Universal Print へ移行した直後に「カラー指定が選べない」「指定しても白黒で出る」という相談は非常に多く、根本原因はおおむね機能の誤検出、クラスドライバーの既定値、コネクター側の既定、配布ポリシーの上書きのいずれかに集約されます。本記事では、現場でそのまま使える切り分け観点と、確実に直すための手順・ベストプラクティスを実運用目線で詳説します。
Universal Print へ移行後にカラー印刷できない問題の全体像
質問の背景と症状
オンプレミスのプリントサーバーに接続されていた2台のプリンターを Universal Print(以下 UP)に登録したところ、UP 経由の印刷のみカラーが選べない/出力されないという事象が発生。従来のプリントサーバー経由では同機種・同じ原稿で問題なくカラー出力できる。この症状は、プリンターがカラー対応であるにもかかわらず、UP 経路で「白黒固定」や「カラー項目がグレーアウト」になっている場合に典型的に見られます。
結論:最短で直すための対処フロー
まずは次の順で確認・修正します。これは時間対効果が高い順で並べています。
- UP ポータルで機能を確認:該当プリンターの[プロパティ]→[機能]→[カラープリント]が有効(Enabled)か確認・是正。
- クライアントのドライバー設定:Windows に入る「Universal Print クラス ドライバー」の既定がモノクロ固定になっていないか確認し、「カラー」へ変更。必要に応じてプリンター固有のユニバーサルドライバー(PS / PCL6 のカラー対応版)へ置換。
- UP コネクター側の既定設定:コネクターPCの[デバイスとプリンター]→該当プリンター→[印刷設定]で既定が「白黒」になっていないか確認。「カラー」へ変更し、Universal Print Connector サービスを再起動。
- プリンターファームウェア/ドライバー更新:メーカーの最新ファームウェア/ドライバーで UP 対応・機能認識が改善される場合あり。更新後に機能同期。
- テスト印刷とポリシー再配布:変更後にテスト印刷でカラー確認。Intune や GPO で配布している場合はポリシー再同期。
なぜ起きる?(仕組みと原因の切り分け)
UP では、クライアント側の「表示・選択できる機能」が、UP サービスに登録された機能情報とコネクター/ドライバーの既定値に大きく依存します。従来のプリントサーバー経由では、サーバー上のベンダードライバーとポリシーによりカラーが既定化されていても、UP 登録時の検出やクラスドライバーの既定がモノクロ寄りだと、クライアント UI からカラーが「見えない/選べない」状態が発生します。
| 項目 | 従来プリントサーバー | Universal Print |
|---|---|---|
| ドライバー適用場所 | サーバー側にベンダードライバー | クライアントに UP クラスドライバー or ベンダー汎用ドライバー |
| 機能検出の根拠 | サーバー上のドライバー定義 | UP ポータルに同期された機能 + コネクターの既定 |
| 既定設定の出どころ | サーバー側の印刷設定・ポリシー | クライアントドライバーの既定 + コネクター既定 + ポリシー |
| よくある不一致 | サーバーではカラー既定 | クラスドライバーがモノクロ固定 / カラー機能が無効認識 |
| 運用ポイント | サーバーで一元管理 | UP ポータル・コネクター・クライアントの三位一体で整合 |
解決策の詳細手順
UP ポータルでプリンター機能を確認・是正
まず、UP ポータルで該当プリンターを開き、[プロパティ]→[機能]→[カラープリント]が有効(Enabled)になっていることを確認します。無効の場合、ここで有効化し保存します。機能を変更したら、クライアント側でプリンターを再追加または更新(サインアウト/サインインや[アプリと機能]→[オプション機能]→[表示プリンター]の再検出、UP プリンターの削除→再登録)を行い、クライアントに新しい機能定義を取り込ませます。
ポイント:複合機などでトナー/カードリッジの装着状態やオプション(フィニッシャー、増設トレイ)により機能認識が変わる機種があります。装置側の「色機能が無効」状態で検出されると、ポータルでも無効として取り込まれるため、装置状態を整えてから機能同期するのが安全です。
Windows クライアントのドライバー設定を確認・変更
UP でクライアントに自動導入される「Universal Print クラス ドライバー」は、機種に依存しない汎用ドライバーです。環境によっては既定がモノクロになっており、ユーザー UI でカラー項目が表示されない(あるいは選んでも白黒で出る)場合があります。以下を確認してください。
- [設定]→[Bluetooth とデバイス]→[プリンターとスキャナー]から該当プリンターを開き、[プリンターのプロパティ]→[詳細設定]→[色/モノクロ]が「カラー」になっているか確認。「モノクロ」になっていれば「カラー」へ変更。
- 高度な設定や仕上げオプションが必要な場合、メーカー提供のユニバーサルドライバー(PS / PCL6 のカラー対応版)に置き換えることを検討。UP で配布されたプリンターに対しても、クライアント側ドライバーを差し替えることで UI と機能が豊富になります。
注意:アプリケーション側の印刷ダイアログに「モノクロ印刷を優先」などの設定が残っていると、ドライバーでカラーにしても上書きされることがあります。PDF ビューアやブラウザー、Office アプリで一度「カラー」を明示し、プロファイルを保存しておくと安定します。
Universal Print コネクター側の既定設定を確認
UP コネクターに登録されたプリンターの既定が白黒だと、クライアント側で「カラー」が選べない、あるいは選べても白黒で出ることがあります。コネクターPC上で次を行います。
- [デバイスとプリンター]を開く → 該当プリンターを右クリック → [印刷設定]を開く。
- 既定の印刷設定が「白黒」になっていないか確認し、「カラー」へ変更して適用。
- services.msc でUniversal Print Connectorサービスを再起動。構成キャッシュが更新され、UP へ新しい既定が反映されやすくなります。
補足:コネクターPCのドライバーが古い場合、UP への機能エクスポートが不完全になりえます。ここでもベンダードライバーの更新が有効です。
プリンター本体のファームウェア/ドライバーを更新
最近の複合機・プリンターは、ファームウェアの更新で UP 連携・IPP 対応やカラー機能の報告が改善されることがあります。メーカーサイトで最新のファームウェアと、PC 側のベンダードライバーを適用したうえで、UP ポータルの機能を再確認・再同期してください。「UP では白黒、従来経路ではカラー」という非対称は、装置・ドライバーの世代差によって生じやすい現象です。
テスト印刷とポリシー配布をやり直す
設定変更後は、テストページと実アプリ(Word、Excel、PDF、ブラウザー)でカラー出力を確認します。Intune でプリンター配布や既定値をポリシー化している場合、再同期(デバイスの同期、サインアウト/サインイン、再起動)を行い、ユーザーに残留キャッシュを含む古いプロファイルが残っていないかを確認します。
現場で役立つチェックリストと早見表
チェックリスト(ミニマム版)
| 確認項目 | 期待値 | 見る場所 | NGだったときの対処 |
|---|---|---|---|
| UP ポータルの「カラープリント」 | 有効(Enabled) | UP ポータル[プロパティ]→[機能] | 有効化→保存→クライアントで再追加/更新 |
| クライアントの色設定 | カラー | [プリンターのプロパティ]→[詳細設定] | カラーへ変更 or ベンダードライバーへ置換 |
| コネクターの既定 | カラー | コネクターPCの[印刷設定] | カラーへ変更→コネクターサービス再起動 |
| 装置ファームウェア | 最新 | 本体メニュー/管理パネル | 更新→UP 機能再確認 |
| ポリシーの再配布 | 最新構成が反映 | Intune / GPO | 再同期・再起動・キャッシュクリア |
よくあるつまずき(拡張版)
| 項目 | 症状 | 原因の考え方 | 対処 |
|---|---|---|---|
| プリンター機能の誤検出 | UP でカラーが無効表示 | 装置側の状態/オプション未認識でカラー非搭載として同期 | 装置の構成を正し、UP で機能を有効化→保存→再配布 |
| クラスドライバーの制限 | カラー項目がない/選べない | 汎用ドライバーの既定がモノクロ、詳細設定の露出が少ない | 「カラー」へ切替 or ベンダー汎用ドライバー(PS/PCL6)へ置換 |
| コネクター設定キャッシュ | 設定変更が反映されない | コネクターサービスのキャッシュ未更新 | コネクターサービス再起動、プリンター再登録で同期を促進 |
| アプリの印刷設定 | 特定アプリだけ白黒になる | アプリ側でモノクロ既定のプロファイルが残存 | アプリで「カラー」を明示して保存・再試行 |
| 色管理(ICC) | 「カラーだが浅い/薄い」 | 色管理プロファイル非適用 | ベンダードライバー側の色管理設定を見直す |
PowerShell で一括点検・修正(管理者向け)
多数の端末で設定をあわせる場合、PowerShell による一括確認・一括修正が効率的です。以下は典型的なスニペット例です。
UP ドライバーのプリンターを一覧化
# 管理者 PowerShell
Get-Printer | Where-Object { $_.DriverName -like "*Universal Print*" } |
Select-Object Name, DriverName, PortName, Shared, Published
色設定を点検する
# プリンターごとの色設定(Color プロパティ)を確認
Get-Printer | ForEach-Object {
try {
$cfg = Get-PrintConfiguration -PrinterName $_.Name -ErrorAction Stop
[PSCustomObject]@{
Printer = $_.Name
Driver = $_.DriverName
Color = $cfg.Color
Duplex = $cfg.DuplexingMode
Quality = $cfg.PrintQuality
}
} catch {
# 一部の汎用ドライバーは Get-PrintConfiguration をサポートしない場合あり
[PSCustomObject]@{ Printer = $_.Name; Driver = $_.DriverName; Color = "N/A"; Note = "NotSupported" }
}
} | Format-Table -AutoSize
色設定をカラーに統一する
# サポートされているプリンターについて Color を有効化
Get-Printer | ForEach-Object {
try {
Set-PrintConfiguration -PrinterName $_.Name -Color $true -ErrorAction Stop
Write-Host "Updated: $($_.Name)"
} catch {
Write-Warning "Skip: $($_.Name) - driver may not support Set-PrintConfiguration"
}
}
ヒント:グループポリシーや Intune で印刷設定プロファイルを配っている場合は、PowerShell の変更を上書きしてしまうことがあります。変更後はポリシー適用タイミングも合わせて確認してください。
Intune / GPO 配布時の注意点
UP のプリンターを Intune のスクリプトやデバイス構成で配布している環境では、配布直後の既定値がモノクロに固定されることがあります。また、GPO で「省インク(モノクロ)」系の設定が残っていると色設定が戻されます。以下の観点を押さえましょう。
| ポリシー種別 | 反映タイミング | 色設定への影響 | 対処 |
|---|---|---|---|
| Intune スクリプト配布 | サインイン直後〜数分 | 初期プロファイルがモノクロで固定される場合あり | スクリプトで Set-PrintConfiguration を組み込み、適用後に再確認 |
| Intune 設定プロファイル(デバイス) | デバイスチェックイン時 | デバイス既定が白黒に寄るとユーザーが変更できない | ユーザー構成で上書き、あるいは既定をカラーに変更 |
| GPO(ユーザー) | ユーザーログオン時 | アプリ起動ごとにモノクロへ戻ることがある | GPO 側の印刷設定テンプレートを見直し、カラーに修正 |
ケーススタディ:2台のうち1台だけ UP 経由でモノクロになる
同一ネットワーク上の A 機と B 機を UP 登録したところ、A はカラー出力可能、B は UP 経由のみモノクロになる事例を考えます。切り分けは次のとおりです。
- UP ポータルの機能差:B の「カラープリント」が無効になっていないか。無効なら有効化。
- コネクター登録手順の差:B を登録した時点のコネクター既定が白黒だった可能性。既定をカラーに直し、B を再登録。
- 装置側オプション:B の装置設定でカラー機能が無効(トナーなし/オプション未装着)として検出されていないか。
- クライアントドライバー:B のみクラスドライバーの既定がモノクロのユーザープロファイルが残存していないか。
このケースでは、コネクターの既定をカラーに変更→コネクターサービス再起動→UP ポータルで B のカラープリント有効化→クライアントで B を再追加の順に是正することで解消しました。従来経路でカラーが出るのに UP だけ白黒、という非対称は、UP 側の機能認識とクライアント既定の食い違いが原因であることが多いです。
印刷テストのすすめ(再現性を高める)
変更の効果を確実に測るため、次のテストパターンを用意しておくと便利です。
- シンプルパターン:Windows のテストページ、Office 文書(画像+ベタ色)
- 高彩度パターン:CMYK のベタ 50% と 100%、グラデーション
- 写真系:高解像度 JPEG(人物・風景)
- アプリ差分:Word / Excel / PowerPoint / PDF ビューア / ブラウザー
いずれもアプリ側の印刷ダイアログで「カラー」を明示し、同一データで UP 経由/従来経由の差を比較します。UP 経由のみに問題が残る場合は、UP 側の機能・既定・ポリシーの三方向に的を絞れます。
運用ベストプラクティス(再発防止)
- 登録前チェックリスト:装置のカラー機能が有効、最新ファームウェア、ベンダードライバー導入済み、コネクター既定が「カラー」。
- 標準ドライバー方針:まずは UP クラスドライバーで統一し、必要な機種のみベンダードライバーを適用。差分管理を最小化。
- 既定値の合意:部門ごとに「既定はカラー/白黒」を明確化。経費抑制方針がある場合は UP ポータル機能とポリシーで整合させる。
- 配布の自動化:Intune スクリプトに
Set-PrintConfiguration -Color $trueを組み込み、初期配布でカラー既定を保証。 - 監査と記録:変更履歴(誰が・いつ・どの機能を)を記録。障害時に再現しやすくなる。
トラブル対応の実務手順(保存版)
- UP ポータルで該当プリンターの「カラープリント=有効」を確認・是正。
- コネクターPCで印刷設定の既定=カラーに修正→コネクターサービス再起動。
- クライアントのドライバーで[色/モノクロ]=カラーへ変更。必要ならベンダードライバーへ置換。
- 装置ファームウェア/ドライバーを最新化。
- テスト印刷(複数アプリ)でカラー確認。
- Intune/GPO で配布している場合は再同期(チェックイン・サインイン・再起動)を実施。
FAQ
Q. UP ポータルで「カラー有効」にしたのに、クライアントで選べません。
A. コネクターの既定が白黒、またはクライアントのドライバー既定が白黒の可能性があります。コネクターの印刷設定をカラーにしサービスを再起動、クライアント側はプリンターを削除→再追加して新しい機能を取り込みます。
Q. アプリによってはカラー、別のアプリだと白黒になります。
A. アプリ側の印刷ダイアログに残ったプロファイルが影響していることがあります。各アプリでいったん「カラー」を明示して保存し直すか、アプリの印刷設定を初期化してください。
Q. ベンダードライバーに替えると直りますが、標準を保ちたいです。
A. まず UP クラスドライバーで「カラー」を既定にできるかを確認し、それでも不足する機能(フィニッシャー、色管理)が必要な機種のみベンダードライバー採用に留めるのがおすすめです。
まとめ
「UP へ移行したらカラー印刷できない」は、UP ポータルの機能定義・コネクターの既定・クライアントドライバーの既定のいずれか、もしくはそれらの組み合わせによる整合不良が原因です。本記事で示した最短フロー(ポータル→クライアント→コネクター→更新→テスト→配布再同期)を順番に実施すれば、従来どおりのカラー印刷を安定して再現できます。特に、コネクターサービスの再起動とクライアントでの再追加は効果が高く、現場の復旧時間を大幅に短縮します。移行後の運用では、登録前チェック・既定値方針・配布自動化・監査の4点を徹底し、再発を防止しましょう。
付録:コマンドと確認ポイントのテンプレート
PowerShell テンプレート(配布用スクリプト例)
# 1) UP 由来のプリンターを収集
$upPrinters = Get-Printer | Where-Object {
$_.DriverName -like "*Universal Print*" -or $_.PortName -like "*universalprint*"
}
# 2) 機能確認ログを出力
$result = foreach ($p in $upPrinters) {
try {
$cfg = Get-PrintConfiguration -PrinterName $p.Name -ErrorAction Stop
[PSCustomObject]@{
Printer = $p.Name
Driver = $p.DriverName
Color = $cfg.Color
Duplex = $cfg.DuplexingMode
}
} catch {
[PSCustomObject]@{
Printer = $p.Name; Driver = $p.DriverName; Color = "Unknown"; Duplex = "Unknown"
}
}
}
$result | Out-File "$env:ProgramData\UP-Printer-Report.txt" -Encoding UTF8
# 3) 可能なものはカラーを既定に
foreach ($p in $upPrinters) {
try {
Set-PrintConfiguration -PrinterName $p.Name -Color $true -ErrorAction Stop
Write-Host "Set Color ON: $($p.Name)"
} catch {
Write-Warning "Skip (Not supported by driver): $($p.Name)"
}
}
確認ポイント(保存版)
| フェーズ | やること | コマンド/操作 | 合格基準 |
|---|---|---|---|
| 機能確認 | UP ポータルでカラー有効 | ポータル[機能] | カラープリント=Enabled |
| クライアント | ドライバー既定=カラー | [プリンターのプロパティ]→[詳細設定] | 「色/モノクロ」=カラー |
| コネクター | 印刷設定既定=カラー | [印刷設定]→サービス再起動 | 再起動後もカラー維持 |
| 装置 | 最新ファーム/オプション認識 | 本体管理パネル | カラー機能が有効表示 |
| 配布 | ポリシー再同期 | Intune/GPO | ユーザー側でカラー選択可 |
結び
UP 環境でカラー印刷ができない場合でも、機能(ポータル)→既定(コネクター/クライアント)→配布(Intune/GPO)の順に絞り込めば短時間で復旧できます。この記事の手順とテンプレートを運用標準に組み込み、移行後のトラブルを極小化してください。

コメント