長いWord文書をPDFで配布すると、「30ページ目の第3章を見たい」と思っても、読み手が何ページもスクロールしなければならないことがあります。そんなときに便利なのが、PDFビューアーのサイドバーなどに表示される**しおり(ブックマーク)**です。
Windowsデスクトップ版のWordでは、PDFとして保存するときのオプションで、Wordの見出し、またはWord文書内に設定したブックマークを元にPDFのしおりを作成できます。基本的には、章や節を「見出し1」「見出し2」などの見出しスタイルで整理してからPDFにすると扱いやすくなります。
ただし、PDFに変換しただけで「編集できない文書」になるわけではありません。Wordを含め、PDFを開いて編集できるソフトウェアは存在するため、PDF化と改変防止は分けて考える必要があります。
WordをPDFにするときに見出しからしおりを作る方法
作業の流れは次のとおりです。
| 手順 | 作業内容 |
|---|---|
| 1 | Word文書の章・節を見出しとして整理する |
| 2 | [ファイル]からPDF形式で保存する |
| 3 | [オプション]で「しおりを作成」を有効にする |
| 4 | [見出し]または[Wordのブックマーク]を選ぶ |
| 5 | ページ範囲や変更履歴の出力設定を確認する |
| 6 | 保存したPDFを開き、しおりの移動先を確認する |
長文を章立てしている一般的な文書なら、まずは見出しを元にしおりを作る方法を選ぶと分かりやすいでしょう。
Word文書の見出し構造を整える
PDF保存を始める前に、Word側の章や節が「見た目だけの見出し」になっていないか確認します。
たとえば、次のような文書があるとします。
令和○年度 事業報告書
第1章 事業の概要
1-1 事業の目的
1-2 実施内容
第2章 実施結果
2-1 参加者数
2-2 アンケート結果
第3章 今後の課題
文字を大きくして太字にしただけではなく、Wordの[ホーム]タブにあるスタイルから、章には「見出し1」、その下の節には「見出し2」といった形で見出しスタイルを適用しておくと、文書構造をWordが認識できます。
Microsoftの案内でも、見出しスタイルを適用した本文中の見出しは、Wordのナビゲーションウィンドウに表示されます。
PDFを作る前に、
[表示]→[ナビゲーション ウィンドウ]
を開き、[見出し]に章や節が想定どおり並んでいるか確認しておくと、見出し構造のミスを発見しやすくなります。
たとえば、
第1章
1-1
1-2
第2章
2-1
2-2
第3章
という階層になってほしいのに、
第1章
1-1
1-2
第2章
2-1
2-2
第3章
のようにすべて同じ階層で並んでいる場合は、「見出し1」「見出し2」の設定を見直したほうがよいでしょう。
元のWord文書を残してPDFとして保存する
しおりを付ける準備ができたら、Word文書をPDFとして保存します。
保存済みの文書では、Microsoftの案内では[ファイル]→[コピーを保存]を選びます。未保存の場合は[名前を付けて保存]または[コピーを保存]から保存できます。保存場所を選び、ファイル形式としてPDFを指定します。
実務では、元のWord文書をPDFで上書きするのではなく、
事業報告書.docx
事業報告書.pdf
のように、編集用のWordファイルと配布用PDFを別々に残す運用がおすすめです。
後から誤字を直したり、章を追加したり、しおりの構造を修正したりするときは、Wordの元文書を修正してPDFを作り直せます。
PDF保存のオプションで「しおりを作成」を設定する
PDF形式を選んだら、そのまま保存する前にPDFの詳細設定を開きます。
Wordでは、PDF保存画面から[その他のオプション]→[オプション]を開くことで、PDFへの出力内容を設定できます。画面上の表記や配置は使用しているWordのバージョンによって多少異なる場合があります。
オプション画面で確認したいのが、「しおりを作成」するための設定です。
Microsoftの公式手順では、「Create bookmarks using」に相当する項目を選択し、次のどちらかを指定できます。
| 選択肢 | 向いているケース |
|---|---|
| 見出し | 「見出し1」「見出し2」などで章立てした報告書、マニュアル、仕様書 |
| Wordのブックマーク | 文書内で個別に設定した場所だけをPDFのしおりにしたい場合 |
通常の章立て文書であれば、[見出し]を選ぶ方法が扱いやすいでしょう。
Word文書そのものの構造とPDFのしおりを連動させられるため、章を追加したときにも元文書側で構成を管理しやすくなります。
Wordのブックマークを使う方法もある
Wordには、文書内の特定位置に「ブックマーク」を設定する機能があります。
たとえば、
第1章 概要
第2章 調査結果
資料A 集計表
資料B 用語集
という文書で、「資料A」「資料B」など特定の場所だけを明示的に管理したい場合には、Wordのブックマークを利用する方法も考えられます。
Wordでは文書内の位置をブックマークとして登録でき、PDF保存時には、そのWordブックマークをしおり作成元として選択できます。
ただし、章や節がすでに見出しスタイルで整理されているなら、PDF用だけに大量のWordブックマークを追加するより、見出し構造をそのまま利用したほうが管理しやすい場合が多いでしょう。
ページ範囲と変更履歴の設定も確認する
PDFのしおりだけに気を取られず、同じオプション画面で何をPDFへ出力するのかも確認します。
MicrosoftのPDF保存オプションでは、ページ範囲を指定できるほか、「通常の文書」を出力するか、「変更履歴などのマークアップを表示した文書」を出力するかを選択できます。
特に仕事で配布する文書では、ここを確認しておくことが重要です。
必要なページがすべて含まれているか
たとえば50ページの報告書をPDFにするつもりでも、以前の作業でページ範囲が設定されたままになっていると、必要なページが含まれない可能性があります。
配布前には、
全ページを出すのか
一部ページだけを出すのか
別紙や参考資料まで含めるのか
を確認しましょう。
しおりが正しく作られていても、移動先になるページそのものがPDFに含まれていなければ意味がありません。
変更履歴を含める設定になっていないか
さらに注意したいのが、Wordの変更履歴やマークアップです。
PDF保存オプションでは、Microsoftの案内上、[Document showing markup]を選ぶと変更履歴を表示した状態で出力でき、通常の文書として出力したい場合は[Document]を選択します。
たとえば、内部レビュー中の文書に、
この表現は削除予定
金額を担当課に再確認
部長確認後に差し替え
といった修正内容が残っている場合、意図しない状態でPDFを配布することは避けたいところです。
外部配布用PDFを作る場合は、しおり設定とあわせて**「何が表示された状態でPDFになるのか」まで確認**しましょう。
PDFを保存したら、必ずしおりを実際に開いて確認する
PDFの保存が完了したら、それで終了ではありません。
保存したPDFを実際にPDF閲覧アプリやブラウザで開き、しおりを表示して確認します。
最低でも次の点をチェックします。
- 主要な章がしおりとして表示されているか
- 章と節の階層が想定どおりか
- しおりを選択すると正しい位置へ移動するか
- PDFの最初と最後まで必要なページが含まれているか
- 変更履歴やコメントなど、不要な表示が含まれていないか
たとえば「第3章」を選択したのに「第2章」の途中へ移動する場合、PDFだけを直そうとするのではなく、まずWord側の見出し位置や文書構造を確認します。
長い文書では、PDFを最終成果物として直接管理するのではなく、Wordを正本として構造を整え、そこからPDFを再生成する流れにすると修正しやすくなります。
しおりが作成されないときはWord側の見出しを確認する
PDF保存オプションで[見出し]を選んだのに期待した構成にならない場合は、元のWord文書を確認します。
まず[表示]→[ナビゲーション ウィンドウ]を開き、[見出し]に対象の章や節が表示されているか確認すると分かりやすいでしょう。
Microsoftによると、本文中で見出しスタイルを適用した見出しはナビゲーションウィンドウに表示されます。逆に、単に文字を太字・大きな文字にしただけでは、見出しスタイルを設定したことにはなりません。
たとえば、
第1章 概要
を18ポイント、太字にしただけではなく、Wordのスタイルとして「見出し1」を設定します。
第1章 概要 → 見出し1
1-1 目的 → 見出し2
1-2 対象 → 見出し2
という形で構造化しておけば、文書そのものも管理しやすくなります。
目次とPDFのしおりは別物
長い資料を作るときに混同しやすいのが、文書内の目次とPDFビューアーのしおりです。
たとえばWord文書の2ページ目に、
目次
第1章 概要…………3
第2章 調査結果……15
第3章 まとめ………28
という一覧を置くのが「目次」です。
一方、PDF閲覧画面の横に、
▶ 第1章 概要
▶ 第2章 調査結果
▶ 第3章 まとめ
のように表示され、選択すると該当位置へ移動できるものがPDFの「しおり」です。
読者がPDFを画面で読むケースでは、しおりがあると本文をスクロールし続けなくても目的の章へ移動できます。
特に、
- 行政計画
- 報告書
- 操作マニュアル
- 業務手順書
- 仕様書
- 調査資料
- 研修テキスト
- 会議資料をまとめた長文PDF
のような文書では、しおりを付ける効果が大きくなります。
WordのWeb版ではなくデスクトップ版を使う
今回のようにPDFのしおりを細かく設定したい場合は、WindowsのWordデスクトップ版でPDFを作成するのがポイントです。
Microsoftは、WordなどのWeb版からもPDFを作成できると案内していますが、しおりなどPDF出力オプションを細かく制御したい場合は、デスクトップアプリを利用するよう案内しています。
ブラウザ版Wordで単純にPDFへ変換する方法と、Windowsデスクトップ版Wordの詳細なPDF保存オプションは同じものではありません。
PDF化しても改変防止にはならない
PDFは「完成した文書を配布する形式」としてよく利用されますが、PDFに変換すれば内容を編集できなくなる、という意味ではありません。
Microsoftも、Wordを含む多くのソフトウェアでPDFを開いて編集できるため、「PDFで共有するだけでは、受信者が編集できないことを保証できない」と説明しています。
そのため、
Word → PDF
への変換は、
レイアウトを保って読みやすく配布するための処理
と考えたほうが適切です。
「内容を書き換えられないようにしたい」「真正性を担保したい」といった要件がある場合は、PDF化とは別に、組織の文書管理・署名・権限制御などを含めて検討する必要があります。
ハイパーリンクやアクセシビリティも配布前に確認する
しおりが正常だからといって、PDF内のすべての要素が期待どおり動作するとは限りません。
MicrosoftのPDF保存オプションには、スクリーンリーダーなどが文書構造を利用しやすくするための「Document structure tags for accessibility」に相当する設定もあります。
ただし、この設定を選択しただけで、文書全体が特定のアクセシビリティ基準へ完全に適合することまで保証されるわけではありません。
また、Microsoftの同じサポートページにはExcelのPDF変換時に内部リンクが失われる場合があるという注意がありますが、これはExcelについての説明です。Wordにも同じ制限があるとそのまま当てはめるべきではありません。
Word文書に、
- Webサイトへのリンク
- メールアドレス
- 文書内リンク
- 目次
- 図表への参照
などが含まれる場合は、PDFを作成したあと実際に開き、必要なリンクや移動機能を確認するのが確実です。
長いWord文書では「見出しを整えてからPDF化」が基本
長いWord文書を読みやすいPDFとして配布するなら、単に[PDFとして保存]するだけではなく、Word側の文書構造を先に整えることが重要です。
基本的な流れは次のようになります。
- 章や節に「見出し1」「見出し2」などの見出しスタイルを設定する
- ナビゲーションウィンドウで見出しの階層を確認する
- [ファイル]からコピー保存または名前を付けて保存を行い、PDFを選ぶ
- [その他のオプション]→[オプション]を開く
- PDFのしおり作成元として[見出し]または[Wordのブックマーク]を選ぶ
- ページ範囲と変更履歴の出力設定を確認する
- PDFを保存する
- 保存後のPDFを開き、しおり・ページ・表示内容を確認する
特に報告書やマニュアルのような長文では、Wordの見出しを文書構造として正しく設定し、その構造をPDFのしおりに利用する方法が管理しやすくなります。
まず元のWord文書で[ナビゲーション ウィンドウ]を開き、章と節が意図した階層で表示されているか確認してみてください。そこが整っていれば、PDFのしおり作成も進めやすくなります。

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