Microsoft Learnの「Apps in Power BI – Power BI」は、2026年6月12日に更新されました。今回のポイントは、従来のPower BIアプリを「ワークスペース アプリ(workspace apps)」と位置付け、区別対象となる「組織アプリ(org apps)」からプレビュー表記を外したことです。
既存のPower BIアプリが停止したり、自動的に組織アプリへ移行されたりする変更ではありません。ワークスペース アプリは今後も組織アプリと併用できます。一般ユーザーに必要な対応はほとんどありませんが、Power BI管理者とアプリ作成者は、組織アプリの有効化設定、ライセンス、アクセス権、既存アプリとの使い分けを確認しておく必要があります。(Microsoft Learn)
Microsoft Learn「Apps in Power BI」の2026年6月12日の変更点
今回の更新では、「Apps in Power BI」ページに記載されている組織アプリの説明から、「新しい」「現在プレビュー中」といった表現が削除されました。Microsoftの公式ドキュメント更新履歴でも、組織アプリを一般提供へ移行し、関連ドキュメントからプレビュー表記を削除したことが示されています。(GitHub)
| 確認項目 | 変更内容 | 実務への影響 |
|---|---|---|
| 組織アプリの状態 | プレビュー表記を削除 | 検証専用ではなく、本番導入の候補として評価しやすくなった |
| Power BIアプリの呼称 | ワークスペース アプリとも呼ばれることを明確化 | 「アプリ」がどちらを指すのか区別する必要がある |
| 既存アプリの扱い | ワークスペース アプリは継続利用可能 | 緊急の移行や作り直しは不要 |
| 移行期限 | 今回のページでは案内なし | 期限を理由に急いで移行する必要はない |
| 料金 | 今回のページでは料金改定の案内なし | 現在のライセンスと容量を個別に確認する |
重要なのは、「Power BIアプリが組織アプリに置き換わった」のではなく、2種類のアプリを目的に応じて選べるようになったという点です。
Apps in Power BIとは
Power BIのアプリは、レポート、ダッシュボード、セマンティック モデルなどの関連コンテンツをまとめ、組織内の利用者へ配布する仕組みです。
アプリはワークスペース内で作成されますが、アプリのアクセス許可はワークスペースとは別に設定できます。そのため、利用者をワークスペースのメンバーに追加せず、閲覧用のコンテンツだけを安全に配布できます。(Microsoft Learn)
一般ユーザーは、主に次の方法でワークスペース アプリを利用します。
- Power BIサービスのナビゲーションから「アプリ」を開く
- 「アプリの取得」を選択する
- アプリ マーケットプレースから対象アプリをインストールする
- 「アプリ」の一覧からレポートやダッシュボードを開く
このほか、管理者や作成者による自動インストール、メールなどで届いた直接リンクからの利用にも対応しています。アプリカードでは、所有者と最終更新日を確認できます。(Microsoft Learn)
ワークスペース アプリと組織アプリの違い
組織アプリは、ワークスペース アプリの考え方をMicrosoft Fabricの「アイテム」として再構築したものです。最大の違いは、1つのワークスペースに複数の組織アプリを作成できることと、アプリ内コンテンツへのアクセス権を組織アプリ側から管理できることです。(Microsoft Learn)
| 比較項目 | ワークスペース アプリ | 組織アプリ |
|---|---|---|
| ワークスペースあたりの数 | 原則1つ | 複数作成可能 |
| 作成場所 | ワークスペース単位のアプリ機能 | ワークスペース内のFabricアイテム |
| 変更の反映 | アプリの更新を発行するまで利用者に見せない | 保存すると変更が利用者に反映される |
| 利用開始 | 原則としてアプリをインストール | インストール不要で、共有後に各種一覧から開ける |
| コンテンツへの直接アクセス | 元のアイテムへの別途アクセス権が必要 | 組織アプリの権限により、含まれるアイテムへ直接アクセスできる場合がある |
| セマンティック モデルの権限 | 作成者による手動管理が必要な場面がある | 対象レポートに関連するモデルへアクセス権を伝達できる |
| 主なコンテンツ | レポート、ダッシュボード、セマンティック モデルなど | Power BIレポート、ページ分割されたレポート、Fabricノートブック、マップ、リアルタイム ダッシュボードなど |
| 対象ユーザー管理 | アプリの発行フロー内で管理 | 対象ユーザーを子アイテムとして管理可能 |
ワークスペース アプリでは、作成中の変更と利用者向けの公開版を分けられます。一方、組織アプリは保存後すぐに変更が見えるため、更新前のプレビューと動作確認がより重要です。(Microsoft Learn)
今回の変更で影響を受けるユーザー
一般のPower BI利用者
既存のワークスペース アプリを閲覧しているだけであれば、基本的に設定変更は不要です。これまでどおり「アプリ」から利用できます。
ただし、アプリ一覧には「App」と「Org app」が混在する可能性があります。組織アプリはインストールしなくても、次の場所から見つけられます。
- ホームの「最近使用した項目」
- お気に入り
- OneLakeカタログ
- 「アプリ」の一覧
一覧画面では、従来のPower BIアプリと組織アプリをアプリの種類で判別できます。(Microsoft Learn)
Power BIのアプリ作成者
アプリ作成者は、現在使用しているアプリがワークスペース アプリなのか、組織アプリなのかを明確にする必要があります。
特に次の要件がある場合は、組織アプリを検討する価値があります。
- 1つのワークスペースから複数のアプリを提供したい
- Power BIレポートとFabricアイテムをまとめたい
- 関連するセマンティック モデルの権限も一緒に管理したい
- 部署や役割ごとに表示内容を変えたい
- アプリを通常のFabricアイテムと同じ方法で管理したい
一方、変更を発行するタイミングを厳密に管理したい場合や、ダッシュボード、スコアカード、コメント機能などを利用している場合は、ワークスペース アプリを継続した方が安全です。組織アプリでは、ワークスペース アプリで使える一部機能が未対応です。(Microsoft Learn)
Microsoft Fabric・Power BI管理者
管理者は、組織アプリの作成を許可するユーザーと、利用するワークスペースの種類を確認します。
組織アプリの作成可否は、管理ポータルの次の設定で制御できます。
設定 → 管理ポータル → テナント設定 → ユーザーは組織アプリを検出して作成できます
組織全体に許可することも、特定のセキュリティ グループだけに許可することも可能です。最初から全ユーザーに開放せず、Power BIの運用担当者や検証グループに限定して開始すると管理しやすくなります。(Microsoft Learn)
設定・更新・移行・料金・期限で確認すべきこと
| 項目 | 確認内容 | 今回必要な対応 |
|---|---|---|
| 設定 | 組織アプリのテナント設定が有効か | 組織アプリを導入する場合のみ確認 |
| 更新 | 保存時に変更が即時反映されるか | 組織アプリでは公開前テストを実施 |
| 移行 | 既存アプリを置き換える必要があるか | 強制移行は不要 |
| ライセンス | 作成者・閲覧者のライセンスと容量 | Pro、PPU、Premium、Fabric容量などを確認 |
| 期限 | 廃止日や移行期限が設定されたか | 今回の公式ページでは案内なし |
| 料金 | 新しい追加料金が発生するか | 今回の更新では料金変更の案内なし |
設定で確認する場所
組織アプリを作成するには、対象ワークスペースが次のいずれかである必要があります。
- Pro
- Fabric試用版
- Premium容量
- Fabric容量
ワークスペースの種類は、「ワークスペースの設定」にある「Premium」または「ライセンス情報」から確認します。(Microsoft Learn)
更新方法の違い
ワークスペース アプリでは、ワークスペース内のレポートを変更しても、アプリの更新を発行するまでは利用者に反映されません。
組織アプリでは、含まれるコンテンツはコピーではなく元のアイテムです。組織アプリを保存すると変更が利用者に表示されるため、次の順序で更新するのが安全です。
- テスト用の利用者またはセキュリティ グループを用意する
- 「アプリのプレビュー」でナビゲーションと表示内容を確認する
- 対象ユーザーごとの表示を確認する
- レポートとセマンティック モデルの権限を確認する
- 問題がないことを確認して保存する
移行の必要性
公式ドキュメントでは、ワークスペース アプリと組織アプリが引き続き共存できると明記されています。したがって、今回の変更だけを理由に既存アプリを急いで移行する必要はありません。(Microsoft Learn)
移行を検討する場合は、最初に既存アプリの機能を棚卸ししてください。特に、ダッシュボード、スコアカード、コメント、モバイルアプリ、Teams内での利用方法は、組織アプリで同じ動作になるとは限りません。
また、対象ユーザー機能は新しく作成した組織アプリでのみ利用できます。既存の組織アプリで対象ユーザーを利用したい場合は、新しい組織アプリの作成が必要です。(Microsoft Learn)
料金とライセンス
今回の「Apps in Power BI」ページ更新では、料金改定や組織アプリ専用の追加料金は案内されていません。
ワークスペース アプリを閲覧する場合、通常はPower BI ProまたはPremium Per Userライセンスが必要です。ただし、コンテンツがPremium容量またはFabric F64以上の対象容量に配置され、適切に共有されている場合は、無料ライセンスのユーザーも閲覧できる場合があります。(Microsoft Learn)
ライセンスは「アプリを作成できるか」だけでなく、次の組み合わせで判断してください。
- 作成者のライセンス
- 閲覧者のライセンス
- ワークスペースの種類
- Fabric容量のSKU
- レポートとセマンティック モデルの配置場所
- ユーザーに付与された権限
無料ユーザーへ配布する場合は、レポートだけでなく、その基になるセマンティック モデルも対象容量に配置されているか確認することが重要です。
組織アプリを導入するときの注意点
共同作成者ならすべての変更ができるとは限らない
ワークスペースの管理者、メンバー、共同作成者は、組織アプリを作成できます。ただし、アイテムの追加・削除やユーザーアクセスの変更には、含まれるアイテムと基になるアイテムに対する書き込み権限と再共有権限が必要です。
別のワークスペースにあるセマンティック モデルを利用している場合も、対象モデルの権限が必要になります。実際には、アクセス管理を伴う更新は管理者またはメンバーが担当した方が失敗しにくい運用です。(Microsoft Learn)
「非表示」と「アクセス不可」は同じではない
組織アプリの対象ユーザー設定では、アイテムをナビゲーションから非表示にできます。ただし、「非表示コンテンツへのアクセス」を有効にすると、非表示のアイテムにもアクセスできる場合があります。
この設定は影響範囲が広く、いずれかの対象ユーザーで有効にすると、組織アプリの少なくとも1つの対象ユーザーに属する利用者が、アプリ内のすべてのアイテムへアクセスできる可能性があります。機密性の異なるレポートを1つの組織アプリにまとめる場合は、表示確認だけでなく、直接リンクによるアクセスもテストしてください。(Microsoft Learn)
モバイルとTeamsでは動作が異なる
組織アプリの対象ユーザータブは、Power BIモバイルアプリでは現在サポートされていません。また、Microsoft TeamsのPower BI個人用アプリから組織アプリを開く場合は、Teams内ではなくブラウザーで開かれます。(Microsoft Learn)
全社展開する前に、ブラウザー、モバイル、Teamsという実際の利用経路ごとに確認する必要があります。
ワークスペース アプリと組織アプリの選び方
| 要件 | 適した選択肢 |
|---|---|
| 既存環境を変更せず安定運用したい | ワークスペース アプリ |
| 更新内容を発行するまで利用者に見せたくない | ワークスペース アプリ |
| ダッシュボードやスコアカードを含めたい | ワークスペース アプリ |
| 1つのワークスペースから複数のアプリを作りたい | 組織アプリ |
| Fabricノートブックなどもまとめたい | 組織アプリ |
| アプリと関連アイテムのアクセス権をまとめて管理したい | 組織アプリ |
| 対象ユーザーを独立した子アイテムとして管理したい | 組織アプリ |
今回の変更に対して、一般ユーザーは特別な作業を行う必要はありません。管理者とアプリ作成者は、まず既存アプリの種類と利用機能を棚卸しし、組織アプリを限定したセキュリティ グループで検証してください。
既存のワークスペース アプリを直ちに廃止するのではなく、複数アプリ、Fabricアイテム、権限伝達といった組織アプリ固有の利点が必要な業務から段階的に採用するのが現実的です。

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