Microsoft Foundry / Azure OpenAIのQuickstartを追っている人がまず押さえるべき結論は、2026年4月時点の「Microsoft Foundry Quickstart」は、単なるモデル呼び出しの入門ではなく、モデル応答の生成、プロンプト定義済みエージェントの作成、複数ターン会話までを一気通貫で確認する実装導線になっている点です。既存のAzure OpenAI利用者やIT管理者は、SDKの世代、プロジェクトエンドポイント、認証方式、Foundry classicとの違いを確認してから検証を始めると、後戻りを減らせます。(Microsoft Learn)
2026年4月下旬のGitHub履歴では、対象ドキュメントに「Update code version from 14 to 15」という更新が入り、TypeScript関連の修正取り込みも示されています。大きな新機能発表というより、Quickstartのコード導線を最新のFoundry実装に合わせて保守する更新として捉えるのが実務的です。(GitHub)
Microsoft Foundry Quickstartで見ておくべき更新ポイント
Microsoft Foundry Quickstartの価値は、「とりあえずAPIを1回叩く」だけで終わらないところにあります。現在のQuickstartでは、Foundryにデプロイ済みのモデルを使い、モデルに直接問い合わせ、エージェントを作り、そのエージェントと会話履歴を維持しながらやり取りする流れを確認できます。(Microsoft Learn)
特にAzure OpenAIを既に使っているチームは、次の観点で読み替えると理解しやすくなります。
| 確認ポイント | Quickstartでの意味 | 実務での判断基準 |
|---|---|---|
| モデル呼び出し | Foundryプロジェクト経由でモデルから応答を得る | まずは要約、分類、文章生成など単発処理で接続確認する |
| エージェント作成 | モデルと指示文を組み合わせ、応答の振る舞いを定義する | 毎回同じ役割・口調・制約を使う業務に向く |
| 複数ターン会話 | 会話IDを使い、前後の文脈を保ったやり取りを行う | 問い合わせ対応、要件整理、レビュー支援などに向く |
| SDK/APIの世代 | Azure AI Projects 2.xやFoundry projectsの新しいAPIを使う | 既存コードが1.xやclassic前提なら移行確認が必要 |
| ポータル操作 | Foundry portalからもモデルやエージェントを試せる | 非開発者の検証、プロダクトオーナーのPoC確認に向く |
Quickstart本文では、Python、C#、TypeScript、Java、REST API、Foundry portalの導線が用意されています。開発チームが複数言語で構成されている場合でも、同じシナリオを各言語で比較しやすい構成です。(Microsoft Learn)
Azure AI Projects 2.x前提になっている点に注意
今回のQuickstartで最も実務上の影響が大きいのは、コードがAzure AI Projects 2.xを前提としている点です。Microsoft LearnのQuickstartでは、Azure AI Projects 2.xのコードはAzure AI Projects 1.xと互換性がないと明記されています。既存のPoCや社内テンプレートを流用する場合、ここを確認せずに進めると、エージェント作成やResponses APIまわりでエラーになりやすくなります。(Microsoft Learn)
たとえば、古いコードでAssistants APIやclassic portal前提のエージェント作成をしている場合、新しいFoundryプロジェクトのQuickstartと同じ前提では動かない可能性があります。Microsoftの移行ガイドでも、Responses APIエンドポイントに対して古いAssistants API呼び出しを送ると、404やMethodNotAllowedの原因になり得ると説明されています。(Microsoft Learn)
既存コードを確認するときのチェックリスト
| 確認項目 | 見るべき内容 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|
| SDKバージョン | azure-ai-projects、Azure.AI.Projects、@azure/ai-projectsなど | Quickstartの指定に合わせて更新し、依存関係をロックする |
| エージェント作成API | 旧APIやclassic向けの作成処理を使っていないか | 新しいFoundry projects APIの作成方法に書き換える |
| エンドポイント | リソース単位のエンドポイントとプロジェクトエンドポイントを混同していないか | FoundryプロジェクトのWelcome画面からコピーした値を使う |
| 認証方式 | ローカル検証だけAPIキーに依存していないか | 本番ではMicrosoft Entra IDやRBACの運用方針を決める |
| リージョン | Responses APIやAgent Serviceが対象リージョンで利用できるか | 利用可否を確認し、必要なら新規リソースのリージョンを見直す |
この確認は開発者だけでなく、IT管理者にも重要です。SDKの更新はアプリの問題に見えますが、実際にはRBAC、リージョン、ネットワーク、プレビュー機能の扱いまで関係するためです。
Quickstartを始める前に必要なもの
Quickstartの前提条件は、Microsoft Foundryにデプロイ済みのモデルと、必要な開発環境です。モデルがない場合は、先にFoundryリソースを作成し、モデルをデプロイする必要があります。Microsoftのリソース作成Quickstartでは、Foundryプロジェクトの作成、モデルのデプロイ、プロジェクトエンドポイントの取得、チームメンバーへのアクセス付与までが説明されています。(Microsoft Learn)
管理者が最初に準備すべきものは次の4つです。
- AzureサブスクリプションとFoundryリソースを作成できる権限
- 検証用のFoundryプロジェクト
- デプロイ済みモデルの名前
- 開発者に共有するプロジェクトエンドポイント
チームで検証する場合は、個人ユーザーに直接権限を付けるより、Microsoft Entraのセキュリティグループを使う方が後から管理しやすくなります。Microsoftの手順でも、チームメンバーにAzure AI Userロールを割り当てる流れや、複数ユーザーにはEntraセキュリティグループを使う考え方が示されています。(Microsoft Learn)
認証は「ローカル検証」と「本番運用」で分けて考える
Quickstartでは、SDK利用時にAzure CLIのaz loginでサインインし、DefaultAzureCredentialを使って認証する流れが示されています。REST APIの場合は、https://ai.azure.com/.defaultスコープで一時アクセストークンを取得し、AZURE_AI_AUTH_TOKENとして使う例が掲載されています。 (Microsoft Learn)
ローカル開発ではこの方法で十分に検証できます。ただし、本番運用では「誰の権限で動いているのか」「権限をどう監査するのか」「APIキーを使う場合にロール単位の制御ができるのか」を整理する必要があります。Microsoft FoundryのGA概要では、ガバナンスに敏感な本番ワークロードではMicrosoft Entra IDとRBACの利用が推奨され、APIキーは同じ粒度のロールベース権限制御を提供しないと説明されています。(Microsoft Learn)
認証方式の使い分け
| 利用シーン | 向いている認証 | 理由 |
|---|---|---|
| 個人のローカル検証 | az login + DefaultAzureCredential | セットアップが速く、Quickstartに沿って確認しやすい |
| CI/CD | サービスプリンシパルまたはワークロードID | 実行主体を明確にし、権限を限定できる |
| 本番アプリ | Microsoft Entra ID + RBAC | 監査、権限制御、ローテーション方針を組み込みやすい |
| 一時的なREST検証 | アクセストークン | 短時間のAPI確認に向くが、期限切れに注意が必要 |
失敗しやすいのは、ローカルで動いたaz login前提のコードを、そのまま本番環境に持ち込むケースです。本番では実行環境のID、ロール、スコープを明示的に設計してください。
モデルを直接呼ぶか、エージェントを作るか
Quickstartでは、まずモデルに直接入力を送り、応答が返ることを確認します。その後、モデルと指示文を使ってエージェントを作成し、さらに会話履歴を維持した複数ターンのやり取りを試します。(Microsoft Learn)
実務では、すべてを最初からエージェント化する必要はありません。単発の要約や分類であれば、モデル呼び出しだけで十分な場合があります。一方、利用者と何度もやり取りし、同じルールや役割を守らせたい場合は、エージェント化した方が設計しやすくなります。
| 選択肢 | 向いている用途 | 例 |
|---|---|---|
| モデル直接呼び出し | 1回の入力で完結する処理 | 議事録要約、メール文面生成、問い合わせ分類 |
| プロンプトエージェント | 同じ指示を繰り返し適用する処理 | 社内ヘルプデスク風の回答、製品仕様に沿った案内 |
| 複数ターン会話 | 前の発言を踏まえる処理 | 要件ヒアリング、障害切り分け、提案書作成支援 |
プロダクトオーナーは、まず「会話が必要か」を判断軸にすると整理しやすくなります。ユーザーの入力が毎回独立しているならモデル直接呼び出しで始め、文脈や手順確認が必要ならエージェントを検討する、という順番が現実的です。
Foundry portalとコード実装の使い分け
Foundry portalは、モデルのデプロイ、エージェントの作成、簡単なチャット検証に向いています。Quickstartでも、ポータルを使う場合はコードなしでモデルやエージェントを試せる流れが示されています。(Microsoft Learn)
一方で、業務アプリに組み込む段階ではSDKやREST APIが必要になります。プロダクトオーナーがポータルで動作イメージを確認し、開発者が同じ設定をコードに落とす、という分担にするとPoCが進めやすくなります。
Microsoft Foundry自体は、アプリ開発者、MLエンジニア、IT管理者・プラットフォームエンジニアを主要な利用者として位置付けています。開発だけでなく、モデル、エージェント、ツール、権限、監視を含む運用基盤として見ることが重要です。(Microsoft Learn)
Azure OpenAI利用者が特に注意すべきclassicとの違い
Azure OpenAIを以前から使っているチームは、「Azure OpenAIの延長」としてFoundryを見がちです。しかし、Quickstartが前提にしているのはFoundryプロジェクトを中心とした新しい体験です。既存のclassic portal、旧エージェント、旧APIを使っている場合は、同じ名前の機能でも操作場所やAPIが違うことがあります。
新しいMicrosoft Foundry portalはGAとして提供されていますが、すべての機能がGAという意味ではありません。MicrosoftのGA概要では、core scenarioは本番利用向けの範囲が示される一方、一部機能はPreviewのままであり、production rollout前にGA/Previewの状態やリージョン対応を確認する必要があると説明されています。(Microsoft Learn)
移行前に確認すべきこと
| 項目 | 確認理由 |
|---|---|
| 既存リソースがFoundryプロジェクトに紐づいているか | 新しいFoundry体験ではプロジェクト単位の管理が中心になるため |
| 使いたいモデルが対象リージョンで利用できるか | モデルやAgent Serviceの利用可否はリージョンに依存するため |
| 旧Assistants APIやv1エージェントを使っていないか | 新しいQuickstartのAPI前提と合わない可能性があるため |
| Preview機能を本番要件に含めていないか | 社内のリスク審査や運用基準に影響するため |
| APIキー運用に依存していないか | RBACや監査の粒度が要件を満たさない場合があるため |
特にリージョンは見落とされやすいポイントです。Microsoftの移行ガイドでは、Responses APIやFoundry Agent ServiceがすべてのAzureリージョンで利用できるわけではなく、未対応リージョンではエージェントやResponses API機能が現在のポータルで動かないと説明されています。(Microsoft Learn)
IT管理者向け: 最初の検証環境は小さく作る
IT管理者がMicrosoft Foundry / Azure OpenAIのQuickstartを社内展開する場合、いきなり全社向けの共通基盤を作るより、検証用の小さな環境を作る方が安全です。
おすすめの最小構成は次の通りです。
| 構成要素 | 推奨する初期設定 |
|---|---|
| リソースグループ | 検証専用に分ける |
| Foundryプロジェクト | チームまたはPoC単位で作る |
| モデル | Quickstartで扱いやすい小規模モデルから始める |
| 権限 | 開発者には必要最小限のロールを付与する |
| 認証 | ローカル検証はaz login、本番想定はEntra ID/RBACで検討する |
| コスト管理 | 検証後にリソースグループごと削除できるようにする |
Microsoftのリソース作成手順でも、不要になったプロジェクトは関連リソースを削除するためにリソースグループを削除する流れが示されています。PoCでは、作成時から削除単位を意識しておくとコストの放置を防げます。(Microsoft Learn)
開発者向け: Quickstartのおすすめ実行順
開発者は、いきなりエージェントの複雑な設計に入るより、Quickstartの順番通りに確認するのが近道です。
まずプロジェクトエンドポイントを正しく取得する
Quickstartでは、プロジェクトエンドポイントを環境変数として保存する流れが示されています。Pythonなどのコード例では、エンドポイント形式としてhttps://resource_name.ai.azure.com/api/projects/project_nameのようなプロジェクト単位のURLが示されています。 (Microsoft Learn)
ここでよくある失敗は、Azure OpenAIのリソースエンドポイントや古いclassic向けのURLをそのまま使うことです。接続エラーが出た場合は、モデル名やSDKより先に、エンドポイントがFoundryプロジェクトのものかを確認してください。
次にモデルへの直接呼び出しで疎通確認する
最初のゴールは、モデルから応答が返ることです。ここで確認できるのは、モデルのデプロイ、プロジェクトエンドポイント、認証、SDKの基本設定です。
この段階で失敗する場合、エージェント作成に進んでも原因が複雑になるだけです。まずは単発のresponses.create相当の処理で、最小入力に対して応答が返る状態を作りましょう。
その後にエージェントを作る
モデル呼び出しが成功したら、エージェントを作成します。Quickstartのエージェントは、モデルとinstructionsを組み合わせるシンプルな構成です。ここでは、複雑なツール連携や外部データ連携を急がず、「同じ指示を持つエージェントが一貫した応答を返すか」を確認します。
たとえば社内ヘルプデスク用途なら、最初のinstructionsは次のような設計にします。
あなたは社内ITヘルプデスク担当です。
回答は日本語で、最初に結論を述べてください。
不明な点は推測せず、追加で確認すべき情報を質問してください。
この程度の短い指示でも、単発のモデル呼び出しとの違いを確認できます。最初から長大なプロンプトを作ると、どの指示が効いているのか分かりにくくなるため避けましょう。
最後に複数ターン会話を確認する
Quickstartでは、会話を作成し、同じ会話の中で追加質問を投げることで、前のやり取りを踏まえた応答を確認します。(Microsoft Learn)
このテストでは、以下を確認してください。
- 2回目の質問が1回目の文脈を参照できるか
- 会話IDをアプリ側で正しく保持できるか
- ユーザーごとの会話分離ができているか
- 会話履歴をどこまで保持するかの方針があるか
業務アプリでは、会話履歴の扱いがセキュリティや個人情報管理に直結します。PoCの時点から、保存期間、ログの参照権限、監査の要否を決めておくと、本番化の議論がスムーズになります。
Product Owner向け: PoCで見るべき評価観点
Microsoft Foundry Quickstartを実行できたとしても、それだけで業務導入できるわけではありません。プロダクトオーナーは、「動くか」だけでなく「業務価値が出るか」を見る必要があります。
PoCでは、次の観点を評価してください。
| 評価観点 | 確認すること | 合格ラインの例 |
|---|---|---|
| 正確性 | 業務ルールに反した回答をしないか | 重要質問の回答ミスが許容範囲内 |
| 一貫性 | 同じ条件で回答が大きくぶれないか | トーン、形式、確認事項が安定している |
| 操作性 | 利用者が追加説明なしで使えるか | 3分以内に使い始められる |
| 運用性 | 権限、ログ、障害時対応が設計できるか | 管理者が監査・停止・削除できる |
| コスト | 利用量が増えたときに予算内に収まるか | 想定利用回数で月額上限を超えない |
| 拡張性 | 将来、社内データやツール連携に拡張できるか | 検証設計が特定画面や手作業に依存しない |
Quickstartは技術検証の入り口です。PoCの成果物としては、動作デモだけでなく、利用シナリオ、対象ユーザー、禁止事項、想定コスト、運用責任者を1枚にまとめておくと、次の承認に進みやすくなります。
2026年4月更新を踏まえた実務上の結論
2026年4月時点のMicrosoft Foundry Quickstartを見ると、Microsoft Foundry / Azure OpenAIの開発導線は、モデル単体のAPI利用から、プロジェクト、エージェント、会話、運用管理を含む形へ移っています。QuickstartのGitHub履歴ではコード版数更新も確認できるため、社内テンプレートや過去のPoCコードを使う場合は、最新版のSDK/API前提に合わせて見直すことが重要です。(GitHub)
次に取るべき行動は明確です。まず検証用Foundryプロジェクトを作成し、モデルを1つデプロイします。次にQuickstart通り、モデル直接呼び出し、エージェント作成、複数ターン会話の順に確認します。そのうえで、既存Azure OpenAIコードとの差分、Azure AI Projects 2.x対応、Entra ID/RBAC、リージョン対応、Preview機能の扱いをチェックしてください。
Quickstartを「サンプルコード」として読むだけでなく、社内AIアプリ基盤を設計するための最小チェックリストとして使うことが、2026年4月更新を実務に活かす一番のポイントです。

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