Microsoft Teamsでは、会議後に文字起こしを保存せず、Intelligent recapのAI Summary(AI要約)だけを残すための新しい設定が追加される予定です。主催者は会議前の会議オプションから、主催者と対象参加者は会議中に設定を有効化できます。
2026年8月1日時点では開発中で、WorldwideのStandard Multi-Tenant環境を対象に、2026年10月の一般提供が予定されています。ただし、文字起こしを保存する通常のIntelligent recapと同じ機能がすべて残るわけではありません。Chapters、Topics、Mentions、Audio recapなどは利用できない場合があります。
この機能は、「発言全文は残したくないが、決定事項やタスクの要約は会議後も確認したい」という組織に適しています。一方、発言者、時刻、正確な表現を後から確認する必要がある会議では、従来どおり文字起こしを保存した方が安全です。
Teamsで文字起こしを保存せずAI要約だけ残せるようになる
これまでTeamsで文字起こしを保存しない場合、会議中にCopilotを利用することはできても、会議後に音声内容をもとにしたCopilotの履歴や要約を確認できませんでした。
現行の「Only during the meeting(会議中のみ)」では、保存されない一時的な音声テキスト変換データを使ってCopilotが動作します。しかし、文字起こしを開始しないまま会議を終了すると、その音声データを使ったCopilotは会議後に利用できなくなります。(Microsoft サポート)
今回追加される機能では、この制約が緩和されます。文字起こしそのものは会議後に保持しない一方、Intelligent recapが生成したAI Summaryは会議後も残せるようになります。
違いを整理すると、次のとおりです。
| 設定・利用方法 | 会議後の文字起こし | 会議後のAI Summary | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| Copilotを「会議中のみ」で利用 | 保存しない | 原則として残らない | 会議中だけCopilotを使いたい |
| Copilotを「会議中および会議後」に設定 | 保存する | 残る | 詳細な議事確認や会議後の質問に使いたい |
| 新しいIntelligent recap設定 | 保存しない | 残る予定 | 発言全文を保持せず、要点だけ残したい |
重要なのは、既存の「会議中のみ」と、新しい「文字起こしを保持せずIntelligent recapを生成する設定」は同じものではない点です。
提供時期と対象環境
Microsoft 365 Roadmapに掲載されている提供情報は、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Roadmap ID | 558286 |
| 機能名 | Intelligent meeting recap available without saving transcript |
| ステータス | In development |
| 一般提供予定 | 2026年10月 |
| 対象クラウド | Worldwide(Standard Multi-Tenant) |
| 対象製品 | Microsoft Teams、Microsoft Copilot(Microsoft 365) |
| 対応プラットフォーム | Android、Desktop、iOS、Mac、Web |
| 設定できる人 | 会議主催者、対象となる参加者 |
| 設定できるタイミング | 会議前、会議中 |
Microsoft 365 Roadmapの提供日は予定であり、開発状況によって延期や変更が行われる可能性があります。2026年10月になっても設定が表示されない場合は、障害と判断する前に、テナントへの展開状況とMicrosoft 365管理センターのメッセージセンターを確認してください。(マイクロソフト)
文字起こしを保存せずIntelligent recapを生成する設定方法
2026年8月1日時点では一般提供前のため、正式な日本語の設定名や最終的な画面配置は公表されていません。
Microsoftのロードマップでは、次の2つの方法で設定できることが明記されています。
会議前に主催者が設定する
会議前に設定する場合は、次の流れになります。
- Teamsのカレンダーを開く
- 対象の会議を選択する
- 「オプション」または「会議オプション」を開く
- 文字起こしを保持せずIntelligent recapを生成する項目を有効にする
- 設定を保存する
現在のTeamsでは、Copilotに関する設定は会議オプション内の「Copilot and other AI」に配置されています。ただし、新機能が同じ場所に追加されるとは限りません。一般提供後は、実際にテナントへ表示された設定名を確認してください。
会議中に有効化する
ロードマップでは、主催者だけでなく「eligible participants」、つまり対象となる参加者も会議中に有効化できるとされています。
会議中は、次のような流れが想定されます。
- 会議コントロールから会議オプションを開く
- 文字起こしを保持しないIntelligent recap設定を有効にする
- 必要に応じて会議の使用言語を確認する
- 参加者にAI処理を有効化したことを案内する
- 会議終了後に「Recap」からAI Summaryを確認する
「対象となる参加者」の具体的な範囲は、ロードマップではまだ説明されていません。ライセンス、会議での役割、主催者が指定したアクセス範囲、管理者ポリシーなどによって利用可否が変わる可能性があります。
そのため、一般提供後は主催者だけでなく、発表者や参加者のアカウントでも設定できるかをテストする必要があります。
AI Summaryは残るが、すべてのRecap機能が使えるとは限らない
文字起こしを保持しない設定で、会議後に利用できることが明示されているのはAI Summaryです。
一方、次の機能は利用できない可能性があります。
| Intelligent recapの要素 | 利用見込み | 注意点 |
|---|---|---|
| AI Summary | 利用可能 | 会議の要点、決定事項、タスクなどをAIが整理 |
| Transcript | 利用不可 | 会議後には文字起こしが保持されない |
| Chapters | 利用できない場合がある | 会議を章ごとに分けて移動する機能 |
| Topics | 利用できない場合がある | 会議で扱ったトピックの分類 |
| Mentions | 利用できない場合がある | 自分の名前が発言された場所の抽出 |
| Audio recap | 利用できない場合がある | 複数会議の内容を音声でまとめる機能 |
現在のChaptersやTopicsは、文字起こしや録画内容を利用して会議を区切る仕組みです。Mentionsも文字起こし上の表示名と発言内容を使って抽出します。そのため、会議後に文字起こしを保持しない設定では、詳細なナビゲーション機能が制限されても不自然ではありません。(Microsoft サポート)
単に会議の結論を確認したい場合はAI Summaryだけでも十分ですが、次の情報が必要なら文字起こしを保存する設定を選ぶべきです。
- 誰がどの発言をしたか
- 発言の正確な表現
- 発言した時刻
- 名前が呼ばれた場面
- 会議の各トピックへ移動するためのタイムライン
- AI要約が正しいか確認するための原文
「AI要約だけ残る」の意味を誤解しない
この設定は、会議に関係するすべてのデータを削除してAI Summaryだけにする機能ではありません。
対象となるのは、主に会議後に閲覧できる文字起こしの保持です。次の情報は別の保存設定や保持ポリシーの影響を受けます。
- 会議チャット
- 共有したファイル
- Loopや共同メモ
- 出席情報
- AI Summary
- Copilotへのプロンプトと応答
- 録画を開始した場合の録画ファイル
通常のTeams Recapには、録画、文字起こし、共有ファイル、メモ、予定表、フォローアップタスクなど、複数種類のコンテンツが表示されます。文字起こしを保存しない設定を有効化しても、チャットや共有ファイルまで自動的に削除されるとは限りません。(Microsoft サポート)
録画を残したくない場合は別途確認する
「文字起こしを保存しない」と「録画しない」は別の条件です。
文字起こしと録画の両方を残したくない場合は、次の点を確認してください。
- 自動録画が無効になっているか
- 会議中に参加者が録画を開始していないか
- 「誰が録画と文字起こしを行えるか」が適切に制限されているか
- 会議テンプレートや秘密度ラベルで録画が強制されていないか
録画を開始したまま「文字起こしを保持しない」設定だけを有効にすると、映像や音声の記録は残る可能性があります。
Teams PremiumまたはMicrosoft 365 Copilotのライセンスを確認する
現在のIntelligent recapは、Teams PremiumまたはMicrosoft 365 Copilotのライセンスで提供されています。(Microsoft サポート)
ただし、Roadmap ID 558286の機能について、どのライセンスを持つユーザーが設定できるのか、主催者と参加者のどちらにライセンスが必要なのかといった詳細なライセンス条件は、ロードマップ上では明示されていません。
一般提供前に、少なくとも次の組み合わせを確認しておくと安全です。
| 確認対象 | 確認内容 |
|---|---|
| 会議主催者 | Teams PremiumまたはMicrosoft 365 Copilotが割り当てられているか |
| AI Summaryを閲覧する参加者 | 対象ライセンスが必要か |
| 会議中に設定を変更する参加者 | どの会議ロールとライセンスが必要か |
| 外部参加者 | AI Summaryを利用または閲覧できるか |
| 共有メールボックスや代理開催 | 主催者判定がどのアカウントになるか |
ライセンスが割り当てられていても、テナントへの展開前や管理者ポリシーで無効化されている場合は、設定が表示されません。
Teams管理者が事前に確認すべき設定
Copilotの会議ポリシー
Teams管理センターでは、次の場所からCopilotの会議ポリシーを管理できます。
会議 > 会議ポリシー > 録画と文字起こし > Copilot
現行仕様では、主に次の設定があります。(Microsoft Learn)
| 管理者設定 | 現行仕様での動作 |
|---|---|
| On | 会議中のみが既定。主催者が変更可能 |
| On with saved transcript required | 保存された文字起こしを必須にする |
| On with transcript saved by default | 会議中および会議後が既定。主催者が変更可能 |
| Off | Copilotを既定でオフにする |
特に注意が必要なのは、On with saved transcript requiredです。この設定では保存された文字起こしが必須になり、主催者が変更できません。
文字起こしを保持しないIntelligent recapとの組み合わせがどのように処理されるかは、一般提供時の管理者向け資料で確認する必要があります。現在このポリシーを強制している組織では、新設定が表示されない、または選択できない可能性を想定して検証してください。
Recapへのアクセス範囲
現在のTeamsでは、主催者が録画、文字起こし、AI recapへアクセスできる人を次の範囲から選択できます。
- 全員
- 主催者と共同開催者
- 特定のユーザー
このアクセス設定は会議オプションの「Recording & transcription」から変更できます。CopilotまたはTeams Premiumライセンスが必要であり、チャネル会議や一部の即時会議では利用できません。(Microsoft サポート)
文字起こしを残さなくても、AI Summaryに機密情報が含まれる可能性はあります。必要以上の参加者が閲覧できないよう、AI recapのアクセス範囲も確認してください。
Microsoft Purviewの保持ポリシー
文字起こしを保存しない設定でも、「組織内に関連データが一切保存されない」とは限りません。
Microsoftは、録画と文字起こしを無効にした会議であっても、Copilotへのプロンプトや応答がMicrosoft Purviewの保持ポリシーに従って保存される場合があると説明しています。これらはコンプライアンス基盤に保持され、設定によってはeDiscoveryの対象になる可能性があります。(Microsoft サポート)
導入前に、情報システム部門と法務・コンプライアンス担当者で次の点を確認してください。
- AI Summaryの保持期間
- Copilotプロンプトと応答の保持期間
- eDiscoveryで検索できるデータ
- 退職者やアカウント削除時の扱い
- 秘密度ラベルとの組み合わせ
- 外部参加者を含む会議での扱い
- 個人情報や要配慮情報を含む会議への適用可否
この設定が向いている会議と向いていない会議
判断基準は、「発言全文の証跡が必要か」と「AI要約を人が確認できるか」の2点です。
| 会議の種類 | 適性 | 理由 |
|---|---|---|
| 日次・週次の進捗会議 | 高い | 決定事項と担当タスクを確認できればよい |
| 社内のアイデア出し | 高い | 発言全文より論点や案の整理が重要 |
| 定例のプロジェクト会議 | 条件付き | 重要な仕様決定は別途文書化する必要がある |
| 1対1の面談 | 条件付き | 個人情報、労務情報、閲覧権限に注意が必要 |
| 採用面接 | 低い | 評価根拠や個人情報の扱いを明確にする必要がある |
| 契約交渉 | 低い | 正確な表現や発言経緯が重要 |
| 取締役会・法定会議 | 低い | 正式な議事録や証跡が必要になりやすい |
| セキュリティ事故対応 | 低い | 時刻、担当者、発言内容の正確な記録が重要 |
| 研修・講義 | 条件付き | ChaptersやTopicsを使えないと復習しにくい |
AI Summaryは、正式な議事録の代替として無条件に使うべきではありません。Microsoftも、AIが生成した内容には不正確、不完全、不適切な内容が含まれる場合があるため、確認が必要だと説明しています。(Microsoft サポート)
導入時に失敗しないための運用手順
会議を3種類に分類する
すべての会議で一律に有効化するのではなく、次のように分類します。
- 要約のみでよい会議
文字起こしを保持しないIntelligent recapを利用する - 発言証跡が必要な会議
文字起こしを保存する通常のIntelligent recapを利用する - AI処理自体を避ける会議
Copilot、録画、文字起こしを無効にする
この分類を会議テンプレートや社内ルールに反映すると、主催者ごとの判断のばらつきを抑えられます。
Targeted Releaseでテストする
対象テナントに機能が展開されたら、まず少人数のテストユーザーで次の点を確認します。
- 会議前に設定できるか
- 会議中に設定を変更できるか
- 誰が設定を変更できるか
- 会議終了後に文字起こしが表示されないか
- AI Summaryが正常に生成されるか
- ChaptersやTopicsがどのように表示されるか
- AI Summaryを閲覧できるユーザーの範囲
- 外部参加者を含む場合の動作
- PurviewやeDiscoveryで確認できるデータ
- スマートフォン、Web、Windows、Macでの表示差
AI Summaryを人が確定する
AI Summaryが生成されたら、会議主催者または書記担当者が次の内容を確認します。
- 決定事項に誤りがないか
- 担当者が入れ替わっていないか
- 期限が正しく認識されているか
- 否定表現が逆転していないか
- 固有名詞や専門用語が誤認識されていないか
- 検討事項が決定事項として記載されていないか
文字起こしが残らないため、会議終了後に原文と照合できない場合があります。重要な決定事項は会議中に復唱し、会議チャットやタスク管理ツールにも明記しておくと安全です。
迷ったときの判断基準
次のいずれかに該当する場合は、文字起こしを保存する従来方式を選びます。
- 正確な発言内容を後から確認する可能性がある
- 誰が発言したかを証明する必要がある
- タイムスタンプが必要
- Chapters、Topics、Mentionsを使いたい
- AIの誤りを文字起こしと照合したい
- 法令、契約、監査、紛争対応に関係する
一方、次の条件を満たす場合は、新しい設定が有力な選択肢になります。
- 会議後に必要なのは要点、決定事項、タスクだけ
- 発言全文を長期間保持する必要がない
- AI Summaryを担当者が確認できる
- 録画や共有ファイルの保存方針を別途管理している
- Purviewを含む組織の保持ルールを確認済み
- 参加者にAI利用について案内できる
文字起こしを残さない会議は「証跡を減らす運用」として設計する
Teamsの新しいIntelligent recap設定により、文字起こしを保存しなくても、会議後にAI Summaryを確認できるようになる予定です。発言全文の保持を避けながら、決定事項やフォローアップタスクを残せるため、日常的な社内会議では使いやすい選択肢になります。
ただし、残るのは完全なIntelligent recapではありません。Chapters、Topics、Mentions、Audio recapなどは利用できない場合があり、文字起こしがなければAI要約を原文と照合することも難しくなります。
導入時は、まず会議を「要約だけでよい」「発言証跡が必要」「AIを利用しない」の3種類に分けてください。そのうえで、2026年10月以降にテナントへの展開を確認し、ライセンス、会議ポリシー、閲覧権限、Purviewの保持設定を検証してから本番利用へ移行するのが安全です。

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