SQL Server 2025 Known Issuesは、SQL Server 2025(17.x)をWindows環境に導入・アップグレードする前に読むべき「既知の不具合と回避策」の一覧です。結論から言うと、Windows管理者が最初に確認すべきなのは、TLS 1.2の有効化、Windows Arm64非対応、NUMAノードあたり64論理コアの制限、Visual C++再頒布可能パッケージ、DQSの有無、ZSTDバックアップ圧縮、Full-Text Search、監査ログ、MSDASQLリンクサーバーです。Microsoft Learnの日本語ページは2026年6月24日に更新されており、対象はSQL Server 2025(17.x)です。(Microsoft Learn)
Windows管理者が押さえるべき「SQL Server 2025 Known Issues」の位置づけ
SQL Server 2025 Known Issuesは、新機能の紹介ページではありません。インストール、アップグレード、実行時の挙動、バックアップ、監査、検索、リンクサーバーなどで、すでにMicrosoftが把握している問題と回避策をまとめた公式情報です。
特に重要なのは、問題の多くが「アップグレード後に気づくと復旧に時間がかかる」種類であることです。たとえば、TLS 1.2が無効なWindowsサーバーではSQL Server 2025のインストール自体が失敗する可能性があります。また、SQL Server 2016やSQL Server 2017からのインプレースアップグレードでは、Visual Studio 2022向けMicrosoft Visual C++再頒布可能パッケージが不足していると失敗する場合があります。(Microsoft Learn)
SQL Server 2025のリリースノートでは、以前のSQL ServerからSQL Server 2025(17.x)へのアップグレードはサポートされるものの、OS環境がSQL Server 2025のハードウェア・ソフトウェア要件を満たす必要があると説明されています。つまり、Known Issuesは「読めばよい参考情報」ではなく、移行計画の前提条件として扱うべき情報です。(Microsoft Learn)
影響範囲の全体像
SQL Server 2025 Known Issuesの内容は、単一の不具合に閉じていません。Windowsサーバー、データベースエンジン、バックアップ運用、監査設計、アプリケーション接続、Linux混在環境まで影響します。
| 領域 | 主な既知の問題 | 実務上の影響 | 管理者が確認すべきこと |
|---|---|---|---|
| インストール | TLS 1.2が無効だとセットアップ失敗 | 新規導入・フェールオーバークラスター構成で止まる | SCHANNEL設定でTLS 1.2を有効化する |
| プラットフォーム | Windows Arm64非対応、NUMAノードあたり64論理コア超で起動失敗の可能性 | Armベース端末や高密度サーバーで利用できない可能性 | CPUアーキテクチャとNUMA構成を事前確認する |
| アップグレード | SQL Server 2016/2017からの移行でVisual C++再頒布可能パッケージ不足により失敗 | メンテナンス時間内にアップグレードが完了しない | Visual C++ Redistributable for Visual Studio 2022を事前に追加・修復する |
| 機能削除・移行 | Data Quality Servicesがあるとアップグレード失敗 | DQS利用環境でウィザードが停止する | DQS利用有無を棚卸しし、必要なら/IACCEPTDQUNINSTALLを使う |
| バックアップ | ZSTDをサーバー構成オプションで設定するとエラー | 既定の圧縮方式として設定できず、バックアップジョブが失敗する | BACKUP文で圧縮アルゴリズムを直接指定する |
| セッション・認証 | SESSION_CONTEXTと並列プラン、PBKDF2によるログイン性能影響 | アプリの結果不整合、AVダンプ、ログイン遅延の可能性 | 並列実行・接続プール・SQL認証の負荷テストを行う |
| 監査 | 複数のSQL Server監査がSecurityログに書き込めない場合がある | 監査証跡の欠落、監査要件未達 | ファイル出力への変更、またはレジストリ変更と監査再起動を検討する |
| Full-Text Search | 25MB超のプレーンテキスト文書、特定言語の変曲形式クエリで問題 | 検索インデックス作成や検索機能が失敗する | クロールログと対象言語、インデックスバージョンを確認する |
| リンクサーバー | MSDASQL利用時にエラー7416が発生 | 非sysadminユーザーの外部接続が失敗する | @provstr、ログインマッピング、User ID指定を見直す |
| 大量DB運用 | 多数のDB作成・オンライン化後に応答低下の可能性 | マルチテナント環境や大量DB環境でワーカースレッド圧迫 | 起動時トレースフラグ15608を検討する |
インストール前に確認すべきWindows側の条件
TLS 1.2が無効な環境ではインストールに失敗する
SQL Server 2025は、TLS 1.2が無効なマシンではインストールに失敗する可能性があります。対象にはフェールオーバークラスターインスタンスも含まれます。回避策は、SQL Server 2025をインストールする前にWindows側でTLS 1.2を有効にすることです。(Microsoft Learn)
確認すべきレジストリの場所は次の通りです。
HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Control\SecurityProviders\SCHANNEL\Protocols
実務では、単に「TLS 1.2を有効化する」だけでなく、次の点まで確認しておくと失敗を減らせます。
- セットアップ対象の全ノードで設定が揃っているか
- 古いミドルウェアや監視エージェントがTLS設定変更の影響を受けないか
- クラスター構成の場合、全ノードで同じポリシー・レジストリ設定になっているか
- 変更後に再起動が必要な運用ルールになっていないか
特に古いWindows Serverから長期間運用しているSQL Serverでは、セキュリティポリシーやレジストリが過去の設定のまま残っていることがあります。アップグレード当日に確認するのではなく、事前診断の段階で棚卸ししてください。
Windows Arm64はサポート対象外
SQL Server 2025(17.x)はWindows Arm64をサポートしていません。公式要件では、SQL Server 2025のインストールはx64プロセッサのみサポートされ、IntelおよびAMDのx86-64 CPUが対象です。さらに、NUMAノードあたり最大64コアという条件も示されています。(Microsoft Learn)
この点は、開発者用PCや小規模検証環境で見落とされやすいポイントです。ArmベースのWindows端末で検証してから本番へ展開する、という流れは取りにくいため、検証環境も本番に近いx64構成で用意する必要があります。
NUMAノードあたり64論理コアを超えるWindowsサーバーでは起動失敗に注意
SQL Server on Windowsでは、NUMAノードあたり64個を超える論理コアを持つマシンで、インストール後にSQL Serverインスタンスが起動できない可能性があります。高性能な物理サーバーや大規模仮想マシンを使う場合は、CPU総数だけでなくNUMAノード単位の論理コア数を確認してください。(Microsoft Learn)
判断基準としては、次の環境で特に確認が必要です。
| 環境 | 確認ポイント |
|---|---|
| 大規模物理サーバー | BIOS/UEFI、NUMA構成、論理プロセッサ数 |
| 仮想化環境 | vNUMAの割り当て、ソケット数、コア数、ハイパースレッディング |
| クラウドIaaS | VMサイズごとのNUMA構成、SQL Serverサポート条件 |
| 高可用性構成 | フェールオーバー先ノードも同じ制限を満たすか |
「本番だけ高性能サーバーにする」構成では、検証環境で再現しない問題が本番移行時に発生することがあります。SQL Server 2025では、CPUスペックの高さだけでなく、サポートされるトポロジかどうかを先に見ることが重要です。
アップグレード時に失敗しやすいポイント
SQL Server 2016/2017からのインプレースアップグレードはVisual C++を確認する
SQL Server 2016(13.x)またはSQL Server 2017(14.x)からSQL Server 2025へアップグレードする場合、Microsoft Visual C++ Redistributable for Visual Studio 2022が不足している、または古いバージョンが入っているとアップグレードが失敗する可能性があります。公式ページでは、バージョン14.34以上が必要というログ例が示されています。(Microsoft Learn)
対処はシンプルです。アップグレード前に対象サーバーへVisual C++再頒布可能パッケージを追加または修復し、その後SQL Serverのセットアップを再実行します。
実務では、以下のように確認すると安全です。
| 確認項目 | 見るべきポイント |
|---|---|
| インストール済みプログラム | Visual C++ 2015-2022 Redistributableの有無 |
| バージョン | セットアップログで要求される最低バージョンを満たすか |
| x64/x86 | SQL Server関連ツールやコンポーネントの要件に合わせて確認 |
| 再起動要否 | メンテナンス時間に再起動を含めるか |
| 失敗時対応 | セットアップログの保存、再頒布可能パッケージの修復手順 |
インプレースアップグレードは短時間で済むように見えますが、前提コンポーネントで止まると復旧判断が難しくなります。可能であれば、同じ構成の検証サーバーでセットアップログまで確認してから本番に進めてください。
Data Quality Servicesがある環境は移行設計が必要
Data Quality Services(DQS)がインストールされているSQL ServerインスタンスをSQL Server 2025へアップグレードすると、SQL Server Upgrade WizardのFeature Rules段階で失敗します。回避策として、コマンドラインから/IACCEPTDQUNINSTALLパラメーターを使用する方法が案内されています。(Microsoft Learn)
注意すべきなのは、これは単なるセットアップオプションではなく、DQSの扱いをどうするかという移行判断を含む点です。SQL Server 2025の新機能ページでも、DQSはSQL Server 2025で廃止され、SQL Server 2022以前では引き続きサポートされると説明されています。(Microsoft Learn)
DQSを使っていた可能性がある場合は、次の順で確認します。
| 手順 | 作業内容 |
|---|---|
| 利用有無の確認 | DQS関連データベース、ジョブ、利用部署、接続元アプリを確認する |
| 代替策の検討 | データ品質チェックをETL、アプリ、Power BI、外部サービスなどへ移せるか検討する |
| アンインストール許容判断 | /IACCEPTDQUNINSTALLを使ってよいか、業務責任者と合意する |
| リハーサル | 検証環境でアップグレード手順とログを確認する |
| 本番手順化 | 無人アップグレードを使う場合も同パラメーターを含める |
DQSを使っていないと思っていても、過去の検証や一部部門のバッチで残っていることがあります。アップグレード対象インスタンスの機能一覧だけでなく、ジョブ履歴や接続元も確認すると安全です。
セキュリティ設定・暗号化まわりの注意点
厳密な暗号化を有効にするとSQLPSや一部機能に影響する
SQL Serverが厳密な暗号化を適用するように構成されている場合、SQLPS.exe、SQL Agent PowerShell subsystem、SQLPS PowerShellモジュールが機能しない問題が案内されています。現時点の回避策は、厳密な暗号化を適用しないことです。また、SQL Server Agentジョブsyspolicy_purge_historyが既定で毎日実行され、手順3で失敗する場合があります。(Microsoft Learn)
これは、セキュリティ強化と運用自動化が衝突しやすいポイントです。暗号化を強める方針自体は重要ですが、SQL Agentジョブや古いPowerShellベースの運用スクリプトが残っている環境では、アップグレード後に定期処理が失敗する可能性があります。
確認すべき対象は次の通りです。
| 対象 | 確認内容 |
|---|---|
| SQL Agentジョブ | PowerShellステップを使っていないか |
| 運用スクリプト | SQLPSモジュール依存が残っていないか |
| ポリシーベース管理 | syspolicy_purge_historyの失敗を監視対象に含めるか |
| セキュリティ要件 | 厳密な暗号化を必須にする範囲を整理する |
| 代替手段 | 新しいSqlServer PowerShellモジュールや別方式へ移行できるか |
SQL Server監査イベントがSecurityログへ書き込めない場合がある
SQL Server 2025で複数のSQL Server監査をSecurityログに書き込む構成では、最初のサーバー監査以外が書き込まれない場合があります。エラーログには「SQL Server Audit could not write to the security log.」に相当するエラーが出る可能性があります。Microsoftは将来リリース向けの修正を特定済みとしています。(Microsoft Learn)
回避策は、監査イベントをSecurityログではなくファイルへ書き込むこと、または複数のサーバー監査でSecurityログへの書き込みを許可するレジストリ値を変更することです。
HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\EventLog\Security\MSSQL$<InstanceName>$Audit\EventSourceFlags
レジストリ変更後は、対象のサーバー監査を再起動する必要があります。
ALTER SERVER AUDIT [AuditName] WITH (STATE = OFF);
GO
ALTER SERVER AUDIT [AuditName] WITH (STATE = ON);
GO
監査ログは、障害対応だけでなく内部統制や外部監査にも関係します。移行後に「監査が書き込まれていなかった」とならないよう、アップグレード後の確認項目に必ず入れてください。
バックアップと復元計画で注意すべきZSTD圧縮
SQL Server 2025ではZSTDバックアップ圧縮アルゴリズムが追加されています。ただし、Known Issuesではbackup compression algorithm = 3としてサーバー構成オプションに設定しようとすると、sp_configureでエラーになる既知の問題が案内されています。(Microsoft Learn)
公式のBACKUP構文では、バックアップ時にCOMPRESSION ( ALGORITHM = { MS_XPRESS | ZSTD | accelerator_algorithm } )のように圧縮アルゴリズムを指定できます。したがって、現時点ではサーバー構成の既定値としてZSTDを設定する前提ではなく、BACKUP文側で明示する設計にしておくのが安全です。([Microsoft Learn][4])
例として、運用ジョブでは次のような観点で見直します。
| 確認対象 | 見直しポイント |
|---|---|
| バックアップジョブ | sp_configure 'backup compression algorithm', 3を使っていないか |
| T-SQLバックアップ | WITH COMPRESSIONの指定方法をSQL Server 2025対応にする |
| 復元テスト | ZSTDで取得したバックアップを検証環境で復元できるか |
| 監視 | バックアップサイズ、処理時間、CPU使用率の変化を記録する |
| ロールバック | 従来のMS_XPRESSに戻す手順を用意する |
バックアップ圧縮は、ストレージコストやバックアップ時間を改善できる一方、復元可能性の確認が最重要です。ZSTDを使う場合は、バックアップ成功だけでなく、別サーバーでの復元テストまで行ってください。
アプリケーション側に影響するSESSION_CONTEXTとログイン性能
SESSION_CONTEXTを使うクエリは並列実行時の挙動を確認する
SESSION_CONTEXT関数を使うクエリは、並列クエリプランで実行されると、誤った結果を返したりアクセス違反ダンプを引き起こしたりする可能性があります。特に、接続プールなどでセッションが再利用されるアプリケーションでは注意が必要です。(Microsoft Learn)
SESSION_CONTEXTは、マルチテナントID、ログインユーザー属性、アプリ側の実行コンテキストなどをSQL Server側に渡す用途で使われることがあります。該当する場合は、単体テストだけでなく、実際の同時実行数に近い負荷テストで確認してください。
実務で確認したいSQLの例は次の通りです。
SELECT
OBJECT_NAME(object_id) AS object_name,
definition
FROM sys.sql_modules
WHERE definition LIKE '%SESSION_CONTEXT%';
この検索で見つかったストアドプロシージャやビュー、関数は、並列実行される可能性があるか、アプリ側の接続プールと組み合わせて問題が再現しないかを検証対象にします。
PBKDF2によりSQL認証ログインのCPU使用率や遅延が増える可能性
SQL Server 2025では、パスワードベース認証の既定ハッシュアルゴリズムとしてPBKDF2が使われます。SHA-512ハッシュを100,000回繰り返すことでパスワードセキュリティを高めますが、SQL認証ログイン時間がわずかに長くなり、CPU使用率が高くなる可能性があります。接続プールがない環境やログイン遅延を厳密に監視している環境では影響が見えやすく、接続プール環境では通常影響は最小限とされています。(Microsoft Learn)
特に注意したいのは、バッチ処理や短命接続を大量に作るアプリケーションです。アプリケーションが毎回新規接続を作成している場合、認証処理の負荷が目立つ可能性があります。アップグレード前に、接続プールの有効化、接続文字列、アプリケーションサーバー側のコネクション管理を確認してください。
Full-Text Searchを使う環境の注意点
Full-Text Searchでは、25MBを超えるプレーンテキスト文書をインデックス化しようとした場合、クロールログにFILTER_E_PARTIALLY_FILTEREDが出る可能性があります。回避策として、WindowsレジストリのMaxTextFilterBytesを構成し、更新後にFull-Textクロールを再実行する方法が案内されています。(Microsoft Learn)
対象のレジストリ値は次の場所にあります。
HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Control\ContentIndex
また、Index Version2が有効な場合、ステマーが登録されていない、または利用できない言語で変曲形式を使うFull-Textクエリが失敗する可能性があります。FORMSOF(INFLECTIONAL)に依存する検索機能がある場合は、対象言語と検索仕様を確認してください。(Microsoft Learn)
検索機能を持つアプリケーションでは、次の確認が有効です。
| 確認項目 | 具体例 |
|---|---|
| 大容量文書 | 25MB超のテキスト、ログ、CSV、OCRテキストなど |
| 検索言語 | 日本語、英語以外の多言語検索、変曲検索 |
| クエリ | FREETEXT、FREETEXTTABLE、FORMSOF(INFLECTIONAL) |
| クロールログ | インデックス作成時のエラーや警告 |
| 再構築計画 | インデックスバージョン変更やカタログ再構築の時間 |
Full-Text Searchは、アプリケーション利用者が直接気づく機能です。移行後に検索結果が欠けると業務影響が大きいため、単にインデックスが作成できるかではなく、実際の検索結果が期待通りかを確認してください。
多数のデータベースを扱う環境では応答低下に注意
SQL Server 2025では、読み取り可能なセカンダリレプリカ向けの永続化された統計機能に関連して、データベースごとのバックグラウンドワーカースレッドが作成されます。この機能は既定で有効であり、セカンダリレプリカが構成されていない場合でも、データベースがオンラインになったタイミングでワーカースレッドの圧迫やインスタンス応答性の低下を引き起こす可能性があります。(Microsoft Learn)
回避策として、起動時トレースフラグ15608を有効にしてSQL Serverを再起動する方法が案内されています。このトレースフラグは起動時のみ有効で、起動後に有効化しても、すでに作成されたバックグラウンドスレッドは停止しません。トレースフラグ一覧でも、15608はSQL Server 2025以降で読み取り可能なセカンダリレプリカ機能の永続化された統計を無効にするもので、スコープはスタートアップのみとされています。(Microsoft Learn)
影響を受けやすいのは、次のような環境です。
| 環境 | 理由 |
|---|---|
| マルチテナントSaaS | 1インスタンスに多数のDBを持つことが多い |
| 部門別DBを大量に持つ社内基盤 | 起動時やメンテナンス後に多数DBがオンラインになる |
| 検証DBを同居させている環境 | 小規模DBが大量に存在することがある |
| Always On構成を一部だけ使う環境 | セカンダリレプリカの有無にかかわらず影響確認が必要 |
大量DB環境では、アップグレード後の初回起動、パッチ適用後の再起動、災害復旧テスト時の挙動を必ず確認してください。
リンクサーバー、レプリケーション、PolyBaseは暗号化変更を前提に見る
MSDASQLリンクサーバーはエラー7416に注意
SQL Server 2025 CU 4以降では、Microsoft OLE DB Provider for ODBC(MSDASQL)を使い、プロバイダー文字列(@provstr)を指定するリンクサーバークエリが、エラー7416で失敗する可能性があります。影響を受けるのはsysadmin固定サーバーロールのメンバーではないログインで、リンクサーバーとログインマッピングが正しく構成されていても発生する場合があります。(Microsoft Learn)
Microsoftのトラブルシューティング情報では、更新プログラムをロールバックせずに回避する方法として、不要ならリンクサーバー定義から@provstrを削除する、またはプロバイダー文字列にUser IDを追加する方法が案内されています。影響ユーザーにsysadminを付与すればエラーを避けられる場合がありますが、この方法は推奨されていません。(Microsoft Learn)
実務では、リンクサーバーを次の観点で棚卸ししてください。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| プロバイダー | MSDASQLを使っているか |
| プロバイダー文字列 | @provstrが必要な構成か |
| 実行ユーザー | sysadminではない業務ユーザーやアプリログインが使うか |
| 接続先 | ODBC経由の外部DB、レガシーDB、業務システム |
| テスト | 本番と同じ権限のログインでSELECT・INSERT・更新処理を確認する |
リンクサーバーは、権限の高い管理者アカウントでテストすると成功し、実際のアプリユーザーでは失敗することがあります。必ず本番相当の権限で検証してください。
レプリケーションとログ配布は証明書・暗号化を先に確認する
SQL Server 2025では、リンクサーバー、レプリケーション、ログ配布などに影響する暗号化関連の破壊的変更があります。特に、リモートディストリビューターを持つレプリケーショントポロジで、信頼された証明書を使っていない場合、アップグレード後にレプリケーションコンポーネントが失敗する可能性があります。(Microsoft Learn)
公式情報では、より安全な推奨策として、パブリック商用証明書または内部証明機関の証明書を使用する構成が案内されています。セキュリティが低い代替策として、trust_distributor_certificate=yesで既定値を上書きする方法もありますが、これは一時的・例外的な回避策として扱うべきです。(Microsoft Learn)
レプリケーションを使っている場合は、移行前に以下を確認します。
- パブリッシャー、ディストリビューター、サブスクライバーのバージョン
- リモートディストリビューターの有無
- 証明書の発行元、期限、信頼チェーン
- SSMSのレプリケーションモニターの動作
- エージェントジョブの状態表示
- アップグレード後に出版設定を変更できるか
「データの同期は動いているが、監視や構成変更だけ失敗する」という状態もあり得ます。移行判定では、データ同期だけでなく、監視・変更・再初期化まで含めてテストする必要があります。
PolyBaseはTDS 8.0とODBC Driver 18を前提に検証する
SQL Server 2025の新機能ページでは、PolyBaseに関して、Linux上のSQL ServerでODBCデータソースに接続できるようになったこと、Parquet・Delta・CSVではPolyBaseサービスが不要になったこと、Windows PolyBaseでMicrosoft ODBC Driver for SQL Serverを使うとTDS 8.0が外部データソースとして利用可能であることが説明されています。(Microsoft Learn)
一方で、PolyBaseのODBC外部データ接続では、SQL Server 2025(17.x)からPolyBaseのsqlserverデータソースにMicrosoft ODBC Driver 18 for SQL Serverが既定で使われます。このドライバーはTDS 8.0をサポートし、TDS 8.0を使うには新しい暗号化オプションと信頼された証明書が必要です。(Microsoft Learn)
PolyBaseを使っている場合は、次のように「つながるか」だけでなく「暗号化条件を満たしているか」を確認してください。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 外部データソース | SQL Server、ODBC、ファイル、クラウドストレージの種類 |
| ドライバー | ODBC Driver 18の導入状況 |
| 証明書 | 信頼された証明書が接続先サーバーにあるか |
| 暗号化 | TDS 8.0に必要な接続オプションを満たすか |
| OS差分 | WindowsとLinuxで同じ構成が使えるか |
| 監視 | PolyBaseサービスや外部実行サービスのログ確認 |
PolyBaseは、データ基盤や分析基盤で使われることが多く、障害が起きるとデータ連携全体に影響します。SQL Server本体のアップグレードだけでなく、外部データソース、ODBCドライバー、証明書、ファイアウォール、サービスアカウントまでまとめて確認しましょう。
移行期限はKnown Issuesではなくライフサイクルで判断する
SQL Server 2025 Known Issues自体には、「この日までに移行しなければならない」という一律の移行期限は示されていません。移行期限を判断する場合は、利用中のSQL ServerバージョンのMicrosoft Lifecycle、Windows Serverのライフサイクル、社内の保守契約、セキュリティ要件を合わせて確認する必要があります。
特にSQL Server 2016は、延長サポート終了日が2026年7月14日(米太平洋時間)と示され、Extended Security Updates Year 1は2026年7月15日開始として掲載されています。SQL Server 2017の延長サポート終了日は2027年10月12日、SQL Server 2019は2030年1月8日、SQL Server 2022は2033年1月11日、SQL Server 2025は2036年1月6日です。日付はMicrosoft Lifecycle上で太平洋時間として示されるため、日本や他地域では契約・運用カレンダー上の扱いを確認してください。(Microsoft Learn)
移行判断の目安は次の通りです。
| 現在の環境 | 推奨判断 |
|---|---|
| SQL Server 2016 | ESU契約の有無を確認し、SQL Server 2025またはSQL Server 2022への移行を優先検討する |
| SQL Server 2017 | 既存アプリの互換性確認を始め、リンクサーバー・レプリケーション・Full-Textの棚卸しを進める |
| SQL Server 2019 | すぐに移行しない場合でも、暗号化変更やODBC/OLE DB依存を先に整理する |
| SQL Server 2022 | SQL Server 2025の新機能利用が必要か、ライフサイクルと機能要件で判断する |
| 新規構築 | SQL Server 2025を候補にしつつ、Known Issuesに該当する構成を避けて設計する |
アップグレード前チェックリスト
SQL Server 2025へ移行する前に、最低限以下を確認してください。
| チェック項目 | 確認内容 | 優先度 |
|---|---|---|
| OS要件 | Windows Server 2019以降、Windows 10以上など、公式要件とライフサイクルを満たすか | 高 |
| CPU | x64、Intel/AMD x86-64、NUMAノードあたり64コア以内か | 高 |
| TLS 1.2 | 対象サーバーとクラスター全ノードで有効か | 高 |
| Visual C++ | Visual Studio 2022向け再頒布可能パッケージが必要バージョンを満たすか | 高 |
| DQS | Data Quality Servicesがインストールされていないか、廃止を許容できるか | 高 |
| バックアップ | ZSTD利用時のBACKUP文、復元テスト、ロールバック手順があるか | 高 |
| 監査 | Securityログ出力、ファイル出力、監査再起動手順を確認したか | 高 |
| Full-Text | 25MB超文書、変曲形式クエリ、インデックスバージョンを確認したか | 中 |
| SESSION_CONTEXT | 該当SQLと並列実行時の動作をテストしたか | 中 |
| SQL認証 | PBKDF2によるログイン遅延やCPU使用率を測定したか | 中 |
| リンクサーバー | MSDASQL、@provstr、非sysadminユーザーでの接続を確認したか | 高 |
| レプリケーション | リモートディストリビューター、証明書、監視UI、エージェントを確認したか | 高 |
| PolyBase | ODBC Driver 18、TDS 8.0、証明書、外部データソースを検証したか | 中 |
| 大量DB | 起動時の応答性、トレースフラグ15608の要否を確認したか | 中 |
| LocalDB | LocalDBインストーラーではなくExpressインストーラー経由の選択が必要か確認したか | 低 |
本番適用の進め方
SQL Server 2025 Known Issuesを踏まえると、本番アップグレードは次の順で進めるのが現実的です。
まず構成を棚卸しする
最初に、SQL Serverインスタンス単位で機能・接続・ジョブを棚卸しします。見るべき対象は、データベース数、DQS、Full-Text Search、リンクサーバー、レプリケーション、ログ配布、PolyBase、SQL Agentジョブ、監査、バックアップジョブです。
この段階で「使っているか分からない機能」があれば、使っていない前提で進めないでください。古いSQL Server環境では、業務部門のバッチやレポートだけが特定機能を使っていることがあります。
次に検証環境でアップグレードを再現する
検証環境は、本番と同じOS、同じCPU・NUMAに近い構成、同じSQL Server機能で用意します。特に、リンクサーバーやレプリケーション、PolyBaseは外部接続先も含めて再現しないと、移行後の問題を見落とします。
検証で確認すべきものは、セットアップ成功だけではありません。
- 主要アプリケーションのログイン性能
- 代表的な検索機能の結果
- バックアップと復元
- SQL Agentジョブの成功
- 監査ログの出力
- レプリケーションと監視画面
- リンクサーバーの権限別接続
- 再起動後のSQL Server起動時間と応答性
最後にロールバック条件を決める
SQL Serverアップグレードは、問題が出てから戻す判断をすると時間を失います。事前に、どのエラーが出たら中止するか、どの時点までならロールバックするか、バックアップから戻すのか、旧サーバーへ切り戻すのかを決めておきます。
特に、DQS、Full-Text Search、リンクサーバー、レプリケーション、監査ログは、業務影響が後から見つかりやすい領域です。切り戻し判断を曖昧にしないことが、メンテナンス失敗を防ぐ重要なポイントです。
まとめ:SQL Server 2025 Known Issuesは移行前チェックリストとして使う
SQL Server 2025 Known Issuesの更新ポイントは、Windows管理者にとって「既知の不具合リスト」ではなく、移行前の確認項目です。TLS 1.2、CPUアーキテクチャ、Visual C++、DQS、ZSTD、Full-Text Search、監査、リンクサーバー、レプリケーション、PolyBaseは、どれも本番移行後に問題化すると対応が重くなります。
まずは対象サーバーの機能棚卸しを行い、Known Issuesに該当する構成があるかを確認してください。そのうえで、検証環境でアップグレード、復元、アプリ接続、ジョブ、監査、外部接続を再現します。SQL Server 2025へ移行するか、SQL Server 2022など別バージョンを経由するかは、ライフサイクル期限、アプリ互換性、セキュリティ要件、運用体制を合わせて判断するのが安全です。
[4]: https://learn.microsoft.com/ja-jp/sql/t-sql/statements/backup-transact-sql?view=sql-server-ver17 “
BACKUP (Transact-SQL) – SQL Server | Microsoft Learn”

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