Mistral Document AI with OCR 4とMistral Medium 3.5がMicrosoft Foundryに追加、変更点と確認ポイント

Microsoft FoundryでMistral系モデルを使っている場合、今回のポイントは「Mistral Document AIがOCR 4ベースになり、文書抽出・RAG・業務自動化で使いやすい選択肢が増えたこと」と「Mistral Medium 3.5が推論・コーディング・エージェント用途の新しい候補になったこと」です。緊急の障害対応というより、分類はNoticeの更新として、利用中のモデルID、リージョン、入力制限、出力形式、既存のDocument AI移行予定を確認するのが現実的です。Microsoft Foundry Blogでは、Mistral Document AI with OCR 4とMistral Medium 3.5がMicrosoft Foundryに追加されたことが告知されています。(TECHCOMMUNITY.MICROSOFT.COM)

目次

Mistral Document AI with OCR 4とMistral Medium 3.5は何が変わった?

今回の変更は、Microsoft Foundryのモデル選択肢が増えたというシンプルな話に見えますが、実務上の影響は「文書をどう取り込むか」と「取り込んだ情報をどのモデルで処理するか」の2点に分かれます。

Mistral Document AI with OCR 4は、PDFや画像などの文書からテキストを抜き出すだけでなく、構造を意識した文書理解に向くモデルです。OCR 4は、抽出テキストに加えて、文字やブロックの位置情報、ブロック分類、信頼度スコアを返す点が特徴です。Mistralの公式発表では、OCR 4は170言語・10言語グループをサポートし、RAG、企業内検索、ドメイン特化の検索パイプライン向けの取り込み部品として説明されています。(Mistral AI)

一方、Mistral Medium 3.5は、指示追従、推論、コーディングを1つのモデルで扱う用途を意識したモデルです。Mistral公式では128B denseモデル、256kコンテキスト、公開プレビュー、オープンウェイトとして説明されていますが、Microsoft Foundry上の利用条件はFoundry側のモデルカタログに従って確認する必要があります。(Mistral AI)

Microsoft Foundry利用者への影響

Microsoft Foundry利用者がまず見るべきなのは、今すぐアプリが壊れるかどうかではなく、既存の文書処理パイプラインを新しいモデルに置き換える価値があるかです。

特に影響を受けやすいのは、請求書、契約書、申込書、報告書、社内規程、技術資料などをOCRで取り込み、Azure AI Searchや独自RAGに渡しているチームです。OCR 4の位置情報やブロック分類を活用できれば、「この回答は文書のどこに基づくのか」を示しやすくなり、レビューや監査の負担を減らせる可能性があります。

一方で、すべての既存処理をすぐ置き換える必要はありません。既存OCRで精度・速度・コストが安定している場合は、まず代表的な文書だけで比較検証し、読み取り精度、表の再現性、JSONの安定性、処理コストを確認してから段階的に移行するのが安全です。

すぐ確認したい設定と運用ポイント

確認項目見るべきポイント実務上の判断
モデルIDmistral-document-ai-2512、mistral-ocr-4-0、mistral-medium-3-5を使う設計かコード、IaC、環境変数、Foundryポータルのデプロイ名を棚卸しする
既存モデルmistral-document-ai-2505を使っていないかMicrosoft Learnでは2026年7月15日のリタイアと置換先が示されているため、利用中なら優先確認する
入力制限PDFページ数、ファイルサイズ、画像入力の扱い大量ページのPDFは分割処理や前処理が必要になる可能性がある
出力形式Text、JSON、Markdownのどれを使うか後続システムがJSON固定なら、スキーマ変更に備えたテストを行う
リージョンGlobal Standard、Data Zone Standardの対応データ境界や社内コンプライアンス要件がある場合は、利用リージョンを明示する
Tool callingFoundry上でのTool calling対応エージェント用途では、モデル単体の説明ではなくFoundry側の対応表を確認する
評価データ自社の実文書で精度を見るかベンチマークだけで採用せず、業務文書30〜50件程度で比較する

Microsoft LearnのFoundry Models一覧では、mistral-document-ai-2512は画像またはPDFページを入力とするImage-to-Textモデルとして、PDFは30ページ・最大30MB、出力はText、JSON、Markdownと記載されています。mistral-medium-3-5はPreviewのchat-completionモデルとして、テキストと画像入力、テキスト出力、128,000トークン入力・出力、Tool callingはNoと記載されています。(Microsoft Learn)

既存のMistral Document AI利用者は移行確認を優先する

すでにMicrosoft FoundryでMistral Document AIを使っている場合は、モデルIDを最初に確認してください。Microsoft Learnのモデル引退スケジュールでは、mistral-document-ai-2505は2026年7月15日にリタイア予定で、置換先としてmistral-document-ai-2512とmistral-ocr-4-0が示されています。(Microsoft Learn)

移行時は、単にモデル名を差し替えるだけでは不十分です。OCRやDocument AIは、出力の細かな構造が後続処理に影響します。たとえば、請求書の「合計金額」「税額」「支払期限」をJSONで取り出している場合、キー名、日付形式、表の行分割、信頼度の扱いが変わると、ワークフロー全体に影響します。

移行テストで見るべき具体例

テスト対象確認すること
日本語PDF文字化け、縦書き、全角記号、印影、手書き欄の扱い
表が多い請求書セル結合、明細行、合計欄、税込・税抜の区別
契約書条項番号、ページまたぎ、脚注、別紙の読み順
スキャン文書傾き、低解像度、薄い文字、余白ノイズ
30ページ超のPDF分割処理、ページ単位のID管理、再結合ロジック
JSON出力必須項目の欠落、型の揺れ、空欄の表現

特にRAG用途では、抽出テキストだけでなく「どのページのどの位置に根拠があるか」を保持できるかが重要です。OCR 4は位置情報やブロック分類、信頼度スコアを扱えるため、根拠付き回答、レビュー画面のハイライト、人的確認フローとの相性がよい更新です。(Mistral AI)

Mistral Document AI with OCR 4を使うべきケース

Mistral Document AI with OCR 4は、文書を業務データに変換する処理で候補になります。単なる全文検索用のテキスト抽出だけでなく、表、見出し、署名欄、注記、画像内テキストなどを後続処理に渡したい場合に向いています。

たとえば、次のような使い方が考えられます。

  • 契約書を読み取り、条項ごとに検索できるようにする
  • 請求書から取引先名、金額、支払期限を抽出する
  • 社内規程PDFをRAG用に構造化して取り込む
  • 技術資料の表や図の周辺テキストを検索対象にする
  • 信頼度が低い項目だけ人間が確認するワークフローを作る

ただし、OCR 4は文書理解モデルであり、医療診断、法的判断、融資判断、安全上重大な判断を自動で下すためのものではありません。Mistral公式も、OCR 4は意思決定者ではなく、医療診断、法的助言、高リスク金融判断、安全重要システムなどを対象外用途として説明しています。(Mistral AI)

Mistral Medium 3.5を使うべきケース

Mistral Medium 3.5は、文書抽出後の要約、分類、コード生成、調査支援、社内向けアシスタントなどの候補になります。Mistral公式では、長いタスク、複数ステップの作業、コーディング、構造化出力を意識したモデルとして説明されています。(Mistral AI)

ただし、Microsoft Foundryで利用する場合は、Mistral公式のモデル説明だけでなく、Foundry側の制限を確認する必要があります。Foundryのモデル一覧では、mistral-medium-3-5はPreviewで、Tool callingはNo、レスポンス形式はTextとJSONとされています。エージェントにツールを呼ばせる設計をしている場合は、既存のAgent Service構成やSDKでそのまま使えると決めつけず、検証環境で確認してください。(Microsoft Learn)

また、Mistral公式では256kコンテキストと説明されていますが、Microsoft LearnのFoundry側の記載では128,000トークン入力・出力です。長大な契約書や大量の検索結果を一度に投げる設計では、Foundry上の実際の上限に合わせてチャンク分割や要約前処理を見直す必要があります。(Mistral AI)

日本語文書を扱う場合の注意点

日本語の契約書、請求書、社内文書で使う場合は、必ず自社文書で検証してください。Mistral公式のOCR 4発表では170言語対応が説明されていますが、Microsoft LearnのFoundry Models一覧では、mistral-document-ai-2512やmistral-ocr-4-0のLanguages欄がenと記載されています。ドキュメントの記載は更新される可能性がありますが、少なくとも本番採用前に日本語文書の読み取り精度を確認するのが安全です。(Mistral AI)

確認する文書は、きれいなPDFだけでは不十分です。実務では、スキャンPDF、FAX由来の低品質画像、印影つき書類、表が崩れた明細、縦書きの契約書、手書きメモ入り文書が混ざります。これらを代表サンプルに含めることで、導入後の手戻りを減らせます。

導入前の簡易チェックリスト

本番環境で試す前に、次の順番で確認すると失敗しにくくなります。

  1. Foundry内の既存デプロイを棚卸しし、Mistral系モデルの利用有無を確認する
  2. mistral-document-ai-2505を使っている場合は、リタイア日までの移行計画を作る
  3. 新旧モデルで同じ文書を処理し、文字認識、表、JSON、Markdownの差分を見る
  4. 30ページ・30MBの制限に引っかかる文書がないか確認する
  5. RAGで使う場合は、ページ番号、ブロック位置、根拠表示を保持する設計にする
  6. 日本語文書、手書き、スキャン、表形式のサンプルで精度を測る
  7. Previewモデルを本番の中核に使う場合は、代替モデルやロールバック手順を用意する

まとめ:まずはモデルIDと文書処理パイプラインを確認する

今回のMistral Document AI with OCR 4とMistral Medium 3.5のMicrosoft Foundry追加は、文書AIとエージェント開発の選択肢を広げる更新です。特に、OCR結果をRAGや業務ワークフローに渡しているチームにとっては、構造化出力、位置情報、信頼度を活用できるかが確認ポイントになります。

最初にやるべきことは、既存のFoundryデプロイでmistral-document-ai-2505を使っていないかを確認することです。該当する場合は、mistral-document-ai-2512またはmistral-ocr-4-0への移行テストを優先してください。新規導入の場合は、公式の性能説明だけで判断せず、自社の日本語文書、表、スキャンPDF、長文ファイルで小さく検証し、精度・コスト・運用負荷のバランスを見てから本番展開するのが現実的です。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

コメント

コメントする

目次