Outlookのチャット型Copilotコーチングは、作成中のメールをCopilotに確認させ、提示された改善案から必要な提案だけを選んで本文へ反映できる機能です。「全文を書き換えられるのは困る」「日付や金額は変えず、表現だけ整えたい」といった場面で特に役立ちます。
Microsoftは2026年8月11日付のリリースノートで、Outlookのメールコーチングをチャット形式に拡張したことを案内しました。従来は複数の提案をまとめて適用する方式が中心でしたが、チャット型では提案を選択し、追加の指示で調整してからメール本文へ直接反映できます。対象としてAndroid、Windows、iOS、Mac、Webが挙げられています。(Microsoft Learn)
Outlookのチャット型Copilotコーチングとは
OutlookのCopilotコーチングは、自分で作成したメールをAIに確認させ、主に次の観点から改善提案を受ける機能です。
- 文章のトーンが相手に適しているか
- 要点が明確に伝わるか
- 読み手に冷たい印象や強すぎる印象を与えないか
- 依頼や結論が分かりやすく整理されているか
Microsoftの案内では、Copilotがメールのトーン、明確さ、読み手の気持ちを確認し、送信前に改善案を提示します。(マイクロソフトサポート)
「Copilotで下書き」との違い
Outlookには、メール作成を支援する似た機能として「Copilotで下書き」があります。両者は、メールを作り始める時点が異なります。
| 機能 | 作業の開始点 | 向いている場面 | Copilotの役割 |
|---|---|---|---|
| Copilotで下書き | メール本文がほぼない状態 | ゼロから文面を作りたい | 指示を基にメール全文を生成する |
| Copilotによるコーチング | 自分で本文を書いた後 | 表現や構成を改善したい | 下書きを評価し、改善点を提示する |
| チャット型コーチング | 自分で本文を書いた後 | 必要な箇所だけ直したい | 提案の選択、追加調整、本文への反映を支援する |
「何を書けばよいか決まっていない」場合は下書き機能、「内容は決まっているが伝え方を整えたい」場合はコーチングが適しています。
従来のコーチングから変わった点
従来の画面では、Copilotが提示した提案をまとめて適用するか、提案を見ながら利用者が手作業で修正する方法が中心でした。
新しいチャット型では、次のような使い方が可能になります。
- 適用したい提案を選ぶ
- 不要な提案は採用しない
- 提案内容をチャットでさらに調整する
- 調整後の文章をメール本文へ直接反映する
- メール本文を見ながらCopilotと修正を繰り返す
たとえば、Copilotから「依頼表現を柔らかくする」「結論を先に置く」「文章を短くする」という3つの提案が出た場合、「依頼表現を柔らかくする」だけを選んで適用できます。
Microsoftは、従来の一括適用から、提案を個別に選択してチャットで絞り込み、メール内容をその場で更新できる方式へ変更したと説明しています。(Microsoft Learn)
チャット型Copilotコーチングを利用するための条件
OutlookにCopilotボタンが表示されていても、アカウント、メールボックス、ライセンスなどの条件によってコーチングを利用できないことがあります。
| 確認項目 | 主な条件 |
|---|---|
| ライセンス | 組織向けのMicrosoft Copilotライセンスがユーザーに割り当てられている |
| アカウント | Microsoft Entra IDの職場または学校アカウントを使用している |
| メールボックス | Exchange Online上のプライマリメールボックスを使用している |
| Outlook | 対応するOutlookを最新の状態に更新している |
| メールの保護 | 署名、暗号化、IRM、一部のMIPラベルが設定されていない |
| 本文の長さ | Copilotが評価できるだけの本文が入力されている |
Microsoftのシステム要件では、CopilotはExchange Onlineでホストされているプライマリメールボックスを対象としています。アーカイブ、グループ、共有、代理人メールボックスでは利用できません。Microsoft 365 Appsのプライバシー設定やネットワーク設定も、Copilotの表示や動作に影響する場合があります。(Microsoft Learn)
また、OutlookのCopilot機能には組織向けのMicrosoft Copilotライセンスが必要です。署名済みまたは暗号化されたメール、IRMを設定したメール、一部のMIPラベル付きメールもサポート対象外です。(マイクロソフトサポート)
対応するOutlook
今回のチャット型コーチングについて、Microsoftのリリースノートでは次のプラットフォームが対象として案内されています。
| プラットフォーム | 対象 |
|---|---|
| Windows | 対象 |
| Mac | 対象 |
| Outlook on the web | 対象 |
| iPhone・iPad | 対象 |
| Android | 対象 |
Windowsでは新しいOutlookと従来のOutlookの両方に、Copilotによるコーチング機能が用意されています。Macでは最新バージョンのOutlookが必要で、旧式のOutlook for Macはサポートされません。(マイクロソフトサポート)
ただし、新機能はサービス側とアプリ側の両方で順次反映されるため、同じ組織内でも表示される画面が異なる可能性があります。
OutlookでCopilotのメールコーチングを使い、提案を選んで適用する方法
メールの下書きを作成する
Outlookで新しいメール、返信、または転送の作成画面を開き、まず自分で本文を入力します。
コーチングは、すでに書かれた文章を評価する機能です。挨拶だけの短い文章では、具体的な提案を生成できないことがあります。
モバイル版の公式案内では、関連性のあるフィードバックを得るために100文字以上の本文を入力するよう案内されています。コーチングを開始できない場合は、まず結論、理由、依頼内容まで書いてから再度試してください。(マイクロソフトサポート)
Copilotによるコーチングを開く
メール作成画面のツールバーまたはリボンにあるCopilotアイコンを選択します。
メニューから、次のいずれかの項目を選びます。
- Copilotによるコーチング
- コーチングを受ける
- Get Coaching
表示名は、Outlookの種類、アプリの言語、更新状況によって異なる場合があります。
チャット型の機能が有効な環境では、コーチングを開始するとCopilotのチャットウィンドウが自動的に開き、メールに対する改善提案が表示されます。(Microsoft Learn)
改善提案を確認する
Copilotから提示された提案を読み、何を変更しようとしているかを確認します。
特に次の点は、適用前に確認してください。
| 確認項目 | 判断基準 |
|---|---|
| 事実関係 | 日付、金額、場所、担当者名が変わっていないか |
| 依頼内容 | 相手にしてほしいことが明確になっているか |
| 締め切り | 期限や回答方法が削除されていないか |
| トーン | 丁寧すぎて要点が曖昧になっていないか |
| 文量 | 必要な説明まで削られていないか |
| 責任範囲 | 誰が何を判断するのかが変わっていないか |
文章が自然になっていても、意味まで変わっている提案は採用しないことが重要です。
必要な提案だけを選択する
提示された提案のうち、反映したいものを選択します。
たとえば、次のように判断します。
- 「依頼表現を柔らかくする」は適用する
- 「本文全体を短くする」は適用しない
- 「結論を冒頭へ移動する」は追加調整してから適用する
メールの目的によっては、読みやすさよりも正確性を優先すべき場合があります。契約条件、手続き、料金、期限などを含むメールでは、文章全体を一括で書き換えるより、表現に関する提案だけを選ぶ方が安全です。
チャットで提案を調整する
提案をそのまま適用せず、Copilotチャットへ追加の条件を伝えることもできます。
たとえば、次のように指示します。
冒頭のあいさつと箇条書きは残し、依頼部分だけ柔らかい表現にしてください。
日付、金額、担当者名は変更せず、結論を最初の段落へ移してください。
相手に責任を押しつける印象を避けつつ、回答期限は明確に残してください。
全体を書き換えず、重複している2文だけを短くしてください。
変更してよい範囲と変更してはいけない範囲を同時に指定すると、意図に近い修正結果を得やすくなります。
メール本文へ適用する
調整した提案を選択し、メール本文へ適用します。
チャット型コーチングでは、Copilotが提案内容をメール本文へ直接反映します。適用後も本文を自分で編集できるため、語尾や敬称などの細かな部分を手作業で整えます。(Microsoft Learn)
適用前後を比較して送信する
修正後は、文章が読みやすくなったかだけでなく、元のメールの意味が維持されているかを確認します。
最低限、次の項目を見直してください。
- 宛先とCC
- 相手の名前と役職
- 日付と曜日
- 金額と数量
- 回答期限
- 添付ファイルの有無
- URLや電話番号
- 承認、契約、確約に当たる表現
Copilotの提案は完成原稿ではなく、送信者が判断するための修正案です。Microsoftも、AIが生成した内容は確認、編集、検証することが重要だと案内しています。(マイクロソフトサポート)
チャット型コーチングで使える実用的な指示例
単に「丁寧にしてください」と依頼すると、文章が過度に長くなったり、肝心の依頼内容が弱くなったりすることがあります。相手、目的、維持する情報を具体的に指定しましょう。
| 利用場面 | Copilotへの指示例 |
|---|---|
| 上司への確認依頼 | 結論を先に示し、判断してほしい項目を最後に1文で明確にしてください |
| 他部署への作業依頼 | 命令的な表現を避けつつ、担当作業と期限は明確に残してください |
| 顧客へのおわび | 原因と対応内容は変更せず、責任回避に見えない誠実な表現にしてください |
| 期限の再通知 | 催促の目的が伝わるようにしつつ、相手を責める表現は避けてください |
| 長文メールの整理 | 背景、結論、依頼事項の順に並べ替え、箇条書きを使ってください |
| 重要事項の案内 | 日付、場所、対象者、必要な手続きを変更せず、見落としにくい構成にしてください |
| 社外向けメール | 社内用語を一般的な表現へ置き換え、略語には説明を加えてください |
| 短文化 | あいさつと結論は残し、重複した説明だけを削除してください |
特に有効なのが、「変更しない情報」を明示する方法です。
たとえば、「2026年9月15日という日付は変えない」「担当者名は削除しない」「謝罪の文は残す」と指定すれば、Copilotが必要以上に内容を変更するリスクを抑えられます。
提案を適用するか判断する基準
Copilotの提案は、文章として自然かどうかだけで判断しないことが大切です。
適用しやすい提案
次のような提案は、比較的取り入れやすいものです。
- 同じ意味の文章が重複している
- 結論が後ろにあり、読み手が目的を把握しにくい
- 一文が長く、主語と述語の関係が分かりにくい
- 強い表現を、意味を変えずに柔らかくできる
- 依頼事項を箇条書きにすると理解しやすくなる
慎重に扱うべき提案
次のような変更は、内容を確認してから適用します。
- 謝罪や責任に関する表現の削除
- 回答期限の変更や省略
- 条件、金額、数量の言い換え
- 契約や承認と受け取られる表現の追加
- 「予定」を「決定」に変えるなど、確定度を変える修正
- 「可能です」を「対応します」に変えるなど、約束の範囲を広げる修正
文章の印象が改善しても、組織としての意思決定や責任範囲が変わる修正は、そのまま適用してはいけません。
チャット型コーチングが特に役立つ場面
一部だけ言い換えたいメール
日付や手続きは確定しているものの、依頼表現だけが強くなっている場合に適しています。
従来の一括適用では文章全体が変わる可能性がありましたが、チャット型ならトーンに関する提案だけを選べます。
複数の立場へ配慮するメール
上司、関係部署、外部事業者など、複数の相手が読むメールでは、誰か一人に責任を押しつけるような表現になっていないかを確認できます。
「関係者全員に配慮しつつ、誰が次の対応を行うかは明確にする」といった調整も可能です。
重要事項を短く伝えたいメール
行政手続き、社内申請、障害報告などでは、説明を短くしすぎると必要な条件まで抜けてしまいます。
この場合は「全文を短くする」のではなく、「重複部分だけを削除する」「結論を先に出す」と指示するのが有効です。
催促や再依頼のメール
回答期限を伝える必要がある一方、相手を責める印象は避けたい場面にも向いています。
ただし、Copilotによって期限が削除されないよう、「期限は必ず残す」と明示してください。
Copilotのコーチングが表示されない場合の対処法
| 症状 | 確認するポイント | 対処方法 |
|---|---|---|
| Copilotアイコンがない | ライセンス、サインイン中のアカウント | 管理者にライセンス割り当てを確認する |
| コーチングがメニューにない | Outlookのバージョン | Outlookを更新し、アプリを再起動する |
| ボタンが無効になる | 本文が短い | 結論、理由、依頼内容まで入力する |
| 共有メールボックスで使えない | 使用中のメールボックス | 自分のプライマリメールボックスで試す |
| 暗号化メールで使えない | S/MIME、IRM、MIPラベル | 組織のルールを確認し、通常メールでテストする |
| チャット型にならない | 新機能の配布状況 | Web版Outlookでも確認し、アプリを最新版にする |
| 提案が的外れになる | 指示の具体性 | 変更しない情報と変更する範囲を明示する |
| 読み込みが終わらない | ネットワーク、プライバシー設定 | 管理者にCopilot関連通信と接続エクスペリエンスを確認してもらう |
「すべての提案を適用」しか表示されない場合
Microsoftのサポートページには、従来型の「すべての提案を適用」方式も掲載されています。一方、2026年8月のリリースノートでは、提案を選んでチャットで調整する新方式が案内されています。(マイクロソフトサポート)
そのため、一括適用の画面が表示されても、必ずしも設定ミスとは限りません。次の順番で確認します。
- Outlookを最新版へ更新する
- Outlookを完全に終了して再起動する
- Outlook on the webでも同じアカウントを確認する
- 自分のプライマリメールボックスで新規メールを作成する
- 管理者にCopilotライセンスの割り当てを確認してもらう
従来型しか利用できない場合は、提案を確認しながら必要な箇所だけを手動で修正する方法でも対応できます。
業務メールで利用するときの注意点
日付や金額は必ず原文と照合する
Copilotは文章を自然にする過程で、数字の位置を変えたり、条件を要約したりする可能性があります。
特に次の情報は、適用前後を照合してください。
- 開催日時
- 申込期限
- 金額
- 数量
- 契約期間
- 対象者
- 担当部署
- 添付書類の名称
丁寧すぎる文章にも注意する
Copilotへ「丁寧に」とだけ指示すると、前置きが長くなり、相手にしてほしい行動が分かりにくくなることがあります。
業務メールでは、「丁寧さ」と「分かりやすさ」を分けて指示するのが効果的です。
丁寧な表現にしてください。ただし、回答期限と依頼事項は簡潔かつ明確に残してください。
機密情報の取り扱いルールを守る
Copilotを業務で利用する場合も、組織の情報管理規程、秘密情報の取り扱い、個人情報保護のルールに従う必要があります。
利用可能な機能であっても、入力してよい情報とは限りません。人事情報、未公開の契約情報、要配慮個人情報などを含む場合は、組織内の運用ルールを確認してください。
最終判断をCopilotに任せない
Copilotが改善できるのは、主に文章の構成や表現です。
謝罪の範囲、契約上の責任、組織としての回答、法的な表現などは、送信者や責任者が判断しなければなりません。重要なメールでは、Copilotによる修正後も上司や担当部署の確認を受ける運用が安全です。
Outlookのチャット型Copilotコーチングを使い始める手順
Outlookのチャット型Copilotコーチングを利用すると、AIにメール全文を任せるのではなく、自分で書いた内容を維持しながら必要な部分だけ改善できます。
まずは、機密情報を含まないテストメールで次の操作を試してください。
- 100文字以上を目安にメール本文を作成する
- Copilotアイコンからコーチングを開く
- 提案の内容を確認する
- 必要な提案だけを選択する
- 変更しない日付や固有名詞をチャットで指定する
- 本文へ適用し、原文と比較する
- 最終確認後に送信する
Copilotを有効に活用するポイントは、すべての提案を受け入れることではありません。メールの目的、相手との関係、変更してはいけない情報を基準に、採用する提案を選ぶことが重要です。

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