ドメイン(社内)アカウントのパスワード変更後、Office(Word/Excel)のサインインで正しいパスワードを入れても3回入力を求められ、最後に「Something Went Wrong」+ 80180006(0x80180006)が出ることがあります。実はOfficeの再認証をきっかけにEntra ID/Intuneの自動デバイス登録が走り、端末登録だけが失敗しているケースが多いです。
症状の特徴:このパターンに当てはまるか
まずは、問題の「型」を揃えます。次の特徴が複数当てはまる場合、本記事で扱うOfficeの再サインインを起点にした自動デバイス登録(MDM)が関係している可能性が高いです。
- ドメイン(社内)アカウントのパスワードを変更した直後から発生する
- Word/Excel/PowerPointなどのOfficeアプリでサインインすると、正しいパスワードでも同じ画面が繰り返し出る
- 合計で3回前後、パスワード入力を求められる(回数は環境により前後)
- 途中で「組織へのデバイス登録」「ポリシーの適用」「会社のデータを保護するため…」といった文言が出る
- 最後に80180006 / 0x80180006(Something Went Wrong)が表示される
- ただし「完了」を押すと閉じ、その後はOfficeが使えてしまう(再現性はあるが致命的ではない)
| 観測される挙動 | 読み取れること | 優先度 |
|---|---|---|
| パスワードは合っているのに入力が何度も求められる | 資格情報の「更新」だけでなく、端末側の登録/ポリシー適用フローが連鎖している可能性 | 中 |
| 80180006(0x80180006)が最後に出る | Office自体のエラーというより、デバイス登録(MDM/Intune)側の失敗を疑う | 高 |
| 「完了」を押すとOfficeが普通に使える | 「サインイン」と「端末登録」が別処理で、端末登録だけ失敗していることが多い | 低〜中 |
結論:Officeの再サインインをきっかけに自動デバイス登録が走っている
この現象の本質は、Officeの再サインインによりMicrosoft Entra ID(旧Azure AD)への再認証が発生し、その流れでIntune(MDM)への自動登録(エンロール)が起動している点にあります。
そして、端末登録の途中で何らかの理由により処理が失敗すると、最後に80180006 / 0x80180006が表示されます。重要なのは、エラーが出ても「Officeが使える」場合があることです。これは、
- Officeのサインイン(トークン取得)は成功している
- しかし「端末登録」や「準拠(compliance)判定」のフローが途中で失敗している
という二段構えになっているためです。結果として、ユーザー体感では「パスワードを3回入れさせられた後にエラーが出たのに、なぜか使える」という分かりにくい挙動になります。
| 要素 | 役割 | この問題との関係 |
|---|---|---|
| Office(Word/Excelなど) | ユーザーのサインインを要求し、組織ポリシーに基づき端末条件を満たす必要がある | 再サインインがトリガーになる |
| WAM(Web Account Manager)/ アカウント基盤 | Windows側で認証情報とトークンを管理し、アプリに渡す | パスワード変更で古いトークンが無効化され、再取得が走る |
| Microsoft Entra ID | ユーザー認証・デバイス登録・条件付きアクセスの判断 | 「デバイスが登録済み/準拠」などの条件により登録フローが動く |
| Intune(MDM)/ Company Portal | 端末登録、構成プロファイル配布、準拠判定 | 登録途中の失敗が80180006として表面化しやすい |
80180006 / 0x80180006の意味:何が失敗しているのか
80180006(0x80180006)は、Officeアプリ単体の不具合というより、デバイス登録(Workplace Join / MDM enrollment)やポリシー適用の一連の流れで失敗が起きたことを示唆するコードです。
原因は1つに決まらず、環境(Entra ID/Intune設定、条件付きアクセス、端末の状態)によって変わります。ただし現場で多いのは、次のような「端末側に残った古い登録情報」か「管理側スコープ/制限の不整合」です。
| よくある原因 | 起こりやすい状況 | ユーザー側の確認ポイント | 管理者側の確認ポイント |
|---|---|---|---|
| Company Portal(会社ポータル)や関連コンポーネントが古い | Windows再インストールや長期未更新端末、Store更新が止まっている | Microsoft Storeのライブラリで更新が溜まっていないか | Intune登録時のアプリ要件・バージョン要件 |
| 職場/学校アカウントの接続情報が不整合(古いトークン/資格情報) | パスワード変更・MFA切替・アカウント移行の直後 | 設定の「職場または学校にアクセス」に複数アカウントが残っていないか | Entra IDのデバイスオブジェクトが重複していないか |
| 端末がすでにIntune登録済みで、再登録しようとして衝突 | PC入替や再セットアップ後、古い端末レコードが残っている | Company Portalで「このデバイス」が表示されるか | Intune/Entra側で同じ端末名・同じユーザーのレコードが複数ないか |
| MDM自動登録の適用スコープ(MDM/MAM)が競合・矛盾 | 一部ユーザーだけ発生、部署やグループで差がある | 自分だけ/一部だけ発生か、全員かを切り分ける | MDM user scope、MAM user scope、条件付きアクセスの対象 |
| 登録制限(デバイス数上限、プラットフォーム制限、個人所有端末制限) | 同一ユーザーが複数台持ち、BYOD制限が強い組織 | 別PCでは起きないか、または自分だけか | Device enrollment restrictions、ユーザーのデバイス数制限 |
| ネットワーク要因(プロキシ/VPN/SSL復号、時刻ズレ) | 社内ネットワークのみで発生、外部回線では改善する | 別回線で再現するか、時刻が自動同期されているか | 登録関連URLへの通信、証明書・SSL中間装置 |
ユーザー向け:まず試す対処(効果が出やすい順)
ここからは、IT部門への依頼を最小限にしつつ試せる手順です。「エラーが出てもOfficeが使える」ケースほど、Company Portal更新や端末側のキャッシュ整理であっさり直ることがあります。
Company Portal(会社ポータル)/ Intune 関連を更新する
この症状は、Company Portalの更新で解消する報告が多いパターンです。まずはここから着手してください。
- Microsoft Store を開く
- 「ライブラリ」または「ダウンロード」から更新を確認する
- Company Portal(会社ポータル)があれば更新(なければインストール)
- 更新後、PCを再起動
- Officeアプリを起動してサインインを再実行
ポイントは「更新しただけ」で終わらせず、再起動してからOfficeを起動することです。WAM(Windowsの認証基盤)は再起動で状態が揃いやすく、パスワード変更直後の不整合を引きずりにくくなります。
Officeアプリ/Company Portalを修復・リセットする
更新で改善しない場合は、アプリ側の破損やキャッシュ不整合を疑います。Windows 10/11で手順が近いので、以下を目安に進めます。
| 対象 | 手順(Windows 11の例) | 狙い |
|---|---|---|
| Company Portal | 設定 → アプリ → インストールされているアプリ → Company Portal → 詳細オプション → 「修復」→ダメなら「リセット」 | 登録フローのアプリ側不具合をリフレッシュ |
| Microsoft 365 Apps(Office) | 設定 → アプリ → インストールされているアプリ → Microsoft 365 → 変更 → 「クイック修復」→改善しなければ「オンライン修復」 | Officeのサインイン周りのコンポーネントを修復 |
「リセット」はサインイン状態が初期化されることがあります。社内の運用ルール(サインイン方法、MFA)に沿って、必要に応じてIT部門へ確認してから実施してください。
「職場または学校アカウント」を切断して再接続する
端末登録の不整合が疑わしい場合、Windowsの「職場または学校アカウント」の接続を一度外して付け直すことで、古い登録情報が整理されることがあります。
- 設定 → アカウント → 職場または学校にアクセス を開く
- 対象のアカウントを選択し「切断」
- PCを再起動
- 同じ画面から「接続」し、組織アカウントで再接続
注意:この操作は、端末がIntune管理下にある場合、ポリシー適用や証明書配布に影響することがあります。業務端末で実施する際は、社内のガイドラインに従ってください(不明な場合はIT部門へ相談)。
資格情報マネージャーで古い保存情報を削除する
パスワード変更後に古い資格情報が残っていると、Officeが古い情報で自動サインインを試みて失敗し、結果としてサインイン画面が何度も出ることがあります。以下は「安全寄り」に整理する方法です。
- コントロール パネル → ユーザー アカウント → 資格情報マネージャー
- 「Windows 資格情報」を開く
- Office / MicrosoftOffice / AzureAD / ADAL / Teams / Outlook / 会社メールに関連しそうな古い項目を削除
- PCを再起動
- Officeでサインインをやり直す
| 削除対象になりやすい例 | 見分け方のヒント | 削除後に起こりうること |
|---|---|---|
| MicrosoftOffice / Office16 / ADAL / MSOID | Officeサインインで作られやすい | Office/Teams/Outlookに再サインインが必要になる |
| AzureAD / MicrosoftAccount など | 職場/学校アカウントやWAM関連で使われる | 一時的にサインインの再要求が増えることがある |
削除する項目に迷う場合は、いきなり全削除せず、Office関連から段階的に試すのが無難です。
ネットワークと基本状態を切り分ける
端末登録は通信要件がOfficeより厳しいことがあり、Officeサインインは通るのに登録だけ失敗する、というズレが起きます。次の切り分けは短時間で効果があります。
- 社内Wi-Fi/有線で失敗するなら、スマホテザリング等の別回線で試す
- VPN/プロキシを使用している場合は一時的に外して挙動確認(終わったら必ず元に戻す)
- Windows Updateを適用し、再起動を完了させる
- 時刻設定を「自動」にし、時刻同期(ズレは認証エラーの温床)
可能なら認証方法を変えてサインインできるか試す
組織がパスワード以外(Microsoft Authenticator、FIDO2、Windows Hello for Business など)を許可している場合、別方式でサインインできるかを確認します。特にMFA切替直後は、パスワードキャッシュよりも最新の認証経路が通りやすいことがあります。
再現を減らすための「やりがちな落とし穴」
同じPCでも、操作の順番や状態によって発生率が変わることがあります。パスワード変更直後に次のような条件が重なると、3回入力→80180006になりやすい傾向があります。
- パスワード変更直後にOfficeをすぐ開き、複数アプリ(Outlook/Teams/OneDrive含む)を同時に起動する
- スリープ復帰直後でネットワークが不安定、または時刻同期がズレている
- 職場/学校アカウントが複数ぶら下がっている(旧アカウントが残っている)
パスワード変更後は、できれば一度再起動 → まずWindowsサインイン/職場アカウント状態を安定させてからOfficeを起動するだけでも改善することがあります。
放置してよいケース/急いで対応すべきケース
「完了」を押すと使えるため放置しがちですが、組織ポリシーによっては後から影響が出ることがあります。次の表で優先度を判断してください。
| 状況 | 業務影響 | おすすめの動き |
|---|---|---|
| エラーは出るが、その後はOfficeもOutlookも問題なく使える(たまに出る程度) | 低 | Company Portal更新→再起動までを実施し、改善すれば様子見 |
| 毎回3回入力が発生し、作業が中断される | 中 | 資格情報整理、職場/学校アカウント再接続まで実施。それでもダメならITへ |
| Officeがサインインできない、またはOneDrive同期やTeamsが使えない | 高 | ユーザー側の対処を一通り行い、早めにIT部門へエスカレーション |
| 「デバイスが準拠していない」などの表示が出る/社内アプリが使えない | 高 | 条件付きアクセス・準拠ポリシーの可能性が高い。管理者調査が必要 |
IT管理者向け:Entra ID / Intune 側で確認すべきポイント
ユーザー側の更新・修復で改善しない場合、管理側の設定や端末レコードの状態が原因になっていることがあります。ここでは「80180006を出しやすい論点」を優先度順にまとめます。
MDM/MAM適用スコープの整合性
- Entra ID のMDM user scope(自動MDM登録の対象)が想定どおりか
- MAM(アプリ保護)の対象と競合していないか
- 対象ユーザーがライセンス要件を満たしているか(Intune等)
条件付きアクセス(CA)と準拠ポリシー
Officeサインイン時に「準拠デバイスであること」を要求していると、未登録や不整合の端末で登録フローが走ります。ここで失敗すると、ユーザーには80180006だけが見えることがあります。
- 該当ユーザー/アプリに「準拠しているデバイスを要求」等が有効か
- 例外(緊急回避)ポリシーの設計が適切か
- 準拠ポリシーの評価が失敗していないか(特に証明書・暗号化要件)
デバイスレコードの重複・古い登録の残骸
端末入替や再セットアップが絡むと、Entra ID・Intuneに古いデバイスが残り、再登録時に衝突することがあります。ユーザーからは「パスワード3回→80180006」に見えます。
| 確認場所 | 見るポイント | 対処の方向性 |
|---|---|---|
| Entra ID のデバイス一覧 | 同名端末、同一ユーザーで複数レコード、最終サインイン日時 | 古いレコードの整理(運用ルールに従い削除/無効化) |
| Intune のデバイス一覧 | 準拠状態、最後のチェックイン、登録方式 | Retire/Wipeの誤操作に注意しつつ、不要端末を整理 |
| 登録制限(Enrollment restrictions) | プラットフォーム制限、個人デバイス制限、デバイス数上限 | 対象ユーザーの条件が制限に引っかかっていないか調整 |
ログで「どこで失敗しているか」を特定する
端末側で確認しやすいログは、Windowsのイベントビューアーです。ユーザーPCでも参照できるため、IT部門への連携材料に向いています。
| ログ | 場所 | 見るべきキーワード |
|---|---|---|
| DeviceManagement-Enterprise-Diagnostics-Provider | イベントビューアー → アプリケーションとサービス ログ → Microsoft → Windows → DeviceManagement-Enterprise-Diagnostics-Provider → 管理者 | Enrollment、MDM、エラーコード、HTTPステータス |
| User Device Registration | イベントビューアー → アプリケーションとサービス ログ → Microsoft → Windows → User Device Registration | Workplace Join、AzureAd、Join、Registration |
加えて、端末の参加状態はコマンドで把握できます。社内ルールが許せば、次を実行して結果を共有すると調査が進みます。
| コマンド | 目的 | 注目フィールド |
|---|---|---|
dsregcmd /status | Entra ID登録状況、ドメイン参加状況、MDM URLなどを確認 | AzureAdJoined / DomainJoined / DeviceId / MdmUrl |
mdmdiagnosticstool.exe -area Enrollment -cab c:\\temp\\mdm.cab | MDM登録関連の診断情報を収集 | Enrollmentの失敗理由、関連ログ |
なお、dsregcmd /leaveのような強制離脱は影響が大きく、手順を誤ると再登録が難しくなる場合があります。実施する場合は、運用手順(回復キー、証明書、BitLocker、Wi-Fi設定など)を整理した上で行ってください。
最短で直すための実務的な進め方
現場では「とりあえず全部試す」より、次の順で再現性を保ったまま切り分ける方が早く収束します。
| ステップ | やること | 期待できる結果 |
|---|---|---|
| 更新 | Company Portal更新 → 再起動 → Officeでサインイン | アプリ起因ならここで解消 |
| 端末側整理 | Office/Company Portal修復・リセット、資格情報削除 | キャッシュや破損が原因なら改善 |
| 接続情報の再作成 | 職場/学校アカウントの切断→再接続 | 登録情報の不整合が解消 |
| ネットワーク切り分け | 別回線で試す、プロキシ/VPN/時刻を確認 | 通信起因かどうかが分かる |
| 管理者調査 | MDM/MAMスコープ、CA、端末レコード、ログ確認 | 設定起因・制限起因の特定 |
よくある質問
「完了」を押すと使えるなら放置しても大丈夫?
短期的には使えても、条件付きアクセスや準拠ポリシーが厳格化されたタイミングで、突然アクセス不可になることがあります。特にOneDrive同期やTeams、社内業務アプリで「準拠デバイスが必須」になっている場合は、早めの是正が安全です。
パスワード変更のたびに出るのはなぜ?
パスワード変更で古いトークンが無効化されると、Officeは再サインインを要求します。そのタイミングで「デバイス登録も必要」という条件が揃うと、毎回同じ流れになりやすくなります。端末登録が安定すれば、再発頻度は大きく下がります。
OutlookやTeamsでも同様の症状が出る?
出ます。Office、Outlook、Teamsは共通の認証基盤(WAM/Entra ID)を利用するため、どれか1つで発生した問題は他アプリにも波及しやすいです。逆に言えば、Company Portal更新や資格情報整理の効果も横展開されやすいです。
まとめ
Officeのサインインでパスワード入力が3回求められ、最後に80180006(0x80180006)が出る場合、原因はOffice単体ではなくEntra ID/Intuneの自動デバイス登録(MDM)が絡んでいることが多いです。まずはCompany Portalの更新と再起動を起点に、修復・リセット、職場/学校アカウント再接続、資格情報整理で端末側を整え、それでも改善しない場合は管理者側でスコープや制限、ログを確認すると最短で収束します。

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