Azure Elastic SANがAV64 SKUを一般提供:AVS管理者が確認すべき設定と注意点

Azure Elastic SAN AV64 SKU対応の結論は、Azure VMware Solution(AVS)のAV64環境で、Azure Elastic SANデータストアを本番向けに使える選択肢が広がったという点です。AV64を使うAVS環境では、ホスト追加だけに頼らず、ストレージ容量や性能をより柔軟に拡張しやすくなります。MicrosoftのAzure Updatesでは、この更新が「Generally Available」「Launched」として扱われており、Azure Updates上のLaunchedは実稼働向けに完全リリースされた状態を指します。(Microsoft Azure)

ただし、これは「既存VMが自動的にElastic SANへ移行される」という意味ではありません。管理者は、AV64のリージョン・可用性ゾーン、Azure Elastic SANの作成条件、プライベートエンドポイント、iSCSIセッション数、RBAC権限、移行手順を事前に確認する必要があります。本記事では、Azure StorageのAzure Elastic SANに関する今回の更新を、AVS管理者・インフラ担当者・開発者が実務で確認すべき観点に絞って整理します。

目次

Azure Storageの今回の更新で何が変わるのか

今回の更新は、Azure Storage全般のAI/Copilot機能追加ではなく、Azure Elastic SANとAzure VMware Solutionのストレージ連携に関する一般提供です。具体的には、Azure Elastic SANデータストアがAV64 SKUをサポートし、AV64を使うAVS展開で、より大規模・高性能なストレージ構成を取りやすくなりました。(Microsoft Azure)

Azure VMware Solutionでは、永続ストレージの選択肢としてiSCSIデータストアのアタッチをサポートしています。Azure Elastic SANボリュームからVMFSデータストアを作成し、任意のクラスターにアタッチできるため、クラスターを増やしてvSAN容量を確保するだけでなく、ストレージ側を個別に拡張する設計が可能です。(Microsoft Learn)

観点変更点実務上の意味
対象AVSのAV64 SKUでAzure Elastic SANデータストアを利用可能AV64クラスターでも外部データストア設計を検討しやすくなる
ステータスGenerally Available / Launchedプレビュー前提ではなく、本番利用を前提に検討できる
ストレージ設計Elastic SANボリュームをVMFSデータストアとして接続コンピュート追加とストレージ追加を分けて計画できる
運用既存vSANの置き換えではなく、追加のデータストア選択肢移行・配置・監視設計は管理者側で必要
注意点リージョン、可用性ゾーン、ネットワーク、権限の条件がある「GAだからどこでも即利用可能」と判断しない

影響が大きい環境

今回の更新で特に影響を受けるのは、AV64を使ってAzure VMware Solutionを拡張している、または今後AV64を採用する予定がある環境です。Microsoft Learnでは、Azure Elastic SANをAVSのバッキングストレージとして使う場合の対応ホストとして、Gen1ではAV36、AV36P、AV48、AV52、AV64、Gen2ではAV64が示されています。(Microsoft Learn)

対象環境影響確認すべきこと
AV64クラスターを利用中Elastic SANデータストアを追加候補にできる既存ワークロードの容量・IOPS・スループット要件
AV64への拡張を計画中ストレージ拡張をホスト追加と分けて設計できるAV64のリージョン/AZ、クォータ、ネットワーク
vSAN容量が逼迫しているAVS環境ホスト追加以外の容量拡張案を検討できるどのVMをElastic SAN側へ配置するか
バックアップ、分析、スキャン系のI/Oが多い環境スループット重視のデータストア設計を検討しやすい実ワークロードでの性能検証
一般的なBlob StorageやAzure Files利用者直接的な影響は限定的AVSを使っていない場合は対応不要

注意したいのは、AV64自体にも利用条件があることです。Azure VMware Solutionの価格ページでは、AV64 Gen1は追加前提となる既存プライベートクラウド条件があり、AV64 Gen2も利用可能リージョンが限定されるため、リージョンと可用性ゾーンの確認が必要とされています。(Microsoft Azure)

管理者が最初に確認すべき設定

Azure Elastic SANをAV64のAVS環境で使う場合、最初に見るべきポイントは「作れるか」ではなく「安定して運用できるか」です。特に、リージョン、可用性ゾーン、権限、ネットワーク、接続数の確認を後回しにすると、データストア接続や性能検証の段階で手戻りが発生しやすくなります。

確認項目判断基準見落としやすいポイント
リージョン/AZAVSプライベートクラウドとElastic SANを同じリージョン・可用性ゾーンで用意するAV64、AVS、Elastic SANの提供状況を別々に確認する必要がある
RBAC権限組み込みの所有者・共同作成者以外のカスタムロール利用時は権限を確認データストア作成・削除に必要なAVS/Elastic SAN双方の権限が不足しやすい
Elastic SAN基本サイズ少なくとも16TiBの基本サイズが必要小さく作ってから後で調整する前提だと初期構成で詰まる可能性がある
CRC保護ボリュームグループのCRC保護は無効にするAVSでは現在サポートされていないため、作成時に確認が必要
プライベートエンドポイントデータストア接続前に必要数を構成する接続後に追加する場合、データストアのデタッチと再接続が必要
iSCSIセッションホスト数、プライベートエンドポイント数、接続数を設計するElastic SANデータストアは最大128接続の制約がある
Gen1/Gen2差分Gen1とGen2でネットワーク構成の考え方が異なるGen2ではiSCSIセッションのスケーリングに複数プライベートエンドポイントは不要とされる

Microsoft Learnでは、2025年11月時点で、AVSでElastic SANベースのデータストアを作成・削除するには適切な権限が必要と説明されています。カスタムロールを使う場合は、少なくとも Microsoft.AVS/privateClouds/clusters/datastores/write、Microsoft.ElasticSan/elasticSans/volumeGroups/volumes/write、Microsoft.ElasticSan/elasticSans/volumeGroups/volumes/read を確認してください。(Microsoft Learn)

ネットワークでは、AVS Gen1の場合、ExpressRouteゲートウェイのサイズがボトルネックになり得ます。Microsoft Learnでは、Elastic SANの帯域幅機能を処理できるようExpressRouteゲートウェイをサイズ設定する必要があり、例としてUltra Performance ExpressRoute Gatewayの帯域幅が1,280Mbpsであることが示されています。(Microsoft Learn)

展開前に決めておくべき設計方針

Azure Elastic SANをAV64のAVS環境へ追加する場合、いきなり本番VMを移すのではなく、まずデータストアの役割を明確にすることが重要です。

設計テーマ推奨される考え方具体例
配置対象すべてのVMではなく、要件が合うVMから段階的に配置大容量データを持つDB、分析用VM、バックアップ関連VM
性能要件IOPS重視かスループット重視かを分ける小さなランダムI/Oが多いDB、連続読み書きが多いバックアップ
可用性既存vSANとElastic SANの役割を分ける基幹VMは既存設計を維持し、増加データ領域をElastic SANに配置
運用監視、アラート、変更手順を事前に作る容量使用率、遅延、接続状態、APDイベントの確認
コストホスト追加とElastic SAN追加の両方で試算するvSAN容量目的のホスト追加を避けられるか検討

特に大切なのは、Elastic SANを「安価な追加ディスク」とだけ見ないことです。AVSではVMFSデータストアとして扱うため、VM配置、移行計画、バックアップ、監視、障害時の切り分けまで含めて設計する必要があります。

移行・展開の進め方

既存のAVS環境にAzure Elastic SANデータストアを追加する場合は、次の順序で進めると手戻りを減らせます。

手順作業内容確認ポイント
現状把握AV64クラスター、vSAN使用量、VMごとのI/O傾向を棚卸しする容量不足なのか、性能不足なのかを分ける
前提確認AV64、Elastic SAN、AVSのリージョン/AZ、クォータを確認する営業担当・パートナー確認が必要なケースもある
権限確認管理者ロール、カスタムロール、操作担当者を確認する作成権限だけでなく削除・変更権限も確認
ネットワーク設計Gen1/Gen2に応じて接続方式、プライベートエンドポイント、アドレスブロックを設計するGen1では外部ストレージ用の/24アドレスブロックも確認
Elastic SAN作成同一リージョン/AZでElastic SAN、ボリュームグループ、ボリュームを作るCRC保護、基本サイズ、命名規則を確認
データストア接続AVSのストレージ画面からElastic SANを接続する接続前にプライベートエンドポイント構成を完了させる
検証非重要VMやテストVMで遅延、IOPS、スループットを測定する公式ベンチマークではなく自社ワークロードで判断
段階移行対象VMを小さく分けて移行するメンテナンスウィンドウ、バックアップ、戻し手順を用意
運用化監視、アラート、容量管理、変更管理に組み込む75%超過など容量アラートの運用ルールを決める

Elastic SANベースのデータストアを削除する場合、対象データストア上に仮想マシンまたは仮想ディスクが存在すると削除操作は完了できません。撤去時は、VMの移動、バックアップ、依存関係の確認を先に済ませておく必要があります。(Microsoft Learn)

パフォーマンス設計で見るべきポイント

Azure Elastic SANをAV64環境で使う最大のメリットは、高性能なAVSホストと外部データストアを組み合わせ、ストレージをより柔軟に拡張できる点です。ただし、公式のベンチマーク値をそのまま自社環境の保証値として扱うのは危険です。

Microsoft Learnのパフォーマンス記事では、ベンチマーク結果は保証された性能目標ではなく参考値であり、実際の性能はワークロード特性、VM構成、Elastic SANのプロビジョニングによって変わると説明されています。掲載例では、Gen2の3台のAV64ホスト、100TiBのElastic SAN基本容量、20TiBのデータストアバッキングボリュームなどの条件が示されています。(Microsoft Learn)

実務では、次のように分類して検証すると判断しやすくなります。

ワークロード主なI/O傾向検証ポイント
データベース小さなランダムI/O、読み取り多めになりやすい平均遅延、ピーク時遅延、トランザクション処理時間
VDI/業務VM時間帯によるI/O集中始業時・ログオン時のスパイク
バックアップ大きなシーケンシャルI/Oスループット、バックアップ時間、他VMへの影響
分析・スキャン連続読み取りが多い読み取り帯域、ジョブ完了時間
移行ステージング一時的に大量I/Oが発生移行時間、同時実行数、ネットワーク帯域

公式情報にある最大IOPSやスループットの例だけで判断せず、必ず本番に近いVMサイズ、ディスク構成、同時実行数、バックアップ処理を含めて検証してください。特にExpressRouteやプライベートエンドポイント、iSCSIセッション設計が絡む場合、ストレージ単体の性能より接続経路が先に制約になることがあります。

AV64特有の移行リスクも確認する

AV64を使う場合、ストレージだけでなくクラスター間移行の互換性にも注意が必要です。Microsoft Learnでは、AV64ノードを既存のAVSプライベートクラウドへ追加すると異種環境になり、AV64クラスターとAV36/AV36P/AV52などのベースSKUクラスター間でEVCに起因するvMotion上の課題が発生する場合があると説明されています。(Microsoft Learn)

特に、ベースSKUクラスターからAV64クラスターへのvMotionは動作する一方、AV64側で作成されたVMや、AV64側で電源オフされたVMをベースSKU側へ戻すライブvMotionでは互換性エラーが発生するケースがあります。回避策としては、VMレベルのEVCモード設定やコールドvMotionが案内されています。(Microsoft Learn)

この点は、Elastic SANデータストアの接続可否とは別問題です。AV64環境でストレージを拡張する計画では、VMの配置先、戻し方、メンテナンス時の移動経路もセットで確認してください。

よくある失敗と対策

失敗しやすい判断なぜ問題になるか対策
GAなので全リージョンで使えると思い込むAV64、AVS、Elastic SANはリージョン/AZ条件が絡む計画段階でリージョン、AZ、クォータを確認する
既存VMが自動的にElastic SANへ移ると思うElastic SANは追加データストアであり、自動移行ではない移行対象VMと移行手順を明確にする
プライベートエンドポイントを後から増やす接続後の追加ではデタッチと再接続が必要になるデータストア接続前に必要数を設計する
iSCSI接続数を計算しないホスト数とセッション数で接続上限に達する可能性があるクラスター単位で接続数を計算する
公式ベンチマークを性能保証として扱う実性能はワークロードと構成に依存する本番相当のテストを行う
削除時にVMや仮想ディスクを残すデータストア削除が完了しない事前にVM移動、ディスク確認、バックアップを行う
AV64と既存SKU間の移動を軽視するEVC差分でライブvMotionに制約が出る場合があるVMレベルEVCやコールド移行を計画に入れる

開発者・アプリ担当者が確認すべきこと

開発者やアプリ担当者にとって、今回の更新はアプリコードを直接変更する話ではありません。ただし、データストア配置が変わると、アプリの応答時間、バッチ処理時間、バックアップ時間、障害時の復旧手順に影響する可能性があります。

確認すべきことは次の3つです。

  • ピーク時のI/Oパターンを管理者へ共有する
    例として、月次締め処理、夜間バッチ、バックアップ、検索インデックス再構築などは、通常時より大きなI/Oを発生させます。
  • 移行テストではアプリの正常性も確認する
    VMが起動するだけでなく、DB接続、ログ出力、ファイル読み書き、バッチ完了時間、監視アラートまで確認します。
  • IaCや運用スクリプトの固定値を見直す
    データストア名、リソースグループ名、タグ、監視対象を固定している場合、Elastic SANデータストア追加後に監視漏れや自動化ミスが起きやすくなります。

まず取るべき次のアクション

今回のAzure Elastic SAN AV64 SKU対応は、AVSのストレージ設計を見直すよいタイミングです。特に、AV64を使っている環境、AV64への拡張を検討している環境、vSAN容量のためだけにホスト追加を検討している環境では、Elastic SANを選択肢に入れる価値があります。

最初に行うべきことは、次の5点です。

  1. 利用中または計画中のAVSがAV64対象か確認する
  2. AV64、Azure Elastic SAN、AVSのリージョン・可用性ゾーンを確認する
  3. カスタムロール、ネットワーク、プライベートエンドポイント、iSCSI接続数を設計する
  4. 重要度の低いVMでElastic SANデータストアの検証を行う
  5. 性能、容量、移行手順、戻し手順を文書化してから本番展開する

Azure Elastic SANは、AVSのストレージを単純に増やすためだけの機能ではありません。AV64の高性能なホストと組み合わせて、コンピュート、ストレージ、コスト、運用を分けて最適化するための選択肢です。導入判断では「使えるか」だけでなく、「どのワークロードを、どの性能要件で、どの運用体制で載せるか」まで決めてから展開しましょう。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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