Microsoft PurviewのPriority cleanupとは?Copilot対応の保持上書きと容量回収ポイント

Microsoft Purview の「Override holds to clean up files for Copilot and reclaim storage」は、Copilot から参照させたくない古いファイルや、OneDrive/SharePoint の容量を圧迫しているファイルを、通常の保持ポリシーや eDiscovery ホールドより優先して削除するための管理者向け機能です。結論から言うと、これは保持設定を無効化する機能ではなく、Microsoft Purview の Data Lifecycle Management にある Priority cleanup を使い、承認・監査・シミュレーションを前提に、特定ファイルだけを例外的に削除する仕組みです。(Microsoft Learn)

特に影響が大きいのは、Teams 会議の録画・文字起こし、退職者の OneDrive に残った Preservation Hold library 内のファイル、長期保持ポリシーによって通常は削除できない OneDrive/SharePoint ファイルです。Copilot 活用が進むほど、古い会議データや不要なファイルが「検索・要約・回答の材料」として残り続けるリスクが高まります。今回の更新は、ストレージ削減だけでなく、Copilot 時代の情報ガバナンスを見直すきっかけとして捉えるべきです。

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Microsoft Purview の「Override holds to clean up files for Copilot and reclaim storage」とは

「Override holds to clean up files for Copilot and reclaim storage」は、Microsoft Purview の Priority cleanup を使って、OneDrive と SharePoint の対象ファイルを削除するための機能です。通常、保持ポリシー、保持ラベル、eDiscovery ホールドが設定されたコンテンツは、ユーザーや管理者が単純に削除しても、保持期間が満了するまで保護されます。しかし Priority cleanup では、特定の条件に一致するファイルをポリシーで検出し、既存の保持設定や eDiscovery ホールドを上書きして削除処理に進められます。(Microsoft Learn)

ここで重要なのは、「すべての保持を一括で解除する」機能ではないことです。対象は、管理者が KeyQL で指定した条件に一致するファイルです。さらに、SharePoint/OneDrive ではシミュレーションが必須で、削除には別の Priority cleanup 管理者や、必要に応じて eDiscovery 管理者の承認が関わります。つまり、便利な削除機能というより、コンプライアンス上の例外削除を安全に実行するためのワークフローと考える方が実態に近いです。(Microsoft Learn)

何が変わるのか:更新ポイントの要約

今回のポイントは、Microsoft Purview で OneDrive/SharePoint の不要ファイルをより現実的に整理できるようになることです。特に Copilot と Teams 会議データの増加により、「保持されているが、業務上はもう不要」「容量を圧迫している」「Copilot の回答材料として残したくない」というファイルをどう扱うかが重要になっています。

確認項目内容管理者が見るべきポイント
対象サービスOneDrive for Business、SharePoint OnlineTeams 会議録画、文字起こし、退職者 OneDrive、保持対象ファイルを優先確認
利用機能Microsoft Purview Data Lifecycle Management の Priority cleanup通常の保持ポリシーとは別に、例外削除用のポリシーを作成する
主な目的Copilot から不要ファイルが参照されるリスクを下げる、ストレージを回収する「削除してよい根拠」を法務・セキュリティ・情報管理部門で合意する
承認Priority cleanup 管理者による確認、eDiscovery ホールド対象は eDiscovery 管理者の承認事前に承認者とロールを割り当てておく
シミュレーションSharePoint/OneDrive では少なくとも1回必須本番有効化前に、抽出条件が広すぎないか確認する
監査監査ログで Priority cleanup の処理を追跡初回ポリシー作成の少なくとも1日前に監査を有効化しておく
ロールアウトMicrosoft 365 Roadmap ID 558343 では Worldwide 向けにプレビュー 2026年7月、一般提供 2026年9月とされています予定は変更される可能性があるため、テナントの Message center と Roadmap を継続確認する

Microsoft 365 Roadmap では、Priority cleanup ポリシーで OneDrive/SharePoint コンテンツに対する hard delete 構成を選択し、Recycle Bin をスキップできる機能が Roadmap ID 558343 として示されています。対象クラウドは Worldwide、ステータスは In development、プレビューは 2026年7月、一般提供は 2026年9月です。ただし、Microsoft 365 Roadmap の日程は見込みであり、変更される可能性があります。(Microsoft)

なぜ Copilot 対応で Priority cleanup が重要になるのか

Copilot 導入後の情報管理でよく起きる問題は、「アクセス権は正しいが、情報としては古い」「保持ポリシーで残っているが、検索や要約の材料にはしたくない」というデータが増えることです。Teams 会議の録画や文字起こしは典型例です。Teams の会議録画と文字起こしは OneDrive または SharePoint に保存され、会議やチャネルの種類によって保存先が変わります。通常の会議では主催者の OneDrive、チャネル会議ではチームの SharePoint サイトに保存されます。(Microsoft Learn)

Microsoft のドキュメントでは、Teams 会議録画と文字起こしは Copilot in Teams の recap 機能で利用される可能性があり、ファイルサイズが大きく、1〜3か月後には業務価値が小さくなるケースがあると説明されています。長期保持ポリシーによってこれらが何年も残ると、ストレージコストだけでなく、古い文脈が Copilot の回答や検索結果に影響するリスクも高まります。(Microsoft Learn)

たとえば、次のようなケースでは Priority cleanup の検討価値があります。

  • 全社会議の録画が数年分残り、OneDrive/SharePoint の容量を圧迫している
  • プロジェクト終了後の会議録画や文字起こしが、Copilot の参照対象として残っている
  • 退職者の OneDrive サイトを削除したいが、Preservation Hold library 内の保持対象ファイルが残って削除できない
  • 情報漏えい対応やプライバシー対応として、特定ファイルを保持期間満了前に削除する必要がある

ただし、Copilot に見せたくないからといって、すぐ削除すべきとは限りません。まずは共有範囲、アクセス権、保持ポリシー、秘密度ラベル、eDiscovery の必要性を確認し、削除以外の方法でリスクを下げられないかを見ます。Priority cleanup は、通常のガバナンス手段で対応できない場合の強い選択肢です。

通常の保持ポリシーとの違い

Microsoft Purview の保持ポリシーと保持ラベルは、コンテンツを一定期間保持したり、期間満了後に削除したりするための標準的な情報管理機能です。保持設定が適用された SharePoint/OneDrive のコンテンツは、ユーザーが編集・削除しても Preservation Hold library にコピーが保持されるため、コンプライアンス要件を満たしやすくなります。一方で、Preservation Hold library はサイトのストレージ容量にも含まれるため、保持を広く設定している組織では容量管理の課題になり得ます。(Microsoft Learn)

Priority cleanup は、この標準的な保持ルールを例外的に上書きする仕組みです。内部的には自動適用の保持ラベルに近い仕組みを使いますが、管理者が通常の保持ラベルやポリシーを手動で扱うのではなく、Priority cleanup ポリシーとして削除対象を定義します。Microsoft の説明では、Priority cleanup は通常の「保持の原則」を上回るため、最長保持期間の満了を待たずに削除処理へ進められます。(Microsoft Learn)

比較項目通常の保持ポリシー/保持ラベルPriority cleanup
目的規定期間の保持、期間満了後の削除例外的に削除を早める
対象サイト、メールボックス、ユーザー、アイテムなどKeyQL 条件に一致する特定ファイル
ホールドとの関係保持や eDiscovery ホールドを尊重条件を満たす場合、保持や eDiscovery ホールドを上書き可能
運用頻度継続的な標準運用事故対応、容量回収、退職者 OneDrive 処理などで限定的または継続的に利用
承認設定変更時の管理者レビューが中心削除対象に対する承認ワークフローが必要
リスク設計ミスで過剰保持・過少保持が起きる条件ミスで必要データを削除するリスクがある

実務では、保持ポリシーを「基本ルール」、Priority cleanup を「例外処理」として分けて考えるのが安全です。たとえば、会議録画を原則 90 日で削除したいなら、最初に retention label や Teams 側の録画ポリシーを検討します。すでに長期保持の対象になっていて、通常の設定では削除できないファイルだけを Priority cleanup の候補にします。

影響範囲:誰が何を確認すべきか

この更新の影響は、単に Microsoft Purview 管理者だけに限られません。Copilot、Teams、OneDrive、SharePoint、eDiscovery、情報管理の運用が交差するため、複数部門で確認が必要です。

関係者影響確認すべきこと
Microsoft 365 管理者OneDrive/SharePoint の容量、Teams 会議データの増加に影響容量逼迫サイト、退職者 OneDrive、会議録画の保存状況
Purview 管理者Priority cleanup ポリシーの作成・運用を担当ロール、監査、シミュレーション、承認フロー
セキュリティ担当Copilot から参照されたくない古いデータや過共有ファイルに関係削除対象にする前に、アクセス権・共有リンク・秘密度ラベルを確認
法務・コンプライアンス担当eDiscovery ホールドや保持要件への影響を確認削除してよい条件、訴訟・調査対象外であることの確認
Teams 管理者会議録画・文字起こしの生成量に影響会議録画ポリシー、文字起こし設定、Copilot in Teams 利用状況
エンドユーザー対象ファイルに Priority cleanup ポリシー名と同じ保持ラベルが表示される場合がある問い合わせ対応用に、管理者側で説明文やヘルプを用意する

特に注意したいのは、Priority cleanup ポリシーの「名前」です。Microsoft のドキュメントでは、ポリシー名はエンドユーザーに表示される可能性があり、説明欄は管理者と承認者向けとされています。インシデント名、法務案件名、個人名など、ユーザーに見せるべきでない情報をポリシー名に入れないようにしましょう。(Microsoft Learn)

設定変更で確認すべき前提条件

Priority cleanup を使う前に、少なくとも次の4点を確認します。

必要なロールを割り当てる

Microsoft Purview ポータルで Priority cleanup を作成・管理するには、Priority Cleanup Admin ロールが必要です。閲覧だけであれば Priority Cleanup Viewer ロールを使えます。また、シミュレーション結果や承認対象アイテムの内容・詳細を確認するには、Content Explorer List Viewer と Content Explorer Content Viewer に相当する権限も必要になります。(Microsoft Learn)

eDiscovery ホールド対象を削除する場合は、eDiscovery 管理者側にも必要なロールが求められます。承認者にロールが不足していると、ポリシー作成や承認でエラーになる可能性があります。実装前に、Purview 管理者、eDiscovery 管理者、監査担当のロールを棚卸ししてください。

監査を事前に有効化する

Priority cleanup では監査が重要です。Microsoft は、最初の Priority cleanup ポリシーを作成・実行する少なくとも1日前に監査を有効化するよう案内しています。監査はシミュレーション結果の確認にも必要です。(Microsoft Learn)

運用では、ポリシーごとに Cleanup ID を控え、監査ログ検索で追跡できるようにします。SharePoint/OneDrive の Priority cleanup では、対象アイテムに Priority cleanup が適用されたことを示す PriorityCleanupTagApplied、削除処理を示す PriorityCleanupFileRecycled などの監査イベントが使われます。検索時の日付範囲は UTC で指定する点も忘れやすいポイントです。(Microsoft Learn)

シミュレーションを必ず実行する

SharePoint/OneDrive の Priority cleanup では、ポリシーを実行する前に少なくとも1回シミュレーションを行う必要があります。ポリシー説明以外を変更した場合も、再度シミュレーションが必要です。(Microsoft Learn)

シミュレーションの目的は、「削除候補が想定どおりか」を確認することです。KeyQL の条件が広すぎると、削除対象にすべきでない重要ファイルまで含まれる可能性があります。逆に条件が狭すぎると、容量回収や Copilot 対策として十分な効果が出ません。初回は全社ではなく、特定部門、特定サイト、特定ユーザーの OneDrive など、影響を限定して検証するのが安全です。

承認者を事前に決める

Priority cleanup は、誤削除や悪用を防ぐため、作成者以外の承認を前提にしています。SharePoint/OneDrive では、ポリシーを有効化する前に別の Priority cleanup 管理者によるレビューが組み込まれます。さらに、対象アイテムが eDiscovery ホールドの対象であれば、eDiscovery 管理者の承認も必要です。(Microsoft Learn)

承認者は個人ユーザーである必要があります。メール有効セキュリティグループは現在サポートされていません。承認者が休暇中、異動済み、ロール未付与といった状態だと運用が止まるため、承認体制はポリシー作成前に決めておきましょう。

Priority cleanup ポリシー作成の実務手順

実際の設定では、Microsoft Purview ポータルから Data Lifecycle Management の Priority cleanup に進み、ポリシーを作成します。画面上の名称はテナントや展開状況で変わる可能性がありますが、基本的な流れは次のとおりです。(Microsoft Learn)

手順作業内容実務上の注意点
1削除目的を決める「容量回収」「Copilot 参照リスク低減」「退職者 OneDrive 削除」など目的を明文化する
2対象範囲を決めるAdaptive scope または Static scope を選び、対象サイト・ユーザー・場所を絞る
3KeyQL 条件を作成するTeams 録画、文字起こし、Preservation Hold library など対象を具体化する
4削除タイミングを選ぶすぐ削除するか、一定期間保持後に削除するかを選択する
5eDiscovery 承認者を指定するホールド対象が含まれる場合に備えて、eDiscovery 管理者を割り当てる
6シミュレーションを実行するサンプル結果を見て、条件の過不足を修正する
7別の Priority cleanup 管理者が確認する最後に編集した人がそのまま有効化しない運用にする
8ポリシーを有効化する有効化後、ステータスが成功になるまで監視する
9監査ログと承認結果を保存するCleanup ID、承認コメント、対象件数、除外理由を記録する

KeyQL の代表例として、Microsoft は Teams 会議録画と文字起こしを探す条件に ProgID:Media AND ProgID:Meeting、Preservation Hold library 内のファイルを探す条件に ParentLink:PreservationHoldLibrary を示しています。(Microsoft Learn)

ただし、これらをそのまま全社に適用するのは危険です。たとえば、経営会議、監査対応、契約交渉、労務トラブルに関する録画が含まれる可能性があります。実務では、対象サイト、対象ユーザー、更新日、ファイル種類、部門、案件ステータスなどを組み合わせ、削除対象を段階的に絞り込むべきです。

「削除」と「hard delete」の違いに注意

現行の Microsoft Learn では、OneDrive/SharePoint の Priority cleanup によって対象アイテムは second-stage Recycle Bin に移動され、その後は通常のプロセスと期間に従って削除されると説明されています。つまり、従来の挙動では「保持やホールドを上書きして削除フローに乗せる」ものの、完全削除までの扱いは Recycle Bin のプロセスに関係します。(Microsoft Learn)

一方で、Microsoft 365 Roadmap ID 558343 では、Priority cleanup ポリシーで hard delete 構成を選択し、OneDrive/SharePoint コンテンツについて Recycle Bin をスキップできる機能が示されています。プレビューや一般提供の時期はロードマップ上の予定であり、実際のテナント表示や挙動は展開状況によって確認が必要です。(Microsoft)

管理者は、ポリシー作成画面で「通常の削除フロー」なのか、「Delete data permanently」のような完全削除オプションを選んでいるのかを必ず確認してください。hard delete は容量回収や Copilot 参照リスク低減には強力ですが、復元可能性が下がります。誤削除時の影響が大きいため、対象条件、承認、監査、事前の法務確認がより重要になります。

移行期限はあるのか

現時点で、この更新は「既存環境をいつまでに移行しなければならない」というタイプの変更ではありません。Microsoft 365 Roadmap で示されているのは、Priority cleanup に hard delete 構成を追加する機能のプレビュー・一般提供スケジュールです。Worldwide 向けにはプレビュー 2026年7月、一般提供 2026年9月が示されていますが、ロードマップ情報は変更される可能性があります。(Microsoft)

したがって、管理者が取るべき行動は「移行作業」ではなく「事前設計」です。具体的には、会議録画や文字起こしの保持期間を見直し、削除対象にできるファイルの条件を整理し、Priority cleanup を使う場合の承認者・監査・例外管理を整備します。

管理者が確認すべきチェックリスト

Priority cleanup は強力な機能なので、設定画面を開く前に、次の順番で確認すると失敗を避けやすくなります。

削除してよいデータの基準を決める

最初に決めるべきなのは、技術的な KeyQL ではなく「何を削除してよいのか」です。たとえば、Teams 会議録画を対象にする場合でも、全録画を一律削除するのではなく、次のような基準を作ります。

判断軸例
業務価値プロジェクト終了後90日を過ぎた定例会議録画は削除候補
法務リスク契約、労務、監査、インシデント対応に関する録画は除外
情報種別個人情報、顧客情報、機密情報を含む可能性があるものは追加確認
所有者退職者、休職者、異動者の OneDrive は個別判断
保存先チャネル会議の録画は SharePoint 側のチーム所有物として扱う

この基準が曖昧なまま KeyQL を作ると、シミュレーション結果を見ても「削除してよいか」を判断できません。情報管理部門だけでなく、法務、セキュリティ、業務部門の合意を取ってからポリシー化しましょう。

レコードと規制レコードを除外する

Priority cleanup には重要な例外があります。レコードまたは規制レコードとしてマークされたアイテムには使用できません。また、eDiscovery の review set にすでにコピーされたデータは、Priority cleanup では削除されず、eDiscovery ケース全体が削除されたときに削除される扱いになります。(Microsoft Learn)

この仕様を理解していないと、「Priority cleanup を実行したのに eDiscovery 側には残っている」「削除対象に含めたはずのファイルが消えない」といった誤解が起きます。法務案件や規制対応の可能性があるデータは、事前に eDiscovery 管理者と確認してください。

テナント設定を確認する

Priority cleanup 機能自体は、テナントレベルで既定有効と説明されています。ただし、Priority cleanup settings から無効化できます。無効化すると新しい Priority cleanup ポリシーは作成できません。既存ポリシーは継続して機能し、削除はできますが、変更はできません。(Microsoft Learn)

運用上は、「この機能を誰が使えるのか」「全社で許可するのか」「特定チームだけに限定するのか」を明確にします。特にグローバル企業では、国・地域ごとのデータ保持規制が異なるため、全社一律で有効化・無効化を決める前に、リージョン別のルールを確認する必要があります。

Copilot 対策だけを目的にしすぎない

Copilot から見せたくないファイルがある場合、削除は最終手段です。まずはアクセス権、共有リンク、サイト権限、秘密度ラベル、DLP、検索対象の制御を見直します。Priority cleanup は、保持やホールドに守られていて通常の削除ができないコンテンツを例外的に削除するための機能です。

たとえば、まだ業務上必要な録画であれば、削除ではなくアクセス権の整理が適切です。一方で、業務価値がなく、保持義務もなく、容量を圧迫し、Copilot の回答材料として残すべきでないファイルであれば、Priority cleanup の候補になります。

よくある失敗と対策

KeyQL 条件が広すぎる

最も危険なのは、ProgID:Media AND ProgID:Meeting のような条件を広範囲に適用し、重要な会議録画まで削除候補に入れてしまうことです。最初は特定サイト、特定ユーザー、特定期間に絞り、シミュレーション結果を確認してから範囲を広げましょう。

承認者に必要なロールがない

eDiscovery 管理者の承認が必要なポリシーでは、承認者に必要なロールが割り当てられていないと、ポリシー作成が失敗する可能性があります。承認フローを設計するときは、名前だけでなくロール割り当てもセットで確認します。(Microsoft Learn)

最後に編集した人が有効化しようとする

Microsoft のドキュメントでは、最後にポリシーを編集した人は、そのポリシーを有効化できないとされています。実務では、ポリシー作成・編集担当と、有効化レビュー担当を分ける運用にしておくとスムーズです。(Microsoft Learn)

ポリシー名に内部情報を入れる

Priority cleanup で識別されたファイルは、ユーザーから見るとポリシー名と同じ名前の保持ラベルが適用されたように表示される場合があります。ポリシー名に「情報漏えい調査」「退職者削除」「訴訟関連」などの内部事情を入れると、不要な混乱を招きます。ポリシー名は中立的にし、詳細は説明欄や内部運用ドキュメントに残しましょう。(Microsoft Learn)

監査ログを後から見ればよいと考える

監査は事前に有効化しておく必要があります。Priority cleanup を使う組織では、ポリシー作成前に監査ログの保持期間、検索権限、検索手順、証跡の保管場所を決めておきます。特に削除対象が eDiscovery や法務確認に関わる場合、後から証跡が不足すると説明責任を果たせません。

どのような組織が優先して対応すべきか

Priority cleanup は、すべての組織がすぐに使うべき機能ではありません。優先度が高いのは、次のような組織です。

優先度組織の状況推奨アクション
高Teams 会議録画・文字起こしが大量に作成され、長期保持されている録画・文字起こしの保持期間、容量、Copilot 参照リスクを棚卸しする
高退職者 OneDrive が Preservation Hold library の影響で削除できない退職者処理フローに Priority cleanup の利用可否を追加する
高eDiscovery ホールドや保持ポリシーが多く、例外削除の判断が属人化している承認フローと監査証跡の標準手順を作る
中Copilot 導入を進めているが、古いファイルや過共有ファイルの整理が未着手SharePoint/OneDrive の棚卸しとアクセス権見直しを先行する
低会議録画が少なく、保持・削除ルールも明確すぐに有効活用するより、機能の監視と手順整備を優先する

Copilot 導入企業では、Priority cleanup だけを単独で考えるのではなく、「不要データを作らない」「不要になったら通常ルールで消す」「通常ルールで消せないものだけ例外削除する」という順序で設計するのが理想です。

管理者が次に取るべき行動

まず、OneDrive と SharePoint に残っている Teams 会議録画・文字起こしの量を把握します。特に、長期保持ポリシーの対象になっている録画、退職者の OneDrive、古いプロジェクトサイト、外部共有されたままのファイルを優先的に確認してください。Teams 会議録画は OneDrive/SharePoint の容量に含まれ、1時間の録画サイズの目安として 400MB と説明されています。録画が日常的に作成される組織では、数か月で大きな容量になる可能性があります。(Microsoft Learn)

次に、削除の判断基準を作ります。Copilot から見せたくない、容量を回収したいという理由だけでなく、保持義務がないこと、eDiscovery や監査対応に支障がないこと、業務部門が不要と判断していることを確認します。

最後に、小さな範囲で Priority cleanup のシミュレーションを実行します。シミュレーション結果を法務・セキュリティ・情報管理担当者と確認し、KeyQL 条件を調整します。いきなり本番削除に進むのではなく、対象条件、承認者、監査ログ、問い合わせ対応を一式そろえてから有効化することが重要です。

まとめ

Microsoft Purview の「Override holds to clean up files for Copilot and reclaim storage」は、Copilot 時代の情報管理において重要な更新です。保持ポリシーや eDiscovery ホールドがあるから削除できない、しかし古い会議録画や退職者 OneDrive が容量を圧迫し、Copilot の参照対象にも残り続ける。こうした課題に対して、Priority cleanup は承認・監査付きで例外削除を行う手段になります。

一方で、これは強力な機能です。誤った条件で実行すれば、保持すべきデータまで削除候補に入る可能性があります。管理者は、ロール、監査、シミュレーション、承認、対象条件、削除モードを必ず確認し、まずは限定範囲で検証するべきです。

次にやるべきことは明確です。OneDrive/SharePoint の会議録画と Preservation Hold library を棚卸しし、削除してよい条件を文書化し、Microsoft Purview の Priority cleanup を使う場面と使わない場面を決めてください。Copilot の利便性を高めるには、AI の設定だけでなく、参照されるデータそのものを整理することが欠かせません。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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