Microsoft Teams compliance recordingガイダンス更新|対象範囲と管理者の対応

Microsoft Teamsの録画機能を使っている管理者の中には、「今回の更新で既存の会議や通話の録画方法が変わるのか」「新しい設定をすぐに有効化する必要があるのか」と気になる人もいるでしょう。

結論からいうと、今回確認された「Microsoft updates third-party compliance recording guidance for Microsoft Teams」は、一般的なTeams会議録画の操作変更ではありません。主な対象は、Microsoft認定のサードパーティ製コンプライアンス記録ソリューションを利用している、または導入を検討している組織です。

既存テナントに一律の設定変更が強制されるわけではありません。ただし、通話キュー、750人規模の会議、複数のTeams端末、政府機関向けクラウドなどを利用している場合は、現在の構成がMicrosoftのサポート条件に合っているか確認する必要があります。

なお、関連するTeams録画概要ページは2026年7月9日更新、サードパーティ製コンプライアンス記録の主ページには表示上「2026年3月15日更新」と記載されています。本記事では、2026年7月10日時点で公開されている現行ガイダンスを基準に整理します。(Microsoft Learn)

目次

Microsoft Teams compliance recordingのガイダンス更新で何が変わるのか

Microsoft Teams compliance recordingは、組織の規制対応や内部統制を目的として、通話や会議をポリシーに基づき自動的に記録する仕組みです。

Microsoft自身が記録データを保管・管理する単独製品を提供するのではなく、Microsoft認定パートナーが開発した記録ボットと記録基盤をTeamsに連携させます。管理者がユーザーや通話キューに設定したポリシーに従い、記録ボットが対象の通話や会議へ自動参加します。(Microsoft Learn)

旧公開版と現行ガイダンスを比較すると、実務上は次の点が重要です。

確認項目旧公開版の主な記載現行ガイダンス管理者への影響
対象範囲会議、ウェビナー、通話会議、イベント、通話、通話キュー通話キューを独立した記録対象として管理する必要がある
大規模会議250人を超える会議で性能影響の可能性1会議当たり750人までテスト済み750人を超える会議では別方式を検討する
通話キューの着信エージェントのユーザーポリシーを中心とした説明通話キュー単位で記録し、エージェントへのポリシー割り当ては不要既存のユーザーポリシー設計を見直す必要がある
対象ライセンスMicrosoft 365 E3、E5、Business PremiumなどG3、G5、Business Standardなども明記対象ユーザーとライセンスの照合が必要
サポート窓口認定パートナー中心認定パートナーへの一次問い合わせを明確化障害対応手順をパートナー起点にする

これらは、2026年7月10日に全テナントへ一斉展開された新しい画面機能を意味するものではありません。現在のMicrosoft Teams compliance recordingにおける対象範囲、構成方法、サポート境界を明確にしたガイダンスとして捉えるのが適切です。(GitHub)

通常のTeams録画とは異なる機能

Microsoft Teams compliance recordingと、会議参加者が録画ボタンを押して開始する通常の録画は別の機能です。

Microsoftは、通常の録画を「Convenience recording」、規制対応のための記録を「Compliance recording」と区別しています。

項目通常のTeams録画サードパーティ製コンプライアンス記録
録画開始者Teamsユーザー管理者が設定したシステム
開始方法ユーザーが手動で開始ポリシーに基づき自動開始
記録の所有者会議の開催者など組織、管理者、コンプライアンス担当者
保存先OneDriveまたはSharePointサードパーティ製記録ソリューション
保持期間Microsoft 365側のポリシーパートナー製品側で設定
参加者への通知ありあり
Teamsの明示的同意機能利用可能コンプライアンス記録では非対応
ユーザーによる停止権限があれば可能構成によっては停止不可

したがって、通常のTeams会議録画だけを利用している組織は、今回のガイダンスを理由に録画ポリシーを変更する必要はありません。

一方、金融、保険、医療、公共、コールセンターなどで、対象者の通話を漏れなく記録しなければならない組織は確認が必要です。コンプライアンス記録では、ユーザーが記録を停止できず、記録データにも直接アクセスできない構成が使用される場合があります。(Microsoft Learn)

対象となる会議、通話、端末

現行ガイダンスでは、Microsoft Teams compliance recordingの対象として次の通信形態が示されています。

  • Teams会議
  • Teamsイベント
  • Teams通話
  • Teams通話キュー

参加者への記録通知は、端末によって表示方法が異なります。

端末・参加方法主な通知方法
Teamsデスクトップアプリ画面上の通知
Teams Web版画面上の通知
Teamsモバイルアプリ画面上の通知
Teams Phone画面上の通知
Teams Rooms画面上の通知
SIP電話音声による通知
Skype for Business音声による通知
電話会議のダイヤルイン参加者音声による通知
PSTN発信者音声による通知

Teamsアプリを使わず、電話番号から参加する相手にも音声通知が行われます。ただし、通知の内容や記録へのアクセス可否は、採用しているパートナー製品とその構成によって異なります。

管理者はPC上で通知が表示されることだけを確認するのではなく、モバイル、Teams Phone、会議室、外線電話を含む実際の利用経路でテストする必要があります。(Microsoft Learn)

通話キューの記録方法は特に確認が必要

今回の現行ガイダンスで最も実務への影響が大きいのは、Teams Phoneの通話キューです。

着信通話は通話キュー単位で記録する

通話キュー向けのコンプライアンス記録を有効にすると、エージェントが応答した通話キューの着信が記録されます。

この場合、エージェント個人にコンプライアンス記録ポリシーを割り当てる必要はありません。エージェントにユーザー単位のポリシーが割り当てられていても、その通話キューへの着信ではポリシーが無視され、通話キュー側の設定が優先されます。

たとえば、次のように動作します。

通話の種類必要な設定
顧客から通話キューへの着信通話キュー側のコンプライアンス記録設定
エージェントから顧客への発信エージェントへのユーザー単位の記録ポリシー
エージェント個人への直接着信エージェントへのユーザー単位の記録ポリシー
エージェント間のTeams通話エージェントへのユーザー単位の記録ポリシー

着信だけを確認して導入を完了すると、エージェントからの折り返し電話が記録されない可能性があります。規制上、着信と発信の両方を保存する必要がある組織は、通話キュー設定とユーザーポリシーを組み合わせてください。

また、通話キュー向けコンプライアンス記録を利用するには、通話キューの会議モードを有効にする必要があります。エージェントのルーティング方式は各方式に対応しています。Microsoftは2025年12月に、サードパーティ製ISVによる通話キュー単位のコンプライアンス記録対応を発表しており、現行ガイダンスにもこの運用モデルが反映されています。(Microsoft Learn)

大規模会議では750人を判断基準にする

Microsoftの現行ガイダンスでは、コンプライアンス記録プラットフォームは1会議当たり最大750人までテストされています。

750人を超える会議で、2つの記録ボットを組み合わせる「paired bot mode」を使用した場合、記録性能に影響が出る可能性があります。

参加者数が多い場合は、次のように判断します。

想定規模推奨対応
750人以下パートナーの対応条件を確認したうえで会議をテスト
750人を超える可能性がある本番前に負荷試験を実施
数千人規模の全社配信通常会議ではなくタウンホールなどを検討
記録欠落が許容されないパートナーに冗長構成と障害時動作を確認

750人は「どのパートナー製品でも必ず正常に記録できる」という保証値ではありません。映像数、画面共有、ネットワーク、記録ボットの構成などによって結果が変わるため、採用製品での事前検証が必要です。(Microsoft Learn)

対応ライセンスを確認する

Microsoftが現行ガイダンスで示している対象ライセンスは次のとおりです。

  • Microsoft 365 A3、A5
  • Microsoft 365 E3、E5
  • Microsoft 365 G3、G5
  • Microsoft 365 Business Premium
  • Microsoft 365 Business Standard
  • Office 365 A3、A5
  • Office 365 E3、E5
  • Microsoft Teams Rooms Pro
  • Microsoft Teams Rooms Basic
  • Teams Shared Device

Microsoft 365 Business Standardも明記されていますが、これだけで外線通話やパートナー製記録サービスのすべての費用が含まれるわけではありません。Teams Phone、電話番号、PSTN接続、記録製品の契約などが別途必要になる場合があります。

ライセンス確認では、「Microsoftの対象ライセンスを持っているか」と「導入するパートナー製品の契約条件を満たしているか」を分けて確認してください。(Microsoft Learn)

利用できない構成とクラウド環境

Microsoft Teams compliance recordingは、すべての通話環境に対応するわけではありません。

現行ガイダンスでは、次のシナリオが非対応とされています。

  • E911緊急通報サービス
  • Survivable Branch Applianceモードで動作するユーザー
  • インドのユーザーによるPSTN通話

また、サードパーティ製アプリケーションの記録状態を扱うGraph APIは、グローバルサービス、米国政府L4、米国政府L5のDoD環境で利用できます。一方、21Vianetが運営する中国向けクラウドでは、このGraph APIは提供対象外です。

中国向けクラウドを利用しているからといって、あらゆる記録方式が一律に利用できないとは限りません。ただし、グローバル環境と同じ設計をそのまま適用せず、パートナーへ対応可否を確認する必要があります。(Microsoft Learn)

展開時期と既存ユーザーへの影響

今回の主な公式ページには、一般的なMicrosoft 365機能更新のような「対象指定リリースから開始」「全世界への展開完了」といった段階的展開スケジュールは記載されていません。

そのため、次のように整理できます。

  • Teamsクライアントの録画ボタンが突然変わる更新ではない
  • 既存のコンプライアンス記録ポリシーが自動的に書き換えられるわけではない
  • 利用者がアプリを手動更新して有効化する機能ではない
  • 実際の対応状況はパートナー製品とテナント構成に依存する
  • 管理者は「展開を待つ」のではなく、現行構成を点検する必要がある

特に通話キューについては、エージェント単位のポリシーだけで着信と発信の両方を記録できていると決めつけないことが重要です。(Microsoft Learn)

管理者が準備すべきこと

認定された記録パートナーか確認する

Microsoftがサポートするのは、原則として公式一覧に掲載された認定パートナーのコンプライアンス記録ソリューションです。

非認定製品を使用している場合、Microsoftがサポートケースを受け付けない可能性があります。障害が発生したときも、まず記録パートナーへ問い合わせ、パートナー側の調査後に必要に応じてMicrosoftへエスカレーションする流れです。

製品選定時は、機能表だけでなく次の点も確認してください。

  • Microsoftの認定状況
  • 認定対象となっている製品名とバージョン
  • 対応する通話、会議、イベント、通話キュー
  • 障害時の責任分界
  • データの保存地域
  • 保存期間と削除方法
  • 検索、監査、エクスポート機能
  • 記録ボット停止時に通話を継続するか切断するか

認定パートナーの一覧は随時更新されるため、導入時だけでなく契約更新時にも確認する必要があります。(Microsoft Learn)

アプリケーションインスタンスとポリシーを棚卸しする

Teamsのコンプライアンス記録では、記録ボット用のアプリケーションインスタンスと、対象ユーザーに割り当てるコンプライアンス記録ポリシーを使用します。

管理者は少なくとも次の情報を一覧化してください。

  • 記録パートナー名
  • アプリケーションID
  • アプリケーションインスタンスのObject ID
  • コンプライアンス記録ポリシー名
  • ポリシーを割り当てたユーザーまたはグループ
  • 対象となる通話キュー
  • 記録対象となる通信の種類
  • 記録データの保存先と保存期間

ユーザー単位の割り当ては、次のようなPowerShellコマンドで確認できます。

Get-CsOnlineUser [email protected] |
    Select-Object SipAddress, TenantId, TeamsComplianceRecordingPolicy

ポリシーを作成・変更する際は、パートナーから提供された正しいアプリケーションIDとObject IDを使用します。Microsoft Learnに掲載されているサンプルIDを本番環境へそのまま設定してはいけません。(Microsoft Learn)

通知文と実際の利用経路をテストする

記録通知は法務・コンプライアンス上の重要な要素です。管理画面上の設定確認だけで済ませず、次の組み合わせで実通話をテストしてください。

  • 社内ユーザー同士のTeams通話
  • 外部組織とのTeams通話
  • PSTNからの着信
  • PSTNへの発信
  • 通話キューへの着信
  • モバイルアプリからの参加
  • Teams Phoneからの参加
  • Teams Roomsからの参加
  • SIP電話からの参加
  • 電話会議のダイヤルイン参加

通知が聞こえることだけでなく、通知言語、音量、タイミング、記録失敗時の動作まで確認します。日本語と英語の利用者が混在する組織では、各端末の言語設定を変えたテストも必要です。

対応要否を判断するチェック表

現在の利用状況対応要否実施すべきこと
通常のTeams会議録画だけを使用原則不要通常の会議・通話録画ポリシーを継続管理
サードパーティ製記録を検討中必要認定パートナー、ライセンス、保存場所を確認
会議と1対1通話を記録中必要ユーザーポリシーと通知動作を棚卸し
通話キューを記録中優先度が高い着信と発信の設定を分けて確認
750人を超える会議を開催優先度が高いタウンホールへの変更や負荷試験を検討
非認定の記録製品を使用優先度が高いMicrosoftサポート対象外となるリスクを確認
中国向けクラウドを使用個別確認が必要Graph APIとパートナー製品の対応状況を確認
E911、SBA、インドPSTNを使用個別確認が必要非対応シナリオを避ける代替設計を検討

管理者は通話キューとサポート条件から確認する

Microsoft Teams compliance recordingの今回のガイダンスは、すべてのTeamsユーザーに新しい操作を求める更新ではありません。

対応が必要なのは、主にサードパーティ製コンプライアンス記録を利用する組織です。なかでも、最初に確認すべきなのは次の3点です。

  • 通話キューの着信とエージェントの発信を漏れなく記録できているか
  • 利用中の製品がMicrosoft認定パートナーの対象製品か
  • 会議規模、端末、ライセンス、非対応シナリオが現行条件に合っているか

まず現在のポリシー、対象ユーザー、通話キュー、記録パートナーを一覧化してください。そのうえで実際の着信・発信・会議をテストし、記録データと参加者通知の両方が期待どおりに動作することを確認するのが確実です。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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