Officeテレメトリ廃止後の確認手段を整理|Inventory・ConfigMgr・Telemetry Logの使い分け

Officeテレメトリ廃止後に「結局、何で確認すればいいのか」が分かりにくいのは自然です。結論から言うと、以前の Office テレメトリ ダッシュボード を丸ごと置き換える単一機能はありません。2026年4月時点で実務的なのは、日常の棚卸しは Microsoft 365 Apps admin center の Inventory、アップグレード前の見極めは Microsoft Configuration Manager の readiness 機能、個別端末の深掘りは Office Telemetry Log と、目的ごとに分けて使う方法です。Microsoft 自身も代替として Inventory と Configuration Manager readiness を案内し、Telemetry Log は Windows クライアント上に残しています。 (Microsoft Learn)

この記事では、Officeテレメトリ廃止後の確認手段を「何が分かるか」「どの運用に向くか」「どこで詰まりやすいか」で整理します。特に重要なのは、Inventoryだけで互換性判定まで完結しないことと、COMアドインの整理を後回しにしないことです。COMアドインは現在メンテナンスモードで、新しい Outlook for Windows ではサポートされません。 (Microsoft Learn)

目次

Officeテレメトリ廃止後の確認手段はこう分ける

Microsoft の公式情報を踏まえると、Officeテレメトリ廃止後の確認手段は次のように整理すると迷いにくくなります。旧Officeテレメトリが持っていた「棚卸し・互換性・個別障害・統制・更新確認」の役割が、現在は複数の機能に分かれています。 (Microsoft Learn)

確認したいことまず使う手段向く運用
今どの端末で何が動いているかMicrosoft 365 Apps admin center の Inventory日常の棚卸し、月次レビュー
どの端末を先に上げられるかConfiguration Manager readiness移行プロジェクト、段階展開
特定端末で何が壊れたかOffice Telemetry Log個別障害、再現調査
どのアドインを許可・禁止するかGroup Policy / Cloud Policy標準化、統制
Webアドインをどう配布・停止するかMicrosoft 365 管理センターの Integrated appsCOMアドイン置き換え後の運用
更新が当たっているかSoftware updates / Cloud Updateパッチ運用、更新遅延の監視

まず押さえたい仕様差

旧Officeテレメトリは、Excel ワークブックと SQL Server を使うオンプレミス型の仕組みで、Office ドキュメントやアドイン、ソリューションの インベントリ・使用状況・正常性 を集約して見られるのが強みでした。しかも、収集データは組織が管理する SQL Server に格納され、Microsoft には送信されませんでした。一方、現在の Inventory はクラウド前提で、端末・ビルド・更新チャネル・COMアドイン・マクロ利用有無の把握に強い反面、旧Officeテレメトリのような一体型ダッシュボードではありません。 (Microsoft Learn)

差が大きいのは、見える粒度 と データの置き場所 です。旧Officeテレメトリのエージェントは、最近使ったドキュメント、登録済みアドイン、ユーザー/端末情報に加え、Office 2016/2019 ではアプリケーションイベントやアドインのパフォーマンスも収集できました。これに対して Inventory では、マクロについて送信されるのは「最近開いたマクロ有効ファイルの数」であり、マクロ名や内容は含まれません。つまり、旧Officeテレメトリの代替を探すより、目的別に役割分担する前提で設計し直す ほうが現実的です。 (Microsoft Learn)

加えて、Office テレメトリ ダッシュボードは Microsoft 365 Apps for enterprise では Version 2208 以降サポート対象外となり、2023年に各更新チャネルで Version 2301/2302 へ順次移行する中で削除されました。Telemetry Agent とダッシュボード本体は自動削除されますが、Processor、共有フォルダー、SQL データベースは手動で片付ける必要があります。Telemetry Log は削除対象ではなく、Windows クライアント上で引き続き使えます。なお、旧Officeテレメトリを含む Office 2016/2019 も 2025年10月14日でサポート終了済みです。 (Microsoft Learn)

日常運用の第一候補は Inventory

Inventoryで分かること

Officeテレメトリ廃止後、もっとも先に触るべきなのは Microsoft 365 Apps admin center の Inventory です。ここでは、Office のビルド、更新チャネル、32/64bit、端末一覧、最終接触日時、最終サインインユーザー、COMアドインの有無、マクロ使用有無を確認できます。端末を開けば、その端末に入っている Office アプリ、COMアドイン一覧、最近マクロ有効ファイルを開いたかどうかまで追えます。アドイン側も、名前、発行元、バージョン数、導入台数で掘り下げられます。 (Microsoft Learn)

Inventoryで見えるものInventoryでは見えないもの
端末名、ビルド、更新チャネル、32/64bit実際のVBAコード
COMアドイン名、発行元、バージョン、導入台数詳細なランタイムエラー
マクロ利用の有無、最近マクロ有効ファイルを開いた痕跡マクロファイル名や内容
最終接触、最終ユーザーOffice 本体に含まれる組み込みアドイン

この仕様を見ると、Inventory は 「今どの端末で、どの Office 構成と COMアドインが動いているか」を把握する棚卸し機能 と考えると使いどころがはっきりします。逆に、アドインの読み込み失敗理由や VBA の個別エラーまでここだけで追うのは無理があります。 (Microsoft Learn)

Inventoryが向く運用

Inventory が特に向くのは、次のような日常運用です。

  • 台数の多い COMアドインを洗い出す
  • 複数バージョンが混在しているアドインを見つける
  • まだ古いビルドや想定外チャネルに残っている端末を探す
  • マクロ利用端末をざっくり把握して、重点テスト対象を絞る

Microsoft は、Office 2010 以降で動く add-in や VBA、複雑なドキュメントの大半は Microsoft 365 Apps でも動くと案内しています。だからこそ、全件を同じ深さで精査するより、業務停止に直結するアドイン、全社展開されているアドイン、Outlook依存の COMアドイン から優先して見るほうが効率的です。 (Microsoft Learn)

Inventoryの注意点

Inventory は便利ですが、旧Officeテレメトリと前提がかなり違います。初回はワンステップのセットアップが必要で、データはユーザーが Word や Excel などを起動してから おおむね1時間以内 に表示されます。Heartbeat は1日1回で、30日間チェックインしない端末は Inventory から消えます。CSV エクスポートは可能ですが 1日1回 で、代替のエクスポート手段は用意されていません。 (Microsoft Learn)

さらに重要なのがプライバシー前提です。Inventory 用の情報は、診断データ設定とは別で Microsoft に送信 されます。旧Officeテレメトリが組織内 SQL に閉じていたのとはここが大きく違います。セキュリティ・法務・情報システムでレビューが必要な組織では、導入前にこの点を見落とさないでください。 (Microsoft Learn)

移行判定は Configuration Manager readiness が強い

Configuration Manager readinessで分かること

Microsoft Configuration Manager を使っている組織なら、Officeテレメトリ廃止後の「互換性の見極め」に最も近いのは Microsoft 365 Apps readiness です。Office 365 Client Management dashboard では、端末を Not assessed / Ready to upgrade / Needs review に分類し、add-in と macro の互換性状態を列で確認できます。readiness dashboard では、Add-in readiness、Macro readiness、Macro advisories なども見られます。さらに Pilot and Health dashboard では、アドイン構成に基づくパイロット端末候補や、health goals を満たさない add-in / macro も追えます。 (Microsoft Learn)

どんな運用に向くか

Configuration Manager readiness は、すでに Configuration Manager current branch を使っている組織 で、Office 2016/2019 から Microsoft 365 Apps に上げる、あるいは 32bit から 64bit へ寄せる、といった移行案件に向いています。Microsoft の現行ガイダンスでも、Office 2016/2019 から Microsoft 365 Apps へ上げる際の readiness 確認として、Configuration Manager の client management dashboard と Microsoft 365 Apps Upgrade Readiness Toolkit が挙げられています。 (Microsoft Learn)

ただし、前提条件は軽くありません。Hardware Inventory の有効化、Office 365 Configurations クラスの選択、readiness ファイル取得のための接続性、さらに health data を出すにはポリシーまたはレジストリでデータ収集を有効化する必要があります。とはいえ、このデータは Configuration Manager の site database に保存され、Microsoft には送信されません。プライバシー面を重視しつつ、段階展開したい組織 にはかなり相性が良いです。 (Microsoft Learn)

Configuration Manager readinessの注意点

注意したいのは、Configuration Manager のダッシュボードでも旧Officeテレメトリと同じ体験にはならないことです。特に add-in support statements は 2025年4月1日からダッシュボードから削除される案内があり、現在はそこに依存した判断はできません。readiness は、あくまで 危ない端末を絞り込むためのスクリーニング と考えるのが安全です。 (Microsoft Learn)

また、macro readiness は MRU をもとに、.xlsm や .docm、古い .xls のようなマクロを含みうる形式を数える仕組みです。つまり「この端末はマクロを使っていそうだ」という優先度付けには向きますが、どの VBA が壊れるかの最終判定 まではしません。最終的にはパイロット展開と実機テストが必要です。 (Microsoft Learn)

個別障害の深掘りは Telemetry Log が効く

Officeテレメトリ廃止後でも、Office Telemetry Log は消えていません。Microsoft は削除対象から Telemetry Log を外しており、Windows クライアント上で利用可能です。Office Add-ins の技術資料でも、Telemetry Log にはアドインの読み込み・起動・終了・エラー、CPU使いすぎ、ランタイムエラーなどのイベントが記録されると案内されています。既定の場所も明示されています。 (Microsoft Learn)

%Users%\<Current user>\AppData\Local\Microsoft\Office\16.0\Telemetry

Telemetry Log が向くのは、次のような場面です。

  1. 特定ユーザーだけ Excel や Outlook の挙動がおかしい
  2. Inventory では「そのアドインが入っている」ことしか分からない
  3. 実機で再現できるので、読み込み・失敗・エラーの痕跡を追いたい
  4. ベンダー更新、無効化、ポリシー統制のどれで止血するか決めたい

つまり Telemetry Log は、組織全体の監視ではなく、1台の端末を詰めるための道具 です。旧Officeテレメトリの代替というより、個別障害対応の最後の一手として位置付けると使いやすくなります。 (Microsoft Learn)

アドイン統制と置き換えは別レイヤーで考える

COMアドインは棚卸しだけで終わらせない

COMアドインは今も多くの現場で残っていますが、Microsoft の現行整理では メンテナンスモード です。しかも、新しい Outlook for Windows は COMアドインをサポートしません。Inventory で一覧を出して終わりではなく、残すもの・やめるもの・web add-in に置き換えるもの を決める段階まで進める必要があります。 (Microsoft Learn)

実務では、まず Inventory から台数上位の COMアドインを CSV で出し、次に Outlook 依存のものを優先してレビューするのが無難です。特に Outlook 系は、将来のクライアント切り替えで一気に問題化しやすい領域です。 (Microsoft Learn)

残す COMアドインは allowlist で制御する

COMアドインを統制するなら、Group Policy の List of Managed Add-ins と Block all unmanaged add-ins が実務向きです。ProgID を指定して、0=常に無効、1=常に有効、2=ユーザーが切替可 を設定できます。ただし、Block all unmanaged add-ins を有効にしたのに managed list を空のままにすると、すべての COMアドインが無効化 されます。ここは非常に事故りやすいポイントです。 (Microsoft Learn)

ProgID を取るときは、次のレジストリパスを確認します。

HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Office\<application>\Addins
HKEY_CURRENT_USER\SOFTWARE\Microsoft\Office\<application>\Addins

進め方としては、先に Inventory や端末実査で ProgID を集め、少人数パイロットで allowlist を当て、問題なければ全体へ広げるのが安全です。いきなり全社 block は避けてください。 (Microsoft Learn)

web add-in へ置き換えるなら Integrated apps を使う

Office web add-in 側の配布・停止・割当管理は、Microsoft 365 管理センターの Integrated apps が中心です。Microsoft も、Office add-in の集中配布には Integrated apps portal を推奨しており、管理者は add-in の有効化・無効化・削除・ユーザー/グループ割当を行えます。COMアドインを棚卸しして、置き換え先が web add-in で用意できるなら、こちらに寄せていくのが将来に強い運用です。 (Microsoft Learn)

更新状況を見たいなら、確認画面を変える

「Officeテレメトリの代わりに何を見るか」という相談の中には、実際には 互換性ではなく更新状況を見たい ケースがかなりあります。この場合、見るべきは Inventory だけではありません。Software updates と Cloud Update を使い分けたほうが早いです。 (Microsoft Learn)

Software updates ページは、Microsoft 365 Apps のセキュリティ更新が最新か、1回遅れか、2回以上遅れかを高レベルで確認する画面です。遅れている端末が潜在的にどれだけ脆弱性へ露出しているかも見られます。ただし、どの端末が遅れているかの詳細は出ません。端末まで落としたければ Inventory を使います。さらに、この画面は required diagnostic data が必要で、Office LTSC 2021 や Office 2019 のようなボリュームライセンス版は表示対象外です。 (Microsoft Learn)

Cloud Update は、Current Channel と Monthly Enterprise Channel 向けに、更新進捗、失敗、健全性、ロールアウト波、停止、ロールバックを見られる運用画面です。Monthly Enterprise では failure details、pause、rollback、rollout waves まで使えます。一方で、Semi-Annual Enterprise Channel のプロファイルは Cloud Update では扱えません。更新統制までクラウド寄りに寄せるなら、有力候補です。 (Microsoft Learn)

失敗しやすいポイント

  • Inventory は棚卸し向きで、詳細な runtime health の代替ではありません。互換性の優先度付けは Configuration Manager readiness、個別障害の詰めは Telemetry Log と分けたほうが混乱しません。 (Microsoft Learn)
  • Macros used を「マクロ一覧」と思わないことが大切です。Inventory 側で送られるのは最近開いたマクロ有効ファイル数で、ファイル名やマクロ内容は含まれません。 (Microsoft Learn)
  • Block all unmanaged add-ins を先に有効にすると、managed list が未整備なまま全COMアドインを止める事故が起きます。 (Microsoft Learn)
  • Inventory に端末が出ない場合、まずは「その端末でユーザーが Office アプリを起動したか」「30日以上 heartbeat が切れていないか」を疑ってください。 (Microsoft Learn)
  • 「古い Office 2016/2019 環境に戻して旧Officeテレメトリを使い続ける」は、2025年10月14日のサポート終了を踏まえると現実的ではありません。 (Microsoft Learn)

迷ったら、この順番で進める

まずは Inventory を有効化して CSV を1回出す ところから始めるのが最短です。そこで「導入台数が多い COMアドイン」「複数バージョンが混在しているアドイン」「Macros used が立っている端末群」を見つけます。次に、Configuration Manager がある組織は readiness を併用して Ready to upgrade と Needs review で優先度を分けます。問題が出た端末だけ Telemetry Log で詰め、最後に残す COMアドインを allowlist 化し、置き換え可能なものを web add-in へ移します。

この流れにすると、Officeテレメトリ廃止後でも「棚卸し」「移行判定」「個別障害」「統制」「更新監視」がきれいに分かれます。単一の後継製品を探すより、目的ごとに正しい画面を使うほうが、結果として確認漏れが少なく、運用も安定します。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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