Mouse Without Bordersで自分のセキュリティキーを使う設定方法と有効期限延長テクニック

複数PCを1組のキーボードとマウスで操作できる「Mouse Without Borders」はとても便利ですが、セキュリティキーの扱いが分かりづらく、複数台・複数ユーザー環境では管理が面倒になりがちです。この記事では、PowerToys版/スタンドアロン版の違いを整理しつつ、「自分で決めたキー」や「期限切れしないキー」に近づけるための現実的な運用方法を詳しく解説します。

目次

Mouse Without Bordersで「自分のキー」を使いたい

Mouse Without Bordersを長く使っている人ほど、次のような不満を感じやすいはずです。

  • 昔のように、自分で決めた短いセキュリティキーを使いたい。
  • 現在のような、自動生成された長いキーを5台分も手入力するのはつらい。
  • PowerToys版とスタンドアロン版で設定場所が違うようで、どこを触ればいいのか分からない。
  • ある日突然、セキュリティキーの有効期限が切れて再入力を要求されるのを避けたい。
  • 同じPCでも、Windowsのユーザーごとに毎回キーを入れ直すのが面倒。

この記事では、これらの悩みに対して、現在の仕様で取り得る実用的な落としどころを整理します。

現状仕様の整理:任意キーはUIからは設定できない

まず、根本となる前提をおさえておきます。

  • 最近のMouse Without Borders(特にPowerToysに統合された版)では、UIから任意の文字列をセキュリティキーとして設定する機能は廃止されています。
  • 基本的な想定は、1台目のPCで自動生成した長いキーを、他のPCへコピーして配布するという運用です。
  • そのため、完全に自由なキーを画面から指定することはできません。

この記事で紹介する方法は、どれも非公式なワークアラウンドです。将来のアップデートで挙動が変わったり、動かなくなる可能性があります。必ずバックアップを取った上で自己責任で行ってください。

PowerToys版とスタンドアロン版の違い

現在は大きく分けて次の2パターンがあります。

種類インストール元主な設定保存場所特徴
PowerToys版Microsoft PowerToysに同梱%localappdata%\Microsoft\PowerToys\MouseWithoutBorders\settings.jsonPowerToysのUIから有効化/無効化。JSONファイルに設定が保存される。
スタンドアロン版単体インストーラー/Chocolateyなどレジストリ(主にHKEY_USERS配下)昔からの形式。PowerToysを使わない環境で利用される。

PowerToys版とスタンドアロン版が同じPCに共存していると、どちらの設定が有効なのか分かりづらいという問題が生じます。この記事では、基本的にどちらか一方に統一して運用することを前提に解説します。

PowerToys版:settings.jsonを直接編集して「自分のキー」にする

PowerToys版では、UIから任意のキーを入力することはできませんが、設定ファイルを直接書き換えることで、ある程度「自分のキー」に寄せることができます。

ただし、これは完全に非公式であり、バージョンによっては反映されなかったり、今後使えなくなる可能性があります。

settings.jsonの場所

PowerToys版の設定ファイルは通常、次の場所にあります。

%localappdata%\Microsoft\PowerToys\MouseWithoutBorders\settings.json

エクスプローラーのアドレスバーに上記パスを貼り付けるか、Win + Rで「ファイル名を指定して実行」を開いて入力すると簡単に開けます。

settings.jsonを書き換えてセキュリティキーを指定する手順

  1. PowerToysを終了する
    • 通知領域のPowerToysアイコンを右クリックし「終了」。
  2. settings.jsonをバックアップする
    • ファイルを右クリックしてコピー → 同じフォルダに「settings_backup.json」などの名前で貼り付け。
  3. settings.jsonをテキストエディター(メモ帳等)で開く。
  4. JSON内にある"SecurityKey"という項目を探す。
  5. 値を自分の使いたいキー文字列に書き換える。
    • 例:"SecurityKey": "my-simple-key-2025"
    • キーはダブルクォートで囲み、全PCで同じ文字列にそろえる。
  6. 上書き保存して、PowerToysを再起動する。

この方法がうまくいけば、昔ながらの「短い任意キー」に近い運用ができます。

PowerToys版でうまくいかない場合の注意点

  • PowerToys版とスタンドアロン版が共存していると、どちらか片方だけが動いており、もう片方の設定をいくら書き換えても反映されないことがあります。
  • タスクマネージャーからMouse Without Bordersのプロセスを右クリックし、「ファイルの場所を開く」で実体の場所を確認すると、どちらが動いているか判断しやすくなります。
  • 不要なほうはアンインストールまたは自動起動を無効化して、どちらかに統一するのが無難です。
  • PowerToys自体が管理者権限で動作している場合、settings.jsonの編集には管理者権限が必要になることがあります。

なお、スタンドアロン版はこの方法の対象外です。スタンドアロン版で任意キーを使いたい場合は、後述する有効期限の超長期化と一括配布のほうが現実的です。

スタンドアロン版:有効期限を「超未来」にして実質無効化する

スタンドアロン版(Chocolateyで入れた版なども含む)は、昔ながらの動作をする一方で、セキュリティキーに有効期限の概念があります。この期限が切れると、突然「再度キーを入力してください」と言われてしまいます。

ここでは、UIからは変更できないキーの「入力日」をレジストリで書き換え、期限切れをほぼ発生させない方法を解説します。

レジストリのmyKeyDateとは?

スタンドアロン版では、次のレジストリキーにキー入力の日付が保存されています。

HKEY_USERS\.DEFAULT\Software\Microsoft\MouseWithoutBorders\myKeyDate

この値は、単純な日付ではなく、次のような形式になっています。

  • 「m/dd/yyyy」という形式の文字列(例:1/01/2222)を、
  • UTF-16LE(Unicode)でバイト列に変換し、
  • それをBase64エンコードしたもの。

例えば、次のような対応になります。

日付文字列(m/dd/yyyy)myKeyDateに設定する値(Base64)意味
1/01/2222MQAvADAAMQAvADIAMgAyADIA非常に遠い未来。ほぼ期限切れにならない。
12/31/2099MQAyAC8AMwAxAC8AMgAwADkAOQA=2099年末まで有効というイメージ。
1/01/2099MQAvADAAMQAvADIAMAA5ADkA2099年初頭まで有効というイメージ。

この記事では、分かりやすさのために「1/01/2222 → MQAvADAAMQAvADIAMgAyADIA」を例として使用します。

有効期限を超未来にする基本手順

  1. 1台目のPCで通常どおりMouse Without Bordersをセットアップし、自動生成されたキーを表示させる。
  2. そのキーを後で他のPCに配るため、テキストファイルなどにコピーして保存しておく。
  3. regedit(レジストリエディター)を開く。
  4. HKEY_USERS\.DEFAULT\Software\Microsoft\MouseWithoutBordersを開き、myKeyDateという文字列値を探す。
  5. myKeyDateの値として、以下の文字列を設定する。
    • MQAvADAAMQAvADIAMgAyADIA(=「1/01/2222」を意味)
  6. Mouse Without Bordersを再起動する。

この状態にしておけば、「キ-を設定した日」が西暦2222年という扱いになるため、実質的に期限切れが発生しない状態になります。

コマンドプロンプトから一発で設定する例

管理者権限のコマンドプロンプトから次のコマンドを実行すると、同じ設定を一発で行えます。

reg add "HKU\.DEFAULT\Software\Microsoft\MouseWithoutBorders" ^
  /v myKeyDate /t REG_SZ /d MQAvADAAMQAvADIAMgAyADIA /f

このコマンドの意味は次のとおりです。

  • HKU\.DEFAULT\Software\Microsoft\MouseWithoutBordersキーに、
  • 文字列値(REG_SZ)としてmyKeyDateを作成・更新し、
  • その中身にMQAvADAAMQAvADIAMgAyADIAを入れる。

同様の要領で、Base64値を変更すれば別の日付にもできます。

自分で別の日付のBase64を作る方法(PowerShell)

「2222年まではさすがにやりすぎ…」という場合は、PowerShellで自分の好きな日付をBase64化できます。

# 日付文字列をUTF-16LE→Base64に変換する例
[Convert]::ToBase64String(
  [Text.Encoding]::Unicode.GetBytes("12/31/2099")
)

逆に、既存のmyKeyDateがどの日付を意味しているか確認したい場合は、次のようにデコードできます。

[Text.Encoding]::Unicode.GetString(
  [Convert]::FromBase64String("MQAvADAAMQAvADIAMgAyADIA")
)

これらのテクニックを使えば、好きな日付を有効期限として設定することが可能です。

複数PCへのキーの一括配布を楽にするコツ

有効期限を超未来にしたら、次は同じキーを5台のPCに配布します。ポイントは「長いキーを極力手入力しない」ことです。

基本的な流れ

  1. 1台目のPCでMouse Without Bordersをセットアップし、自動生成されたキーを表示。
  2. そのキーをテキストファイルやメモアプリにコピーして保存。
  3. LAN内の共有フォルダやクラウドストレージ、メール、チャットツールなどを使って、他のPCから開ける場所へコピー。
  4. 2台目以降は、設定画面のキー入力欄にコピー&ペーストで貼り付ける。

余力があれば、次のような方法も考えられます。

  • スマホ向けのメモアプリにキーを貼り付け、PC側でその画面を見ながら入力する。
  • テキストファイルをQRコード化しておき、スマホでスキャンしてコピペする。

とにかく、長い文字列を人間が手で打たない仕組みを作るのがコツです。

同一PCの「複数ユーザー」で毎回キー入力になる問題への対処

Mouse Without Bordersの設定は、環境によってはユーザーごとに保存されます。この場合、同じPCでもWindowsアカウントが変わるたびに「キーの再入力」が必要になってしまいます。

これを防ぐには、各ユーザーのレジストリに対して、同一のmyKeyDateと同一のキー本体を配布します。

ユーザーごとのレジストリパス

ログオン中ユーザーの設定は、次のようなパスに保存されていることが多いです。

HKEY_USERS\S-1-5-21-****************\Software\Microsoft\MouseWithoutBorders

S-1-5-21-... という長い文字列は、ユーザーごとのSIDです。この配下に、myKeyDateなどの値が保存されます。

PowerShellで複数ユーザーにmyKeyDateを一括設定する例

管理者権限のPowerShellで実行すれば、ログオン中ユーザーのSIDを自動で列挙し、myKeyDateをまとめて設定できます。

$sids = Get-ChildItem Registry::HKEY_USERS | Where-Object {
  $_.Name -match 'S-1-5-21-'
}

foreach ($sid in $sids) {
  $path = "Registry::${($sid.Name)}\Software\Microsoft\MouseWithoutBorders"
  if (-not (Test-Path $path)) { New-Item -Path $path -Force | Out-Null }
  New-ItemProperty -Path $path -Name "myKeyDate" -Value "MQAvADAAMQAvADIAMgAyADIA" -PropertyType String -Force | Out-Null
}

このスクリプトがやっていることは次の通りです。

  • HKEY_USERS配下から、ユーザーSID(S-1-5-21-...)をすべて取得。
  • 各SID配下の\Software\Microsoft\MouseWithoutBordersキーを探し、なければ作成。
  • そこにmyKeyDate文字列値を作成し、先ほどのBase64値(例:2222年)を一括で書き込む。

これに加え、セキュリティキー本体(UIに表示される長い文字列)も、必要に応じて各ユーザーで同じものを設定してください。こちらはUIから貼り付ける運用でも構いません。

PowerToys版とスタンドアロン版を混在させない

「PowerToys版とスタンドアロン版が同居しているせいで、どの設定が効いているのか分からない」という状況は非常にトラブルのもとです。次のように整理するとトラブルを減らせます。

どちらが動いているか確認する手順

  1. タスクマネージャーを開く(Ctrl + Shift + Esc)。
  2. プロセスタブからMouse Without Borders関連のプロセスを探す。
  3. 該当プロセスを右クリックし、「ファイルの場所を開く」を選択。
  4. 開かれたフォルダが、PowerToys配下か、スタンドアロン版のインストールフォルダかを確認。

この結果をもとに、

  • PowerToysで管理したいなら:スタンドアロン版をアンインストールし、自動起動も止める。
  • スタンドアロン版で統一したいなら:PowerToys側の機能を無効化する(PowerToysの設定画面からMouse Without Bordersをオフ)。

どちらかに統一したうえで、この記事の手順を実施するのが安全です。

運用パターン別のおすすめ構成

ここまでの内容を踏まえて、よくある運用パターンごとのおすすめ構成をまとめます。

パターンおすすめ方針ポイント
自宅で2~3台程度PowerToys版を利用し、
settings.jsonが反映されるなら任意キー/ダメなら自動生成キー+長期myKeyDate
PowerToysで一元管理。問題が出たらスタンドアロンへ移行も検討。
5台以上+複数ユーザースタンドアロン版を選び、
1台で生成したキーを配布+myKeyDateをPowerShellで一括設定
レジストリ運用のほうがスクリプトで管理しやすい。
企業ネットワークセキュリティポリシーに従い、
任意キーや極端な長期化は管理者と相談
グループポリシーや端末管理ツールで配布する案も検討。

セキュリティ面での注意点

「自分の好きな短いキーを使いたい」という要望はとても自然ですが、セキュリティの観点からは次の点に注意が必要です。

  • 「1234」や「password」のような簡単すぎるキーは推測されやすく、同一ネットワーク上に悪意ある端末が存在すると危険です。
  • UIが自動生成するキーは、長くランダム性も高いため、セキュリティ的には望ましい設計です。
  • 本記事のように有効期限を極端に長くする運用は、利便性のためにセキュリティをある程度諦めているという自覚を持つ必要があります。

おすすめは、

  • 完全な任意キー(短いキー)を使うよりも、
  • 自動生成キーを受け入れつつ、有効期限だけを超未来にする

という折衷案です。これなら、キー自体の強度は維持しつつ、頻繁な再入力のストレスをかなり減らせます。

トラブルシューティングのヒント

PC同士が突然つながらなくなった場合

  • まずは両方のPCでMouse Without Bordersを再起動してみる。
  • PowerToys版/スタンドアロン版が混在していないか確認。
  • ファイアウォールやセキュリティソフトがMouse Without Bordersの通信をブロックしていないか確認。
  • それでもダメな場合は、一度全PCでセキュリティキーを入れ直す(ただし、その前にmyKeyDate等のレジストリをバックアップしておく)。

myKeyDateを書き換えても期限切れになる場合

  • HKEY_USERS\.DEFAULTではなく、実際に使っているユーザーSIDの配下のmyKeyDateが参照されている可能性があります。
  • PowerShell等でSID配下の設定も含めて一括で書き換えてみる。
  • 値のBase64が正しいか、PowerShellでデコードして確認する。

settings.jsonを書き換えてもPowerToys版で反映されない場合

  • 編集後にPowerToysを完全に終了・再起動しているか確認。
  • PowerToysのアップデートで設定形式が変わっていないかを確認。
  • そもそも動いているのがPowerToys版なのか、スタンドアロン版なのかをタスクマネージャーで確認。

バックアップとロールバックのすすめ

レジストリや設定ファイルを直接編集する場合、何かあったときに戻せる状態を作ってから作業するのが鉄則です。

  • レジストリ:編集前に該当キーを右クリック → エクスポートでREGファイルを保存。
  • settings.json:編集前に同じフォルダへコピーを作成(settings_backup.jsonなど)。

万が一Mouse Without Bordersが起動しなくなったり、謎のエラーが出るようになった場合は、

  1. 一度Mouse Without Bordersをアンインストール。
  2. レジストリや設定ファイルをバックアップ時点の状態に戻す。
  3. PCを再起動してから再インストール。

ここまでしても元に戻らないほど壊れるケースは稀ですが、「何かあったら戻せる」という安心感があるだけでも作業はだいぶ楽になります。

まとめ

  • 現在のMouse Without Borders(特にPowerToys版)では、UIから完全な任意キーを指定することはできない。
  • PowerToys版では、settings.jsonの"SecurityKey"を書き換えることで、ある程度「自分のキー」を使える可能性があるが、非公式かつバージョン依存。
  • スタンドアロン版では、HKEY_USERS\.DEFAULT\Software\Microsoft\MouseWithoutBorders\myKeyDateの値を遠い未来の日付に対応するBase64文字列へ変更することで、有効期限切れをほぼ防げる。
  • 同一PCの複数ユーザー問題は、各ユーザーSID配下のレジストリに同一のmyKeyDateとキーを配布することで解消できる。
  • 最も現実的な落としどころは、自動生成された長いキーを受け入れつつ、有効期限だけを超未来化し、コピー&ペーストやスクリプトで一括配布する運用である。
  • レジストリ編集や設定ファイルの書き換えは、必ずバックアップを取ってから自己責任で実施する。

これらの工夫を組み合わせることで、「自分の決めたキーに近い感覚」でMouse Without Bordersを運用しつつ、再入力の手間と期限切れトラブルを大幅に減らすことができます。複数PC・複数ユーザー環境でのストレスを減らし、快適なマルチPCライフを構築していきましょう。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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