2026年6月16日に更新された公式情報では、Azure Databricksの「Partner-powered AI features」で利用されるモデル提供元に、OpenAI on Databricksが加わったことが明確になりました。
この設定を有効にすると、Genie CodeなどがAzure OpenAI service、OpenAI on Databricks、Anthropic on Databricksを利用します。無効にした場合は、一部機能がDatabricksホストモデルへ切り替わる一方、Genie CodeのAgentモードやGenie Spacesなどは利用できなくなります。
設定自体に移行期限は示されていません。ただし、Genie製品は2026年7月6日から無料枠を超えた利用が従量課金になるため、管理者はAI機能の設定と予算管理を同時に確認する必要があります。(Microsoft Learn)
Azureの新機能・変更点:Partner-powered AI features – Azure Databricksの変更点
Partner-powered AI featuresは、新しいAI製品ではありません。Azure Databricksに組み込まれたAI支援機能が、パートナーのモデルを利用できるかを管理する設定です。
今回の更新で押さえるべき変更点は、次の3つです。
- Genie CodeがOpenAI on Databricksで提供されるモデルも利用するようになった
- 設定を無効にした場合の代替動作と、利用できなくなる機能が整理された
- アカウント単位とワークスペース単位で設定できることが明確化された
Partner-powered AI featuresが有効な場合でも、すべての機能が同じモデル提供元を使うわけではありません。機能ごとにAzure OpenAI service、OpenAI on Databricks、Anthropic on Databricks、Databricksホストモデルが使い分けられます。(Microsoft Learn)
有効・無効で利用できる機能はどう変わるか
公式の対応表を、利用者への影響が分かる形に整理すると次のようになります。(Microsoft Learn)
| 機能 | Partner-powered AI featuresが有効 | 無効 |
|---|---|---|
| Genie Code Autocomplete | Databricks | Databricks |
| Genie Code Agentモード | Azure OpenAI、OpenAI on Databricks、Anthropic on Databricks | 利用不可 |
| Genie Codeのチャットなど | Azure OpenAIまたはOpenAI on Databricks | 利用可能な環境ではDatabricksホストモデル |
| AI/BIダッシュボードのAI支援 | Azure OpenAI | 利用不可 |
| Genie Spaces | Azure OpenAI | 利用不可 |
| Genie Spaces Agentモード | Azure OpenAIまたはAnthropic on Databricks | 利用不可 |
| AI生成コメント | Azure OpenAI | Databricksホストモデル |
| LLMs as judges | Azure OpenAI | 使用するモデルをユーザー側で指定 |
| 合成データ生成 | Azure OpenAI | 利用不可 |
重要なのは、設定を無効にしても、すべてのAI機能が停止するわけではないことです。
たとえば、Genie Codeの通常チャットやAI生成コメントは、条件を満たせばDatabricksホストモデルで動作します。一方、複数の操作を自動化するGenie Code Agentモードや、自然言語でデータを分析するGenie Spacesは利用できなくなります。
誰に影響する変更なのか
Genie CodeやGenie Spacesを利用する一般ユーザー
通常のコード補完は設定の影響をほとんど受けませんが、Agentモード、Genie Spaces、AI/BIダッシュボードのAI支援機能を利用している場合は影響があります。
特にAgentモードでは、ノートブックやSQLエディター上でコードを実行する機能があるため、設定を無効にすると従来のチャットモードへ切り替わります。
ワークスペース管理者
ワークスペース管理者は、アカウント側で設定が強制されていない限り、ワークスペースごとにPartner-powered AI featuresを無効化できます。
開発用ワークスペースでは有効、本番データを扱うワークスペースでは無効といった運用も可能です。ただし、無効化後に必要な機能が残るかを事前に確認する必要があります。
アカウント管理者とセキュリティ担当者
アカウント管理者は、アカウント内の全ワークスペースに対して設定を適用できます。また、ワークスペース管理者による変更を禁止する「Enforce setting」も利用できます。
コンプライアンスセキュリティプロファイル(CSP)がないワークスペースでは、Partner-powered AI featuresは既定で有効です。CSPを使用するワークスペースでは、既定で無効になります。(Microsoft Learn)
管理者が確認すべき設定手順
アカウント全体の設定を確認する
アカウント管理者は、次の手順で確認します。
- Azure DatabricksのAccount Consoleにログインする
Settingsを開くFeature enablementタブを選択するEnable partner-powered AI featuresのOn/Offを確認する- 必要に応じて
Enforce settingを有効にする
Enforce settingを有効にすると、各ワークスペースの管理者は設定を上書きできません。
アカウント単位で設定を変更した操作は、監査ログのアカウントイベントとして記録されます。変更管理が必要な組織では、設定変更者、変更時刻、変更理由を監査ログと運用記録の両方に残しておくと安全です。(Microsoft Learn)
ワークスペース単位の設定を確認する
ワークスペース管理者は、次の場所を確認します。
- Azure Databricks上部のユーザー名をクリックする
Settingsを開くWorkspace adminのAdvancedを選択するPartner-powered AI featuresのトグルを確認する
アカウント側で設定が強制されている場合、ワークスペース側では変更できません。
データの処理地域も確認する
日本を含む米国・EU以外のAzure Geographyでは、Partner-powered AI featuresだけでなく、次の設定も重要です。
Enforce data processing within workspace Geography for Designated Services
この設定を無効にすると、利用する機能がワークスペースと異なるGeoで処理される「cross-Geo processing」が許可されます。
公式情報では、米国・EUデータ境界外のワークスペースでDatabricksホストモデルを利用する場合、cross-Geo processingが必要になることがあります。一方、日本のAzure GeographyではGenie SpacesのGeo内処理が提供されています。機能ごとに対応状況が異なるため、一括して判断しないことが重要です。(Microsoft Learn)
設定変更や移行は必要か
今回の公式情報には、Databricks Runtimeの更新、SDKの入れ替え、APIキーの再設定といった必須移行手順は記載されていません。また、Partner-powered AI featuresを特定日までに有効化または無効化する期限も示されていません。
ただし、次の確認は必要です。
- Genie Code Agentモードを業務で利用していないか
- Genie Spacesを社内ポータルや分析業務で利用していないか
- AI生成コメントをデータカタログ整備に使っていないか
- CSPやデータ所在地ポリシーと設定が矛盾していないか
- アカウント設定とワークスペース設定のどちらが有効か
モデル提供元が変わると、生成されるコードや回答の傾向が変わる可能性があります。業務手順やテスト結果をAI出力に依存している場合は、代表的なプロンプトを使って回答品質を再確認してください。
Azure Databricksの機能は段階的に展開されるため、公式公開日から実際のアカウントへの反映まで時間差が生じる場合もあります。(Microsoft Learn)
データ保護で確認すべき注意点
Partner-powered AI featuresを有効にすると、ユーザーが操作したときに必要な情報がモデルへ送信されます。
Genie Codeでは、主に次の情報が対象です。
- 入力したプロンプト
- 現在のセルやSQLエディター内のコード
- テーブル名やカラム名、説明
- 過去の質問
- エラー情報
- Agentモードで参照するセル出力やデータサンプル
公式情報では、パートナーのモデル提供者はプロンプトや回答を保存せず、ゼロデータ保持のエンドポイントが使用されます。また、送信データを基盤モデルの学習に利用しないと説明されています。
ただし、「データを保存しない」と「データを送信しない」は同じ意味ではありません。機密コードや個人情報を扱う組織では、送信対象とUnity Catalogの権限を確認したうえで利用ポリシーを決める必要があります。AI機能へ送信されるデータにも、ユーザーのUnity Catalog権限が適用されます。(Microsoft Learn)
料金は変わるのか
Partner-powered AI featuresの設定ページには、この設定自体に対する独立した追加料金は記載されていません。
一方、Genie Code、Genie Spaces、Genie Oneは、2026年7月6日から従量課金方式へ移行します。
主な料金条件は次のとおりです。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 課金開始日 | 2026年7月6日 |
| 無料枠 | ユーザー1人あたり毎月150 DBU |
| 無料枠の対象 | 識別されたユーザー |
| サービスプリンシパル | 無料枠の対象外 |
| 超過利用 | 使用するLLMやAgentに応じてDBU課金 |
| ライセンス方式 | 席数ベースの料金なし |
Partner-powered AI featuresを無効にすればGenieの料金が必ず発生しなくなる、とは公式情報から判断できません。設定のOn/Offではなく、実際のGenie利用量を基準に予算を管理するのが安全です。
アカウント管理者はUnity AI Gatewayを通じて、アカウント、ワークスペース、グループ、ユーザー単位の予算や通知を設定できます。2026年7月6日までに、利用状況の確認と予算アラートの設定を済ませておきましょう。(Microsoft Learn)
よくある疑問
設定を無効にするとGenie Codeは使えなくなる?
完全には使えなくなりません。利用可能な環境では、チャットなどがDatabricksホストモデルへ切り替わります。ただし、Agentモードは利用できず、通常のChatモードのみになります。
利用するモデル提供元をユーザーが選べる?
Partner-powered AI featuresは有効・無効を管理する設定です。公式手順には、ユーザーがAzure OpenAI、OpenAI on Databricks、Anthropicを個別に選択する操作は示されていません。使用される提供元は機能によって異なります。
CSPを有効にしていれば問題ない?
CSPワークスペースではPartner-powered AI featuresが既定で無効ですが、必要なAI機能が利用できるとは限りません。設定を無効にした状態でDatabricksホストのGenie Codeを利用できるCSP環境は、公式情報ではHIPAA標準に限られています。
利用者側でアプリやRuntimeを更新する必要はある?
今回の公式ページには、必須のクライアント更新やRuntime移行は記載されていません。設定変更後は、Agentモード、Genie Spaces、AI生成コメントなど、実際に利用している機能を個別にテストしてください。
まず実施すべきこと
Partner-powered AI featuresの変更は、単なるモデル追加ではありません。設定を無効にしたときに失われる機能、データの処理地域、コンプライアンス、Genieの料金をまとめて判断する必要があります。
管理者は、まず全ワークスペースの設定状況を一覧化してください。そのうえで、業務に必要なAI機能、CSPの有無、cross-Geo processingの許可方針を確認します。最後に、2026年7月6日の従量課金開始に備えて、Genieの利用予算とアラートを設定するのが実務的な進め方です。

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