Dynamics 365のMicrosoft Credentials更新点|ロール別資格と管理者・開発者の確認ポイント

Dynamics 365の「Microsoft Credentials for Different Roles in Dynamics 365」は、Dynamics 365に関わる担当者がどのMicrosoft認定資格やApplied Skillsを確認すべきかを、ロール別に整理した公式ガイドです。2026年5月12日の更新で特に見るべきポイントは、Dynamics 365 Fundamentals系資格が非推奨になったこと、ロール別の資格一覧が再整理されたこと、AI・エージェント時代を意識した資格がSolution Architect向けに追加されていることです。これはDynamics 365本体の機能変更ではありませんが、管理者・開発者・教育担当者にとっては、研修計画、採用要件、パートナー評価、資格更新の運用を見直すきっかけになります。(Microsoft Learn)

目次

Dynamics 365のMicrosoft Credentials for Different Rolesとは

「Microsoft Credentials for Different Roles in Dynamics 365」は、Dynamics 365の導入・運用・開発に関わる人が、自分の役割に合うMicrosoft Credentialsを探すための公式ページです。対象は、Functional Consultant、Solution Architect、Business Owner、Business Analyst、Developerなどで、各ロールに対して関連するMicrosoft認定資格やApplied Skillsへの導線が整理されています。(Microsoft Learn)

ここでいうMicrosoft Credentialsには、大きく分けて次の2種類があります。

種類位置づけ向いているケース
Microsoft Certificationsロールや製品領域に対する体系的なスキル証明採用要件、パートナー要件、長期的なスキル育成に使いたい場合
Microsoft Applied Skills特定タスクを実行できることを示す実践寄りの資格Copilot Studioでエージェントを作るなど、短期で実務スキルを証明したい場合

重要なのは、このページが「Dynamics 365の設定変更を要求する告知」ではなく、「ロールごとの学習・資格設計を更新するためのガイド」である点です。したがって、すぐに環境設定を変更する必要はありません。ただし、社内の育成計画やRFP、開発チームのスキル要件に古い資格名が残っている場合は、更新が必要です。

2026年5月12日更新で押さえるべき変更点

今回の更新で実務上もっとも影響が大きいのは、初級者向けのDynamics 365 Fundamentalsを前提にした資格設計から、ロール別・実務別のCredentialsを選ぶ構成へ寄っていることです。現在の公式ページでは、Dynamics 365 Fundamentals Certificationsは非推奨とされ、すでに取得済みのFundamentals資格はMicrosoft Learnプロフィール上のトランスクリプトに残ると説明されています。(Microsoft Learn)

旧版では「Get started with Dynamics 365」にDynamics 365 Fundamentals CRM/ERPが掲載され、Business owners and business usersにもFundamentals資格が含まれていました。一方、現行版ではそれらが外れ、代わりにPower Platform App Maker Associateなど、実務ロールに近い資格が前面に出ています。(GitHub)

確認項目旧版で目立っていた構成現行版の見え方実務上の対応
初級者向け資格Dynamics 365 Fundamentals CRM/ERPが導線に含まれていたFundamentalsは非推奨として注記される新規研修ではFundamentalsを前提にせず、担当ロール別の資格に置き換える
Business owners / business usersFundamentals CRM/ERPとApp Makerが並んでいたPower Platform App Maker Associateが中心業務部門には「設定を理解する人」より「自分で改善案を形にできる人」を育てる設計にする
Solution architectsFinance and Operations Apps Solution Architect Expert、Power Platform Solution Architect ExpertなどAgentic AI Business Solutions Architectが追加されているAI、Copilot、エージェントを含むアーキテクチャ設計力を評価対象に入れる
Business analystsPower Platform App Maker Associateが中心Business Central Developer Associateも関連資格として掲載業務分析だけでなく、Business Central領域の実装理解が必要な案件では候補に入れる
DevelopersCustomer engagement appsとFinance and operations appsに分かれていたBusiness Central、Finance and Operations、Power Platform、RPA系が一覧化開発領域を製品名だけで分けず、Dataverse、ALM、RPA、アーキテクチャまで含めて育成する
関連コンテンツ認定更新やロール解説が中心Copilot StudioのApplied SkillsなどAI系の導線が追加Copilot Studioやエージェント活用を展開する組織はApplied Skillsも確認する

対象者別に見る確認ポイント

管理者は「資格」と「アクセス権」を混同しない

Dynamics 365の資格一覧を見直すとき、管理者が最初に注意すべきなのは、Microsoft Credentialsはスキル証明であり、Dynamics 365やMicrosoft Entra IDのアクセス権そのものではないという点です。資格を持っていても、環境に対する管理権限、Dataverseのセキュリティロール、アプリごとの権限が自動で付与されるわけではありません。

Microsoftのロール定義では、Internal adminはDynamics 365を利用する組織側のシステム管理者を指し、Delegated adminはパートナー側で顧客テナントに委任管理権限を持つ担当者を指します。つまり、資格管理とテナント権限管理は別の運用として分けて設計する必要があります。(Microsoft Learn)

管理者は次の3点を確認してください。

確認対象見直す内容放置した場合のリスク
社内研修資料非推奨になったFundamentals資格を推奨資格として残していないか新入社員や異動者が古い学習ルートを進んでしまう
権限設計書資格名をアクセス権付与の条件として書いていないか権限付与の根拠が曖昧になり、監査時に説明しづらくなる
パートナー要件提案依頼書や契約条件に古い資格名が残っていないか実務スキルを正しく評価できず、提案比較が難しくなる

資格を要件に入れる場合は、「資格を持っているから管理者権限を付与する」ではなく、「資格や実績を確認したうえで、必要最小限の管理権限を付与する」という順序にしてください。

開発者は製品別ではなく、実装範囲別に資格を選ぶ

開発者向けの現行リストには、Dynamics 365 Business Central Developer Associate、Dynamics 365 Finance and Operations Apps Developer Associate、Power Platform Solution Architect Expert、Power Automate RPA Developer Associateが掲載されています。(Microsoft Learn)

ここで重要なのは、「自分はDynamics 365開発者だからこの資格」と単純に選ばないことです。Dynamics 365の開発は、担当するアプリや拡張方法によって必要なスキルが変わります。

開発・実装の主な領域優先して確認したい資格
Business Centralの拡張、アドオン開発Dynamics 365 Business Central Developer Associate
Finance and Operations appsの拡張、X++、統合開発Dynamics 365 Finance and Operations Apps Developer Associate
Power Platformを含む全体設計、Dataverse、ALM設計Power Platform Solution Architect Expert
業務自動化、RPA、既存システム操作の自動化Power Automate RPA Developer Associate
Copilot Studioでエージェントを作成・展開するMicrosoft Applied Skills: Create agents in Microsoft Copilot Studio

特にCopilot Studio関連のApplied Skillsでは、カスタムエージェントの作成、トピックやトリガーフレーズ、変数、Dataverseからのデータ取得、エージェントの展開などが評価対象に含まれます。Dynamics 365とPower Platformを組み合わせて業務アプリやAIエージェントを展開するチームでは、認定資格だけでなくApplied Skillsも実務確認に使いやすい選択肢です。(Microsoft Learn)

Solution ArchitectはAI・エージェント設計を資格計画に入れる

今回の更新で注目すべき追加要素が、Solution architects向けに掲載されているAgentic AI Business Solutions Architectです。該当資格のページでは、AIを活用した業務ソリューション、エージェントファーストの設計、マルチエージェント構成、セキュアでスケーラブルなAIソリューション、Copilot StudioやMicrosoft Power Platform、Dynamics 365などへの理解が求められています。(Microsoft Learn)

これは、Dynamics 365導入におけるSolution Architectの役割が、ERP/CRMの構成設計だけでは足りなくなっていることを示しています。たとえば、営業プロセスをDynamics 365 Salesで管理するだけでなく、顧客対応の一部をCopilot Studioのエージェントで補助する場合、アーキテクトは次のような判断を求められます。

判断領域確認すべき観点
データ設計Dataverse、Dynamics 365、外部システムのどのデータをAIに参照させるか
セキュリティエージェントが参照できる情報をユーザー権限と整合させられるか
ALMエージェント、Power Platformコンポーネント、Dynamics 365カスタマイズをどう移送するか
監視AI機能や自動化の利用状況、失敗パターンをどう把握するか
責任範囲業務部門、IT部門、開発チーム、パートナーの誰が保守するか

AI機能を使わない小規模なDynamics 365運用であれば、必ずしもAI系資格を優先する必要はありません。一方で、Copilot、エージェント、Power Platform連携を本番展開する計画があるなら、Solution Architectのスキル要件にAI・エージェント設計を含めるべきです。

資格更新と移行で注意すべきポイント

MicrosoftのAssociate、Expert、Specialty系認定資格は、資格ごとの条件に従って更新が必要です。Microsoft Certification Renewalの公式ページでは、更新は無料で、期限前にオンライン評価に合格する必要があり、更新可能期間は6か月と説明されています。(Microsoft Learn)

Dynamics 365関連の資格を社内で管理している場合は、次の手順で棚卸ししてください。

手順作業内容担当者の例
現在の資格一覧を確認Microsoft Learnプロフィール、社内LMS、パートナー資格一覧を照合する人材育成担当、PMO
古い資格名を洗い出すDynamics 365 Fundamentals CRM/ERPを新規取得要件にしていないか確認する管理者、教育担当
ロール別に再分類するFunctional Consultant、Developer、Solution Architectなどに分け直すプロジェクト責任者
更新期限を管理するAssociateやExpert資格の有効期限と更新可能期間を確認する各資格保有者、上長
実務課題と結び付ける資格取得後に、環境構築、移行、ALM、セキュリティ設計などの実務演習を行う技術リード、開発リーダー

注意したいのは、資格ページごとに廃止・更新・試験範囲の変更が個別に発生する点です。たとえば、Dynamics 365 Customer Experience Analyst Associateのページでは、資格、関連試験、更新評価が2026年7月31日に廃止される予定であると警告されています。(Microsoft Learn)

そのため、「ロール別一覧に載っているから安心」と判断せず、実際に取得・更新する前に各資格ページの警告、最終更新日、試験範囲、提供言語を確認してください。

展開・移行プロジェクトでの実務的な使い方

Dynamics 365の展開や移行プロジェクトでは、Microsoft Credentialsを単なる個人の学習目標ではなく、プロジェクト体制のリスク管理に使うと効果的です。

たとえば、Finance and Operationsから新しい環境へ移行するプロジェクトでは、開発者にFinance and Operations Apps Developer Associate相当の知識があるか、アーキテクトにFinance and Operations Apps Solution Architect ExpertやPower Platform Solution Architect Expert相当の設計力があるかを確認します。Business Central中心の案件なら、Business Central Functional Consultant AssociateやBusiness Central Developer Associateの有無が判断材料になります。

ただし、資格だけでスキルを断定するのは危険です。実務では、資格とあわせて次の証拠を確認してください。

確認項目見るべき具体例
設計経験要件定義、Fit & Gap、セキュリティ設計、環境戦略の経験
開発経験拡張開発、API連携、データ移行、テスト自動化、ALM運用
運用経験障害対応、リリース管理、更新管理、監査対応
AI活用経験Copilot Studio、Power Platform、Dataverse連携、エージェント展開
説明力業務部門に技術的制約を分かりやすく説明できるか

資格は「最低限の知識領域を確認する入口」として使い、最終的には実績、設計レビュー、サンプル成果物、PoCの結果と組み合わせて判断するのが現実的です。

よくある失敗と回避策

非推奨になったFundamentalsを新規要件に残す

最も起きやすい失敗は、社内のオンボーディング資料や採用要件にDynamics 365 Fundamentals CRM/ERPを残したままにすることです。取得済み資格はプロフィール上に残るため無駄にはなりませんが、新規取得を前提にした育成計画は見直すべきです。(Microsoft Learn)

回避策は、入門者向けの学習を「Fundamentals資格を取る」ではなく、「担当ロールに必要なLearnモジュールを受け、必要に応じてApp Maker、Functional Consultant、Developer系資格へ進む」という流れに変えることです。

資格をセキュリティロールの代わりに使う

資格保有者に広い管理権限を与えてしまうのも危険です。Dynamics 365の権限は、実際の業務責任、環境、データ感度、監査要件に応じて設計する必要があります。資格は判断材料にはなりますが、アクセス制御そのものではありません。

特にパートナーや外部ベンダーに作業を依頼する場合は、資格の確認に加えて、作業対象環境、作業期間、承認フロー、監査ログ、緊急時の権限解除手順まで決めておきましょう。

AI系資格を全員に求めてしまう

Agentic AI Business Solutions ArchitectのようなAI系資格が追加されているからといって、全員にAI資格を求める必要はありません。AIエージェントやCopilot Studioを本番展開する人、AIを含む業務アーキテクチャを設計する人、ガバナンスを設計する人に優先して割り当てるのが適切です。

一方、従来型の会計、販売、在庫、フィールドサービス運用が中心の担当者には、Functional Consultantや業務アプリ別の資格を優先した方が効果的です。

管理者・開発者が今すぐ確認すべきチェックリスト

チェック項目対応の目安
社内資料にDynamics 365 Fundamentals CRM/ERPが残っている新規取得推奨から外し、ロール別資格に置き換える
資格一覧を最後に更新した時期が分からないMicrosoft Learnのロール別ページと各資格ページを確認する
開発チームのスキル要件が製品名だけで書かれているDataverse、ALM、RPA、AI、統合開発など実装範囲で分ける
Solution Architectの要件にAI・Copilotが含まれていないCopilot Studioやエージェント展開予定がある場合は追加する
資格更新期限を個人任せにしている6か月の更新可能期間を踏まえ、チームで更新カレンダーを管理する
パートナー評価が資格名だけになっている資格、実績、設計レビュー、PoC結果を組み合わせて評価する

Dynamics 365の「Microsoft Credentials for Different Roles in Dynamics 365」は、製品設定の変更通知ではなく、ロール別スキル設計の公式ガイドです。2026年5月12日の更新では、非推奨になったFundamentalsから、ロール別・実務別のCredentialsへ移行する流れが明確になっています。まずは社内資料、研修計画、採用要件、パートナー要件に古い資格名が残っていないかを確認してください。そのうえで、管理者は権限設計と資格管理を分け、開発者は担当する実装範囲に合わせて資格やApplied Skillsを選ぶことが、現実的で失敗しにくい対応です。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

コメント

コメントする

目次