Microsoft Learnの「Use Model Context Protocol for finance and operations apps」は、Dynamics 365 Finance/Supply Chain Managementのデータや業務ロジックを、AIエージェントから利用するためのDynamics 365 ERP MCPサーバーを解説する公式文書です。
2026年6月15日の更新で特に重要なのは、対応バージョンが10.0.47だけでなく、10.0.46 PQU-2と10.0.45 PQU-7にも広がったことです。また、MCPサーバー機能が既定で有効であることや、レポート出力・添付ファイルに関する制限が具体化されました。
一般のDynamics 365利用者に一律の操作変更が発生する更新ではありません。一方、MCPを使ってエージェントを構築している開発者や管理者、旧静的MCPサーバーを利用している組織は、バージョン、機能設定、移行計画を早めに確認する必要があります。
Microsoft Learnで更新された主な変更点
公式GitHubでは2026年6月15日に文書変更が反映されています。一方、Microsoft Learnページ上の最終更新日は2026年6月12日と表示されています。以下では、6月15日の公式コミット差分を基準に変更点を整理します。(GitHub)
| 確認項目 | 更新前 | 更新後 | 実務への影響 |
|---|---|---|---|
| 対応バージョン | 10.0.47以上 | 10.0.47、10.0.46 PQU-2、10.0.45 PQU-7 | 対象となる旧バージョンが拡大 |
| MCPサーバー機能 | Feature Managementで有効化 | 既定で有効。ただし未有効なら手動で有効化 | 新規環境でも状態確認は必要 |
| 出力メニュー項目 | 非対応として既知の制限に記載 | 非対応の記述を削除 | 10.0.48以降ではプレビュー機能として別途利用可能 |
| 添付ファイル | 添付ファイル全般を非対応とする表現 | Document Viewer、DocuUpload、FileUploadコントロールが非対応と明確化 | 別のフローやAPIを使う添付方法は利用可能 |
| MCPクライアント登録 | 登録手順を説明 | 表現を整理 | 機能上の大きな変更はなし |
今回の更新は、Dynamics 365 ERP MCPサーバーそのものの新規提供開始というより、利用条件と制限事項を実態に合わせて明確化した文書更新と捉えるのが適切です。すべての機能が2026年6月15日に同時実装されたと断定することはできません。
対応バージョンが10.0.45と10.0.46にも拡大
更新前の文書では、動的なDynamics 365 ERP MCPサーバーを利用するには、finance and operations appsのバージョン10.0.47以上が必要とされていました。
更新後は、次のいずれかが利用条件として記載されています。
- バージョン10.0.47
- バージョン10.0.46 PQU-2
- バージョン10.0.45 PQU-7
ここで注意したいのは、10.0.45または10.0.46であれば無条件に対応するわけではないことです。10.0.46ではPQU-2、10.0.45ではPQU-7まで品質更新を適用している必要があります。(GitHub)
たとえば、環境が10.0.46でもPQU-1のままなら、記載された前提条件を満たしません。管理者はメジャーなアプリケーションバージョンだけでなく、PQUの適用状況まで確認してください。
基本的なMCP機能とファイル機能では要件が異なる
今回の更新で最も間違えやすいのが、MCPサーバー本体の利用条件と、レポートやファイルを扱う機能の利用条件の違いです。
| 利用目的 | 必要なバージョン・環境 | 追加設定 |
|---|---|---|
| 基本的なDynamics 365 ERP MCP | 10.0.47、10.0.46 PQU-2、10.0.45 PQU-7のいずれか | MCPサーバー機能、許可クライアント、セキュリティロール |
| 大量データをファイル形式で返す | 10.0.48以降 | Enable output menu items for MCPを有効化 |
| SSRSレポートを出力する | 10.0.48以降 | 同機能を有効化。プレビュー扱い |
| レコードへファイルを添付する | Copilot Studioを利用 | 専用フローをエージェントのツールとして追加 |
基本的なMCPサーバーは10.0.45 PQU-7から利用できますが、出力メニュー項目、SSRSレポート、埋め込みリソースによる大容量応答は10.0.48以降が前提です。
ファイル出力はプレビュー機能であり、Feature ManagementでEnable output menu items for MCPを有効にする必要があります。データ検索結果を埋め込みリソースとして返す場合、通常のインライン応答は約160KB、リソース応答は5MBまでです。(Microsoft Learn)
したがって、「10.0.45 PQU-7に更新したので、レポートのPDF出力も使える」と判断するのは誤りです。ファイルを扱うエージェントを計画している場合は、10.0.48以降への更新を別途検討してください。
添付ファイルは全面的に非対応ではない
以前の文書では、MCPサーバーが添付ファイルをサポートしないように読める表現になっていました。更新後は、非対応なのが次のコントロールであることが明示されています。
- Document Viewer
- DocuUpload
- FileUpload
つまり、エージェントが画面上のFileUploadコントロールを直接操作してアップロードすることはできませんが、別の仕組みを使ってDynamics 365のレコードへファイルを添付することは可能です。(GitHub)
Microsoft Copilot Studioでは、「Add an attachment to a record in ERP」フローをツールとして追加し、ファイル名とファイル内容を渡します。アップロード処理自体はMCPサーバーに直接組み込まれているのではなく、DataverseコネクタとカスタムAPIを利用する構成です。(Microsoft Learn)
主な制限は次のとおりです。
| 項目 | 制限 |
|---|---|
| 添付ファイルのアップロード | 最大15MB |
| MCPからのファイルダウンロード | 1ファイル当たり最大5MB |
| ダウンロード処理 | 60秒のタイムアウト |
| 重複ファイル | 自動では防止されない |
| 対応クライアント | 添付入力は実質的にCopilot Studio向け |
請求書や注文書のPDFを自動添付するような業務では、同名ファイルや同一内容の二重登録を防ぐ確認処理も設計してください。
影響を受けるユーザーと管理者
Dynamics 365の一般ユーザー
MCPを使用するエージェントを利用していない場合、今回の文書更新だけを理由に操作を変更する必要はありません。
エージェントを利用する場合は、本人またはエージェントに割り当てられたセキュリティロールの範囲内で、参照・登録・更新などが実行されます。MCPを有効にしただけで、すべてのデータへアクセスできるようになるわけではありません。(Microsoft Learn)
Dynamics 365管理者
次の確認が必要です。
- アプリケーションバージョンとPQU
- Tier 2以上またはUnified Developer Environmentであること
- MCPサーバー機能の有効状態
- Allowed MCP Clientsの登録状況
- エージェントに割り当てたセキュリティロール
- 旧静的MCPサーバーの利用有無
Cloud Hosted Environmentでは、動的なMCPサーバーはサポートされていません。(Microsoft Learn)
エージェント開発者
データの作成・参照・更新・削除には、原則としてData toolsを優先します。Form toolsより少ないツール呼び出しで処理できるため、応答時間と利用量を抑えやすくなります。
ボタン操作や画面上の業務ロジックを実行するときはForm tools、独自のX++ロジックを呼び出すときはAction toolsを選びます。(Microsoft Learn)
管理者が実施すべき確認手順
現在利用しているMCPサーバーを特定する
最初に、旧静的MCPサーバーと新しい動的MCPサーバーのどちらを利用しているか確認します。
旧静的MCPサーバーは、FinanceやSupply Chain Management向けの13個の固定ツールを提供します。新しい動的MCPサーバーは、Data tools、Form tools、Action toolsを組み合わせ、環境のデータエンティティや画面、独自ロジックを動的に利用します。(Microsoft Learn)
Copilot Studioで似た名称のツールが表示される場合は、名前だけで判断せず、ツール数と説明を確認してください。
バージョンと環境種別を確認する
次の条件を確認します。
- 10.0.47
- 10.0.46 PQU-2
- 10.0.45 PQU-7
- Tier 2以上の環境、またはUnified Developer Environment
- Cloud Hosted Environmentではないこと
レポート出力や大容量データ応答が必要なら、10.0.48以降であることも確認します。
MCPサーバー機能の状態を確認する
Feature Managementで、Dynamics 365 ERP Model Context Protocol serverを検索します。
現在の文書では既定で有効とされていますが、更新履歴や環境構成によっては状態確認が必要です。「既定で有効」と「すべての既存環境で必ず有効」は同じ意味ではありません。
許可するMCPクライアントを確認する
既定では、次のクライアントが許可対象として記載されています。
| クライアント | Client ID |
|---|---|
| Microsoft Copilot Studio | 7ab7862c-4c57-491e-8a45-d52a7e023983 |
| Visual Studio Code | aebc6443-996d-45c2-90f0-388ff96faa56 |
Microsoft Foundryや独自クライアントなど、これ以外のプラットフォームから接続する場合は、Microsoft Entra IDへアプリケーションを登録します。その後、Allowed MCP clients画面へClient IDを追加し、Allowedをtrueに設定します。(Microsoft Learn)
最小権限でセキュリティロールを設定する
MCPサーバーから見えるメニュー、データエンティティ、フィールド、アクションは、認証されたユーザーまたはエージェントのセキュリティロールによって制限されます。
ライセンス上のエージェント識別にはSystem agentロールを使用できますが、このロール自体には業務権限を追加しないことが公式に推奨されています。実際の業務に必要な権限は、別のセキュリティロールで付与します。(Microsoft Learn)
たとえば、仕入先残高の参照だけを行うエージェントに、発注登録や仕入先マスター変更の権限まで与えるべきではありません。
Copilot Studioへ動的MCPサーバーを追加する
Copilot Studioでは、次の順序で追加します。
- 対象エージェントの「Tools」を開く
- 「Add a tool」を選択する
- 「Model Context Protocol」で絞り込む
- 動的なDynamics 365 ERP MCPサーバーを選択する
- 接続を作成する
- エージェントへ追加する
追加後は、参照だけでなく、登録・更新・削除、帳票出力など、実際に利用する操作ごとにテストしてください。(Microsoft Learn)
旧静的MCPサーバーは2026年中に移行が必要
Dataverseコネクタを基盤とする旧静的Dynamics 365 ERP MCPサーバーは、2026年中に廃止される予定です。公式文書では、具体的な廃止日までは示されていません。(Microsoft Learn)
そのため、「2026年12月31日まで必ず使える」とは判断せず、次の手順で移行を進めるのが安全です。
- 旧13ツールを利用しているエージェントを一覧化する
- 各エージェントが参照・更新しているデータと業務処理を洗い出す
- 検証環境へ動的MCPサーバーを追加する
- CRUD処理をData toolsへ置き換える
- 画面操作や業務ボタンをForm toolsで再現する
- 独自処理はAction toolsまたは既存フローを検討する
- 権限、エラー処理、ツール呼び出し回数を確認する
- 本番切り替え後に旧ツールを削除する
Microsoft Learnには自動変換の手順は記載されていません。単純な接続先変更ではなく、エージェントの指示、ツール選択、権限を含めた再テストが必要と考えてください。
料金体系は今回の更新では変更されていない
2026年6月15日の文書差分では、料金体系の実質的な変更は確認できません。現在の公式文書では、利用するエージェントクライアントによって課金方法が異なります。
| 利用方法 | MCP関連の課金 |
|---|---|
| Microsoft Copilot Studio | Agent Actionとして課金。オーケストレーションとMCP実行を含む |
| Copilot Studio以外 | MCPサーバーへの10ツール呼び出しごとに1 Copilot Credit |
| Copilot Studio以外のLLM費用 | クライアント側のトークン利用料が別途必要 |
Copilot Studioの公式レート表では、2026年6月時点でAgent Actionは1回当たり5 Copilot Creditsと記載されています。Copilot Studio以外では、MCPサーバーの実行に1回当たり0.1 Copilot Creditが加算され、LLMのトークン料金は別に発生します。(Microsoft Learn)
1回のユーザー質問で複数のツールが呼び出されることがあるため、質問回数ではなく、実際のツール呼び出し回数を基準に見積もることが重要です。
Dynamics 365 Finance PremiumまたはSupply Chain Management Premiumの対象ユーザーは、Copilot Studio以外のクライアントにおけるMCP実行課金が免除される場合があります。また、認証されたMicrosoft 365 Copilotユーザー向けの社内利用では、条件を満たすと追加のCopilot Creditが発生しないケースがあります。契約条件は変更される可能性があるため、導入前に最新のライセンスガイドを確認してください。(Microsoft Learn)
導入時に注意したい既知の制限
日本語だけで完結するとは限らない
MCPサーバーが正式にサポートする言語は米国英語です。利用者のロケールに応じて画面ラベルや値が日本語になる場合でも、MCPのメタデータや操作ガイダンスは英語で返されます。
日付、時刻、数値もユーザーロケールではなくISO形式で処理されます。日本語の年月日表記を前提にした指示は、テストで誤解がないか確認してください。(Microsoft Learn)
管理者用画面はエージェントから操作できない
Feature Management、ユーザー管理、セキュリティ構成、Microsoft Entra IDアプリケーション管理など、一部のシステム管理画面はMCPサーバーから利用できません。
そのため、「エージェント自身に権限を追加させる」「エージェントがMCP機能を有効化する」といった構成にはできません。管理者が事前に設定する必要があります。(Microsoft Learn)
高度な日付フィルターには制限がある
グリッドの高度なフィルターでは、「以前」「以後」「範囲内」などの演算子がサポートされません。日付条件が重要な処理では、Data toolsのクエリや独自APIの利用を検討します。(Microsoft Learn)
メンテナンス中の呼び出しは失敗する
環境のサービス更新や停止時間中は、MCPサーバーも利用できません。自律型エージェントでは、再試行、タイムアウト、処理済み判定を実装し、同じ登録処理が二重実行されないようにしてください。(Microsoft Learn)
今すぐ確認すべき項目
今回のMicrosoft Learn更新を受け、管理者は次の順序で確認すると効率的です。
- 現在のMCPサーバーが静的か動的か
- Dynamics 365のバージョンとPQU
- Tier 2以上またはUnified Developer Environmentか
- MCPサーバー機能が有効か
- 利用クライアントがAllowed MCP Clientsに登録されているか
- エージェントの権限が最小限か
- ファイル機能を使う場合は10.0.48以降か
- 旧静的MCPサーバーを2026年中に移行できるか
- ツール呼び出し回数を基準に費用を見積もっているか
特に、MCPサーバー機能が既定で有効であることと、エージェントが自動的に業務データへアクセスできることは別問題です。クライアントの許可、接続、セキュリティロールの3点を確認してから、検証環境で実際の業務シナリオをテストしてください。

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