Microsoft Teamsでは、会議向けに設定していた録音・文字起こしのカスタム通知を、1対1のTeams通話にも適用できるようになります。既存の設定が自動的に通話へ引き継がれるため、管理者による新しいポリシー設定は必須ではありません。
ただし、現在の通知文に「この会議では」といった会議専用の表現を使っている組織は注意が必要です。そのまま1対1通話でも表示される可能性があるため、展開前に通知文、対応言語、プライバシーポリシーへのリンクを確認しておく必要があります。
Microsoft Teamsの録音・文字起こし通知で何が変わるのか
Microsoft 365 Roadmap ID 567302で予告されたのは、Teams通話で録音または文字起こしを開始した際に表示される通知メッセージの一部を、IT管理者がカスタマイズできる機能です。
ロードマップ項目は2026年7月8日に掲載され、7月10日に更新されました。2026年7月10日時点では開発中で、2026年8月の一般提供が予定されています。対象にはTargeted Releaseと一般提供が含まれています。(Microsoft)
その後の管理者向け案内では、今回の変更が会議で利用できる既存のカスタム通知を、1対1のTeams通話へ拡張するものであることが明確になりました。新しい管理画面や別の通知ポリシーが追加されるのではなく、現在の会議ポリシーで設定した内容が通話にも使われます。(MS Message Center)
| 項目 | これまで | 変更後 |
|---|---|---|
| 会議の録音・文字起こし通知 | カスタマイズ可能 | 引き続きカスタマイズ可能 |
| 1対1のTeams通話 | 標準通知を表示 | 会議用に設定したカスタム通知を適用 |
| 新しい管理ポリシー | なし | 追加されない |
| 既存設定の移行 | 対象外 | 自動的に通話へ適用 |
| 未設定言語の表示 | Teamsの標準メッセージ | Teamsの標準メッセージ |
今回変わるのは、主にユーザーへ表示する通知文の適用範囲です。録音データの保存場所、文字起こしデータの処理方法、録音できるユーザーの権限などが、この機能だけで変更されるわけではありません。(MS Message Center)
対象プラットフォームと展開時期
ロードマップと管理者向け案内で示されている対象は、Windowsデスクトップ、macOS、TeamsのWeb版です。対象クラウドには、Worldwideの標準マルチテナント環境、GCC、GCC High、DoDが含まれます。(MS Message Center)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象サービス | Microsoft Teams |
| 対象機能 | 1対1通話の録音・文字起こし通知 |
| Windows | 対象 |
| macOS | 対象 |
| Web版 | 対象 |
| iOS・Android | 今回の通話向け機能は現時点で対象外 |
| 状態 | 開発中 |
| リリース段階 | Targeted Release、一般提供 |
| 対象クラウド | Worldwide、GCC、GCC High、DoD |
展開予定は次のとおりです。(MS Message Center)
| 環境 | 展開予定 |
|---|---|
| Targeted Release・Worldwide | 2026年8月上旬に開始・完了予定 |
| 一般提供・Worldwide、GCC | 2026年8月中旬に開始・完了予定 |
| 一般提供・GCC High、DoD | 2026年9月中旬に開始・完了予定 |
Microsoft 365 Roadmapに記載される時期は予定であり、テナントや地域によって反映時期が前後する可能性があります。管理者はロードマップだけでなく、Microsoft 365管理センターのメッセージセンターも継続して確認する必要があります。(Microsoft)
モバイル版の扱いには注意が必要
既存の会議向けカスタム通知について、Microsoft LearnではiOSとAndroidがプレーンテキスト表示に対応していると説明されています。一方、今回追加される1対1通話へのカスタム通知適用は、現時点でモバイルクライアントの対象外です。(Microsoft Learn)
そのため、次の2つを混同しないことが重要です。
- Teams会議では、モバイルでも一部のカスタム通知を表示できる
- 1対1通話への今回の拡張は、Windows、Mac、Webが対象である
スマートフォンからのTeams通話が多い組織では、デスクトップとモバイルで通知内容が異なる期間が生じる可能性があります。
ユーザーの操作と画面表示はどう変わるのか
ユーザーが録音または文字起こしを開始する操作そのものは、大きく変わりません。変わるのは、開始時に表示される通知の内容です。
暗黙的な通知ではバナーが表示される
明示的な同意を必須にしていない場合、録音または文字起こしの開始時に通知バナーが表示されます。
管理者はバナー内の同意・通知メッセージをカスタマイズできます。録音を開始したユーザー名など、Teamsが自動的に表示する固定情報は変更できません。(Microsoft Learn)
明示的な同意を利用する場合はダイアログが表示される
明示的な同意を求めるポリシーを使用している場合、参加者がマイク、カメラ、画面共有などを利用しようとした際に、同意を求めるダイアログが表示されます。
同意しない参加者は、録音や文字起こしの対象となる操作を制限されます。1対1通話の録音同意はTeamsの通話ポリシーで管理され、同意結果は監査情報として確認できます。(Microsoft Learn)
通話を開始したユーザーの会議ポリシーが使われる
1対1通話で表示されるカスタム通知は、録音または文字起こしを開始したユーザーに割り当てられた会議ポリシーによって決まります。(MS Message Center)
例えば、次のような運用になります。
- 営業部用ポリシーには、顧客対応向けの通知文を設定
- 人事部用ポリシーには、面談向けの通知文を設定
- 営業部のユーザーが録音を開始した場合は、営業部用の通知文を表示
- 人事部のユーザーが録音を開始した場合は、人事部用の通知文を表示
同じ相手との通話でも、誰が録音や文字起こしを開始したかによって表示内容が異なる可能性があります。
通話ポリシーと会議ポリシーを分けて考える
今回の変更で特に混乱しやすいのが、録音・文字起こしを許可する設定と、通知文を設定する場所が異なる点です。
| 管理する内容 | Teams管理センターの場所 | 主な設定 |
|---|---|---|
| 1対1通話の録音を許可する | 音声 → 通話ポリシー | Cloud recording for calling |
| 1対1通話の文字起こしを許可する | 音声 → 通話ポリシー | Transcription |
| 録音・文字起こし通知をカスタマイズする | 会議 → 会議ポリシー | Show customized in-meeting notification for recording and transcription |
| プライバシーポリシーURLを設定する | 会議 → 会議設定 | Privacy and Security URL |
| 通話で明示的同意を求める | 通話ポリシー | ExplicitRecordingConsentに相当する設定 |
1対1通話の録音と文字起こしは、通話ポリシーで許可または禁止します。一方、表示する文章は既存の会議ポリシーから取得されます。(Microsoft Learn)
「通話ポリシーで録音を有効にしたのに通知文を変更できない」という場合は、通話ポリシーではなく会議ポリシーを確認してください。
カスタム通知を設定する手順
既存の会議向けカスタム通知は、Teams管理センターから設定します。
- Teams管理センターを開きます。
会議から会議ポリシーへ移動します。- 対象となる既存ポリシーを選ぶか、新しいポリシーを作成します。
録音と文字起こしセクションを開きます。Show customized in-meeting notification for recording and transcriptionを有効にします。Customize notificationを選択します。- CSVテンプレートをダウンロードします。
- 言語と利用場面ごとにメッセージを入力します。
- CSVファイルをアップロードします。
- プレビューで表示内容を確認し、ポリシーを保存します。
Microsoftの管理者向け案内では、新しい通話専用設定を作るのではなく、この既存設定が1対1通話にも自動適用されると説明されています。(Microsoft Learn)
CSVで設定できる6つの通知場面
CSVテンプレートでは、通知対象者と同意方式に応じてメッセージを分けられます。(Microsoft Learn)
| シナリオ名 | 表示対象 |
|---|---|
initiator_implicit | 暗黙的な通知環境で録音・文字起こしを開始したユーザー |
participant_implicit | 暗黙的な通知環境で録音・文字起こしに参加するユーザー |
initiator_explicit | 明示的同意環境で録音・文字起こしを開始したユーザー |
participant_explicit_requested | 明示的同意をまだ回答していない参加者 |
participant_explicit_provided | 明示的同意をすでに回答した参加者 |
agreement_dialogue | マイクやカメラの使用時に表示される同意ダイアログ |
すべて同じ文章にすることもできますが、開始者と参加者では伝えるべき内容が異なります。
開始者には「参加者へ通知されました」と表示し、参加者には「この通話は録音されています」と表示するなど、立場に合わせて書き分けると分かりやすくなります。
通知文を作成するときの仕様と注意点
1つのメッセージは200文字以内
カスタムメッセージは、1つの言語・シナリオにつき200文字以内です。長い社内規程や個人情報保護方針をすべて書くのではなく、要点を短く記載し、詳細はプライバシーポリシーへ誘導する構成が適しています。(Microsoft Learn)
日本語はja-JPで設定する
CSVテンプレートは複数言語に対応しており、日本語の言語コードはja-JPです。
参加者のTeamsクライアント言語に対応するメッセージが登録されていない場合、Teamsの標準メッセージが表示されます。外部ユーザーとの通話が多い場合は、日本語だけでなく英語のen-USやen-GBも準備しておくとよいでしょう。(Microsoft Learn)
<empty>と未入力は意味が異なる
対象言語やシナリオのカスタムメッセージが存在しない場合、Teamsの標準メッセージが表示されます。
一方、CSVに<empty>を入力すると、カスタマイズ可能なメッセージ部分を表示せず、開始者名やプライバシーポリシーなどの固定情報だけを表示します。<empty>は「標準メッセージに戻す」という意味ではありません。(Microsoft Learn)
HTMLリンクを使える場所は限定される
通常の通知バナーでは、プレーンテキストに加えてHTMLの<a>タグを使用できます。複数のリンクを含めることも可能です。
ただし、明示的同意のダイアログではプレーンテキストのみがサポートされ、<a>タグは利用できません。(Microsoft Learn)
「Privacy policy」の表示名は変更できない
通知に表示されるプライバシーポリシーのリンク先URLは変更できますが、リンクの表示文字である「Privacy policy」は固定されています。
URLはTeams管理センターの会議設定にあるPrivacy and Security URL、またはPowerShellのLegalURLパラメーターから設定できます。(Microsoft Learn)
そのまま使える通知文の例
次の文章は構成例です。実際に利用する際は、社内規程、利用目的、対象データ、法務部門の見解に合わせて調整してください。
暗黙的な通知の例
この通話または会議では、記録作成と業務上の確認を目的として、録音または文字起こしを行います。詳細はプライバシーポリシーをご確認ください。
明示的な同意を求める例
録音または文字起こしに同意すると、音声、映像、共有内容が記録対象になります。内容を確認したうえで操作を続けてください。
外部顧客とのサポート通話の例
応対品質の確認とお問い合わせ内容の記録を目的として、この通話を録音または文字起こしする場合があります。
「この会議」という表現だけを使うと、1対1通話で不自然になります。会議と通話の両方で使うポリシーでは、「この通話または会議」「このセッション」など、どちらにも適用できる表現に変更するのが安全です。
対応が必要かを判断する基準
| 現在の利用状況 | 対応優先度 | 推奨対応 |
|---|---|---|
| 通話の録音・文字起こしを禁止している | 低 | 例外ポリシーがないか確認 |
| 標準通知だけを使用している | 低~中 | 組織独自の通知が必要か判断 |
| 会議用のカスタム通知を設定済み | 高 | 通話でも通じる文章か確認 |
| 明示的同意を有効にしている | 高 | 同意ダイアログと操作制限をテスト |
| 顧客、採用候補者、取引先との通話が多い | 高 | 法務・個人情報保護担当を含めて文面確認 |
| 複数言語の利用者がいる | 高 | 日本語以外の通知文と標準表示へのフォールバックを確認 |
| iOS・Androidでの通話が中心 | 中 | モバイルが今回の対象外であることを周知 |
特に優先度が高いのは、すでに会議向けのカスタム通知を設定している組織です。Microsoftはポリシー変更を不要としていますが、これは「何もしなくても既存設定が使われる」という意味です。既存の文面が通話に適していることまで保証するものではありません。(MS Message Center)
展開前に管理者が準備すべきこと
現在のポリシー割り当てを棚卸しする
まず、次のポリシーを確認します。
- 通話録音が許可されているユーザー
- 通話の文字起こしが許可されているユーザー
- カスタム通知を設定している会議ポリシー
- 明示的同意を有効にしているポリシー
- 部門別、グループ別に割り当てているカスタムポリシー
Globalポリシーだけでなく、ユーザーやグループへ個別に割り当てたポリシーも確認してください。
既存通知から会議専用の表現をなくす
CSVをダウンロードし、次のような表現を検索します。
- この会議
- 会議参加者
- 会議の主催者
- 会議終了後
- 会議の議事録
1対1通話にも表示されることを考え、「通話または会議」「参加者」「録音または文字起こしの開始者」などの表現に置き換えます。
プライバシーポリシーのリンクを確認する
リンク切れ、認証が必要な社内専用URL、外部ユーザーが閲覧できないページになっていないかを確認します。
顧客や取引先との通話で利用する場合、組織外からアクセスできる公開ページを指定しなければ、通知を見た相手が詳細を確認できません。
Targeted Releaseでテストする
可能であれば、少人数の検証ユーザーをTargeted Releaseの対象にし、次の組み合わせを確認します。
- WindowsからWindowsへの通話
- WindowsからWeb版への通話
- MacからWindowsへの通話
- 社内ユーザー同士の通話
- 外部ユーザーとの通話
- 録音のみを開始した場合
- 文字起こしのみを開始した場合
- 録音と文字起こしを同時に開始した場合
- 暗黙的な通知
- 明示的な同意
- 日本語クライアント
- 英語クライアント
- 異なる会議ポリシーを持つユーザー同士
特に、録音・文字起こしを開始するユーザーを入れ替え、どちらのポリシーの通知が表示されるかを確認することが重要です。
ヘルプデスクと利用者向け資料を更新する
録音や文字起こしの開始時に、これまでと異なる文章が表示されるため、利用者から「新しい警告が出た」「同意しないとマイクを使えない」といった問い合わせが発生する可能性があります。
社内FAQには、少なくとも次の内容を追加しておくと対応しやすくなります。
- 通知が表示される理由
- 録音・文字起こしの利用目的
- 明示的同意を拒否した場合の動作
- 録音や文字起こしに関する問い合わせ先
- プライバシーポリシーの確認方法
- モバイル版では表示が異なる可能性があること
導入時に失敗しやすいポイント
「設定変更不要」を「確認不要」と受け取る
新しいポリシーを作る必要はありませんが、既存設定が自動的に適用されるからこそ、事前確認が必要です。
会議専用の通知文が顧客との電話に突然表示されると、利用者だけでなく相手にも混乱を与えます。
通話ポリシーだけを確認する
録音と文字起こしの許可は通話ポリシーですが、カスタム通知は会議ポリシーで管理します。片方だけを確認すると、実際の表示を把握できません。
日本語だけを設定する
相手のクライアント言語に対応するカスタム文がない場合は標準メッセージへ戻ります。海外拠点や外部ユーザーとの通話がある組織では、英語など主要言語も設定してください。
通知を表示すれば法的要件を満たすと判断する
Teamsの通知機能は、録音や文字起こしの実施をユーザーへ知らせる仕組みです。表示しただけで、すべての国・地域や業種の法的要件を満たすとは限りません。
通知方式、明示的同意の要否、保存期間、利用目的、第三者提供の扱いは、法務・コンプライアンス・個人情報保護の担当者と確認する必要があります。
まとめ
Microsoft TeamsのRoadmap ID 567302は、会議向けに用意されている録音・文字起こしのカスタム通知を、1対1のTeams通話にも広げる更新です。
Windows、Mac、Web版が対象となり、WorldwideとGCCでは2026年8月、GCC HighとDoDでは2026年9月の展開が予定されています。既存の会議ポリシーが自動的に使われ、新しい管理コントロールは追加されません。(MS Message Center)
管理者が最初に行うべきことは、現在のカスタム通知CSVを確認し、「この会議」といった会議専用の表現を修正することです。そのうえで、ポリシー割り当て、対応言語、プライバシーポリシーURL、明示的同意の表示を検証し、Targeted Releaseの対象ユーザーで実際の1対1通話をテストしてください。

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