Microsoft Entra Connect Sync の Windows Server 2025 対応とは?ハイブリッド ID 更改計画の実務ポイント

Microsoft Entra Connect Sync の Windows Server 2025 対応は、ハイブリッド ID 基盤を更改する管理者にとって「待っていた移行判断の材料」です。2026年4月16日時点の更新として、Microsoft は Microsoft Entra Connect Sync が Windows Server 2025 を正式にサポートしたことを案内しています。つまり、これまで Windows Server 2025 への移行を保留していた同期サーバーについて、サポート対象の構成としてアップグレード計画に組み込めるようになりました。(TECHCOMMUNITY.MICROSOFT.COM)

ただし、これは「今すぐ本番サーバーをそのまま上書きアップグレードしてよい」という意味ではありません。Microsoft Entra Connect Sync はオンプレミス Active Directory と Microsoft Entra ID をつなぐ重要な Tier 0 相当のコンポーネントです。OS 更改、Entra Connect Sync のバージョン更新、Cloud Sync への移行可否、既知の Windows Server 2025 更新プログラム、切り戻し手順まで含めて計画する必要があります。

目次

Microsoft Entra Connect Sync の Windows Server 2025 対応で何が変わるのか

今回のポイントは、Microsoft Entra Connect Sync を Windows Server 2025 上にインストールし、実行する構成が正式サポート対象になったことです。Microsoft のリリース情報では「Microsoft Entra Connect Sync now officially supports Windows Server 2025」と明記されており、Windows Server 2025 のセキュリティ、パフォーマンス、管理性の改善を利用しながら、サポートされたハイブリッド ID 同期環境を維持できると説明されています。(Microsoft Learn)

管理者目線で見ると、変化は主に次の3つです。

変更点管理者への意味
Windows Server 2025 上の Entra Connect Sync が正式サポート対象にOS 更改計画で Windows Server 2025 を選択しやすくなる
同期サーバーの延命ではなく刷新を検討しやすくなるWindows Server 2016/2019/2022 からの更新判断がしやすい
Cloud Sync との比較検討がより重要になる既存構成を維持するのか、クラウド中心の同期へ寄せるのかを見直す機会になる

特に、Windows Server 管理者とハイブリッド ID 管理者が別チームの場合、この発表は連携のきっかけになります。OS チームだけで「サーバー更改」を進めると、同期構成、カスタム同期ルール、パスワードハッシュ同期、パスワードライトバック、ステージングサーバーの有無といった ID 側の要件が抜け落ちやすいためです。

今回の対応は「Connect Sync」の話であり「Cloud Sync」全般ではない

混同しやすい点として、今回の Windows Server 2025 対応は Microsoft Entra Connect Sync に関するものです。Microsoft Entra Cloud Sync のエージェントについては、少なくとも Microsoft Learn の前提条件ページでは Windows Server 2025 はサポート対象外とされ、将来リリースでの対応予定と説明されています。(Microsoft Learn)

そのため、次のように整理すると判断しやすくなります。

構成Windows Server 2025 対応の考え方
Microsoft Entra Connect Sync2026年4月時点で正式サポート対象として案内済み
Microsoft Entra Cloud Sync公式前提条件では Windows Server 2025 は未サポートとされているため、最新ドキュメント確認が必要
Connect Sync から Cloud Sync への移行OS 更改とは別プロジェクトとして要件比較が必要
Connect Sync と Cloud Sync の併用同期対象や属性競合を分離して設計する必要がある

「Windows Server 2025 がサポートされたから、この機会に Cloud Sync へも同じ OS で統一しよう」と考えるのは危険です。Connect Sync と Cloud Sync は名前が似ていますが、サポート OS、得意なシナリオ、制限事項が異なります。

Windows Server 2025 へ移行すべき環境の判断基準

すべての環境が直ちに Windows Server 2025 へ移行すべきとは限りません。判断の軸は「現在の OS が古いか」だけでなく、「同期サーバーの構成をどこまで変更するか」です。

移行を前向きに検討したい環境

次の条件に当てはまる場合は、Windows Server 2025 対応を機に更改計画を具体化する価値があります。

状況推奨される検討
Windows Server 2016 で Entra Connect Sync を運用しているOS サポート、セキュリティベースライン、運用負荷を踏まえて新サーバー移行を検討
Entra Connect Sync のバージョンが古いOS 更改と同時に最新版への更新を計画
ステージングサーバーがない本番切替前にステージング構成を作る好機
同期対象が多い、カスタムルールが多いインプレースよりスウィング移行を優先
将来的に Cloud Sync へ移りたいまず現行 Connect Sync の棚卸しを行い、Cloud Sync で代替できる範囲を確認

Microsoft は Microsoft Entra Connect Sync のサービス継続に関して、少なくともバージョン 2.5.79.0 以上でない場合、2026年9月30日に同期サービスが停止すると案内しています。OS 更改だけを済ませても、Entra Connect Sync のバージョン要件を満たしていなければリスクは残ります。(Microsoft Learn)

すぐに移行しない方がよい環境

一方で、次のような環境では、まず調査と検証を優先すべきです。

状況理由
現在の同期状態にエラーが残っている移行後の問題切り分けが難しくなる
カスタム同期ルールの設計書がないステージング環境で同等構成を再現できない可能性がある
Entra Connect サーバーに他の役割を同居させているセキュリティとサポートの観点で再設計が必要
Cloud Sync へ移行する予定があるConnect Sync の OS 更改と Cloud Sync 移行を同時に行うとリスクが高い
Windows Server 2025 の社内標準イメージが未確定セキュリティ製品、監視、バックアップ、プロキシ設定の検証が不足しやすい

ハイブリッド ID の更改では、「OS を新しくすること」よりも「同期の一貫性を壊さないこと」が優先です。

推奨はスウィング移行。インプレースアップグレードは最後の選択肢

Microsoft Entra Connect Sync サーバーの OS をアップグレードする場合、Microsoft は希望する OS の新しいサーバーを用意し、スウィング移行を行う方法を推奨しています。ドキュメント上は Windows Server 2016/2019/2022 から Windows Server 2025 へのインプレース OS アップグレードもサポートされていますが、推奨は新サーバーを使った切替です。(Microsoft Learn)

スウィング移行が向いている理由

スウィング移行では、新しい Windows Server 2025 サーバーをステージングサーバーとして構築し、同期構成を検証してから本番側へ切り替えます。

この方法の利点は明確です。

観点スウィング移行の利点
切り戻し既存サーバーをすぐに破壊しないため、検証中の安全性が高い
検証フルインポート、フル同期、属性差分を事前確認できる
影響範囲本番同期を停止する時間を最小化しやすい
構成整理古い設定、不要な同期ルール、退役済みフォレストを見直せる
運用標準化監視、バックアップ、セキュリティ設定を新基準で作り直せる

特に、10万オブジェクト以上を同期している環境、複数フォレスト構成、Exchange ハイブリッド、カスタム属性同期、グループ書き戻し、パスワードライトバックを使っている環境では、スウィング移行を基本方針にするべきです。

インプレースアップグレードが向くケース

インプレースアップグレードが現実的なのは、比較的小規模で構成が単純な環境です。たとえば、単一フォレスト、同期対象が少ない、カスタム同期ルールがない、ステージング用サーバーを用意できない、といった場合です。

ただし、インプレースでは失敗時の切り戻しが難しくなります。スナップショットだけに頼るのではなく、Entra Connect の構成エクスポート、同期ルールの控え、サービスアカウント、証明書、プロキシ設定、ファイアウォール許可、監視設定まで確認してから実施する必要があります。

Windows Server 2025 で確認すべき前提条件

Microsoft Entra Connect Sync を Windows Server 2025 上で動かす場合、OS がサポートされたことだけで安心してはいけません。Microsoft Learn では、Entra Connect サーバーはドメイン参加済みであること、Windows Server 2025 または Windows Server 2022 が推奨されること、GUI 付きサーバーが必要で Server Core はサポートされないことなどが示されています。(Microsoft Learn)

最低限、次の項目を移行前チェックリストに入れてください。

確認項目見るべきポイント
OS エディションWindows Server Standard 以上か
インストール形態Server Core ではなく GUI 付きか
ドメイン参加対象 AD ドメインに正しく参加しているか
TLSTLS 1.2 が有効か
.NET必要な .NET Framework 要件を満たすか
Windows UpdateWindows Server 2025 の既知問題に対応する更新プログラムが適用済みか
ネットワークドメインコントローラー、グローバルカタログ、Microsoft Entra ID への通信が可能か
プロキシ同期サービスの実行コンテキストで外部接続できるか
権限Hybrid Identity Administrator など必要な管理ロールを準備しているか
セキュリティTier 0 相当として管理アクセスを制限しているか

重要なのは、Windows Server 2025 には Entra Connect Sync で同期問題が発生する可能性がある既知の問題があり、Microsoft は KB5070773 以降の更新プログラム適用と再起動を案内している点です。新規構築でも OS イメージが古い場合は、この更新が含まれていない可能性があります。(Microsoft Learn)

移行前に棚卸しすべき Entra Connect Sync の設定

Windows Server 2025 への移行は、同期構成の棚卸しを行う好機です。次の情報が整理されていない場合、障害時の復旧や移行後の差分調査に時間がかかります。

必ず確認する項目

項目確認内容
同期対象 OU除外 OU、追加予定 OU、退役済み OU がないか
同期対象フォレスト使われていないフォレスト接続が残っていないか
サインイン方式Password Hash Sync、Pass-through Authentication、AD FS のどれか
オプション機能パスワードライトバック、グループライトバック、デバイスライトバックなど
カスタム同期ルール既定ルールを直接変更していないか、エクスポート可能か
属性マッピング業務アプリや人事システムが依存している属性がないか
サービスアカウントパスワード期限、権限、委任範囲に問題がないか
SQL 構成LocalDB か外部 SQL Server か
監視Entra Connect Health、イベントログ監視、ジョブ失敗通知の有無
バックアップ構成エクスポート、サーバーバックアップ、復旧手順の有無

特に危険なのは、既定の同期ルールを直接編集している環境です。アップグレード時に既定ルールが戻る、または期待しないフル同期が走る可能性があります。カスタムルールは独自ルールとして作成し、優先順位と適用条件を明確にしておくべきです。

実務で使える移行手順の流れ

Windows Server 2025 対応を前提に、Entra Connect Sync サーバーを安全に刷新するなら、次の順序で進めると失敗しにくくなります。

フェーズ作業成果物
現状調査現行バージョン、OS、同期対象、カスタムルール、エラーを確認現状構成メモ
方針決定Connect Sync 継続か、Cloud Sync 検討か、併用かを判断移行方針
新サーバー準備Windows Server 2025、更新プログラム、ドメイン参加、TLS、プロキシ設定ステージング候補サーバー
Entra Connect Sync 導入Microsoft Entra 管理センターから MSI を取得して導入新同期サーバー
構成移行既存設定、カスタムルール、OU フィルターを反映同等構成
ステージング検証フルインポート、フル同期、エクスポート差分確認差分確認結果
切替旧サーバーをステージング化し、新サーバーをアクティブ化本番切替完了
監視同期サイクル、エラー、ユーザー影響を確認移行後確認記録
旧環境整理旧サーバーのアンインストールまたは削除二重同期リスクの排除

Microsoft は Entra Connect Sync の MSI インストールファイルを Microsoft Entra 管理センターで提供すると案内しています。古いダウンロードリンクや社内共有フォルダーに残った MSI を使うのではなく、最新の入手元とバージョン履歴を確認してから作業してください。(Microsoft Learn)

Connect Sync を続けるべきか、Cloud Sync を検討すべきか

今回の発表を「Connect Sync をこれからも使い続ける理由」と見るだけでなく、「Cloud Sync に寄せられる範囲を見直すタイミング」と捉えることも重要です。Microsoft のハイブリッド同期シナリオ比較では、Cloud Sync と Connect Sync で対応範囲が異なることが示されています。たとえば、Cloud Sync は高可用性や切断フォレストのシナリオに強みがある一方、Microsoft Entra hybrid join、リソースフォレスト、25万超の大規模ドメイン、属性値ベースのフィルターなどは Connect Sync 側の対応領域として整理されています。(Microsoft Learn)

Connect Sync を継続しやすい環境

次の条件に当てはまる場合、Windows Server 2025 上の Connect Sync 継続が現実的です。

条件理由
Microsoft Entra hybrid join を使っているConnect Sync が必要な代表的シナリオ
Exchange ハイブリッドを運用しているConnect Sync と Cloud Sync の両方で検討可能だが、既存構成維持の判断が多い
リソースフォレスト構成があるConnect Sync が適するケースがある
25万を超える大規模ドメインを同期しているConnect Sync の対応範囲として整理されている
属性ベースの複雑なフィルターがあるCloud Sync 移行前に詳細な互換性確認が必要

Cloud Sync を検討しやすい環境

次の条件に当てはまる場合は、将来的な Cloud Sync 移行も候補になります。

条件理由
新規のハイブリッド ID 構築クラウド管理型の設計を最初から選びやすい
高可用性を重視する複数エージェント構成を取りやすい
切断フォレストや M&A シナリオがあるCloud Sync が対応しやすいケースがある
同期対象を段階的に分離できるConnect Sync と Cloud Sync の並行利用を検討できる
複雑なカスタム同期ルールが少ない移行検証の負荷を抑えやすい

ただし、Cloud Sync エージェントの Windows Server 2025 サポート状況は Connect Sync と同一ではありません。Cloud Sync を選ぶ場合は、OS 標準化よりもサポートされるエージェント要件を優先してください。

失敗しやすいポイントと回避策

Windows Server 2025 対応そのものは前向きなニュースですが、移行現場では次のような失敗が起きがちです。

失敗例影響回避策
OS チームだけでサーバーを更改する同期ルールや権限が再現できないID 管理者を計画段階から参加させる
古い Entra Connect Sync のまま OS だけ更新するサポート期限や不具合リスクが残るOS と製品バージョンをセットで更新する
旧サーバーを停止せず残す二重同期や古い属性の上書きが起きる切替後に旧サーバーを完全に退役させる
ステージング検証を省略する本番反映後に大量の属性変更が発生するエクスポート差分を確認してから切り替える
Windows Server 2025 の更新プログラム確認を忘れる既知の同期問題に遭遇する可能性KB5070773 以降の適用と再起動を確認する
Cloud Sync も同時に移行する問題発生時の原因切り分けが困難OS 更改と同期方式変更を分けて実施する

特に「旧サーバーを念のため残しておく」はよくある落とし穴です。Microsoft のアップグレード手順でも、古い Entra Connect サーバーがネットワーク上に残ると同期問題を引き起こす可能性があるため、完全にアンインストールするか、仮想マシンであれば削除することが重要だと説明されています。(Microsoft Learn)

グローバル環境での注意点

多国籍企業や海外拠点を含む環境では、Windows Server 2025 対応の判断に追加の観点が必要です。

まず、リージョンごとの変更凍結期間を確認してください。四半期決算、給与処理、年度末、人事異動の時期に同期基盤を変更すると、アカウント作成、ライセンス付与、メール利用、Teams 利用に影響する可能性があります。

次に、フォレストやドメインごとの所有者を明確にします。ある国の AD 管理者が OU を変更しただけで、別リージョンの Microsoft Entra ID 属性に影響することがあります。移行前には、同期対象 OU、除外条件、属性依存関係を国・拠点単位で確認しておくと安全です。

また、プロキシやファイアウォールのルールは拠点ごとに異なることがあります。新サーバーから Microsoft Entra ID への通信、ドメインコントローラーへの LDAP/GC 通信、CRL 取得、監視エージェント通信が許可されているかを、ネットワークチームと事前に確認してください。

管理者が次に取るべき行動

今回の Windows Server 2025 対応を受けて、まず行うべきことは本番アップグレードではなく、現状の可視化です。

次の順番で進めると、無理のない計画になります。

優先度実施内容
現在の Microsoft Entra Connect Sync バージョンを確認する
2026年9月30日の必須アップグレード要件を満たすか確認する
Windows Server 2025 へ移行する場合、スウィング移行のサーバーを確保する
カスタム同期ルール、OU フィルター、オプション機能を棚卸しする
Connect Sync 継続か Cloud Sync 検討かをシナリオ別に整理する
Windows Server 2025 の更新プログラム、TLS、.NET、プロキシ設定を確認する
OS 標準化、監視、バックアップ、ドキュメント更新を移行後タスクに入れる

Windows Server 2025 対応は、ハイブリッド ID 基盤を安全に近代化するための選択肢を増やす更新です。最も避けるべきなのは、OS 更改だけを急ぎ、同期基盤の設計や運用リスクを後回しにすることです。

まずは現行バージョン、同期エラー、カスタム構成、ステージングサーバーの有無を確認してください。そのうえで、Connect Sync を Windows Server 2025 上で継続するのか、Cloud Sync への移行を段階的に検討するのかを決めると、サポート切れ対応ではなく、将来の運用負荷を下げるアップグレード計画にできます。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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