外対応とは限らない:除外できない推奨事項があること、カスタム推奨は除外できないことが明記されています。
- 複数イニシアチブに含まれる推奨事項は“全部”除外が必要:同じ推奨事項が複数のポリシー/標準に登場する場合、片方だけ除外しても残ることがあります。
- 管理グループで除外する場合の権限設計:管理グループスコープでの除外では、リソースプロバイダーの権限が論点になります(Reader 付与の注意が案内されています)。
結局どう判断する?現場向けの最短フロー
「(DC only) が非DC VM に出ている」問題は、最終的には “誤検知を直す” というより、運用上のノイズを減らしつつ、正しい対象にだけ対策を寄せることが目的になります。
| 状況 | 最初にやること | 次の一手 | おすすめの着地点 |
|---|---|---|---|
| DC かどうか曖昧 | OS 役割 / DomainRole / NTDS / OU を確認 | DC なら監査設定を実装 | DC のみで推奨事項を満たす |
| 非DC と断言できる | 伝播遅延も考慮して状況を観察 | 消えない場合は Exempt を作成 | Selected resources で除外して Secure Score を整理 |
| どう見ても誤判定・運用に支障 | 除外+根拠を記録 | 改善が必要ならサポートへ | 運用継続を優先して例外管理 |
「(DC only) の推奨事項が出る=全部の VM を一律にハードニングする」のは、運用コストが跳ね上がる典型パターンです。DC だけが対象であることを前提に、適用対象の切り分け → DC だけ対処 → 非DCは必要なら Exemptの順に進めると、安全性とスピードのバランスが取りやすくなります。

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