Azure 上の Windows Server 2022 Datacenter: Azure Edition を Windows Server 2025 にインプレースアップグレードしようとしたら、セットアップで「ファイル、設定、アプリを引き継ぐ」がグレーアウトして進めない――。この症状は “ISO の当て方” だけでなく、Azure Edition 固有の SKU 差や Azure 公式のアップグレード手順が絡むのがポイントです。本記事では原因の整理から、現実的に失敗しにくい進め方までまとめます。
最初に結論:グレーアウトの主因は「SKU違い」と「Azureのアップグレードメディア要件」
Azure VM(Windows Server)をインプレースアップグレードする場合、一般的な「ISO をデータディスクとして付ける」だけでは正しく進まないケースがあります。特に Windows Server 2022 Datacenter: Azure Edition から Windows Server 2025 へ上げるときは、次の2点が落とし穴です。
- 落とし穴①:SKUが違う(Azure Edition → 通常 Datacenter など)
Windows セットアップは、同一系統のアップグレードでないと “保持(Keep)” を許しません。Azure Edition から通常版へは内部的に別 SKU として扱われ、保持が無効になりやすいです。 - 落とし穴②:Azure 公式手順は「専用のアップグレードメディア(Managed Disk)」を使う
Microsoft Learn の Azure VM 向け手順では、Azure が提供する upgrade media disk(隠し Marketplace イメージ)を作成してアタッチし、ゲスト OS 内から setup を実行します。単なる Server 2025 ISO だと、正しいアップグレード経路に乗らない場合があります。
さらに重要な注意点として、Azure のインプレースアップグレードは “OS の中身だけ” を上げるため、Azure の制御プレーン(VM のイメージ情報や管理機能)と切り離される というデメリットがあります。結果として、Auto guest patching / Hotpatch / Azure Update Manager などが使えなくなる可能性があるため、Azure 側の運用機能を重視する場合は 新規 VM 作成+移行 の方が安全です。
なぜ「Keep files, settings, and apps」が選べないのか
Windows セットアップの「保持」がグレーアウトする理由は複数ありますが、今回の “Azure Edition → 2025” では特に次のパターンが多いです。
| よくある原因 | 具体的な状況 | 結果 | 対処の方向性 |
|---|---|---|---|
| SKU(製品ライン)が違う | 2022 Datacenter: Azure Edition → 2025 Datacenter(通常版) | 保持が無効(「Nothing」しか選べない) | 保持したいなら “同一 SKU 系” の経路が必要。無理なら移行設計へ |
| メディアが「汎用 ISO」 | Azure VM に Server 2025 ISO を付けて setup.exe | Azure 向けの公式アップグレード経路に乗らない可能性 | Azure 公式の upgrade media disk(WindowsServerUpgrade / server2025Upgrade)を使う |
| 言語/ロケール差 | もともと日本語 OS、メディアは en-US 前提 | アップグレード判定で弾かれる・想定外の警告が出る | 事前にシステムロケールを en-US に寄せる(公式手順の注意点) |
| 起動方法が不適切 | ISO からブートして “新規インストール” の流れに入る | 保持パスに乗れない | 必ず「ゲスト OS にログインして」setup を実行する |
特に Azure Edition から通常 Datacenter に上げようとして保持できない件は、Microsoft Q&A でも「別 SKU 扱いなので保持できないのは仕様」と説明されています(ARM テンプレートの imageReference が別物である例も提示されています)。
Windows Server 2025 Azure Edition の SKU / イメージは存在するのか
「Windows Server 2025 Azure Edition の SKU が見つからない」という声は 2024 年末頃から多かったのですが、現在は Azure Marketplace 側に Windows Server 2025 Datacenter: Azure Edition の SKU が存在 することが、Microsoft ドキュメント上でも確認できます。
たとえば、Azure の自動ゲストパッチや Hotpatch の対応イメージ一覧には、次のような SKU が列挙されています。
- 2025-datacenter-azure-edition
- 2025-datacenter-azure-edition-core
- 2025-datacenter-azure-edition-smalldisk
- 2025-datacenter-azure-edition-core-smalldisk
また、Microsoft の「Windows Server images for July 2025」の一覧でも、Windows Server 2025 Datacenter: Azure Edition(Hotpatch / Core などを含む)が掲載されています。つまり “2025 Azure Edition のイメージ自体がない” という状況ではありません。
Azure で SKU を自分の環境から確認する方法(CLI / PowerShell)
「自分のリージョンで見える SKU だけが正義」です。ポータル検索で出てこない場合でも、CLI/PowerShell で確認すると見えるケースがあります。
Azure CLI(例)
az vm image list-skus --location japaneast ^
--publisher MicrosoftWindowsServer ^
--offer WindowsServer ^
--output table
# 2025 だけ絞りたい場合(PowerShellなら Select-String 等でフィルタ)
Azure PowerShell(例)
$loc = "japaneast"
Get-AzVMImageSku -Location $loc -PublisherName "MicrosoftWindowsServer" -Offer "WindowsServer" |
Where-Object { $_.Skus -like "2025*" } |
Select-Object Skus
ここで 2025-datacenter-azure-edition 系が表示されれば、そのリージョンでは少なくとも “新規 VM の作成” という形では利用可能です。
Azure VM のインプレースアップグレード公式手順(Windows Server 2025 対応)
Azure VM の Windows Server をインプレースアップグレードする公式ガイドは Microsoft Learn にあり、現在は Windows Server 2025 も対象に含まれています。
ただし、Azure のインプレースアップグレードは “Azure の管理機能と分離される” という注意が強調されています。Hotpatch や Auto guest patching を活かしたい場合、後述の「新規 VM 作成+移行」を優先的に検討してください。
事前チェックリスト(失敗率を下げるための最低ライン)
| チェック項目 | 目的 | 確認・対応のヒント |
|---|---|---|
| OS ディスク/データディスクのスナップショット | 失敗時に即ロールバック | アップグレード前に必ず取得(OS/データ両方) |
| Managed Disks を使用している | 公式手順の前提条件 | 未移行なら先に移行 |
| KMS(ボリュームライセンス)前提を満たす | Azure 提供メディアの要件 | Azure の一般化イメージ由来 VM は通常満たす/移行 VM は要注意 |
| OS ディスクの空き容量 | アップグレードの作業領域 | 不足すると失敗率が上がるので事前に拡張 |
| システムロケール(en-US 推奨) | アップグレードメディアの制約回避 | upgrade media disk は en-US のみ。必要なら事前にロケール変更 |
| アンチウイルス/FW の一時停止 | セットアップ阻害の回避 | 完了後に必ず戻す |
ポイント:ISO ではなく「upgrade media disk」を作る
Microsoft Learn の手順では、アップグレードメディアは “隠し Marketplace イメージ”(Offer: WindowsServerUpgrade)から取得し、Managed Disk として作成します。対象バージョンの SKU は server2025Upgrade を指定します。
概念的には以下の流れです(※値は自環境に合わせて変更してください)。
# 1) Azure にログイン
Connect-AzAccount
# 2) “WindowsServerUpgrade / server2025Upgrade” の最新バージョンを取得
$location = "japaneast" # VM と同じリージョン
$publisher = "MicrosoftWindowsServer"
$offer = "WindowsServerUpgrade"
$sku = "server2025Upgrade"
$latest = (Get-AzVMImage -Location $location -PublisherName $publisher -Offer $offer -Skus $sku |
Sort-Object -Descending { [version]$_.Version } |
Select-Object -First 1).Version
# 3) そのイメージを参照して Managed Disk(アップグレードメディア)を作成
# (New-AzDiskConfig / Set-AzDiskImageReference / New-AzDisk などを使う)
公式ページには、ゾーン指定まで含めた具体的なスクリプト例と、作成したディスクを VM にアタッチするポータル手順が載っています。
ゲスト OS 内から setup.exe を実行する(推奨コマンド例)
アップグレードディスクをアタッチしたら、RDP で VM にログインし、ディスクのドライブレター(例:E:)を確認して setup を起動します。Microsoft Learn では PowerShell から次のように実行する手順が示されています。
.\setup.exe /auto upgrade /dynamicupdate disable /eula accept
アップグレード中は RDP が切断されるため、Azure ポータルのスクリーンショット機能で進捗を追う案内もあります。
重要:アップグレード後に “Azure 側のイメージ情報は変わらない”
Azure のインプレースアップグレードは、VM の「publisher / offer / plan」などのイメージ情報を更新しません。OS の中身だけが上がり、Azure ポータル上の “この VM は何のイメージで作られたか” は基本的にそのままです。
この仕様が、Hotpatch や Auto guest patching といった Azure 管理機能を使えなくなる背景でもあります。運用設計上、ここを軽視すると「上げたのに Azure の便利機能が消えた」という事故になりやすいので注意してください。
パターン別:2022 Azure Edition から 2025 へ上げるときの現実解
「Windows Server 2025 にしたい理由」が何かで、最適解は変わります。ここでは “保持したい” と “Azure Edition を維持したい” を軸に整理します。
| やりたいこと | 想定ルート | 保持(アプリ/設定) | 現実的な結論 |
|---|---|---|---|
| とにかく 2025 にする(Azure Edition こだわらない) | 2022 Azure Edition → 2025 Datacenter(通常) | 不可になりやすい(別 SKU 扱い) | 保持が必要なら「移行設計」に寄せる。保持不要ならクリーン寄りで実施 |
| Azure Edition のまま 2025 にしたい | 2022 Azure Edition → 2025 Azure Edition | 環境依存(セットアップの選択肢に出るか) | upgrade media disk で “2025 Azure Edition” が選べるかが分岐。出なければ新規 VM+移行が安全 |
| Hotpatch / 自動パッチなど Azure の運用機能を最大化したい | 新規で 2025 Azure Edition VM を作成して移行 | (移行なので再構築が基本) | 最も推奨されやすい。インプレースは制御プレーン分離の注意点が重い |
「Azure Edition → 通常版 2025」で保持できないのは仕様寄り
Microsoft Q&A では、2022 Datacenter – Azure Edition から 2025 Datacenter(通常版)へのアップグレードで保持できない理由として、両者が異なる OS SKU として扱われる ためだと説明されています。つまり、Keep が無効でも “壊れている” とは限りません。
「Azure Edition → Azure Edition 2025」は “選択肢に出るか” が分岐
Microsoft Q&A のモデレーター回答では「Azure Edition のインプレースアップグレードは公式のサポートパスに載っていないため待つ必要がある」という案内がありました。一方で MVP の回答では、Azure の upgrade media disk を使い、セットアップで Windows Server 2025 Datacenter: Azure Edition を選べる場合があるとも述べられています(ただし「選択肢に出ないなら、その環境では利用できない可能性がある」とも補足されています)。
実務的には、次の判断が安全です。
- upgrade media disk を使ってセットアップを起動し、“Upgrade to” の候補に 2025 Azure Edition が出るか を確認する
- 出ない場合は、そこで深追いせず 新規 2025 Azure Edition VM を作って移行 に切り替える(リージョン/テナント/条件差が絡む可能性があるため)
新規 VM 作成+移行が推奨されやすい理由(Azure Edition では特に)
Azure Edition を選ぶ大きな理由は、Hotpatch や Azure のパッチ運用といった “Azure 側の運用メリット” にあります。ところが Azure のインプレースアップグレードは、公式に「制御プレーンから切り離され、Azure の機能が使えなくなる」と注意されています。Azure Edition の価値を取りに行くほど、インプレースと相性が悪くなる という構図です。
インプレース vs 新規移行:判断用の比較表
| 観点 | インプレースアップグレード | 新規 VM 作成+移行(ブルーグリーン) |
|---|---|---|
| アプリ/設定の保持 | 条件が合えば保持できるが、SKU差で崩れやすい | 原則は再構築(移行設計が必要) |
| Azure の管理機能(Hotpatch 等) | 制御プレーン分離の注意点がある | 新しいイメージで作るので有効化しやすい |
| ロールバック容易性 | スナップショットから戻す(手順を理解しておく必要) | 切替前は旧 VM が残るため戻しやすい |
| ダウンタイム | アップグレード中は停止(影響が出る) | 切替タイミングを短く設計できる |
| 推奨されやすさ | 環境依存・注意点が多い | Azure のベストプラクティスとして採用しやすい |
移行の実践例(最低限の設計イメージ)
- Web / AP サーバー系:新 VM にアプリを再デプロイ → データ/設定を移行 → ロードバランサや DNS を切替
- ファイルサーバー系:新 VM にディスク設計 → RoboCopy 等でデータ同期 → 切替日に最終差分同期
- AD DS(ドメインコントローラー):新 2025 VM を追加 DC として昇格 → レプリケーション確認 → 旧 DC を降格
この「ブルーグリーン」的な考え方は、Azure の更新に強く、障害時の切り戻しも現実的です。
アップグレード後に必ず確認したいポイント
Azure ポータル表示が変わらないのは正常
先述のとおり、インプレースアップグレード後も VM の “元イメージ” 情報は変わりません。想定外ではなく仕様です。監査や運用チームに「ポータルのイメージ表示が変わっていない」ことを事前共有しておくと混乱を減らせます。
Azure Edition のライセンス/アクティベーション表示
Azure Edition では、Azure(IMDS)との通信がうまくいかないと、デスクトップにアクティベーションのウォーターマークが出るなどの問題が起きることがあります。アップグレード後に突然出た場合は、ネットワークや IMDS 到達性の観点で切り分けが必要です。
自動パッチ / Hotpatch を期待している場合の注意
Windows Server 2025 Azure Edition は Hotpatch 対応の SKU 組み合わせが明示されていますが、インプレースアップグレードは制御プレーン分離の注意点があります。「Hotpatch を使うために Azure Edition にしたい」場合は、インプレースで引っ張るより その SKU の新規 VM を作る 方が運用上はブレにくいです。
よくある質問(詰まりどころだけ厳選)
Server 2025 の ISO を付けてもダメ。何が違う?
Azure VM のインプレースアップグレードは、一般的な ISO 手順と似ていますが、公式手順では WindowsServerUpgrade(隠しイメージ)から作る upgrade media disk を使います。特に Azure Edition のように SKU 差が絡むと、汎用 ISO ではアップグレード判定がズレやすく、Keep がグレーアウトする原因になります。
Windows Server 2025 Azure Edition へ “保持したまま” 上げたい。確実な方法は?
現場目線の確実解は「新規 2025 Azure Edition VM を作成して移行」です。インプレースは選択肢に出る/出ないなど環境差があり、さらに Azure 管理機能の注意点が重いので、業務影響を最小化するなら移行設計が最も読みやすいです。
それでもインプレースでやりたい。最低限の見極めは?
- 必ずスナップショット取得(OS/データ)
- upgrade media disk(server2025Upgrade)で setup を起動
- “Upgrade to” の候補に 2025 Azure Edition が出るか確認
- 出ないなら深追いせず移行へ
まとめ:このケースで失敗しない最短ルート
- 「Keep files, settings, and apps」がグレーアウトするのは、SKU違い と メディア違い が主因になりやすい
- Azure VM のインプレースアップグレードは、WindowsServerUpgrade / server2025Upgrade の upgrade media disk を使うのが公式手順
- ただしインプレースは Azure 管理機能(Hotpatch 等)が使えなくなる注意 があるため、Azure Edition を選ぶほど新規 VM+移行が合理的
- 2025 Azure Edition の SKU 自体は存在するので、“上げる” ではなく “作って移す” 方が計画しやすい

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