Microsoft EducationのISTE 2026総括|Study and Learn AgentとVelocity Prizeの利用条件・管理策

2026年7月8日にMicrosoftが公開したISTE 2026の総括で重要なのは、教育AIの「新機能」だけではありません。教育現場でのAI活用が、教員や生徒による個別の実験から、年齢制御、データ保護、利用ルール、研修を組み合わせた組織的な導入段階へ移りつつあることが明確になりました。

Microsoft 365 Educationを利用し、13歳以上の生徒にCopilot Chatを提供する学校は、Education Tenant Identifierと生徒アカウントの年齢属性を確認する必要があります。また、Minecraft EducationのVelocity Prizeに参加する場合は、Study and Learn Agentとは別に、Minecraft Educationのライセンス、端末へのアプリ配布、参加規約を確認しなければなりません。(Microsoft)

今回の発表は、全校一斉にAIを有効化すべきだという意味ではありません。まず対象者とデータ境界を整理し、限定した授業や教員グループで検証したうえで、利用範囲を広げることが現実的です。

目次

Microsoft EducationのISTE 2026総括で何が変わったのか

MicrosoftはISTELive 2026で、教育AIが初期の実験段階から、授業や教育機関での実用段階へ進み始めていると説明しました。特に強調されたのが、AIツールへのアクセスだけでは十分ではなく、安全な製品、教員研修、利用ガイダンス、学習科学に基づく設計を組み合わせる必要があるという点です。(Microsoft)

公式情報から読み取れる変化を整理すると、次のようになります。

観点従来の試行的なAI利用ISTE 2026で示された方向
導入単位教員や生徒が個別に試す学校・教育委員会・大学単位で方針を整える
成果の考え方作業時間の短縮や回答生成理解、練習、思考、学習成果への影響を重視
管理方法ツールを使えるようにするID、年齢、データ、監査、研修を含めて管理する
生徒向けAI汎用チャットを学習にも流用Study and Learn Agentなど学習目的のAIを使う
AIリテラシー注意事項を説明する実際の課題でAIやコードを使い、判断力を育てる
プログラミング教育教材内の演習が中心Velocity Prizeのような世界規模の実践課題に挑戦する

Microsoft自身も、教育機関が断片的なAI利用から、教育方針、ガバナンス、組織目標と連動した全体的な運用へ移行していると説明しています。したがって今回の更新は、単なる機能追加ではなく、教育AIの導入方法そのものを見直す合図と考えるべきです。(Microsoft)

Study and Learn Agentとは

Study and Learn Agentは、Microsoft 365 Copilotアプリ内で利用できる学習用AIエージェントです。一般的なAIチャットのように答えを直接生成することだけを目的とせず、質問を返したり、段階的なヒントを出したりしながら、学習者自身に考えさせる設計になっています。

教材を基にした対話のほか、フラッシュカード、クイズ、マッチング、穴埋め問題、文章作成支援などを利用できます。Word文書、PowerPoint、PDF、Webページ、Copilot Pagesを参照元として指定でき、回答には元資料へ戻るための引用も表示されます。(Microsoft Support)

Study and Learn Agentの主な使いどころ

利用場面具体的な使い方教員が確認すべき点
授業内容の復習配布資料から重要概念を質問させる教材の範囲外に回答が広がっていないか
定期試験の準備フラッシュカードや小テストを作るAIの問題と正解に誤りがないか
苦手分野の理解段階的な質問で考え方を整理する答えを得るだけの使い方になっていないか
語学学習単語カード、穴埋め、会話練習を行う訳や文法説明の正確性
レポート準備構成や論点を質問形式で整理する本文をAIに代筆させていないか
教員による教材検証実際の資料を読み込ませて動作を確認する生徒に公開する前に品質を評価する

Study and Learn Agentは学習支援用であり、正式な採点ツールではありません。クイズ結果、フラッシュカードの利用状況、会話履歴は、通常の教員画面へ自動的に共有されず、生徒が明示的に共有しない限り教員からは見えない設計です。(Microsoft Support)

Study and Learn Agentの利用条件

利用条件で特に注意したいのは、Microsoft 365 Copilotアプリに表示される機能であっても、必ずしも有料のMicrosoft 365 Copilotライセンスを別途購入する必要はない点です。

項目利用条件
対象ライセンスMicrosoft 365 Education A1、A3、A5
追加費用Study and Learn Agent単体の追加購入は不要
対象年齢13歳以上
前提機能対象ユーザーでCopilot Chatが有効になっていること
K-12の追加条件Education Tenant Identifierと生徒のageGroup設定
利用場所Microsoft 365 CopilotのWebアプリ、Windowsデスクトップアプリ
モバイル対応2026年7月時点では今後の提供予定
対応資料DOCX、PPTX、PDF、URL、Copilot Pages
日本語対応言語に含まれるが、英語版と同等の品質とは限らない

Study and Learn AgentはEducationユーザー向けにプレインストールされるため、管理者がエージェントを個別配布する必要はありません。ただし、13~17歳の生徒についてはCopilot Chatの年齢制御が実質的な利用ゲートになります。(Microsoft Support)

日本語に対応していても事前検証は必要

公式サポートでは日本語が対応言語に含まれています。ブラウザーやOSの言語設定に合わせて画面と回答言語が選択され、アップロードした教材の言語に合わせてクイズなども生成されます。

一方で、MicrosoftはStudy and Learn Agentが提供開始時点では米国英語向けに最適化されており、他言語では学習支援の流れやアクティビティの品質に改善余地があると説明しています。(Microsoft Support)

そのため、日本語環境では次の項目を確認してから全校展開するのが安全です。

  • 学年に合った語彙と漢字が使われるか
  • 質問やヒントが不自然な日本語にならないか
  • 数学や理科の専門用語が正確か
  • 教材に書かれていない内容を事実として補っていないか
  • 正答が複数ある問題で、一つだけを正解として扱っていないか
  • 生徒が答えを要求した際も、適切に思考を促すか

「日本語対応」と「日本語の授業でそのまま使える」は同じではありません。複数教科、複数学年、複数の資料形式で試すことが重要です。

K-12で必要になるEducation Tenant Identifierと年齢設定

K-12のMicrosoft 365 Education環境では、ライセンスを割り当てただけで13~17歳の生徒がStudy and Learn Agentを使えるとは限りません。

管理者は、まずテナントをK-12または高等教育として分類するEducation Tenant Identifierを設定します。K-12に設定した場合、生徒は初期状態では未成年として扱われ、Microsoft Entra IDのageGroupが適切に設定されるまでCopilotへアクセスできません。Minorに設定されたアカウントは、ライセンスの有無にかかわらずCopilotを利用できません。(aka.ms)

Education Tenant Identifierの設定場所

グローバル管理者はMicrosoft 365管理センターで、次の順に移動します。

  1. 「設定」を開く
  2. 「組織設定」を開く
  3. 「サービス」タブを選ぶ
  4. 「Microsoft Education Tenant Identifier」を開く
  5. 教育機関に合った「K-12」または「Higher Education」を選ぶ
  6. 保存する

高等教育機関に設定した場合、生徒は原則として成人扱いになります。ただし、Microsoft Entra IDで別の年齢属性が設定されている場合は、その属性が優先されます。(aka.ms)

ageGroupに設定する値

値主な対象K-12でのCopilotアクセス
Minor原則として13歳未満利用不可
NotAdult原則として13~17歳利用可能
Adult原則として18歳以上利用可能

年齢属性は、Microsoft 365管理センターからCSVで一括設定できます。個別設定はMicrosoft Entra管理センターから行えるほか、Microsoft Graph API、Microsoft Graph PowerShell、School Data Syncを使った更新にも対応しています。(aka.ms)

CSVを利用する場合は、少なくとも次の列を残して更新します。

User principal name,AgeGroup
[email protected],NotAdult
[email protected],Minor
[email protected],Adult

年齢は年度ごとに変化します。初回設定だけで終わらせず、進級、入学、転入、卒業時に属性を更新する運用を決めておく必要があります。

Study and Learn Agentのデータ境界

教育AIの導入可否を判断する際は、「入力データが学習に使われるか」だけでなく、保存、監査、Web検索、処理地域を分けて確認する必要があります。

Microsoftは、Study and Learn Agentに入力したメッセージやアップロード資料について、Microsoft 365テナントのセキュリティ、コンプライアンス、データ保持の仕組みを適用し、基盤AIモデルのトレーニングには利用しないと説明しています。保存時と通信時には暗号化が適用されます。(Microsoft Support)

データの種類公式情報に基づく扱い学校側の判断ポイント
プロンプトと回答Microsoft 365の保護・保持・監査対象保持期間と監査権限を確認する
アップロード資料応答や学習活動の生成に使用個人情報、試験問題、機密資料を制限する
AIモデルの学習基盤モデルのトレーニングには使用されない消費者向けAIとの違いを利用者へ説明する
クイズや会話履歴通常の教員には自動共有されない成績評価に利用しない
利用統計機能利用数などの基本テレメトリを収集する場合がある収集範囲を校内説明へ反映する
Web検索クエリ必要に応じてBingへ短い検索語を送信Web検索を許可するか組織で決める

「生徒だけに見える」と「記録されない」は別

Study and Learn Agentのクイズ結果やチャット履歴は、通常の教員画面には自動表示されません。しかし、Microsoft 365 Copilot Chatではプロンプトと回答が記録され、契約内容に応じて保持ポリシーや監査ログの対象になります。(Microsoft Learn)

つまり、次の二つは両立します。

  • 担任や教科担当者が、生徒の会話内容を日常的に閲覧する機能ではない
  • 組織のコンプライアンス、保持、監査の仕組みは適用され得る

生徒や保護者へ説明する際に、「先生には見えないから記録されない」と案内するのは不正確です。誰が、どの目的で、どの権限によりログへアクセスできるのかを校内規程に合わせて整理する必要があります。

Web検索はテナント内データと同じ扱いではない

Web検索を有効にすると、Copilotはプロンプトから短い検索クエリを生成し、Bing検索サービスへ送信します。Microsoftの説明では、通常、プロンプト全文、アップロードファイル全体、ユーザー名、ドメイン名、テナントIDなどは検索クエリに含まれません。(Microsoft Learn)

管理者は「Allow web search in Copilot」ポリシーでWeb検索を制御できます。管理者が許可した環境では、利用者側にもWeb検索のオン・オフ設定が表示されます。(Microsoft Learn)

学校としては、次のどちらかを明確にします。

  • 最新情報や画像を使うためWeb検索を許可する
  • 学校配布資料だけに回答を限定するためWeb検索を無効化する

Web検索を許可する場合でも、未公開の問題文、個人が特定できる相談、健康情報などをプロンプトへ入力しないルールが必要です。

「テナント内」と「日本国内だけで処理」は同じではない

Study and Learn Agentの公式説明では、データがMicrosoft 365テナントの既存の保護、コンプライアンス、データ所在地ポリシーに従うとされています。

ただし、Microsoft 365 Copilot Chatの一般的なデータ保護資料では、LLMへの処理要求が最寄りのデータセンターへ送られる一方、利用状況や容量によって別の国・地域で処理される場合があると説明されています。具体的なデータ所在地の約束は、Microsoft Product TermsとData Protection Addendumに基づきます。(Microsoft Learn)

したがって、「Microsoft 365テナントで保護される」という説明を、「すべての処理が物理的に日本国内だけで完結する」という意味に置き換えてはいけません。国内処理が必須となる組織では、契約条件と最新のデータ所在地情報を個別に確認する必要があります。

管理者が確認すべき制御項目

Study and Learn Agentは追加インストール不要ですが、安全な運用まで自動的に完成するわけではありません。

制御項目管理者が行うこと確認証跡
テナント分類K-12または高等教育を設定管理センターの設定記録
年齢制御Minor、NotAdult、Adultを設定CSV、Entra ID、SDSの更新結果
ライセンスA1、A3、A5の割り当てを確認対象ユーザー一覧
Copilot Chat対象生徒がアクセスできるか確認テストアカウントの結果
Web検索許可、禁止、利用者選択の方針を決めるCloud Policyの設定
データ持ち込み入力可能・禁止データを定義するAI利用ガイドライン
保持・監査保持期間、監査権限、調査手順を確認するPurviewなどの設定
教員研修機能、限界、誤回答への対応を説明する研修資料と受講記録
問題報告不適切な出力の報告先を決める問い合わせフロー

Microsoftは、より強い監視が必要な組織に対して、Copilot向けのMicrosoft Purview Communication Complianceを検討するよう案内しています。(Microsoft Support)

推奨する導入手順

対象者とライセンスを棚卸しする

生徒、教員、職員を分け、A1、A3、A5の割り当て状況を確認します。特に、共有アカウントやテスト用アカウントを対象に含めないよう注意します。

年齢属性を整備する

K-12ではEducation Tenant Identifierを設定し、13歳未満をMinor、13~17歳をNotAdultとして管理します。入学・進級時に自動更新できるよう、School Data SyncやMicrosoft Graphを使うか、定期的なCSV更新を行います。

データ利用ルールを決める

最低限、次のデータを入力禁止または事前承認制にします。

  • 生徒や保護者の氏名、住所、連絡先
  • 成績、健康、家庭状況などの要配慮情報
  • 公開前の試験問題と解答
  • 契約や利用許諾の範囲外となる教材全文
  • 校内限定の会議資料
  • パスワード、秘密鍵、アクセストークン

Web検索の扱いを決める

授業で最新ニュースや画像を扱う場合はWeb検索が有効です。一方、配布教材だけを根拠に復習させる場合は、Web検索を無効にした方が回答範囲を管理しやすくなります。

教員だけで先行検証する

生徒へ案内する前に、教員が実際の教材を使って次の項目を確認します。

  • 正答率
  • 引用元との一致
  • ヒントの適切さ
  • 日本語の自然さ
  • 学年相応の難易度
  • 不適切な質問への対応
  • 答えを安易に提示しないか
  • 大きなPDFを読み込ませた場合の品質

大容量ファイルや多数のファイルでは活動生成の品質が低下する場合があります。また、「Confidential」や「Highly Confidential」などの秘密度ラベルが付いたファイルは、学習活動を十分に生成できない可能性があります。(Microsoft Support)

限定した授業で試行する

最初から全校展開せず、一つの教科や単元に絞ります。たとえば、次のような使い方が適しています。

  • 理科の用語確認
  • 英単語の反復
  • 社会科資料の要点整理
  • 数学の解法を段階的に考える練習
  • 試験前の自己確認

一方、正式な試験、通知表の評価、入学選抜など、結果が直接成績や処遇に影響する用途には使用しない方が安全です。

Minecraft EducationのVelocity Prizeとは

Velocity Prizeは、Minecraft EducationとMicrosoftが実施する13~16歳向けのグローバルスキルチャレンジです。生徒は専用のMinecraft Educationワールドで、隠された旗をできるだけ速く見つけます。(education.minecraft.net)

単にゲーム内を歩いて探索するだけでなく、次のような複数の方法を選べます。

  • 手作業で地形や手掛かりを調査する
  • MakeCodeで処理を自動化する
  • Pythonで探索アルゴリズムを作る
  • 利用可能な場合はMicrosoft 365 Copilotを思考支援に使う

公式説明では、手作業、プログラム、AIを使った方法のいずれも提示されています。したがって、AIの利用だけが参加条件ではなく、生徒が異なる戦略を試し、結果を比較すること自体が学習活動になります。(education.minecraft.net)

Velocity Prizeの日程

2026年7月時点で案内されている主な予定は次のとおりです。

時期内容
2026年6月教員向け早期アクセス受付開始
2026年7~9月カリキュラムへの組み込みと準備
2026年10月中旬~11月競技期間
2026年12月Computer Science Education Week中に結果発表

優秀者にはMicrosoftによる表彰やメンタリングの機会が予定されています。授業だけでなく、プログラミングクラブ、放課後活動、探究学習などでも利用できるよう設計されています。(education.minecraft.net)

参加日程、対象地域、提出形式、保護者同意などの詳細は変更される可能性があるため、登録時に最新の公式規約を確認してください。

Minecraft Educationのライセンスは別に確認する

Study and Learn AgentがA1、A3、A5に追加費用なしで含まれることと、Minecraft Educationを利用できることは別の話です。

Microsoft 365 A1では、Minecraft Educationはアドオンとして提供されます。A3またはA5を利用している場合でも、ユーザーへライセンスを割り当てたうえで、Minecraft Educationのサービスが有効になっているか確認する必要があります。(Microsoft Learn)

Velocity Prizeへの参加を検討する学校は、次の順で確認すると効率的です。

  1. 対象生徒が13~16歳か確認する
  2. Minecraft Educationの契約数を確認する
  3. 生徒と教員へライセンスを割り当てる
  4. 教員アカウントが教員ロールになっているか確認する
  5. 対象端末にアプリを配布する
  6. 専用ワールドへ接続できるか試す
  7. MakeCode、Python、Copilotの利用範囲を決める
  8. 参加規約と校内の同意手続きを確認する

Windows端末では、手動インストールのほか、Microsoft Intuneを使った一括配布が可能です。Intuneでは「アプリ」からMicrosoft StoreアプリとしてMinecraft Educationを追加し、対象端末またはユーザーへ必須配布できます。(Microsoft Learn)

業務や開発での使いどころ

ISTE 2026の発表は、新しい業務用APIや独自アプリ組み込み用SDKの公開ではありません。実務上の価値は、既存のMicrosoft 365管理機能を使ってAI導入を統制することと、Minecraft Education上でプログラミングやAI活用を実践することにあります。

担当者具体的な活用向かない使い方
教員教材の復習、自己学習、理解確認生徒の正式な採点
学校管理職AI利用方針、研修、評価指標の整備機能だけを先に全校公開する
IT管理者年齢属性、ライセンス、Web検索、監査の管理共有アカウントでの利用
情報システム担当Graph、PowerShell、SDSによる年齢属性の更新生徒データを無制限にAIへ渡す
カリキュラム担当Velocity Prizeを使った探究・情報教育競技結果だけを評価する
プログラミング担当MakeCode、Pythonによる探索処理の比較完成コードをAIから取得するだけの授業
セキュリティ担当データ分類、入力禁止情報、インシデント対応「モデル学習に使われない」だけで承認する

Microsoft GraphやPowerShellで年齢更新を自動化する

児童・生徒数が多い組織では、ageGroupを手作業で管理すると更新漏れが起こります。Microsoft Graph APIのユーザー属性やMicrosoft Graph PowerShellのUpdate-MgUserを利用すれば、校務支援システムなどから出力した対象者一覧を基に更新処理を作れます。School Data Syncを利用している場合は、同期パイプラインで年齢グループを管理する方法もあります。(aka.ms)

自動化する場合でも、生年月日そのものを不要にMicrosoft 365へ追加するのではなく、Copilotの制御に必要な年齢区分だけを更新する設計が適切です。

Velocity Prizeをアルゴリズム比較の教材にする

Velocity Prizeでは、同じ「旗を見つける」という目的に対して、手作業、MakeCode、Python、AI支援という異なる戦略を試せます。

たとえば、次の観点で結果を比較できます。

  • 実行時間
  • 探索した範囲
  • コードの行数
  • 再現性
  • エラー発生時の修正方法
  • AIから得た提案を採用した理由
  • 最初の作戦と改善後の作戦の違い

単に最速記録を競うのではなく、「なぜその方法を選んだのか」「どのデータを根拠に改善したのか」を説明させることで、情報活用能力、批判的思考、AIリテラシーを同時に評価できます。

対応が必要な組織と優先度

組織・利用状況対応優先度今行うこと
K-12で13~17歳にCopilotを使わせる高Tenant IdentifierとageGroupを確認
生徒向けCopilot Chatをすでに有効化している高年齢、ログ、Web検索、入力データを再点検
Velocity Prizeへの参加を検討している高早期登録、ライセンス、端末、授業計画を確認
大学や専門学校で自己学習支援に使う中教員先行の品質評価を実施
日本語教材を中心に使う中日本語の質問、引用、クイズ品質を検証
13歳未満の生徒のみを対象としている低Study and Learn Agentは対象外として監視を継続
Microsoft 365 Educationを導入していない低現行環境との比較と費用対効果を検討
Minecraft Educationを契約していない中Velocity Prize参加の必要性を判断して契約を検討

特に優先度が高いのは、すでに生徒向けCopilot Chatを有効にしているK-12組織です。新しい機能が表示されるかどうかだけでなく、13歳未満が確実にブロックされているか、対象となる13~17歳だけが利用できるかをテストアカウントで確認してください。

導入時に失敗しやすいポイント

「追加費用なし」を「設定不要」と誤解する

Study and Learn Agent自体の追加購入は不要ですが、K-12では年齢属性、Copilot Chat、利用ルール、監査の確認が必要です。自動表示されたからといって、組織として導入準備が完了しているわけではありません。

生徒の会話は一切記録されないと説明する

通常の教員には表示されませんが、Copilot Chatの保持・監査ポリシーは適用され得ます。生徒向け説明では、「教員の成績画面には共有されないこと」と「システム上の記録が存在すること」を分けて説明します。(Microsoft Support)

日本語対応だけを見て全校展開する

日本語は対応言語ですが、公式資料は米国英語向けに最適化されていることも明記しています。教科固有の用語、学年相応の言い回し、問題生成の品質を先に検証する必要があります。(Microsoft Support)

Study and Learn AgentとMinecraft Educationの利用権を混同する

Study and Learn Agentの利用条件を満たしていても、Minecraft Educationが自動的に使えるとは限りません。Velocity Prizeへ参加する場合は、Minecraft Educationのライセンス割り当てとアプリ配布を別に確認します。(Microsoft Learn)

AI生成クイズを正式な成績に使う

Study and Learn Agentは自己学習と練習のためのツールです。公式にも採点用ではないと明記されています。小テストの誤答、曖昧な判定、日本語表現の問題が起こり得るため、正式な評価は教員が管理する既存の仕組みで行います。(Microsoft Support)

機密資料をそのまま読み込ませる

モデル学習に使われないことは、すべての資料を入力してよいという意味ではありません。秘密度ラベル付き資料では処理が制限される場合もあります。個人情報、未公開問題、内部資料などは、校内のデータ分類に従って扱う必要があります。(Microsoft Support)

今回の更新を受けて最初に行うこと

Microsoft EducationのISTE 2026総括が示した最大の変化は、教育AIの評価軸が「使えるか」から「組織として安全に、学習効果を意識して使えるか」へ移ったことです。

Microsoft 365 Educationを導入している学校は、まず次の順で確認してください。

  1. Education Tenant Identifierが正しいか
  2. 生徒のageGroupが最新か
  3. 13歳未満がCopilotへアクセスできないか
  4. 13~17歳の対象者だけがStudy and Learn Agentを使えるか
  5. Web検索を許可するか
  6. 入力禁止データを明文化しているか
  7. 保持・監査ポリシーを把握しているか
  8. 日本語教材で品質検証を行ったか
  9. 教員と生徒へ利用目的を説明したか

Velocity Prizeへの参加を検討する場合は、これに加えてMinecraft Educationのライセンス、Intuneなどによる端末配布、MakeCode・Pythonの授業計画、最新の参加規約を確認します。

AI機能を先に公開し、ルールを後から作る進め方は避けるべきです。IDと年齢、データ境界、教員研修、限定的な授業検証を先に整えることで、Study and Learn AgentとMinecraft Educationを、単なる話題性ではなく実際の学習成果につながる仕組みとして導入できます。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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