Microsoft Purviewの保持ポリシー最新整理|Copilot・Teams通話ログ対応と管理者の確認ポイント

Microsoft Purviewの保持ポリシーは、メール、SharePoint/OneDriveのドキュメント、Teamsの会話、CopilotやAIアプリのプロンプトと応答、Teams通話ログなどを、組織のルールに沿って自動的に保持・削除するための管理機能です。2026年6月時点の公式情報で特に確認すべき点は、Copilot/AIアプリ向けの場所がTeamsチャットから分離されていること、Teams通話ログが専用ポリシーの対象になったこと、既存ポリシーの移行・分離対応が必要になるケースがあることです。(Microsoft Learn)

管理者が最初に行うべきことは、「何を何年残すか」より先に、どのサービスのどの場所にデータが保存されるかを棚卸しすることです。Teamsのメッセージ、会議録画、チャットで共有されたファイル、Copilotの会話、通話ログは、見た目は同じTeamsやCopilot上にあっても、保持ポリシー上の管理場所が異なります。設定場所を誤ると、残すべきデータが対象外になったり、逆に削除したいデータが残り続けたりします。

目次

Microsoft Purviewの保持ポリシーとは

Microsoft Purviewの保持ポリシーは、組織内のコンテンツに対して、次のいずれかの制御を自動で適用する仕組みです。

制御内容使いどころ注意点
保持のみ法務・監査・業務上、一定期間または無期限に残したいユーザー画面から消えても、裏側では検索可能な形で保持される場合がある
削除のみ古いチャット、ログ、不要データを一定期間後に削除したい他の保持設定やeDiscoveryホールドが優先されると、すぐには完全削除されない
保持してから削除一定期間は残し、その後は自動削除したい複数ポリシーが重なると、より長い保持期間や優先ルールが影響する

保持ポリシーは、個々のファイルやメールに手作業で設定するというより、Exchangeメールボックス、SharePointサイト、OneDriveアカウント、Teamsチャット、Copilot体験などの「場所」に対して広く適用する設計です。Microsoftの公式説明でも、保持ポリシーはコンテナー単位で同じ保持設定を継承させることで、組織のデータを効率よく管理するものとされています。(Microsoft Learn)

実務では、次のような使い方が中心になります。

  • 退職者のメールやTeamsチャットを一定期間保持する
  • SharePoint上の契約書やプロジェクト資料を保存期間後に削除する
  • Microsoft 365 Copilotのプロンプトと応答をコンプライアンス要件に沿って管理する
  • Teams通話ログを、必要な期間だけ残して削除する
  • 古いViva Engageメッセージやグループ関連ファイルのライフサイクルを統制する

「ユーザーが削除したら終わり」ではなく、ポリシーに従って裏側で保持・削除が判断される点が重要です。特にTeamsやCopilotのような会話型データでは、アプリ画面に見えている状態と、コンプライアンス上保持されている状態が一致しないことがあります。(Microsoft Learn)

2026年6月時点で押さえるべき主な変更点

今回の公式情報で管理者が特に見るべき変更点は、次の3つです。

変更点影響を受ける主な対象管理者が確認すべきこと
TeamsチャットとCopilotの保持場所が分離Teamsチャット、Microsoft 365 Copilot、Copilot Studioなど旧「Teams chats and Copilot interactions」ポリシーが残っていないか
Copilot/AIアプリ向けの保持場所が拡張Microsoft Copilot experiences、Enterprise AI apps、Other AI appsどのAI利用がどのカテゴリに入るか、収集ポリシーが必要か
Teams通話ログが専用ポリシーで扱われるTeamsの通話データ、CDR、通話メタデータTeamsチャット保持ポリシーだけで通話ログを管理していないか

TeamsチャットとCopilotのポリシーが分かれた

以前は、TeamsチャットとCopilotのやり取りが「Teams chats and Copilot interactions」という1つの場所で扱われていました。現在は、TeamsチャットとCopilotの相互作用が別の保持場所として扱われ、新規ポリシーではTeamsチャットだけ、またはCopilot体験だけを対象にした設定が可能です。(Microsoft Learn)

これは、Copilotの導入が進んだ組織ほど重要です。たとえば、Teamsチャットは7年間保持したい一方で、Copilotのプロンプトと応答は社内ルールにより短期間で削除したい、という要件が出ることがあります。旧仕様のままだと、会話データとAI利用データの保持期間を柔軟に分けにくくなります。

既存の「Teams chats and Copilot interactions」ポリシーは引き続きサポートされますが、テナントが分離された場所をサポートしている場合、その既存ポリシーは編集できなくなると説明されています。その時点で新しい保持ポリシーを作成する場合は、新しい場所を使う必要があります。(Microsoft Learn)

既存ポリシーで確認するポイント

管理者は、Microsoft Purviewポータルの保持ポリシー一覧で、次のような観点で棚卸ししてください。

確認項目判断基準
旧「Teams chats and Copilot interactions」があるかある場合、Teamsチャット用とCopilot用に分離する必要があるか確認
TeamsチャットとCopilotで同じ保持期間でよいか違う期間にしたいなら分離を検討
Copilotを本番利用している部門があるか役員、法務、開発、営業など、利用部門ごとに保持要件を確認
eDiscoveryや監査でAI会話を検索する必要があるか検索対象・保存期間・削除タイミングを明文化

分離が必要な場合、公式ドキュメントではPowerShellによる既存ポリシーの調整例が示されています。たとえば、既存ポリシーをTeamsチャット専用にする場合は、対象アプリケーションをTeamsチャットの場所に設定します。(Microsoft Learn)

Set-RetentionCompliancePolicy -Identity "<policy name>" -Applications "User:TeamsChatUserInteractions"

Copilot側を新しい保持ポリシーに移す場合は、単にポリシーを増やすのではなく、既存のTeamsチャット保持要件、Copilot保持要件、eDiscoveryホールド、訴訟ホールドとの競合を確認してから実施してください。

CopilotとAIアプリの保持対象が広がっている

現在の保持ポリシーでは、Copilot/AI関連の場所として、Microsoft Copilot experiences、Enterprise AI apps、Other AI appsが示されています。Microsoft Copilot experiencesにはMicrosoft 365 Copilot、Security Copilot、Copilot in Fabric、Copilot Studioなどが含まれます。Enterprise AI appsには、Entra登録されたAIアプリ、ChatGPT Enterprise、Microsoft Foundryなどが例示されています。Other AI appsには、ChatGPT、Google Gemini、Microsoft Copilotのコンシューマー版、DeepSeekなどが挙げられています。(Microsoft Learn)

ここで注意したいのは、AIアプリの保持対象は「アプリ名」だけで決まるわけではないことです。公式情報では、Microsoft 365 CopilotとCopilot Studio以外のAIアプリのプロンプトと応答を保持するには、まず対象AIアプリ向けの収集ポリシーが必要で、そのポリシーでコンテンツ取得が有効になっている必要があるとされています。(Microsoft Learn)

つまり、管理者は保持ポリシーだけを見ても不十分です。AIアプリ利用を統制する場合は、少なくとも次の3点を合わせて確認する必要があります。

確認項目実務上の見方
対象AIアプリMicrosoft 365 Copilotなのか、社内接続のAIアプリなのか、外部AIアプリなのか
収集ポリシーCopilot Studio以外のAIアプリで、プロンプトと応答を取得できる設定になっているか
保持ポリシー取得されたデータに対して、保持のみ・削除のみ・保持後削除のどれを適用するか

たとえば、社内でChatGPT Enterpriseを利用している場合、「AI利用ログを1年残してから削除する」という要件は、保持ポリシーだけで完結しない可能性があります。まず対象アプリのデータがMicrosoft Purview側で取得・管理できる状態かを確認し、そのうえで保持ポリシーを設計する必要があります。

Teams通話ログはTeamsチャットとは別に考える

Teams通話ログは、通話データレコード、通話詳細レコード、その他の通話メタデータを含む通話関連データです。2026年4月下旬より前は、Teamsチャットやチャネルメッセージの保持ポリシーに含まれる形で扱われていた通話データレコードがありますが、今後の新しい通話ログはTeams通話ログ向けの保持ポリシーでのみサポートされます。既存のTeamsチャット保持ポリシーに含まれていた過去の通話データは、引き続きその既存ポリシーで管理されます。(Microsoft Learn)

特に注意すべき点は、Teams通話ログの保持ポリシーがポータルから通常作成するポリシーとは異なり、PowerShellで作成する必要があることです。公式情報では、Teams通話ログ向けポリシーはテナント全体に適用され、個別ユーザー単位のスコープ指定、アダプティブスコープ、管理単位はサポートされないとされています。また、ポリシーが構成されアクティブになった後に作成された新しい通話ログだけに適用されます。(Microsoft Learn)

New-AppRetentionCompliancePolicy -Name "<PolicyName>" -Applications "User:MicrosoftTeamsCallLog" -ExchangeLocation "All"
New-AppRetentionComplianceRule -Name "<RuleName>" -Policy "<PolicyName>" -RetentionDuration 365 -RetentionDurationDisplayHint Days -RetentionComplianceAction Delete

この例は、Teams通話ログを365日後に削除するルールです。実務では、通話ログを監査、労務、インシデント調査、コールセンター分析、利用状況レポートで使っている場合があります。削除ポリシーを先に入れると、後から「過去の通話履歴がレポートに出ない」「調査に必要なログが足りない」といった問題が起きる可能性があります。

影響範囲:どのサービス・データが対象になるのか

Microsoft Purviewの保持ポリシーは、1つのポリシーですべての場所をまとめて対象にできるわけではありません。公式情報では、Exchangeメールボックス、SharePointサイト、OneDriveアカウント、Microsoft 365グループ、Teamsチャネルメッセージ、Teamsチャット、Teams通話ログ、Microsoft Copilot experiences、Enterprise AI apps、Other AI apps、Viva Engageメッセージなどが保持ポリシーの場所として示されています。(Microsoft Learn)

ただし、TeamsやViva Engageの場所を選ぶと、他の場所が自動的に除外されるケースがあります。静的スコープではTeamsやViva Engage向けに別ポリシーが必要になる一方、アダプティブポリシーではTeamsとViva Engageの場所を単一ポリシーに含められる場合があります。(Microsoft Learn)

主な対象サービスと設計上の注意点

対象保持ポリシー上の考え方注意点
ExchangeメールExchangeメールボックスを場所として設定Teamsチャットの保持とは別。TeamsデータがExchangeに保存されていてもExchangeポリシーだけでは対象外のデータがある
SharePointSharePointサイトを場所として設定Teamsチャネルのファイル、Viva Engageコミュニティのファイルに関係する
OneDriveOneDriveアカウントを場所として設定Teamsチャットで共有されたファイルやユーザーチャットの会議録画・トランスクリプトに関係する
TeamsチャットTeams chatsを場所として設定1対1、グループチャット、会議チャットなどが対象
TeamsチャネルTeams channel messagesを場所として設定標準チャネル、共有チャネル、移行後のプライベートチャネルに注意
Teams通話ログTeams call logs向けにPowerShellで設定新規通話ログのみ。テナント全体で、ユーザー単位スコープ不可
Copilot/AIMicrosoft Copilot experiencesなどを場所として設定AIアプリによっては収集ポリシーが前提
Viva Engagecommunity messages/user messagesを場所として設定メッセージ削除時にユーザー通知がない点に注意

Teamsを例にすると、保持対象はメッセージだけではありません。チームがMicrosoft 365グループから作成されている場合、グループのメールボックス、サイト、ファイルを管理するには、Microsoft 365 Group mailboxes & sitesを含む追加の保持ポリシーが必要です。チャネルにアップロードされたファイルはSharePoint、チャットで共有されたファイルは共有者のOneDriveに保存されるため、Teamsメッセージ用ポリシーだけではファイルの保持・削除を統制できません。(Microsoft Learn)

管理者が確認すべき設定項目

保持ポリシーの見直しでは、ポータル画面で「有効」になっているかを見るだけでは不十分です。次の順番で確認すると、漏れを減らせます。

現在の保持ポリシー一覧を棚卸しする

まず、Microsoft Purviewポータルで次の場所を確認します。

Microsoft Purview portal
→ Solutions
→ Data Lifecycle Management
→ Policies
→ Retention policies

確認すべき項目は、少なくとも次のとおりです。

確認項目見るべき理由
ポリシー名旧仕様のTeams/Copilot混在ポリシーが残っていないか確認するため
対象場所Exchange、SharePoint、Teams、Copilot、AIアプリ、Viva Engageのどれかを確認するため
スコープ全体適用か、特定ユーザー・サイト・チームに限定しているか確認するため
保持アクション保持のみ、削除のみ、保持してから削除のどれかを確認するため
保持期間法務・業務要件と一致しているか確認するため
状態配布エラーや適用待ちがないか確認するため
作成方法ポータル作成か、PowerShell作成かを把握するため

古いポリシー名に「Copilot」「Teams chats and Copilot interactions」などが含まれている場合は、TeamsチャットとCopilotを同じ保持期間で管理し続けてよいかを確認してください。

アダプティブスコープと静的スコープを選び分ける

保持ポリシーを作る際は、最初にアダプティブスコープか静的スコープかを選びます。公式情報では、アダプティブポリシーを使う場合、保持ポリシー作成前に1つ以上のアダプティブスコープを作成しておく必要があるとされています。作成していない場合、アダプティブを選んでも構成を完了できません。(Microsoft Learn)

選択肢向いているケース注意点
静的スコープ対象ユーザーやサイトが少なく、変更頻度が低い組織変更や入退社が多いとメンテナンスが増える
アダプティブスコープ部署、属性、条件に応じて対象を自動更新したい事前にスコープ設計が必要。場所によって選択できる対象が変わる
テナント全体全社共通の最低限ルールを適用したい例外部門や法務要件がある場合は別ポリシーとの競合に注意

実務では、全社員向けの基本保持ポリシーを静的または全体適用で作り、役員、法務、研究開発、退職者などの特殊要件はアダプティブスコープで分ける設計が扱いやすくなります。

管理単位の制限を確認する

保持ポリシー作成時には管理単位のページが表示されますが、公式情報では、Teams/AIアプリ/Viva Engage向けの保持ポリシーでは管理単位が現在サポートされていないため、Full directoryの既定値を維持する案内になっています。(Microsoft Learn)

また、管理単位で制限された管理者がSharePointサイトやExchangeパブリックフォルダーを含む保持ポリシーを構成できないケースがあります。これらの場所には、制限されていない管理者権限が必要です。(Microsoft Learn)

大企業やグループ会社を含むテナントでは、「部門管理者にPurviewの一部だけ任せる」運用が考えられます。しかし、保持ポリシーでは場所によって管理単位の扱いが異なるため、権限設計を先に決めておかないと、現場管理者が設定できない、または全社影響のあるポリシーを誤って作成するリスクがあります。

移行・展開時の注意点

保持ポリシーは、作成した瞬間に全データへ即時反映されるわけではありません。公式情報では、保持ポリシーの作成・送信後、選択した場所に配布され、コンテンツに適用されるまで最大7日かかる場合があるとされています。配布状況は、Microsoft Purviewポータルの保持ポリシーページから確認できます。(Microsoft Learn)

ポリシー適用には最大7日かかる前提で計画する

展開計画では、「金曜日に設定して月曜日から必ず削除される」といった前提を置かないことが重要です。保持ポリシーは配布と適用に時間がかかり、TeamsやCopilotのデータではバックエンドのタイマージョブにより評価・移動・完全削除が進みます。TeamsメッセージやAIアプリのメッセージでは、処理が1〜7日程度の範囲で動作する説明があります。(Microsoft Learn)

展開時は、次のようなスケジュールにしておくと安全です。

フェーズ実施内容
事前調査現在のポリシー、対象データ、法務要件、業務利用を棚卸し
設計保持期間、削除タイミング、対象場所、例外対象を決定
テスト限定スコープで作成し、配布状態・検索結果・削除挙動を確認
展開全社または対象部門に段階適用
監視配布エラー、問い合わせ、eDiscovery検索結果を確認
文書化設定値、判断理由、承認者、変更履歴を残す

特に削除のみのポリシーは、運用影響が大きいため、最初から全社適用するのは避けるべきです。まずは対象を限定し、eDiscoveryで検索できる状態、ユーザー画面での見え方、削除後の業務影響を確認してください。

配布エラー時はRetryDistributionを検討する

保持ポリシーの配布状態でエラーが表示される場合、公式情報ではPowerShellで再配布を試す方法が案内されています。Teamsプライベートチャネルメッセージ、Viva Engageユーザーメッセージ、Viva EngageコミュニティメッセージなどではSet-AppRetentionCompliancePolicy、Exchange、SharePoint、TeamsチャネルメッセージなどではSet-RetentionCompliancePolicyを使う例が示されています。(Microsoft Learn)

Set-AppRetentionCompliancePolicy -Identity <policy name> -RetryDistribution
Set-RetentionCompliancePolicy -Identity <policy name> -RetryDistribution

現場でありがちな失敗は、エラーが出ているのに「時間が経てば反映されるはず」と放置することです。ポリシー配布の状態を確認し、エラーが残る場合は再配布、対象場所の指定ミス、権限不足、対象ユーザーやサイトの指定ミスを順に切り分けてください。

作成後に変更できない設定がある

保持ポリシーは後から自由にすべて変更できるわけではありません。公式情報では、ポリシー作成・保存後に変更できない設定として、ポリシー名、スコープの種類、保持期間を除く保持設定が挙げられています。すでにコンテンツへ適用された保持ポリシーの構成を変更すると、既存コンテンツと新しく識別されるコンテンツの両方に変更が自動適用されます。(Microsoft Learn)

そのため、ポリシー名には「誰が見ても目的が分かる名前」を付けることが重要です。

悪い例:

RetentionPolicy001
TeamsPolicy_New
DeleteTest

良い例:

TeamsChats-Retain7Years-Delete
CopilotPrompts-Retain1Year-Delete
TeamsCallLogs-Delete365Days
SharePointProjects-Retain5Years

後から監査や引き継ぎを行うとき、ポリシー名だけで対象・期間・動作が分かると、誤変更を防ぎやすくなります。

開発者・情シスが見落としやすいポイント

Microsoft Purviewの保持ポリシーは、コンプライアンス管理者だけの話ではありません。アプリ連携、ログ分析、Teamsボット、Copilot拡張、業務レポートを扱う開発者や情シスにも影響します。

TeamsやCopilotの表示画面だけで削除状況を判断しない

TeamsやCopilotでは、ユーザー画面からメッセージが消えていても、コンプライアンス上はExchangeメールボックス内の隠しフォルダーやSubstrateHoldsに保持され、eDiscoveryで検索可能な場合があります。反対に、アプリ画面に一時的に見えていても、保持期間満了後の削除処理が進行中というケースもあります。(Microsoft Learn)

開発者がログ連携や検索機能を設計する場合、「Teamsクライアントに表示されるか」ではなく、「Purview/eDiscovery上で検索対象として残るか」を基準に考える必要があります。

通話ログをレポートに使っている場合は削除影響を確認する

Teams通話ログは、利用状況分析、サポート品質管理、監査、インシデント調査に使われることがあります。保持ポリシーで通話ログを削除すると、後続のレポートや調査に必要なデータが参照できなくなる可能性があります。

特に、以下に該当する組織は事前確認が必要です。

  • コールキューや代表電話の応対履歴を分析している
  • Teams通話の品質や障害調査で過去ログを使う
  • 通話履歴を監査証跡として扱っている
  • 外部システムへ通話ログを連携している
  • 人事・労務・セキュリティ調査で通話履歴を参照する可能性がある

Teams通話ログの保持ポリシーは新規ログにのみ適用されるため、過去ログと新規ログで保持動作が分かれる点も設計書に残しておくべきです。(Microsoft Learn)

ファイルの保存場所を誤解しない

Teams内で共有されたファイルは、会話と同じ場所に保存されるとは限りません。チャットで共有されたファイルは共有者のOneDrive、チャネルにアップロードされたファイルはチームのSharePointサイトに保存されます。Teams会議録画やトランスクリプトも、チャネル会議かユーザーチャットかによって保持ポリシーの対象場所が変わります。(Microsoft Learn)

たとえば、「Teamsのデータを7年保持する」と決めた場合、Teamsチャット・チャネルメッセージのポリシーだけでは不十分です。SharePoint、OneDrive、Microsoft 365グループのポリシーも合わせて設計しなければ、会話は残っているのに添付ファイルだけ消えて「File not found」になる可能性があります。公式情報でも、SharePointやOneDriveの保持ポリシーによって、Teamsメッセージに参照されているファイルがメッセージより先に削除される可能性があると説明されています。(Microsoft Learn)

保持ポリシーと保持ラベルの使い分け

保持ポリシーと保持ラベルは似ていますが、用途が異なります。保持ポリシーは場所単位の広い制御に向き、保持ラベルは個別アイテム単位の細かい制御に向いています。

比較項目保持ポリシー保持ラベル
主な対象場所・コンテナー単位アイテム単位
典型例全Exchangeメール、特定SharePointサイト、Teamsチャット全体契約書、請求書、重要文書など
コンテンツ移動時設定は移動先へ自動的には付いていかないMicrosoft 365テナント内ではラベル設定がコンテンツに付いて移動する
ユーザー操作基本的に管理者主導ユーザーや管理者による手動適用、自動適用が可能
例外管理広いルールの一括適用に向く例外や高価値アイテムの管理に向く
レコード管理対応しないレコードとしてマークできる

公式情報では、保持ラベルはコンテンツがMicrosoft 365テナント内の別の場所へ移動しても保持設定が付いて移動する一方、保持ポリシーはコンテナーから継承されるため、設定が新しい場所へそのまま移動するわけではないと説明されています。(Microsoft Learn)

実務では、次のように分けると分かりやすくなります。

  • 全社員のメールを5年保持する:保持ポリシー
  • SharePointの全プロジェクトサイトを3年保持する:保持ポリシー
  • 契約書だけを10年保持し、満了時にレビューする:保持ラベル
  • 重要文書をレコードとして管理する:保持ラベル
  • Teamsチャットを1年後に削除する:保持ポリシー
  • Copilotのプロンプトと応答を一定期間後に削除する:保持ポリシー

大きな原則は、全体ルールは保持ポリシー、例外や重要文書は保持ラベルです。保持ポリシーだけで例外を細かく作り込みすぎると、管理が複雑になり、将来の変更時に競合が起きやすくなります。

複数ポリシーが重なるときの優先順位

保持ポリシーや保持ラベルが複数適用されると、どの設定が有効になるのかが問題になります。Microsoftの公式情報では、保持の原則として、保持は削除に優先し、複数の保持期間がある場合は最も長い保持期間が優先されると説明されています。また、削除に関しては保持ラベルの削除アクションが保持ポリシーより明示的な設定として扱われるなど、複数の判断ルールがあります。(Microsoft Learn)

最低限、管理者は次の考え方を押さえておくべきです。

状況基本的な考え方
保持と削除が同時に適用される保持が優先され、完全削除は保留される
複数の保持期間があるより長い保持期間が優先される
保持ラベルと保持ポリシーの削除が競合するアイテム単位のラベル設定が削除判断で強く働く場合がある
eDiscoveryホールドがあるホールド解除まで完全削除されない
削除のみポリシーを設定した他の保持設定があれば即時削除されない可能性がある

たとえば、全社メールを3年で削除するポリシーがあり、特定部門のメールを7年保持するポリシーが重なる場合、その部門のメールは7年保持される可能性が高くなります。逆に「削除ポリシーを設定したから必ず短期間で消える」と考えると、保持設定やホールドの存在を見落とします。

実装前チェックリスト

Microsoft Purviewの保持ポリシーを新規作成・更新する前に、次のチェックリストを使って確認してください。

チェック項目確認結果
対象サービスをExchange、SharePoint、OneDrive、Teams、Copilot、Viva Engage、AIアプリごとに分けて整理した
TeamsチャットとCopilotを同じ保持期間で扱ってよいか確認した
旧「Teams chats and Copilot interactions」ポリシーの有無を確認した
Teams通話ログを管理する必要があるか確認した
通話ログ削除がレポートや監査に与える影響を確認した
Teamsファイルの保存場所がSharePoint/OneDriveであることを設計に反映した
AIアプリで収集ポリシーが必要か確認した
アダプティブスコープと静的スコープのどちらを使うか決めた
管理単位や権限の制限を確認した
eDiscoveryホールド、訴訟ホールド、既存保持ラベルとの競合を確認した
適用まで最大7日かかる前提で展開計画を作った
テスト対象を限定して、配布状態と検索結果を確認した
ポリシー名、保持期間、対象場所、変更理由を文書化した

このチェックを飛ばすと、設定画面上は正しく見えても、実際には対象外のデータが残ったり、削除対象にしたくないログが削除されたりします。特にCopilot/AIアプリとTeams通話ログは、従来のTeamsやExchangeの感覚だけで設計しないことが重要です。

まとめ:まずは既存ポリシーの棚卸しから始める

Microsoft Purviewの保持ポリシーは、メール、ドキュメント、会話、AI利用データ、通話ログを横断して管理できる強力な機能です。一方で、2026年時点ではCopilot/AIアプリ、Teamsチャット、Teams通話ログの扱いが分かれており、過去に作成したポリシーをそのまま放置すると、現在のデータ利用実態と合わなくなる可能性があります。

最初に行うべきことは、新しいポリシーを作ることではありません。既存ポリシーを一覧化し、対象場所、保持期間、削除アクション、スコープ、配布状態、作成経緯を確認することです。そのうえで、TeamsチャットとCopilotの分離、Teams通話ログの専用ポリシー、AIアプリの収集ポリシー、SharePoint/OneDriveに保存されるTeams関連ファイルを順番に見直してください。

保持ポリシーの設計では、「残すか消すか」だけでなく、どのデータがどこに保存され、どのポリシーで、いつ、どの条件で処理されるかを明確にすることが成功のポイントです。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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