Microsoft Entra のサインインページに会社ブランドを追加すると、ユーザーは「正しい組織のサインイン画面である」と判断しやすくなります。結論から言うと、管理者が確認すべきポイントは、ライセンスとロール、カスタム CSS の利用可否、画像サイズ、B2B・SaaS・多言語環境での見え方、ヘルプデスクや利用規約リンクの扱いです。
2026年5月8日に更新された Microsoft 365 管理者向け公式情報では、Microsoft 365 に含まれる Microsoft Entra ID サブスクリプションを使って、ユーザーに表示されるサインインページをカスタマイズできることが案内されています。あわせて、Microsoft Entra の公式手順では、背景画像、ロゴ、ファビコン、ヘッダー、フッター、サインインページのテキストなどを設定できることが示されています。(Microsoft Learn)
この記事では、Microsoft Entra の会社ブランド設定について、変更点として押さえるべき内容、影響範囲、管理者・開発者が展開前に確認すべき設定を実務目線で整理します。
Microsoft Entra の会社ブランド設定でできること
Microsoft Entra の会社ブランド設定は、組織のサインイン体験にロゴや背景、説明文などを追加し、Microsoft 標準の見た目から自社向けのサインインページへ調整する機能です。対象は、Microsoft Entra ID を使って認証する企業イントラネット、Web アプリケーション、Microsoft 365 などのサインイン体験です。(Microsoft Learn)
設定できる主な要素は次のとおりです。
| 設定項目 | 使いどころ | 実務上の判断基準 |
|---|---|---|
| 背景画像 | サインイン画面全体の印象を統一する | 社屋写真より、視認性の高い抽象背景やブランドカラーが無難 |
| ページ背景色 | 画像が読み込めない場合の代替表示 | ブランドカラーを指定しつつ、文字や入力欄の見やすさを優先 |
| ファビコン | ブラウザータブで組織を識別しやすくする | 小さく表示しても判別できる単純なロゴが向く |
| ヘッダーロゴ | 画面上部に組織ロゴを表示する | 横長ロゴを用意し、余白を詰めすぎない |
| バナーロゴ | サインインボックス上部に表示する | 最も目に入りやすいため、公式ロゴを使う |
| フッター | プライバシー、Cookie、利用条件などを表示する | 法務・セキュリティ部門と文言を確認する |
| サインインページのテキスト | ヘルプデスク案内、注意喚起、利用案内を表示する | 機密情報や内部向けすぎる情報は載せない |
| セルフサービス パスワード リセット | パスワードリセット導線を案内する | SSPR を運用している場合は、問い合わせ削減に有効 |
会社ブランド設定は「見た目の変更」だけではありません。ユーザーがフィッシングサイトと正規のサインイン画面を見分けるための補助にもなります。ただし、ブランド表示だけでセキュリティ対策が完結するわけではありません。条件付きアクセス、多要素認証、ユーザー教育と組み合わせて運用することが重要です。
2026年5月8日更新情報で押さえるべきポイント
Microsoft 365 管理者向けの公式ページは、2026年5月8日に更新され、Microsoft Entra ID を使って Microsoft 365 のサインインページに会社ブランドを追加できることを案内しています。カスタマイズできる領域として、大きなイラストまたは背景色、バナーロゴ、テキスト領域が示されています。(Microsoft Learn)
一方で、Microsoft Entra 側の詳細手順では、より広い範囲の設定項目が整理されています。具体的には、背景画像、背景色、ファビコン、レイアウト、ヘッダー、フッター、カスタム CSS などを使って、テナント全体の既定サインイン体験をカスタマイズできます。(Microsoft Learn)
管理者が特に注意すべき変更点は、カスタム CSS の扱いです。公式情報では、2026年1月5日以降に作成されたテナントでは、Microsoft Entra ID の会社ブランド設定でカスタム CSS を利用できないと明記されています。2026年1月5日より前に作成されたテナントは、引き続きカスタム CSS を使用できます。(Microsoft Learn)
つまり、既存テナントで CSS を使って細かくデザインを調整している組織と、新規テナントでこれから導入する組織では、設計方針が変わります。
| 確認項目 | 既存テナント | 2026年1月5日以降の新規テナント |
|---|---|---|
| カスタム CSS | 継続利用できる可能性がある | 利用できない |
| デザイン調整 | CSS 依存部分の棚卸しが必要 | 標準項目内で設計する |
| 移行・統合時の注意 | 旧テナントの見た目をそのまま再現できない可能性 | ロゴ、背景、ヘッダー、フッター中心に再設計 |
| 開発者の関与 | CSS や表示確認で関与する場合がある | アプリ側の認証導線や文言確認が中心 |
既存環境を新テナントへ移行する場合、「今のサインイン画面と同じ見た目を再現できる」と決めつけないことが大切です。特にグループ会社統合、テナント統合、Microsoft 365 新規導入のプロジェクトでは、会社ブランド設定をデザイン移行項目として扱いましょう。
影響範囲:誰のサインイン画面に表示されるのか
Microsoft Entra の会社ブランド設定は、テナントへのサインインに適用される既定の見た目をカスタマイズする機能です。ただし、すべてのユーザー・すべての画面で同じタイミングに表示されるわけではありません。
特に確認すべき影響範囲は次の3つです。
Microsoft 365 や SaaS では表示タイミングが遅れる場合がある
Microsoft、SaaS、マルチテナントアプリケーションでは、カスタマイズされたサインインページが最初から表示されず、ユーザーがメールアドレスまたは電話番号を入力して次へ進んだ後に表示される場合があります。公式手順では、My Apps や Outlook.com などの例が挙げられています。(Microsoft Learn)
これはユーザー教育で重要です。たとえば、社内マニュアルに「最初の画面から必ず自社ロゴが表示されます」と書くと、実際の挙動とずれる可能性があります。
実務では、次のように案内すると誤解を減らせます。
Microsoft 365 や一部のクラウドサービスでは、メールアドレスを入力した後に会社ロゴや案内文が表示される場合があります。サインイン画面の見た目だけで判断せず、URL、組織アカウント、多要素認証の通知内容も確認してください。
初期画面からブランド表示したい場合は Home Realm Discovery を確認する
カスタム URL、whr パラメーター、ドメイン変数を使うと、メールアドレス入力後だけでなく、初期サインイン画面で会社ブランドを表示できる場合があります。公式手順では、https://myapps.microsoft.com/?whr=contoso.com や https://passwordreset.microsoftonline.com/?whr=contoso.com のような例が示されています。(Microsoft Learn)
開発者やアプリ管理者は、社内ポータル、業務アプリ、SSO 導線に使っているリンクを確認しましょう。アプリのボタンやブックマークが汎用サインイン URL のままだと、ブランド表示のタイミングが想定と異なることがあります。
B2B ゲストではホームテナントのブランドが表示される
B2B コラボレーションのユーザーがテナント間サインインを行う場合、ゲストが所属するホームテナントのブランドが表示されることがあります。Microsoft Entra の公式手順でも、B2B コラボレーションのエンドユーザーではホームテナントのブランドが表示されると説明されています。(Microsoft Learn)
社外協力会社やグループ会社のユーザーから「ロゴが違う」「自社の画面ではないように見える」と問い合わせが来ることがあります。この場合、設定ミスではなく、B2B のサインイン挙動によるものかを切り分けてください。
管理者が最初に確認すべき前提条件
会社ブランド設定を始める前に、ライセンス、ロール、対象テナントを確認します。公式手順では、カスタムブランドを追加するには Microsoft Entra ID P1 または P2、Microsoft 365 Business Standard、SharePoint Plan 1 のいずれかが必要とされています。また、会社ブランドをカスタマイズするための最小ロールは「組織ブランド管理者」です。(Microsoft Learn)
| 確認項目 | 確認内容 | 不備がある場合の影響 |
|---|---|---|
| ライセンス | 対象テナントに必要なライセンスがあるか | 設定画面に進めない、または機能を利用できない |
| 管理ロール | 組織ブランド管理者以上の権限があるか | 設定変更できない |
| テナント作成日 | 2026年1月5日前後の作成時期 | カスタム CSS の利用可否が変わる |
| 対象ユーザー | 社内ユーザー、ゲスト、B2B、外部 ID の区別 | 表示されるブランドが想定と異なる |
| 対象アプリ | Microsoft 365、SaaS、独自アプリの導線 | 表示タイミングや URL 設計に影響する |
権限は強すぎるロールを付与しないことも重要です。会社ブランドの変更だけが目的なら、グローバル管理者ではなく、必要最小限のロールで運用するのが安全です。
設定手順:Microsoft Entra 管理センターで会社ブランドを追加する
Microsoft Entra の会社ブランド設定は、Microsoft Entra 管理センターから行います。公式手順では、組織ブランド管理者としてサインインし、Entra ID > Custom Branding に移動すると説明されています。既にカスタマイズ済みの場合は編集ボタンが利用できます。(Microsoft Learn)
基本的な流れは次のとおりです。
| 手順 | 作業内容 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 1 | Microsoft Entra 管理センターにサインイン | 組織ブランド管理者ロールで操作する |
| 2 | Entra ID > Custom Branding を開く | 既存設定がある場合は編集内容を事前に記録する |
| 3 | 基本事項を設定 | ファビコン、背景画像、背景色を設定する |
| 4 | レイアウトを選択 | 全画面背景か部分背景かを選ぶ |
| 5 | ヘッダー・フッターを設定 | ロゴ、プライバシー、利用条件の文言を確認する |
| 6 | サインインフォームを設定 | バナーロゴ、ヒントテキスト、案内文、SSPR を確認する |
| 7 | 確認して作成 | 本番反映前に複数ブラウザーで表示を確認する |
既定のサインイン体験を作成した後は編集できますが、公式手順では、作成後の既定のサインイン体験は削除できず、すべてのカスタム設定を削除することはできると説明されています。また、変更がサインイン体験に表示されるまでの時間は、テナントの地理的な場所によって異なります。(Microsoft Learn)
そのため、本番展開では「設定した直後に全ユーザーへ即時反映される」と考えず、反映待ちと確認時間を含めた作業計画にしましょう。
画像サイズとファイル要件を事前にそろえる
ブランド設定で失敗しやすいのが、画像サイズとファイルサイズです。Microsoft Entra の公式手順では、推奨画像形式は PNG、JPG も利用可能とされています。各画像にはサイズと最大ファイルサイズの要件があります。(Microsoft Learn)
| 画像 | サイズ | 最大ファイルサイズ | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ファビコン | 32 × 32 px | 5 KB | 細かい文字入りロゴは読めない |
| 背景画像 | 1920 × 1080 px | 300 KB | サインインボックスに一部隠れる可能性がある |
| ヘッダーロゴ | 245 × 36 px | 10 KB | 横長ロゴ向き |
| バナーロゴ | 245 × 36 px | 50 KB | サインインボックス上部に表示 |
| 正方形ロゴ・淡色テーマ | 240 × 240 px | 50 KB | Microsoft Entra Web インターフェイスや Windows でも使われる |
| 正方形ロゴ・濃色テーマ | 240 × 240 px | 50 KB | 暗い背景でロゴが見えにくい場合に用意する |
背景画像は、デザイン性よりも可読性を優先してください。人物写真、細かい文字、重要な情報を画面端に置いた画像は、ウィンドウサイズやサインインボックスの位置によって見切れることがあります。公式手順でも、背景画像はウィンドウサイズに応じて拡大縮小・トリミングされ、サインインプロンプトによって一部ブロックされる可能性があると説明されています。(Microsoft Learn)
実務では、次のような画像が扱いやすいです。
| おすすめ | 避けたい |
|---|---|
| 余白の多いブランドカラー背景 | 重要な文字が入った背景画像 |
| 薄いグラデーションや抽象パターン | コントラストが強すぎる写真 |
| 中央に重要要素を置かない構図 | ロゴを背景にも大きく入れる構図 |
| ライト・ダーク両方で視認性を確認したロゴ | 白背景専用の白いロゴ |
カスタム CSS は「使えるか」より「依存しすぎないか」が重要
既存テナントではカスタム CSS を利用している組織もあります。しかし、今後の運用では CSS への依存度を下げる設計が安全です。
理由は2つあります。
1つ目は、2026年1月5日以降に作成されたテナントではカスタム CSS を利用できないことです。新規テナント、テナント統合、検証環境の作り直しでは、旧テナントと同じ CSS 前提のデザインを再現できない可能性があります。(Microsoft Learn)
2つ目は、サインイン画面が Microsoft 側の認証体験として更新される可能性があることです。CSS で細かく位置や見た目を調整していると、将来の表示変更で崩れるリスクがあります。
移行や再設計では、次の優先順位で考えると現実的です。
| 優先度 | 対応内容 | 理由 |
|---|---|---|
| 高 | 標準項目でロゴ、背景色、案内文を設定 | 新旧テナントで再現しやすい |
| 中 | 画像素材を公式要件に合わせて作成 | 表示崩れやアップロード失敗を防げる |
| 中 | CSS 利用箇所を一覧化 | 移行時の差分を説明しやすい |
| 低 | CSS で細部まで完全再現 | 新規テナントや将来変更で維持しにくい |
「コーポレートサイトと完全に同じ見た目にする」より、「ユーザーが正規のサインイン画面と認識でき、読みやすく、保守しやすい」ことを優先しましょう。
フッターとリンク設定で間違えやすい点
フッターでは、プライバシーと Cookie、使用条件などの表示を調整できます。公式手順では、既定の Microsoft リンクを非表示にしたり、独自の表示テキストと URL を指定したりできますが、カスタム URL はテキストとして表示され、クリックできないと説明されています。(Microsoft Learn)
これは問い合わせにつながりやすいポイントです。
たとえば、フッターに https://helpdesk.example.co.jp と表示しても、ユーザーがクリックして開けるとは限りません。ヘルプデスク案内として使う場合は、URL だけでなく、電話番号、受付時間、社内ポータル名なども併記すると実用性が上がります。
また、既定の Microsoft の「使用条件」リンクは、条件付きアクセスの利用規約とは別物です。公式手順でも、このリンクを見ても条件付きアクセスの使用条件に同意したことにはならないと説明されています。(Microsoft Learn)
法務・コンプライアンス対応として利用規約への同意を取りたい場合は、サインインページのフッター表示だけで済ませず、条件付きアクセスの利用規約機能など、同意を記録できる仕組みを別途検討してください。
サインインページのテキストは「公開情報」として書く
サインインページのテキストには、ヘルプデスク電話番号、注意喚起、法的声明などを表示できます。ただし、このページは公開されるため、機密情報を載せてはいけません。公式手順でも、サインインページのテキストには機密情報を提供しないよう注意されています。文字数は Unicode で 1,024 文字以下です。(Microsoft Learn)
よくある失敗例は、内部システム名、社内専用 URL、運用担当者名、緊急連絡先の詳細をそのまま載せることです。サインインページは社外から見える可能性があるため、「社外に見えても問題ない情報」だけに絞りましょう。
使いやすい文案例
以下のような文面であれば、ユーザー支援と安全性のバランスを取りやすくなります。
この画面は、〇〇株式会社の Microsoft 365 および業務アプリケーション用サインインページです。パスワードを忘れた場合は、セルフサービス パスワード リセットを利用してください。不審なサインイン画面や多要素認証通知を確認した場合は、社内ヘルプデスクへ連絡してください。
避けたい文面は次のようなものです。
管理者用ポータルは〇〇、緊急時の認証バイパス申請は〇〇部の〇〇まで連絡してください。
攻撃者に運用情報を与える可能性があるためです。ヘルプデスク案内は、公開しても問題ない代表窓口に限定しましょう。
多言語対応はブラウザー言語ごとに確認する
Microsoft Entra では、ブラウザー言語ごとにサインイン体験をカスタマイズできます。特定のブラウザー言語向けにブランド要素を設定すると、既定のブランド設定を上書きします。設定していない要素は既定の要素が表示されます。(Microsoft Learn)
海外拠点や外国籍社員がいる組織では、日本語だけで設定を完了しないほうがよいでしょう。英語、中国語、韓国語など、実際に利用される言語で次の点を確認してください。
| 確認項目 | チェック内容 |
|---|---|
| 表示言語 | ブラウザー言語を変えたときに適切な文言になるか |
| 文字量 | 翻訳後に長くなり、表示が崩れないか |
| 問い合わせ先 | 海外ユーザー向けの窓口が適切か |
| 右から左へ読む言語 | アラビア語やヘブライ語でレイアウトが自然か |
| リンク表記 | クリックできない URL を案内する場合、説明が十分か |
Microsoft Entra ID は、アラビア語やヘブライ語など右から左に読む言語に対して、ブラウザー設定に基づくレイアウト調整をサポートしています。(Microsoft Learn)
管理者・開発者が展開前に確認すべきチェックリスト
会社ブランド設定は、見た目の変更に見えて、運用・セキュリティ・問い合わせ対応に影響します。展開前には、管理者だけでなく、アプリ担当者、ヘルプデスク、セキュリティ担当者も巻き込んで確認しましょう。
| 担当 | 確認すること | 具体的な作業 |
|---|---|---|
| Microsoft Entra 管理者 | ライセンス、ロール、テナント作成日 | 組織ブランド管理者ロールで設定可能か確認 |
| セキュリティ担当 | フィッシング対策との整合性 | ユーザー教育資料に新画面を反映 |
| ヘルプデスク | 問い合わせ導線 | 電話番号、受付時間、SSPR 案内を確認 |
| 法務・コンプライアンス | フッター文言、利用条件 | 条件付きアクセスの利用規約と混同しない |
| 開発者・アプリ担当 | SSO 導線、URL、whr パラメーター | 初期画面からブランド表示したいアプリを確認 |
| 広報・ブランド担当 | ロゴ、色、表記ルール | 画像サイズに合わせた素材を用意 |
| 海外拠点担当 | 多言語表示 | ブラウザー言語ごとの文言を確認 |
特に開発者は、アプリケーションそのものを変更しない場合でも、認証開始 URL、リダイレクト、社内ポータルのサインインボタンに関わることがあります。Microsoft Entra 側の設定だけでなく、ユーザーがどの URL からサインインを開始するかまで確認してください。
よくあるトラブルと対処法
ロゴを設定したのに最初の画面に表示されない
Microsoft 365 や一部の SaaS、マルチテナントアプリケーションでは、メールアドレスまたは電話番号を入力して次へ進んだ後に、カスタマイズされたサインインページが表示される場合があります。これは仕様上の挙動であり、必ずしも設定ミスではありません。(Microsoft Learn)
初期画面から表示したい場合は、アプリ導線に whr パラメーターやテナント固有 URL を使えるか確認します。
背景画像の重要な部分が隠れる
背景画像はウィンドウサイズに応じて拡大縮小・トリミングされ、サインインボックスで一部が隠れることがあります。(Microsoft Learn)
対処法は、背景に重要な文字や人物の顔を入れないことです。ブランドカラーや抽象パターンを使い、重要な情報はサインインページのテキスト欄に入れましょう。
ヘルプデスク URL がクリックできない
サインイン体験では、外部 URL がクリックできない形で表示される場合があります。公式手順では、外部 URL は明示的に表示されるもののクリックできず、ユーザーがコピーして直接移動する必要があると説明されています。(Microsoft Learn)
そのため、URL だけに頼らず、電話番号、メール、社内での問い合わせ手順を併記してください。
ゲストユーザーに自社ブランドが表示されない
B2B コラボレーションでは、ユーザーのホームテナント側のブランドが表示される場合があります。(Microsoft Learn)
社外ユーザー向けの案内では、「ゲストユーザーの場合、表示されるロゴやサインイン画面が自社社員と異なる場合があります」と明記すると問い合わせを減らせます。
新しいテナントで CSS が使えない
2026年1月5日以降に作成されたテナントでは、会社ブランド設定でカスタム CSS を利用できません。(Microsoft Learn)
新規導入では、CSS 前提のデザイン案を作らず、標準のロゴ、背景、レイアウト、ヘッダー、フッター、テキストの範囲で設計しましょう。
既存環境から移行するときの注意点
テナント移行や会社統合では、会社ブランド設定を後回しにしがちです。しかし、サインイン画面は全ユーザーが最初に見る画面であり、移行直後の問い合わせに直結します。
移行時は、次の順番で棚卸しすると効率的です。
| 順番 | 作業 | 目的 |
|---|---|---|
| 1 | 旧テナントのブランド設定をスクリーンショットで記録 | 移行後の差分説明に使う |
| 2 | 使用中の画像素材とサイズを確認 | 新テナント要件に合わせて再作成する |
| 3 | CSS の利用有無を確認 | 新テナントで再現できるか判断する |
| 4 | サインインテキストを見直す | 古い問い合わせ先や内部情報を削除する |
| 5 | SSPR とヘルプデスク導線を確認 | パスワード関連問い合わせを減らす |
| 6 | B2B ゲストの挙動をテスト | 社外ユーザー向け案内を整備する |
| 7 | ユーザー向け周知を作成 | 画面変更による不安を減らす |
移行時のポイントは、「旧画面の完全再現」ではなく「ユーザーが迷わず、安全にサインインできる状態」をゴールにすることです。古い CSS や背景画像にこだわるより、標準機能で管理しやすい設計へ寄せたほうが、長期運用では安定します。
展開時は小さく検証し、ユーザー周知まで含めて完了させる
会社ブランド設定は、設定画面で保存して終わりではありません。実際のユーザー導線で表示を確認し、問い合わせ対応まで準備して初めて展開完了です。
おすすめの展開手順は次のとおりです。
| フェーズ | 実施内容 |
|---|---|
| 事前準備 | ライセンス、ロール、テナント作成日、画像素材を確認 |
| デザイン確認 | ロゴ、背景、フッター、サインインテキストを関係者でレビュー |
| 検証 | 複数ブラウザー、スマートフォン、Microsoft 365、My Apps、SSPR で表示確認 |
| 多言語確認 | 日本語以外のブラウザー言語で文言を確認 |
| 社内周知 | 新しいサインイン画面のスクリーンショットと注意点を案内 |
| 本番反映 | 反映に時間差があることを想定して監視 |
| 展開後確認 | ヘルプデスク問い合わせ、SSPR 利用状況、ユーザーの混乱を確認 |
特に、フィッシング対策としてブランド表示を使う場合は、ユーザーに「ロゴがあるから絶対安全」と教えないようにしましょう。正しい教育は、「会社ブランド、URL、アカウント、多要素認証の通知内容を組み合わせて確認する」です。
まとめ:Microsoft Entra の会社ブランド設定は、見た目ではなくサインイン体験の整備として扱う
Microsoft Entra の会社ブランド設定は、ロゴや背景を差し替えるだけの機能ではありません。ユーザーが正しいサインイン画面を認識しやすくし、ヘルプデスク案内やパスワードリセット導線を整えるための重要な管理項目です。
管理者は、まずライセンス、ロール、テナント作成日、カスタム CSS の利用可否を確認してください。次に、ロゴや背景画像を公式要件に合わせて準備し、フッターやサインインページの文言を公開情報として安全に整えます。開発者やアプリ担当者は、SSO の開始 URL、whr パラメーター、SaaS や B2B での表示タイミングを確認しましょう。
次に取るべき行動は、現在のサインイン画面をスクリーンショットで記録し、既存のロゴ、背景、CSS、ヘルプデスク案内、多言語設定を棚卸しすることです。そのうえで、標準機能で再現できる範囲を決め、ユーザー周知まで含めた展開計画を作成してください。

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