デスクトップPCとノートPCを並べて使っているものの、操作するたびにマウスやキーボードを持ち替えるのは面倒です。Windows用の「PowerToys」に含まれる「Mouse Without Borders」を使えば、最大4台のWindows PCを1組のマウスとキーボードで操作できます。
設定後は、マウスポインターを画面の端へ移動するだけで、デスクトップPCからノートPCへ自然に操作対象が切り替わります。リモートデスクトップのように別PCの画面を転送する機能ではなく、それぞれのPCの画面を表示したまま、マウスとキーボードの入力を共有する仕組みです。クリップボード共有やファイル転送も利用できます。([Microsoft Learn][1])
Mouse Without Bordersでできること
Mouse Without Bordersは、複数のWindows PCを横並びのマルチモニターに近い感覚で操作するための機能です。
たとえば、机の左側にデスクトップPCのモニター、右側にノートPCを置いている場合、デスクトップ側の画面右端へマウスポインターを移動すると、そのままノートPC側へ移動できます。キーボード入力も、現在マウスポインターがあるPCに対して行われます。
主な機能は次のとおりです。
| 機能 | できること |
|---|---|
| マウス共有 | 画面端を越えて別のPCへポインターを移動する |
| キーボード共有 | 操作対象になっているPCへ文字やショートカットを入力する |
| クリップボード共有 | 一方のPCでコピーした文字列などを別のPCへ貼り付ける |
| ファイル転送 | クリップボード経由で別のPCへファイルをコピーする |
| 複数PC対応 | 最大4台まで接続する |
| デバイス配置 | 実際の机上の配置に合わせてPCの位置を並べ替える |
Mouse Without Bordersが共有するのは主に入力操作です。別のPCのデスクトップ画面をウィンドウ内に表示する機能ではありません。そのため、デスクトップPCとノートPCの両方を目の前に置き、各PCの性能やアプリをそのまま使い分けたい場面に向いています。([Microsoft Learn][1])
利用前に確認すること
設定を始める前に、次の条件を確認してください。
- 接続するすべてのPCにPowerToysをインストールする
- 各PCを同じネットワークに接続する
- PC同士が信頼できる端末であることを確認する
- 会社や自治体などの端末では、ソフトウェア導入やデータ共有のルールを確認する
- 接続用のセキュリティキーを第三者へ見せない
PowerToysはMicrosoft Store、GitHub、WinGetなどからインストールできます。Windows Package Managerを利用する場合は、ターミナルやPowerShellで次のコマンドを実行します。([Microsoft Learn][2])
winget install --id Microsoft.PowerToys --source winget
個人所有のPCではMicrosoft Storeからインストールする方法が分かりやすいでしょう。組織管理端末では、勝手にインストールせず、情報システム担当者や管理者の方針を優先してください。
2台のWindows PCを1組のマウスとキーボードで操作する設定
ここでは、次の配置を例に設定します。
| PC | 配置 | 役割 |
|---|---|---|
| デスクトップPC | 左側 | 1台目。接続用キーを生成する |
| ノートPC | 右側 | 2台目。キーを入力して接続する |
キーを生成する側と入力する側は、必ずしもデスクトップPCとノートPCで固定する必要はありません。どちらを1台目にしても構いません。
両方のPCでMouse Without Bordersを有効にする
デスクトップPCとノートPCの両方でPowerToysを起動します。
PowerToysの設定画面から「Mouse Without Borders」を開き、機能を有効にしてください。画面上の表記はPowerToysの言語やバージョンにより、「Mouse Without Bordersを有効にする」など多少異なる場合があります。
古いPowerToysを使用している場合は、設定項目が表示されないことがあります。機能が見つからないときは、PowerToysを更新してから再確認してください。
1台目で接続用キーを生成する
1台目のデスクトップPCで、Mouse Without Bordersの設定画面を開きます。
「New Key」または「新しいキー」を選択すると、PC同士を接続するためのセキュリティキーが生成されます。同じ画面に、1台目のコンピューター名、またはホスト名も表示されます。([Microsoft Learn][1])
2台目で入力するため、次の2項目を確認してください。
- 1台目のコンピューター名
- 生成されたセキュリティキー
セキュリティキーはパスワードに近い役割を持ちます。チャットやメールへ不用意に貼り付けたり、画面を撮影して公開したりしないでください。
2台目にコンピューター名とキーを入力する
ノートPC側でもPowerToysを起動し、Mouse Without Bordersを開きます。
接続画面に、1台目で確認した情報を入力します。
| 入力欄 | 入力する内容 |
|---|---|
| コンピューター名 | 1台目に表示されたホスト名 |
| セキュリティキー | 1台目で生成したキー |
入力後、「Connect」または「接続」を選択します。
接続に成功すると、デスクトップPCとノートPCの間でマウスポインターを移動できるようになります。まずは、デスクトップPCの画面右端へゆっくりポインターを動かしてみてください。ノートPC側へ移動すれば、基本設定は完了です。([Microsoft Learn][1])
PCの配置を実際の左右関係に合わせる
接続できても、画面端へマウスを動かした方向と実際のPCの位置が合わないことがあります。その場合は「Device layout」または「デバイスレイアウト」を調整します。
設定画面には、接続済みPCを表すアイコンが表示されます。アイコンをドラッグし、机上の配置と同じ位置関係に並べてください。([Microsoft Learn][1])
たとえば、実際の配置が次のようになっているとします。
[デスクトップPC][ノートPC]
設定画面でも、デスクトップPCを左、ノートPCを右に配置します。
配置が逆になっていると、デスクトップPCからノートPCへ移動するために、画面の左端へポインターを動かさなければならないなど、直感に反する操作になります。
上下に並べている場合も、可能な範囲で実際の配置へ近づけてください。Mouse Without Bordersには、デバイスを横一列または2×2形式で配置する設定があります。([Microsoft Learn][1])
画面端で誤って切り替わる場合の調整
画面の端にあるボタンをクリックしようとしたとき、意図せず別のPCへ切り替わることがあります。特に、ウィンドウの閉じるボタンやスクロールバーを操作するときに起こりやすい問題です。
Mouse Without Bordersには、誤操作を減らすための設定が用意されています。
ShiftキーやCtrlキーを押したときだけ切り替える
「Easy Mouse」の設定では、単に画面端へ移動するだけで切り替える方法のほか、ShiftキーまたはCtrlキーを押しているときだけ切り替えるよう設定できます。([Microsoft Learn][1])
頻繁にPCを行き来する場合は、画面端だけで切り替える設定が便利です。一方、誤切り替えが気になる場合は、修飾キーを必要とする設定が適しています。
画面の隅では切り替えない
「Block mouse at screen corners」に相当する設定を使うと、画面の四隅で誤って別のPCへ移動することを防げます。([Microsoft Learn][1])
Windowsでは画面の隅に操作対象が集まりやすいため、意図しない切り替えが続く場合は有効にしてみてください。
全画面表示中の切り替えを止める
ゲーム、動画、プレゼンテーションなどを全画面表示しているときは、画面端へポインターを移動する操作がアプリ内の操作として使われることがあります。
「全画面表示中はEasy Mouseを無効にする」設定を利用すると、全画面アプリの使用中に別PCへ移動するのを防げます。([Microsoft Learn][1])
クリップボード共有は必要なときだけ有効にする
Mouse Without Bordersでは、PC間でクリップボードを共有できます。
たとえば、デスクトップPCでコピーしたURLをノートPCのブラウザーへ貼り付けたり、ノートPCで作成した文章をデスクトップPCのアプリへ貼り付けたりできます。([Microsoft Learn][1])
便利な機能ですが、クリップボードには次のような情報が一時的に入ることがあります。
- メールアドレス
- パスワードや認証コード
- 顧客情報
- 文書の一部
- ファイル
- 社内システムのURL
そのため、「使える共有機能をすべて有効にする」のではなく、実際に必要なものだけを有効にするのが安全です。
| 利用状況 | 推奨設定 |
|---|---|
| 自宅の個人PC同士 | 必要に応じてクリップボード共有を有効にする |
| 仕事用PCと個人PC | 原則として共有しない。組織ルールを確認する |
| 機密情報を扱うPC | クリップボード共有を無効にする |
| マウスとキーボードだけ共有したい | クリップボード共有とファイル転送を無効にする |
Mouse Without Bordersを導入する目的が「マウスを持ち替えないこと」だけなら、最初は入力共有だけを使い、クリップボード共有は必要になってから有効にするとよいでしょう。
ファイル転送には制限がある
Mouse Without Bordersでは、クリップボードを利用してPC間でファイルを転送できます。ただし、一般的なファイル共有サービスの代わりとして使えるほど自由度が高いわけではありません。
Microsoftの公開情報では、コピーと貼り付けによるファイル転送は1ファイルずつで、上限は100MBです。フォルダーや複数ファイルをそのままコピーすることはできず、必要な場合は先にZIPファイルへまとめる方法が案内されています。ドラッグ&ドロップも1ファイルに限られ、ネットワーク上のファイルには対応しません。([Microsoft Learn][1])
| 転送内容 | 対応状況 |
|---|---|
| 100MB以下の単一ファイル | 転送可能 |
| 複数ファイル | そのままでは不可 |
| フォルダー | そのままでは不可 |
| ZIPにまとめたファイル | 単一ファイルとして転送可能 |
| ネットワーク上のファイル | ドラッグ&ドロップでは利用不可 |
大容量ファイルや多数のファイルを移動する場合は、OneDrive、共有フォルダー、USBメモリなど、別の転送手段を使った方が確実です。
管理者アプリやロック画面を操作する設定には注意する
通常の状態では、Mouse Without Bordersから管理者権限で動作するアプリや、別PCのロック画面を操作できない場合があります。
これらも操作したい場合は、PowerToysを管理者として起動し、「Use Service」または「サービスを使用」を有効にする方法があります。サービスモードでは、Mouse Without BordersがSystemアカウントのサービスとして動作します。([Microsoft Learn][1])
ただし、Microsoftはサービスモードについて、利便性が高まる一方で、Mouse Without Bordersが攻撃経路として悪用された場合のセキュリティリスクも増えると警告しています。([Microsoft Learn][1])
個人利用でも、次のような明確な理由がなければ安易に有効にしない方が安全です。
- ロック画面を別PCから操作する必要がある
- 管理者権限のアプリを頻繁に操作する
- リスクを理解したうえで、信頼できるネットワークだけで使う
- PCを共有する利用者全員が設定内容を把握している
通常のアプリ操作だけで足りる場合は、サービスモードを無効のまま使用してください。不要になった場合は、「Uninstall Service」または「サービスをアンインストール」から削除できます。([Microsoft Learn][1])
接続できないときの確認ポイント
2台目で「Connect」を押しても接続できない場合は、次の順番で確認します。
両方のPCが同じネットワークに接続されているか
Mouse Without Bordersの初期接続では、まず両方のPCが同じネットワーク上にあることを確認します。片方が家庭内Wi-Fi、もう片方がスマートフォンのテザリングなど、別のネットワークへ接続されていると接続できません。([Microsoft Learn][1])
コンピューター名を正確に入力しているか
表示名や利用者名ではなく、1台目のMouse Without Borders設定画面に表示されているホスト名を入力します。
似たPC名が複数ある環境では、ハイフン、数字、英字の大文字・小文字などを含め、表示内容をそのまま確認してください。
セキュリティキーが一致しているか
手入力すると、似た文字を間違えることがあります。コピーできる環境であっても、第三者が閲覧できるチャットやクラウドメモを経由させないようにしてください。
キーを再生成した場合、以前のキーでは接続できません。
ファイアウォールに遮断されていないか
Windowsのファイアウォールやセキュリティ製品によって、Mouse Without Bordersの通信が遮断される場合があります。
設定画面には、Mouse Without Borders用のファイアウォール規則を追加する項目があります。ただし、組織管理端末では規則を独断で変更せず、管理者へ確認してください。([Microsoft Learn][1])
接続を更新する
一度接続できていたPCが反応しなくなった場合は、「Refresh connections」または「接続を更新」を実行します。両方のPCがネットワークへ接続されたままであることも確認してください。([Microsoft Learn][1])
接続を解除・リセットする方法
Mouse Without Bordersを一時的に使わない場合は、PowerToysの設定からMouse Without Bordersを無効にします。
今後使用しないPCとの接続を整理する場合や、接続用キーが第三者に知られた可能性がある場合は、新しいキーを生成してください。
ただし、「New Key」または「新しいキー」を実行すると、新しいキーが発行されるだけでなく、現在の接続がリセットされます。接続を継続したいほかのPCがある場合も、新しいキーを使って再接続が必要になります。([Microsoft Learn][1])
目的別に整理すると、次のようになります。
| 目的 | 対応方法 |
|---|---|
| 一時的に操作を止めたい | Mouse Without Bordersを無効にする |
| 接続が不安定 | 接続を更新する |
| キーを変更したい | New Keyで新しいキーを生成する |
| 既存接続をすべてやり直したい | New Keyでリセットして再接続する |
| サービスモードをやめたい | サービスをアンインストールする |
| PowerToys自体が不要 | Windowsの設定からPowerToysをアンインストールする |
快適に使うためのおすすめ設定
初めて設定する場合は、すべての機能を有効にするのではなく、次のような構成から始めると扱いやすくなります。
| 設定 | おすすめ |
|---|---|
| マウス・キーボード共有 | 有効 |
| デバイスレイアウト | 実際の左右関係に合わせる |
| クリップボード共有 | 必要な場合のみ有効 |
| ファイル転送 | 必要な場合のみ有効 |
| 画面端での切り替え | 誤操作がなければ有効 |
| Shift・Ctrlを使った切り替え | 誤操作が多い場合に利用 |
| 画面の隅で切り替えない設定 | 誤切り替え対策として有効 |
| 全画面表示中の切り替え停止 | ゲームや動画を使う場合に有効 |
| サービスモード | 原則として無効 |
| 同じサブネットのみ | 利用環境と組織方針に応じて検討 |
便利さを優先して共有範囲を広げるより、最初はマウスとキーボードだけを共有し、必要性が確認できた機能を追加する方が安全です。
デスクトップとノートPCの持ち替えをなくす設定の要点
デスクトップPCとノートPCを同時に使うなら、PowerToysのMouse Without Bordersを設定することで、マウスとキーボードの持ち替えを減らせます。
設定の流れは次のとおりです。
- 両方のPCにPowerToysをインストールする
- 1台目でMouse Without Bordersの新しいキーを生成する
- 2台目に1台目のコンピューター名とキーを入力する
- 実際の机上配置に合わせてデバイスを並べ替える
- 必要な場合だけクリップボード共有やファイル転送を有効にする
- 管理者アプリやロック画面を操作するサービスモードは慎重に判断する
まずは2台のPCを同じネットワークへ接続し、入力共有だけで動作を確認してください。画面端での切り替えに慣れてから、クリップボード共有や誤操作防止の設定を追加すると、利便性と安全性のバランスを取りやすくなります。
[1]: https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/powertoys/mouse-without-borders “を使用して複数のコンピューターを制御する PowerToysMouse Without Borders | Microsoft Learn”
[2]: https://learn.microsoft.com/en-us/windows/powertoys/install “How to Install PowerToys on Windows 11 and Windows 10 | Microsoft Learn”

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