Power BI Report Serverの変更点|2026年6月版の不具合修正と更新手順

2026年6月17日時点のMicrosoft Learn公式情報では、Power BI Report ServerのMay 2026版に最新ビルド 15.0.1121.115 が追加されています。主な変更は、スケールアウト環境で更新後も古いデータが表示される問題と、ボタン スライサーが期待どおり動作しない問題の修正です。(Microsoft Learn)

これはMicrosoft Learn自体の機能変更ではなく、Power BI Report Server製品の変更履歴が更新されたものです。該当する環境ではサーバー更新を優先し、それ以外の環境では通常の保守サイクルに組み込むのが現実的です。

目次

Microsoft LearnのChange logで追加された変更点

今回追加されたPower BI Report Serverのバージョン情報は次のとおりです。

項目内容
リリース系列Power BI Report Server May 2026
製品バージョン1.26.9663.10539
ビルド番号15.0.1121.115
主な変更スケールアウト環境の古いデータ表示を修正
主な変更高度なボタン スライサーの動作不良を修正
新しいサーバー設定記載なし
料金・ライセンス変更記載なし
移行期限・更新期限記載なし

Change logではリリース日が2026年6月12日と記載されています。一方、2026年6月17日に更新されたダウンロードページでは、同じバージョンとビルドのリリース日が2026年6月16日となっています。公式ページ間で日付表記が一致していないため、更新状況の管理には日付ではなく、製品バージョンとビルド番号を使用するのが安全です。(Microsoft Learn)

スケールアウト環境で古いデータが表示される問題を修正

1つ目の変更点は、複数のPower BI Report Serverを構成するスケールアウト環境において、データ更新後も古い内容が表示される問題の修正です。

Power BI Report Serverのスケールアウト構成では、スケジュール更新のキューが複数サーバーで共有され、データモデルが各ノードに複製されることがあります。そのため、一部ノードだけに古いデータモデルが残ると、アクセス先によって表示結果が変わる可能性があります。(Microsoft Learn)

たとえば、次のような現象が起きていた環境は影響を受けていた可能性があります。

  • 更新は正常終了しているのに、レポートの数値が更新前のままになる
  • ページを再読み込みすると、新旧のデータが交互に表示される
  • ロードバランサー経由では古いデータが表示されるが、特定ノードでは最新データになる
  • 同じレポートを複数ユーザーが開いたとき、表示される集計値が一致しない
  • 手動更新後は正しいが、スケジュール更新後に古いデータが残る

この問題は、単一サーバー構成よりも、ロードバランサーを利用した複数ノード構成で重要度が高くなります。

更新後に確認すべきこと

アップグレード後は、単に「更新が成功した」と表示されることだけでなく、各ノードから同じデータが返ることを確認します。

確認しやすいテスト方法は次のとおりです。

  1. 検証用レポートのデータソースに判別しやすい値を追加する
  2. 手動更新またはスケジュール更新を実行する
  3. 更新後の日時、件数、合計値を記録する
  4. ロードバランサー経由でレポートを複数回表示する
  5. 管理用経路で各ノードへ接続できる場合は、ノードごとの表示結果も比較する
  6. ブラウザのキャッシュを避けるため、プライベートウィンドウでも確認する

「画面が開く」だけでは十分ではありません。更新前後で変わる数値を決めておき、最新データがすべての経路で表示されるかを確認することが重要です。

ボタン スライサーが期待どおり動作しない問題を修正

2つ目の変更点は、Change log原文で「Power BI advanced button slicer visual」と表現されている、ボタン スライサー関連の問題修正です。(GitHub)

ボタン スライサーは、選択肢を通常のリストではなくボタン形式で表示し、レポートを絞り込むビジュアルです。ボタンの状態、レイアウト、画像、アイコン、条件付き書式などを利用できます。(Microsoft Learn)

影響が考えられるのは、次のようなレポートです。

  • 商品区分や地域をボタンで選択するレポート
  • 単一選択や強制選択を設定したスライサー
  • 選択中と未選択でボタンの外観を変えているレポート
  • 画像やアイコンを組み込んだスライサー
  • 条件付き書式を適用したボタン スライサー
  • ボタンをグリッド状に並べたダッシュボード

具体的な不具合条件や発生範囲はChange logに詳しく記載されていません。そのため、対象ビジュアルを使用している場合は、ビルド更新後に既存レポートを実際に操作して確認する必要があります。

ボタン スライサーの確認項目

更新後は、少なくとも次の操作をテストします。

確認項目確認内容
選択操作ボタンをクリックして選択状態が変わるか
絞り込み他のグラフや表が正しく更新されるか
単一選択複数の項目が同時に選択されないか
複数選択設定どおり複数項目を選択できるか
選択状態の表示色、枠線、文字、アイコンが正しく変化するか
条件付き書式データに応じた表示が反映されるか
再読み込みページ更新後も不自然な状態にならないか
ブックマークブックマーク適用後の選択状態が正しいか

ボタンをクリックできるだけでなく、フィルター結果と選択状態の表示が一致していることまで確認してください。

今回の変更で影響を受けるユーザー

影響度は、Power BI Report Serverの構成と使用しているビジュアルによって変わります。

対象影響度推奨対応
スケールアウト環境の管理者高ビルド確認後、更新を優先する
更新後のデータ不整合が発生している環境高検証環境で再現確認し、早めに更新する
ボタン スライサーを使用するレポート作成者高対象レポートを洗い出して動作確認する
ボタン スライサーを操作する一般ユーザー中管理者の更新後に絞り込み結果を確認する
単一サーバーでボタン スライサーを使わない環境低通常の保守スケジュールで適用を検討する
Power BIサービスだけを利用するユーザー原則対象外Power BI Report Serverの更新作業は不要
ページ分割されたレポートだけを利用するユーザー低今回の差分による直接的な変更は記載されていない

Power BI Report Serverは、組織内に設置してレポートを管理するオンプレミス製品です。そのため、Power BIサービスのみを利用している組織には、今回のサーバービルド更新は直接関係しません。(Microsoft Learn)

設定・更新・移行・料金・期限の確認ポイント

今回の変更内容を実務上の確認項目に分けると、次のようになります。

確認分野今回の変更管理者が行うこと
設定新しい設定項目の記載なし現在の設定をバックアップする
更新最新ビルド15.0.1121.115を追加現在のビルドと比較して適用を判断する
移行新しい移行要件の記載なし既存PBIRSなら通常のアップグレードを検討する
料金価格改定や追加料金の記載なし新規構築やノード追加時のみライセンスを再確認する
期限強制更新日や移行期限の記載なし障害の有無と保守方針から優先度を決める

新しいサーバー設定は追加されていない

今回追加された差分は2件の不具合修正であり、新しい高度なサーバープロパティや既定値変更は記載されていません。したがって、更新後に特定の設定を有効化しなければ修正が反映されない、という案内もありません。(Microsoft Learn)

古いデータが表示される問題が起きている場合でも、先にキャッシュや構成ファイルを無計画に変更するのではなく、現在のビルドを確認してください。対象ビルドより古ければ、まず検証環境で最新版への更新を試す方が、原因を切り分けやすくなります。

既存環境の移行は必要ない

既にPower BI Report Serverを使用している場合、今回の更新だけを理由に新しいサーバーへ移行する必要はありません。Microsoftの公式手順では、インストーラーから「Upgrade Power BI Report Server」を選択するアップグレード方法が案内されています。(Microsoft Learn)

一方、SQL Server Reporting ServicesからPower BI Report Serverへ移る場合は別です。SSRSからPower BI Report Serverへのインプレースアップグレードはなく、レポートサーバーデータベースや暗号化キーを移す移行作業が必要です。今回の不具合修正と、SSRSからの製品移行を混同しないようにしてください。(Microsoft Learn)

料金改定は案内されていない

今回のChange logには、料金、ライセンス、課金体系の変更は記載されていません。したがって、このビルドの公開だけを理由に契約変更が必要になるとは読み取れません。

ただし、新しいサーバーを構築したり、スケールアウト用のノードを追加したりする場合は、既存の利用権を確認する必要があります。実稼働環境へのインストールには製品キーが必要で、入手方法はPower BI Premium、Fabric F64以上、SQL Serverのバージョンやエディションなどによって異なります。開発用の製品キーを実稼働環境で使用することはできません。(Microsoft Learn)

強制更新日や移行期限は設定されていない

今回の公式情報には、次のような期限は記載されていません。

  • 強制的に更新される日
  • 旧ビルドの利用停止日
  • サービス終了日
  • レポートの移行期限
  • ライセンス切り替え期限

ただし、期限がないことと、更新を先送りしてよいことは同じではありません。データの鮮度に関わる不具合が発生している環境では、利用者が誤った数値を参照するおそれがあります。スケールアウト環境で症状が確認されている場合は、通常の機能改善よりも高い優先度で対応するべきです。

Power BI Report Serverを更新する前の準備

Microsoftは、Power BI Report Serverをアップグレードする前に、暗号化キー、レポートサーバーデータベース、構成ファイルをバックアップするよう案内しています。(Microsoft Learn)

最低限、次の3種類を保全します。

暗号化キー

暗号化キーは、保存された資格情報や接続情報など、暗号化されたデータを復元するために必要です。バックアップがない状態で問題が起きると、保存済みの機密情報を復旧できない可能性があります。

レポートサーバーデータベース

主に次のデータベースをバックアップします。

  • ReportServer
  • ReportServerTempDB

Power BI Report Serverのレポート、スケジュール、権限、設定などの重要な情報は、レポートサーバーデータベース側に保存されています。(Microsoft Learn)

構成ファイル

環境によっては、認証、URL、メール配信、拡張機能、ログなどが構成ファイルで調整されています。公式ドキュメントでは、Rsreportserver.config、Web.config、config.jsonなどのバックアップが案内されています。(Microsoft Learn)

ファイルをコピーするだけでなく、保存場所、取得日時、対象ノード、現在のビルド番号も記録しておくと、切り戻し時の混乱を防げます。

管理者が行う更新手順

現在のバージョンを全ノードで確認する

スケールアウト環境では、代表サーバーだけでなく、すべてのPower BI Report Serverノードを確認します。

管理台帳には次の情報を記録してください。

記録項目例
サーバー名PBIRS-NODE01
役割Webアクセス、スケジュール更新
製品バージョン1.26.9637.31070
ビルド番号15.0.1121.109
更新予定2026年6月
更新後の確認者BI管理担当者

目標となる最新情報は、製品バージョン 1.26.9663.10539、ビルド 15.0.1121.115 です。(Microsoft Learn)

影響するレポートを洗い出す

次の条件でレポートを検索・分類します。

  • インポートモードでスケジュール更新を使用している
  • スケールアウト環境に配置されている
  • ボタン スライサーを使用している
  • データ更新後の値について問い合わせがあった
  • 部門の意思決定や月次締めに使用されている

すべてのレポートを同じ深さでテストする必要はありません。影響条件に該当するレポートと、業務上の重要度が高いレポートを優先します。

バックアップと切り戻し条件を決める

バックアップを取得したら、更新を中止または切り戻す条件も決めておきます。

具体例は次のとおりです。

  • Webポータルを開けない
  • 主要レポートを表示できない
  • データソースの資格情報が失われた
  • スケジュール更新が連続して失敗する
  • ボタン スライサー以外のビジュアルに重大な表示崩れが出る
  • 全ノードで同じビルドを確認できない

更新担当者だけでなく、データベース担当者とレポート担当者の連絡方法も事前に決めておくと安全です。

インストーラーでアップグレードする

Microsoftの公式手順では、PowerBIReportServer.exeを実行し、「Upgrade Power BI Report Server」を選択してアップグレードします。完了後は必要に応じてReporting Services Configuration Managerを開き、構成状態を確認します。(Microsoft Learn)

スケールアウト環境では、更新中の混在状態を長時間残さないよう、対象ノード、実施順序、ロードバランサーからの切り離し方法を事前に決めてください。今回の修正対象そのものがスケールアウト環境であるため、1台だけ更新して完了と判断しないことが重要です。

Power BI Desktopの種類を確認する

Power BI Report Server向けのレポート作成には、通常版のPower BI Desktopではなく、Power BI Report Server用に最適化されたPower BI Desktopを使用します。通常版とは別製品としてインストールされ、タイトルバーにリリース月と年が表示されます。(Microsoft Learn)

Change logでは、May 2026版のPower BI Desktopとしてバージョン 2.154.956.0 が掲載されています。今回追加された差分には、新しいPower BI Desktopビルドは記載されていません。(Microsoft Learn)

そのため、サーバーの不具合修正を適用するためだけに、PBIXファイルを通常版Power BI Desktopで開き直す必要はありません。まずサーバーを更新し、既存レポートの動作を確認してください。

更新後に実施する受け入れテスト

更新直後は、次の順序で確認すると問題を切り分けやすくなります。

優先度テスト合格条件
1Webポータルへの接続正常にサインインしてフォルダーを開ける
2主要PBIXレポートの表示エラーなくビジュアルが表示される
3手動データ更新更新後の数値が正しく反映される
4スケジュール更新設定時刻に成功し、最新データが表示される
5ノード間の比較どのノードでも同じ集計結果になる
6ボタン スライサー選択、絞り込み、表示状態が正しい
7購読・配信既存のメール配信や共有処理が正常に動く
8ログ確認新しい重大エラーが記録されていない

更新前に取得した画面、件数、合計値、処理時間と比較すると、目視だけでは分かりにくい回帰も発見しやすくなります。

更新を急ぐべきか判断する基準

次のいずれかに該当する場合は、ビルド15.0.1121.115への更新を優先してください。

  • スケールアウト環境を使用している
  • 更新後も古いデータが表示されたことがある
  • ノードによって表示値が異なる
  • ボタン スライサーを重要な操作に使用している
  • 経営指標や会計数値をPower BI Report Serverで配信している
  • 利用者から「更新したはずなのに数値が変わらない」と報告されている

一方、単一サーバー構成で、ボタン スライサーも使用しておらず、現在問題が発生していない場合は、緊急停止を伴う更新ではなく、検証を行ったうえで通常の保守日に適用する判断も可能です。

よくある疑問

Microsoft Learnの画面や使い方が変わるのか

変わりません。今回のChange logは、Microsoft Learn上でPower BI Report Serverの製品変更履歴を案内するページです。Microsoft Learnの学習機能やアカウント設定が変更されるわけではありません。

一般ユーザー側で設定変更は必要か

今回の公式情報には、ブラウザやクライアント側で必要な設定変更は記載されていません。サーバー管理者がアップグレードし、その後に利用者がレポートの表示と絞り込みを確認する流れになります。

PBIXファイルの再発行は必要か

Change logには、既存PBIXファイルの変換や再発行を求める記載はありません。まずサーバーを更新し、現在公開されているレポートをそのままテストしてください。問題が残る場合に限り、Power BI Report Server用Desktopで開いて保存・再発行する手順を検討します。

ボタン スライサーを使っているか分からない場合はどうするか

レポート編集者に確認するのが確実です。見た目がタイル状の通常スライサーと、独立したボタン スライサーは似ていることがあります。編集画面のビジュアル種類と書式設定を確認し、対象レポートを一覧化してください。

更新すれば設定やレポートが消えるのか

通常のアップグレードでは既存環境を引き継ぐ前提ですが、失敗時の復旧には暗号化キー、データベース、構成ファイルのバックアップが必要です。Microsoftもアップグレード前のバックアップを推奨しています。(Microsoft Learn)

まずビルド番号を確認し、該当環境から更新する

今回のPower BI Report Serverの変更点は、新機能の追加ではなく、運用品質に関わる2件の不具合修正です。

特に重要なのは、スケールアウト環境で更新後も古いデータが表示される問題です。誤った数値が表示される可能性があるため、該当構成では現在のビルドを確認し、検証後に 15.0.1121.115 へ更新してください。

実施順序は、次の流れが安全です。

  1. 全ノードのバージョンとビルドを確認する
  2. スケールアウト構成とボタン スライサー利用レポートを洗い出す
  3. 暗号化キー、データベース、構成ファイルをバックアップする
  4. 検証環境でアップグレードする
  5. データ更新とボタン スライサーをテストする
  6. 本番環境を更新する
  7. 全ノードのビルドと表示結果を再確認する

公式ページではリリース日の表記に差があるため、日付だけで適用状況を判断せず、製品バージョン1.26.9663.10539、ビルド15.0.1121.115を確認基準にしてください。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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