PowerPoint CopilotでAdobe Experience Manager素材を使う設定方法と注意点

PowerPoint Copilotでは、Adobe Experience Manager Assets(AEM Assets)に保存された社内の承認済み画像を使って、プレゼンテーションを作成・補正できるようになりました。利用するには、Microsoft 365管理者がAEM Assetsコネクタを設定し、PowerPoint Copilotから参照できる状態にする必要があります。

導入時に最も注意したいのは、AEM側で公開されているアセットを、そのまま全社公開してよいかという点です。AEM Assetsコネクタは、AEMのユーザー権限やアセットごとのアクセス権を取得しません。既定では、インデックスされた公開アセットがMicrosoft 365テナント内のユーザーから参照可能になるため、接続前に公開範囲を整理する必要があります。(Microsoft Learn)

目次

PowerPoint CopilotとAdobe Experience Managerの連携でできること

従来のPowerPoint Copilotは、Microsoftが提供する画像、一般公開されている画像、ユーザーがアップロードした画像などを中心に利用していました。

AEM Assetsとの連携後は、PowerPoint Copilotがプレゼンテーションを作成するときに、企業が管理している画像ライブラリを参照できます。例えば、次のような素材をスライドへ反映しやすくなります。

  • 最新の企業ロゴ
  • 承認済みの商品写真
  • 広報用の人物写真
  • キャンペーン用のキービジュアル
  • 地域別・製品別の営業素材
  • ブランドガイドラインに沿った画像

Microsoftのロードマップでは、Web版とWindows版が別の項目として登録されています。

ロードマップID対象主な内容
516038PowerPoint for the webAEM Assetsの企業画像を使ったプレゼンテーション作成
516039PowerPoint for WindowsAEM Assetsの企業画像を使ったプレゼンテーション作成

Microsoft 365 Copilotのリリースノートでは、PowerPointの編集モードでプレゼンテーションを作成・補正するときに、AEM Assetsの画像を利用できる機能として案内されています。今回のロードマップ対象はWeb版とWindows版であり、Mac版はこの2件には含まれていません。(Microsoft Learn)

AEM Assets連携によって改善できる業務

単に画像検索が便利になるだけではありません。AEM AssetsとPowerPoint Copilotを接続することで、資料作成のルールを組織全体で統一しやすくなります。

項目従来の作業AEM Assets連携後
画像検索AEMや共有フォルダーを手作業で検索Copilotが関連素材を検索
画像の挿入ダウンロードしてPowerPointへ貼り付けCopilotによる資料作成時に利用
ブランド管理作成者がロゴや画像の版を確認承認済みライブラリを基準にできる
古い素材への対策作成者の判断に依存公開対象やメタデータで絞り込み
資料作成時間検索、保存、貼り付けが必要PowerPoint内で作業を進めやすい

特に効果が大きいのは、営業資料、商品紹介、採用説明会、社内研修、広報資料など、同じ画像を多くの職員・社員が繰り返し使う組織です。

一方、部署ごとに厳格な閲覧制限が必要な画像や、未公開の商品写真、個人情報を含む画像を扱う場合は、接続範囲を慎重に設計しなければなりません。

PowerPoint CopilotでAEM素材を使うための前提条件

設定を始める前に、次の条件を確認します。

確認項目必要な内容
AEM環境Adobe Experience Manager Assets as a Cloud Service
対象アセットAEM Assetsで公開済みのアセット
Microsoft 365管理権限AI管理者
AEM接続情報Author環境URLとPublish環境URL
認証AEM Assetsへアクセスできるテクニカルアカウント
MicrosoftライセンスCopilotコネクタのグラウンディングに対応したライセンス
PowerPoint対応するWeb版またはWindows版

AEM Assetsコネクタが対応するのは、AEM Assetsのクラウド環境です。AEM Sitesなど、別のAEM製品を同じ方法で接続できるわけではありません。また、コネクタを作成するMicrosoft 365側の担当者には、AI管理者の権限が必要です。(Microsoft Learn)

Microsoft 365 Copilotのライセンスも確認する

Microsoft 365の契約だけで、AEM Assetsの内容をPowerPoint Copilotのグラウンディングに利用できるとは限りません。

Microsoftのライセンス表では、CopilotコネクタのデータをCopilotの回答や生成処理に利用するには、原則として対象ユーザーにMicrosoft 365 Copilotアドオン、または対応するMicrosoft 365 E7ライセンスが必要とされています。Microsoft Searchでの検索と、PowerPoint Copilotによる利用は、必要条件が異なる点に注意してください。(Microsoft Learn)

PowerPointにCopilotが表示されない場合は、ライセンスだけでなく、管理者による機能の有効化や段階的ロールアウトの状況も確認します。(マイクロソフトサポート)

PowerPoint CopilotでAEM素材を使う設定方法

設定は、AEM側の準備とMicrosoft 365側のコネクタ設定に分かれます。

AEM Assetsの公開対象を整理する

最初に、Copilotから利用させる画像を整理します。

AEM Assetsコネクタが取得するのは、基本的に「承認済み」という名称のアセットではなく、公開済みのアセットです。そのため、組織内で「承認」と「公開」が別の工程になっている場合は注意が必要です。

例えば、次のようなフォルダー構成にすると管理しやすくなります。

/content/dam/copilot-approved
/content/dam/copilot-approved/corporate
/content/dam/copilot-approved/products
/content/dam/copilot-approved/campaigns

Copilotで使わせたくない素材は、最初から別のフォルダーへ分けます。

/content/dam/internal
/content/dam/draft
/content/dam/confidential
/content/dam/archive

接続後にフィルターを設定することもできますが、AEM側でフォルダーを分離しておくほうが誤設定を防ぎやすくなります。

画像のメタデータを整備する

PowerPoint Copilotが適切な画像を探せるかどうかは、画像そのものだけでなく、AEM Assetsに登録されたメタデータにも左右されます。

少なくとも、次の項目を整理しておきます。

  • 分かりやすいファイル名
  • タイトル
  • 説明
  • Altテキスト
  • 製品名
  • キャンペーン名
  • 対象地域
  • 使用期限
  • タグ
  • 画像の用途
  • 承認状態

AEM Assetsコネクタでは、ファイル名、タイトル、説明、Altテキスト、アセット種別、タグ、公開日時、画像サイズなどの標準プロパティをインデックスできます。独自のメタデータプロパティを追加し、検索や絞り込みに利用することも可能です。(Microsoft Learn)

例えば、同じ製品の画像が大量にある場合は、次のような情報を登録しておくと検索精度を高めやすくなります。

Product: Product-X
Region: Japan
Usage: Sales presentation
Orientation: Landscape
ApprovalStatus: Approved
ValidUntil: 2027-03-31

ApprovalStatusなどの項目名は一例です。実際には、組織のAEM Assetsで使用しているメタデータスキーマに合わせます。

AEMのテクニカルアカウントを準備する

Microsoft 365からAEM Assetsへ接続するために、外部システムから安全にアクセスできるテクニカルアカウントを準備します。

必要になる主な情報は次のとおりです。

  • AEM AssetsのAuthor環境URL
  • AEM AssetsのPublish環境URL
  • テクニカルアカウントの認証情報

URLは、一般的に次のような形式です。

https://author-p<PROGRAM_ID>-e<ENVIRONMENT_ID>.<REGION>.adobeaemcloud.com
https://publish-p<PROGRAM_ID>-e<ENVIRONMENT_ID>.<REGION>.adobeaemcloud.com

個人ユーザーのアカウントを接続用として流用せず、サーバー間連携用のテクニカルアカウントを利用します。担当者の異動や退職によって接続が停止するリスクを減らせます。(Microsoft Learn)

Microsoft 365管理センターでコネクタを追加する

Microsoft 365側では、次の手順で設定します。

  1. Microsoft 365管理センターへサインインします。
  2. 左側のメニューから「Copilot」を開きます。
  3. 「Connectors」を選択します。
  4. 「Gallery」タブを開きます。
  5. 「Adobe Experience Manager Assets」を選択します。
  6. 接続名を設定します。
  7. AEM AssetsのAuthor環境URLとPublish環境URLを入力します。
  8. テクニカルアカウントの認証情報を設定します。
  9. 公開対象と同期設定を確認します。
  10. 「Create」を選択して接続を作成します。

接続名は、Copilotの参照元やコンテンツソースを識別するために利用されます。「AEM Assets」だけでなく、「承認済みブランド素材」「国内営業用画像」など、利用者が意味を理解できる名前にすると運用しやすくなります。(Microsoft Learn)

インデックス対象をフィルターで制限する

初期設定では、AEM Assetsで公開されているすべてのアセットが選択されます。必要な画像だけをCopilotへ提供する場合は、「Custom setup」で取り込み対象を絞り込みます。

フィルターは、主に次の2種類です。

  • コンテンツパスによる指定
  • メタデータプロパティによる指定

例えば、承認済み素材専用フォルダーだけを対象にする場合は、次のようなパスを指定します。

/content/dam/copilot-approved

取り込み対象のパスは完全一致で指定し、/contentをルートとして少なくとも2階層以上のパスが必要です。

除外パスにはJava正規表現を利用できます。除外設定は包含設定より優先されるため、アーカイブフォルダーを確実に除外したい場合に有効です。(Microsoft Learn)

メタデータを使う場合は、JSONパスと演算子を指定します。利用できる主な演算子は次のとおりです。

演算子用途
=指定値と一致
!=指定値と一致しない
In複数候補のいずれかに一致
Not In複数候補のいずれにも一致しない

実務では、パスだけで制御するよりも、パスとメタデータを組み合わせるほうが安全です。

例えば、「承認済みフォルダーにあり、かつ有効な画像だけを対象にする」という二段階の条件にすると、誤公開のリスクを減らせます。

最初は限定ユーザーへ展開する

全社公開する前に、「Rollout to limited audience」を有効にし、広報担当者や情報システム担当者など、少人数のグループだけで検証します。

検証では、次の項目を確認します。

  • 未承認画像が検索されないか
  • 古いロゴが選ばれないか
  • 日本向け資料に海外向け画像が混ざらないか
  • 画像のタイトルや説明が正しく表示されるか
  • PowerPoint Copilotが適切な画像を選べるか
  • 機密素材が検索結果に出ないか

Microsoft 365管理センターでは、接続作成後にコネクタの状態を確認できます。問題がなければ、対象ユーザーを段階的に拡大します。(Microsoft Learn)

PowerPoint Copilotで社内画像を使う操作方法

管理者による接続とインデックス作成が完了したら、利用者はPowerPointからCopilotを開きます。

基本的な流れは次のとおりです。

  1. PowerPointのWeb版またはWindows版を開きます。
  2. 新しいプレゼンテーション、または編集する資料を開きます。
  3. Copilotを起動します。
  4. プレゼンテーションの作成やスライドの補正を依頼します。
  5. 組織の画像やAEM Assetsの素材を使うよう指示します。
  6. 挿入された画像と参照元を確認します。

Microsoftの案内では、PowerPointの編集モードでCopilotに対し、組織の画像を使ってスライドを作成・補正するよう依頼する流れになっています。(Microsoft Learn)

プレゼンテーションを新規作成するプロンプト例

社内の承認済み画像を使って、新製品Product-Xの営業説明資料を8枚で作成してください。

対象は日本国内の法人顧客です。
表紙には最新の商品画像を使用し、導入効果、主な機能、利用シーン、問い合わせ方法を含めてください。
画像はAdobe Experience Manager Assetsに登録された組織の素材を優先してください。

既存スライドの画像を変更するプロンプト例

このスライドの画像を、AEM AssetsにあるProduct-Xの承認済み画像へ置き換えてください。

日本市場向けで、横長かつ営業資料に使用できる画像を優先してください。

ブランドを意識したプロンプト例

このプレゼンテーションを、社内のブランド素材を使って整えてください。

古いロゴは使わず、AEM Assetsにある最新の企業ロゴと承認済み画像を利用してください。
人物画像は日本向けの素材を優先してください。

プロンプトに「社内画像を使う」と書くだけでなく、製品名、地域、用途、向き、キャンペーン名などを指定すると、目的に合った画像を選びやすくなります。

ただし、プロンプトで「承認済み」と指定しても、それだけで技術的な利用制限になるわけではありません。利用可能な画像の範囲は、管理者が設定したコネクタのパスやメタデータフィルターで制御します。

導入時に最も注意すべきアクセス権の問題

AEM Assetsコネクタは、AEM側のユーザーIDやアセットごとのアクセス権をクロールしません。

既定では、コネクタによってインデックスされた公開アセットが、Microsoft SearchやCopilotを通じてMicrosoft 365テナント内のユーザーから参照可能になります。(Microsoft Learn)

そのため、次のようなアセットを安易に接続対象へ含めてはいけません。

  • 発売前の商品画像
  • 未発表のキャンペーン素材
  • 契約上、利用部署が限定されている画像
  • 個人情報が写っている写真
  • 社外秘の設計画像
  • 一部地域だけで使用可能な素材
  • 使用期限を過ぎた人物・キャラクター画像

AEMとMicrosoft Entra IDのユーザーをメールアドレスなどでマッピングする設定もありますが、これは主にコンテンツの利用シグナルを適切に扱うためのものです。アセットごとのアクセス制御を復元する仕組みではありません。したがって、アクセス制限は公開状態、フォルダー分割、取り込みフィルター、段階展開によって設計する必要があります。(Microsoft Learn)

画像が反映されるまでの時間

コネクタを作成すると、公開アセットのインデックス作成が開始されます。ただし、AEM Assetsに画像を追加した直後にPowerPoint Copilotへ反映されるとは限りません。

既定の同期間隔は次のとおりです。

同期方式既定の間隔
増分クロール15分ごと
フルクロール1日ごと

同期間隔はカスタマイズできます。画像を公開した直後に検索できない場合は、設定ミスと判断する前に、増分クロールが完了するまで待ってから再確認します。(Microsoft Learn)

AEM素材がPowerPoint Copilotに表示されないときの対処法

症状主な原因確認方法
コネクタが見つからない管理権限、ライセンス、テナントへの展開AI管理者権限と契約を確認
特定の画像だけ出ないAEMで未公開Publish環境で公開状態を確認
フォルダー内の画像が出ない取り込みパスが完全一致していない/content/dam/...の指定を確認
新しい画像が出ない増分クロール前同期状態と最終クロール時刻を確認
関係ない画像が選ばれるファイル名やタグが曖昧タイトル、説明、タグを追加
古いロゴが表示される古い素材も公開・インデックスされている非公開化または除外設定
Web版では使えるがWindows版では使えないアプリの更新や段階的展開PowerPointの更新チャネルを確認
一部ユーザーだけ利用できない限定展開またはライセンス未割り当て展開対象グループとライセンスを確認

PowerPointでプレゼンテーション作成や画像追加自体が利用できない場合は、AEMコネクタとは別に、組織でPowerPointのDesigner関連機能が利用可能か確認します。Microsoftは、プレゼンテーション作成、スライド追加、画像追加など一部のCopilot機能について、Designerライセンスが必要になる場合があると案内しています。(マイクロソフトサポート)

AEM Assets連携が向いている組織

次の条件に当てはまる場合は、PowerPoint Copilotとの連携効果を得やすくなります。

  • AEM Assetsを全社的な画像管理基盤として利用している
  • 承認済み素材と未承認素材が明確に分かれている
  • 商品写真や広報画像を多くの社員が利用している
  • 古いロゴや期限切れ画像の利用を減らしたい
  • 営業資料や説明資料の作成頻度が高い
  • 画像のメタデータが整理されている
  • Copilotを組織的に導入している

反対に、部署や利用者ごとに細かな閲覧権限を維持しなければならない場合は、そのまま全社接続するのは適していません。

特に、同じAEM Assets環境に公開用素材と機密素材が混在している場合は、フォルダー構成や公開ワークフローを見直してから導入する必要があります。

導入を成功させる運用ルール

PowerPoint CopilotとAEM Assetsを接続した後も、画像ライブラリの管理は必要です。

最低限、次のルールを決めておきます。

Copilot利用可能フォルダーを固定する

Copilot用の専用フォルダーを設け、公開対象を明確にします。通常のAEM公開フォルダーをそのまま全件接続するよりも、安全性と管理性を高められます。

使用期限をメタデータで管理する

人物、タレント、キャラクター、キャンペーン画像などは、使用期限を登録します。期限切れ素材を定期的に非公開化する運用も必要です。

古い素材を同じ場所に残さない

「最新版」と「旧版」が同じ条件で検索されると、Copilotが古い素材を選択する可能性があります。旧版はアーカイブフォルダーへ移動し、コネクタの除外対象にします。

生成後の確認を省略しない

AEM Assetsが承認済み画像の保管場所であっても、Copilotが選んだ画像が資料の目的に合っているとは限りません。

公開前には、次の点を人が確認します。

  • 最新版の画像か
  • 対象地域が合っているか
  • 使用期限内か
  • トリミングによって意味が変わっていないか
  • ロゴの余白や背景色が規定どおりか
  • 資料の対象者に適した画像か

まずは小規模な検証から始める

PowerPoint CopilotとAdobe Experience Manager Assetsの連携では、社内の承認済み画像を使った資料作成を効率化できます。画像の検索、ダウンロード、貼り付けを減らしながら、ブランドの一貫性も保ちやすくなります。

ただし、AEM側のアクセス権がそのままMicrosoft 365へ引き継がれるわけではありません。導入前に「どの公開アセットをテナント内の誰が利用してよいか」を整理することが重要です。

最初は承認済み画像だけを格納した専用フォルダーを作り、広報担当者や営業資料作成者などの限定グループへ展開します。検索精度、画像の鮮度、アクセス範囲を確認したうえで、全社利用へ広げる進め方が安全です。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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