ExcelやWord、PowerPointでファイルを共有したのに、相手から「アクセスできない」と言われたり、権限を変更するたびにリンクを送り直したりする手間が、今後は減る見込みです。
Microsoft 365の「The Next Generation of File & Folder Sharing」では、Hero Link(ヒーローリンク)と呼ばれる共通リンクを中心に、ファイルやフォルダーの共有方法が刷新されます。コピーしたリンク、メールで送るリンク、ブラウザのアドレスバーから取得するURLを一貫させ、同じリンクのアクセス範囲を後から変更できる点が大きな特徴です。
2026年6月9日に更新されたMicrosoft 365 Roadmapでは、一般提供の予定が2026年8月、ステータスが「開発中」とされています。既存リンクの一括移行や追加料金、利用者側の対応期限は、現時点では発表されていません。(Microsoft)
Microsoft 365:The Next Generation of File & Folder Sharingの概要
今回の変更は、共有画面のデザインを変えるだけではありません。Microsoftは、Microsoft 365における「第3世代の共有エクスペリエンス」と位置付け、共有リンクとアクセス権を管理する仕組みそのものを簡素化します。
| 項目 | 2026年6月9日時点の公式情報 |
|---|---|
| Roadmap ID | 492622 |
| 機能名 | Microsoft 365: The Next Generation of File & Folder Sharing |
| 主な変更 | Hero Linkによるファイル・フォルダー共有の一元化 |
| 対象サービス | Excel、Microsoft 365、OneDrive、PowerPoint、SharePoint、Word |
| 対象プラットフォーム | Android、デスクトップ、iOS、Mac、Web |
| 対象クラウド | Worldwide、GCC、GCC High、DoD |
| 提供段階 | 一般提供 |
| 一般提供予定 | 2026年8月 |
| ステータス | 開発中 |
| プレビュー予定 | 記載なし |
このRoadmap項目は2025年5月に作成され、2026年6月9日に更新されています。2025年の公式発表では「2025年後半」の展開予定とされていたため、現在は2026年8月へスケジュールが変更された形です。(Microsoft)
最大の変更点は「Hero Link」による共有リンクの一元化
Hero Linkは、ファイルやフォルダーごとに用意される中心的な共有リンクです。
従来は、共有する相手や権限が変わるたびに別のリンクを作成し、複数のURLを管理する場面がありました。新しい仕組みでは、基本的に同じHero Linkを使いながら、アクセスできる人や権限を変更します。
| 比較項目 | 従来の共有 | Hero Link導入後 |
|---|---|---|
| リンクの取得方法 | 操作や権限ごとに異なるリンクが作られることがある | コピー、メール共有、ブラウザURLを共通化 |
| アクセス範囲の変更 | 新しいリンクの作成と再送が必要になる場合がある | 同じリンクの設定を変更できる |
| リンク管理 | 複数の共有リンクが残りやすい | 中心となるリンクを一つに整理 |
| 相手が開けない場合 | 正しい権限のリンクを作り直すことがある | Hero Linkのアクセス設定を見直す |
| 既存リンク | 個別に管理 | 継続して利用でき、「Other Links」に表示される予定 |
Microsoftの説明では、「リンクのコピー」「メールによる共有」「ブラウザのアドレスバーからのURL取得」のいずれでもHero Linkが使われます。権限を変更してもURLを送り直す必要がないため、古いリンクと新しいリンクが混在する問題を減らせます。(TECHCOMMUNITY.MICROSOFT.COM)
Hero Linkは最初から「誰でも開けるリンク」ではない
Hero Linkという名称から、URLを知っている全員がアクセスできるリンクを想像しやすいため注意が必要です。
Microsoftの公式説明では、Hero Linkは初期状態ですでにファイルへのアクセス権を持つ人だけが利用できる、安全側の設定から始まります。リンクをコピーしただけで、未許可のユーザーに新しいアクセス権が自動付与されるわけではありません。(TECHCOMMUNITY.MICROSOFT.COM)
共有するときは、必要に応じて次のようなアクセス範囲へ変更します。
- 既存のアクセス権を持つ人
- 組織内のユーザー
- 指定したユーザー
- リンクを知っているすべてのユーザー
実際に表示される選択肢は、組織やSharePointサイトの外部共有ポリシーによって異なります。Microsoft 365 Insider向けの案内では、共有画面の「File access settings」からHero Linkのアクセス範囲を変更する操作が紹介されています。(TECHCOMMUNITY.MICROSOFT.COM)
Excel、Word、PowerPoint、OneDrive、SharePointで何が変わるのか
今回のRoadmap項目は、各アプリのファイル形式や編集機能を変更するものではありません。主な影響は、OneDriveやSharePointに保存したファイルを共有するときの画面とリンク管理です。
| サービス | 想定される主な変更 |
|---|---|
| Excel | OneDrive・SharePoint上のブックを共有するとき、Hero Linkを中心とした共有操作になる |
| Word | 文書の共有リンクとアクセス設定を同じ画面で管理しやすくなる |
| PowerPoint | プレゼンテーションのURLを送り直さず、アクセス範囲を変更できる |
| Microsoft 365 | アプリ間で共有操作やリンクの扱いが統一される |
| OneDrive | ファイル・フォルダー共有の基盤としてHero Linkとアクセス管理を提供する |
| SharePoint | ドキュメントライブラリ内のファイルやフォルダー共有に新しい仕組みが反映される |
Excel、Word、PowerPointのデスクトップ版だけでなく、Web版、Mac、iOS、Androidも対象です。そのため、同じファイルを複数のアプリや端末から共有している組織ほど、操作の一貫性による効果を得やすいでしょう。(Microsoft)
実際の共有はどう変わるのか
たとえば、営業担当者がOneDriveに保存したExcelの見積書を、社内担当者と取引先に共有する場面を考えます。
従来は、社内用リンクを作成した後、取引先向けに別の共有リンクを作り直すことがありました。新しい仕組みでは、まずHero Linkを社内担当者へ送り、後から取引先を追加したり、アクセス範囲を変更したりできます。
同じURLを使い続けられるため、メールやチャットに掲載したリンクを差し替える必要がありません。
ただし、これは便利である一方、重要な注意点でもあります。Hero Linkのアクセス範囲を広げると、過去にコピー・転送された同じURLからも、新しい設定に従ってアクセスできる可能性があります。
したがって、権限変更は単なるリンク設定ではなく、「過去に配布したURLを誰が利用できる状態にするか」という判断として扱う必要があります。
誰に影響するのか
一般ユーザー
Excel、Word、PowerPointなどから日常的にファイルを共有するユーザーが、最も直接的な影響を受けます。
操作は簡単になりますが、「リンクを送れば共有完了」ではありません。送信前に、共有画面で対象者と閲覧・編集権限を確認する習慣が引き続き必要です。
ファイル所有者やSharePointサイト所有者
アクセス権を管理できるユーザーは、Hero Linkの範囲を変更する場面が増えます。
特にSharePointでは、サイト全体の権限、フォルダーの権限、ファイル固有の権限が混在することがあります。継承を停止して個別権限を設定しているライブラリでは、事前テストが重要です。
Microsoft 365管理者とヘルプデスク
管理者は、新機能を有効化する作業よりも、現在の共有ポリシーと現場の運用ルールが合っているかを確認する必要があります。
ヘルプデスクでは、次のような問い合わせを想定して案内を更新しておくとよいでしょう。
- ブラウザのURLをコピーして共有してよいか
- 同じリンクなのに人によって開ける・開けない理由
- リンクのアクセス範囲を変更する方法
- 過去に作成した共有リンクの確認方法
- 外部ユーザーに共有できない理由
外部の取引先やゲストユーザー
受信するURLが変わらなくても、ファイル所有者による設定変更によって、後からアクセス可能になったり、アクセスを失ったりする場合があります。
「以前開けたリンクが開けなくなった」という現象は、リンク切れではなく、Hero Linkのアクセス設定が変更された結果である可能性もあります。
設定・更新・移行・料金・期限で確認すべきこと
| 確認項目 | 現時点で分かっていること | 管理者が行うこと |
|---|---|---|
| 設定 | 新機能専用の管理スイッチや無効化設定は未発表 | 現在のSharePoint・OneDrive共有ポリシーを点検する |
| アプリ更新 | 必須バージョンや手動インストールの案内は未発表 | Microsoft 365 Appsとモバイルアプリを通常の更新方針で最新化する |
| 移行 | 既存リンクと権限は引き続き動作する予定 | 全リンクを作り直さず、重要な共有先から動作確認する |
| 料金 | 追加料金や専用ライセンスの記載なし | 現時点では追加予算を見込まず、続報を確認する |
| 提供時期 | 一般提供は2026年8月予定 | 正確なテナント展開日はメッセージセンターで確認する |
| 対応期限 | 旧リンク廃止日や強制移行期限の記載なし | 不要なリンクの整理と共有ルールの見直しを進める |
Roadmapには、最低クライアントバージョン、専用ライセンス、旧リンクの廃止期限などは記載されていません。そのため、具体的なビルド番号や移行期限を前提にした対応はまだ不要です。
既存のリンクと権限については、引き続き動作し、新しい共有画面の「Other Links」から確認できるとMicrosoftが説明しています。現段階で、すべてのURLをHero Linkへ置き換える作業は必要ありません。(TECHCOMMUNITY.MICROSOFT.COM)
管理者が提供前に確認する共有設定
組織レベルの設定は、SharePoint管理センターの「ポリシー」から「共有」を開いて確認します。最低限、次の項目を点検してください。
- SharePointとOneDriveで許可している外部共有レベル
- デフォルトで選択される共有リンクの種類
- デフォルト権限が閲覧か編集か
- Anyoneリンクの有効期限
- 外部共有を許可または禁止するドメイン
- 外部共有を実行できるユーザーの制限
OneDriveの共有レベルは、SharePointより厳しく設定できますが、SharePointより緩く設定することはできません。また、組織設定とサイト設定が異なる場合は、より厳しい設定が適用されます。(Microsoft Learn)
特定のSharePointサイトだけを確認する場合は、SharePoint管理センターで「アクティブなサイト」を開き、対象サイトの「設定」から「その他の共有設定」を確認します。外部共有レベル、既定のリンク、権限、有効期限などをサイト単位で変更できます。(Microsoft Learn)
提供前に実施したい動作確認
本番ユーザーへ展開される前に、外部共有を利用する部門や、個別権限の多いSharePointサイトを選んでテストすると安全です。
テスト用の利用者を準備する
少なくとも、次の利用者を用意します。
- ファイル所有者
- すでにアクセス権を持つ社内ユーザー
- アクセス権を持たない社内ユーザー
- 外部のゲストユーザー
ファイルとフォルダーをそれぞれ確認する
Word文書やExcelブックだけでなく、フォルダー共有も確認します。SharePointでは、権限を継承しているフォルダーと、固有の権限を持つフォルダーを分けてテストしてください。
取得方法が違ってもリンクが機能するか確認する
次の方法でURLを取得し、同じ利用者がアクセスできるかを確認します。
- 共有画面の「リンクをコピー」
- メール送信による共有
- ブラウザのアドレスバーからコピー
- Excel、Word、PowerPointの共有ボタン
- OneDriveまたはSharePointのファイル一覧
同じURLのまま権限を変更する
アクセス範囲や閲覧・編集権限を変更し、以前に送ったURLのまま結果が変わるかを確認します。
特に、アクセス範囲を広げるテストだけでなく、権限を削除したときに利用できなくなることも確認してください。
失敗しやすいポイント
Hero Linkを公開リンクと誤解する
ブラウザからURLをコピーできるようになっても、URLを知っているだけで開けるとは限りません。アクセスできるかどうかは、Hero Linkの設定と既存権限で決まります。
権限を広げる前に過去の配布先を考慮しない
同じURLがメール、Teams、チャット、社内Wikiなどに残っている可能性があります。アクセス範囲を拡大する前に、そのURLがどこへ配布されたかを想定してください。
既存リンクがすぐ廃止されると思い込む
既存リンクは継続利用できる予定です。慌ててリンクを作り直すと、かえってURLが増え、管理が複雑になります。
すべての環境へ同じ日に表示されると考える
Roadmapに記載されているのは2026年8月という月単位の予定で、正確な開始日や完了日は示されていません。8月1日に全利用者へ同時反映される前提で社内告知を行わないようにしましょう。
自動化処理が従来のURL形式に依存している
共有リンクを保存・解析・変換する社内ツールや外部サービスがある場合は、Hero Linkを使った動作確認が必要です。
URLの文字列からサイトや権限種別を判定する処理は、新しい形式で正常に動かない可能性があります。リンクを文字列として加工するのではなく、Microsoft Graphなど正式なAPIを利用しているか確認してください。
最新情報はMicrosoft 365メッセージセンターで確認する
Microsoft 365 Roadmapは全体的な予定を確認する場所であり、組織ごとの展開日や管理者向けの具体的な対応までは掲載されないことがあります。
管理者はMicrosoft 365管理センターで「正常性」から「メッセージセンター」を開き、次のキーワードを検索してください。
- 492622
- Hero Link
- File & Folder Sharing
- Next Generation of Sharing
- OneDrive sharing
- SharePoint sharing
メッセージセンターでは、組織に影響する機能変更、展開予定、必要な対応を確認できます。メール通知を設定しておくと、Roadmapの再変更も追いやすくなります。(Microsoft Learn)
今のうちに行うべき対応
一般ユーザーは、新しい画面が表示されたら、リンクを送る前に「誰がアクセスできるか」と「閲覧・編集のどちらか」を確認してください。同じURLを送り直す必要がなくなる一方、アクセス設定の変更が過去に配布したリンクにも影響する点が重要です。
管理者は、2026年8月の一般提供に向け、次の3点を先に進めるとよいでしょう。
- SharePointとOneDriveの外部共有設定を記録する
- 外部共有や固有権限を使うサイトでテスト計画を作る
- Roadmap ID 492622とメッセージセンターを継続確認する
現時点では、既存リンクの一括移行、追加ライセンスの購入、特定バージョンへの強制更新を急ぐ必要はありません。まずは現在の共有ルールを整理し、Hero Linkによって「同じURLのアクセス範囲を後から変えられる」運用へ備えることが、最も現実的な対応です。

コメント