IIS マネージャーのアイコンが表示されない|Windows Server 2022 アップグレード後の原因と解決策【IIS 6 互換・キャッシュ・administration.config】

Windows Server 2016 から 2022 Datacenter (Desktop Experience) へインプレースアップグレードした後、IIS マネージャーのアイコンが突然すべて消える——現場でよく出合う厄介な症状です。本稿では「再インストール直後は見えるが再起動で消える」ケースを前提に、原因の切り分けから恒久対策、再発防止までを実運用に即して解説します。

目次

IIS マネージャーでアイコンが表示されない症状の特徴

  • IIS Manager (InetMgr.exe) を起動してもホーム画面の機能アイコンが空白になる。
  • IIS 管理コンソールを再インストールすると一時的に復旧するが、サーバー再起動後に再び消える。
  • DISM / SFC を実行済みでも改善しないことがある。

この挙動はキャッシュの不整合管理互換コンポーネントの不足、あるいはadministration.config の破損が絡むことが多く、アップグレード直後に残存した旧環境の断片がトリガーになります。

最短で復旧させる実践手順(優先度順)

1. 管理系ロール・機能の「入れ直し」

Server Manager の[Add Roles and Features]で以下を必ず選択し、いったん削除→再追加(再起動含む)を行います。重複選択は問題ありません。

  • IIS 管理コンソール
  • IIS 管理スクリプトとツール
  • IIS 管理サービス (Web Management Service)
  • IIS 6 管理互換機能(メタベース互換 / WMI 互換 など一式)

PowerShell を使うなら以下のコマンドで一括適用できます。

# 管理系機能の再適用(既存は上書き)
Install-WindowsFeature `
  Web-Mgmt-Console,Web-Mgmt-Service,Web-Mgmt-Tools, `
  Web-Mgmt-Compat,Web-Metabase,Web-WMI `
  -IncludeManagementTools -Verbose

# 状態確認

Get-WindowsFeature *Web* | Where-Object {$_.Installed -eq $true} | Sort-Object Name 

2. IIS Manager のユーザーキャッシュを削除

再起動で再発する典型は、古いキャッシュを誤参照するケースです。以下のフォルダーを削除(またはリネーム)してから IIS Manager を再起動します。

  • パス:%LOCALAPPDATA%\Microsoft\InetMgr
    例:C:\Users\<ユーザー名>\AppData\Local\Microsoft\InetMgr

エクスプローラーで開けない場合は、アドレスバーに次を直接入力します。

C:\Users\%USERNAME%\AppData\Local\Microsoft\InetMgr

3. 最新の累積更新プログラムの適用

Windows Update の品質更新・累積更新をすべて適用し、再起動後に動作を確認します。アップグレード直後は OS コンポーネント間のバージョン差が残りやすく、IIS 管理 UI と基盤 DLL の不整合を招きます。

4. コンポーネントストアとシステムファイルの整合性チェック

DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth
sfc /scannow

実行後、ログは C:\Windows\Logs\CBS\CBS.log に出力されます。SFC で修復が発生した場合は、再起動 → 再度 SFC の 2 連続実行で修復が安定することがあります。

5. administration.config の検査と再生成

IIS Manager の機能アイコン定義は %windir%\System32\inetsrv\config\administration.config に格納されています。ファイルが 0 バイト、極端に小さい、または XML エラーで破損していると UI が白紙になります。

  • バックアップ:copy %windir%\System32\inetsrv\config\administration.config administration.config.bak
  • 検証:管理者 PowerShell で [xml](Get-Content ...) を試し、パースエラーの有無を確認。
  • 破損時の再生成:
    ①「IIS 管理コンソール」を削除 → ②再起動 → ③再インストール(上記手順 1)で新規ファイルが展開されます。

6. 新規ローカル管理者プロファイルでの再現確認

問題が現在のユーザープロファイルに限定されていないかを切り分けます。新規ローカル管理者アカウントでサインインし、IIS Manager のアイコンが表示されるか確認してください。新規アカウントで正常なら、ユーザー単位のキャッシュまたはレジストリ設定が原因です。

7. グループポリシーの影響を確認

企業環境では GPO によって管理機能が制限されていることがあります。影響調査には次を用います。

gpresult /h %TEMP%\gp.html
start %TEMP%\gp.html

また、[ユーザーの構成]にある「Microsoft 管理コンソールの制限」や実行可能ファイルの制限(Software Restriction / AppLocker)が有効化されていないかも確認します。

よくある原因と対処をまとめた早見表

症状想定原因対処
再インストール直後は表示、再起動で消えるユーザーキャッシュの不整合InetMgr キャッシュ削除(手順 2)
常に白紙でボタンも反応が鈍いadministration.config 破損手順 5 の再生成、DISM + SFC
一部のアイコンだけ消えるIIS 6 管理互換が未導入手順 1 の「IIS 6 管理互換」を追加
特定ユーザーのみ発生プロファイル内キャッシュ/レジストリ新規ユーザーで検証、キャッシュ削除
管理者でも UI が起動しないGPO による MMC/実行制限gpresult でポリシー確認、除外設定

GUI 名と PowerShell 機能名の対応表(導入漏れを防ぐ)

GUI に表示される名前PowerShell 機能名目的導入推奨
IIS 管理コンソールWeb-Mgmt-ConsoleIIS Manager の GUI 本体必須
IIS 管理スクリプトとツールWeb-Scripting-Tools / Web-Mgmt-Toolsappcmd など管理 CLI推奨
IIS 管理サービスWeb-Mgmt-Serviceリモート管理(WMSVC)用途次第
IIS 6 管理互換Web-Mgmt-Compat旧 API/メタベース互換強く推奨
IIS 6 メタベース互換Web-Metabaseメタベース API推奨
IIS 6 WMI 互換Web-WMIWMI ベース管理推奨

診断を自動化する PowerShell スニペット

現状の問題点を 1 回で洗い出すための簡易スクリプトです。結果はコンソールに表示されます。

$ErrorActionPreference = 'Stop'

Write-Host "=== IIS 管理機能の状態 ==="
Get-WindowsFeature Web-Mgmt-Console,Web-Mgmt-Service,Web-Mgmt-Compat,Web-Metabase,Web-WMI |
Select-Object DisplayName, Name, Installed | Format-Table -AutoSize

Write-Host "`n=== ファイル存在確認 ==="
$paths = @(
"$env:WINDIR\System32\inetsrv\InetMgr.exe",
"$env:WINDIR\System32\inetsrv\config\administration.config",
"$env:LOCALAPPDATA\Microsoft\InetMgr"
)
$paths | ForEach-Object {
if (Test-Path $*) {
$info = Get-Item $*
Write-Host ("OK {0} ({1} bytes)" -f $info.FullName, $info.Length)
} else {
Write-Warning ("NG {0} not found" -f $_)
}
}

Write-Host "`n=== Event Log ヒント ==="
Write-Host "IIS-Configuration / IIS-Management の Operational ログを確認してください。"

Write-Host "`n=== キャッシュ削除コマンド(参考) ==="
Write-Host "Remove-Item -Recurse -Force `$env:LOCALAPPDATA\Microsoft\InetMgr" 

「なぜ再インストール直後だけ直るのか」技術的背景

再インストール直後は、IIS Manager のキャッシュが初期化され、同時に新しい administration.config の定義が読み込まれるためアイコンが正常に描画されます。しかし再起動後、ユーザープロファイル内に残った旧キャッシュやレジストリ設定を先に参照してしまい、対応する機能モジュール(管理互換系など)を UI が「無いもの」と判定して非表示にする……という順序の問題が起こり得ます。加えて、アップグレード直後は OS コンポーネントのバージョン差が存在し、IIS 管理 UI と内部 API の不整合が再起動タイミングで顕在化することがあります。

運用で役立つ追加のチェックポイント

  • リソース DLL の有無%windir%\System32\inetsrv\ja-JP\InetMgr.resources.dll が存在するか。表示言語とリソース DLL が一致しないと UI 文言が欠落する場合があります。
  • 構成ファイルのサイズと日付administration.config / applicationHost.config のサイズが異常に小さい、更新日時がアップグレード当日から変わらない、などは破損の兆候。
  • イベントログApplications and Services Logs → Microsoft → Windows → IIS-Configuration / IIS-Management(Operational) に関連イベントが出ることが多いです。
  • セキュリティ製品:HIPS(自己防衛)やアプリ制御で InetMgr.exe のリソース読み込みがブロックされる例も稀にあります。メンテナンス時間帯に一時無効化して切り分けると有効です。

ログ採取のテンプレート(サポート依頼を速くする)

調査依頼時は次の 3 点を添付すると解析がスムーズです。

  1. ロール・機能の一覧:Get-WindowsFeature | ? Installed の出力
  2. セットアップログ一式:%windir%\iis\*C:\Windows\Logs\CBS\CBS.log
  3. イベントログの .evtx(IIS-Configuration / IIS-Management の Operational)

ゼロダウンタイムでの復旧手順サンプル

本番環境でサービス影響を最小にする手順例です(Web サイト自体は稼働中で、GUI だけが不調な前提)。

  1. 管理系機能の再適用(手順 1)。IIS ワーカープロセスには影響しません。
  2. IIS Manager キャッシュの削除(手順 2)。ユーザーセッションのみ影響。
  3. administration.config の検査(手順 5)。破損が見つかった場合は、IIS 管理コンソール機能の再インストールで再生成。
  4. 必要に応じて最新の品質更新を適用(手順 3)。再起動はメンテ時間で。

再発防止のベストプラクティス

  • 標準化された構築スクリプト:新サーバーの構築やアップグレード後に、下記の機能セットを必ず適用するスクリプトを用意する。
Install-WindowsFeature Web-Server -IncludeManagementTools
Install-WindowsFeature Web-Mgmt-Console,Web-Mgmt-Service,Web-Mgmt-Compat,Web-Metabase,Web-WMI
  • キャッシュ初期化の手順化:運用 runbook に「InetMgr キャッシュ削除」を含め、アップグレード後の初回サインインで実施。
  • 更新プログラムのフェーズ適用:アップグレード直後は累積更新 → 再起動 → 機能テスト → 追加更新の順で段階適用。
  • 構成バックアップの定期化%windir%\System32\inetsrv\config を含む構成の世代バックアップをスケジュール。

トラブルシューティングのフローチャート(文章版)

アイコン消失を確認 → 機能入れ直し(管理コンソール / 互換 / サービス) → ユーザーキャッシュ削除 → 再起動 → 改善?

  • Yes:再発防止策(更新適用・スクリプト化)へ。
  • No:administration.config の検査・再生成 → DISM / SFC → 新規ユーザーで再現確認 → GPO / セキュリティ製品を切り分け。

補足:言語リソースとアイコン表示の関係

多言語環境で OS 表示言語を切り替えた直後、IIS Manager のリソース DLL(例:ja-JP\InetMgr.resources.dll)が未整合のままになると UI の一部が欠落する事例があります。更新適用後の再起動と、キャッシュ削除をセットで行うと解消しやすくなります。

運用品質を高めるチェックリスト

項目合格基準確認方法
管理系機能の導入表中の必須・推奨がインストール済みGet-WindowsFeature の結果を保存
キャッシュの初期化%LOCALAPPDATA%\Microsoft\InetMgr を削除後に自動再生成フォルダーのタイムスタンプを確認
構成ファイルの健全性administration.config の XML が正しくパース可能PowerShell で XML 読み込みテスト
OS 更新最新の累積更新が適用済み設定 → Windows Update で確認
GPO 影響MMC 制限・AppLocker によるブロックなしgpresult /h レポートを確認

安全に実施するための注意点

  • バックアップを最優先administration.config / applicationHost.config を作業前に複製。
  • 本番では段階的に:まずは新規ローカル管理者で検証し、問題がユーザー限定か全体かを切り分け。
  • 影響範囲の理解:管理系機能の再導入は通常、運用中サイトに直接影響しませんが、更新プログラム適用と再起動はメンテナンス時間で。

まとめ

IIS マネージャーのアイコンが消える問題は、アップグレード直後に残りやすい「キャッシュや互換コンポーネントの不整合」が主因です。最短復旧は、管理機能の入れ直し → キャッシュ削除 → 更新適用 → DISM/SFC の順序で実施し、administration.config の健全性を合わせて確認すること。運用面では、構築スクリプトの標準化とキャッシュ初期化をルーチン化することで再発を防止できます。サポート依頼時は、ロール一覧・セットアップログ・イベントログの 3 点セットを添付すれば調査が加速します。

付録:一発で試せる「復旧+検査」バッチ

検証環境向け。本番適用前に必ずバックアップしてください。

@echo off
setlocal
echo [1/6] IIS 管理機能を再適用...
powershell -NoProfile -Command "Install-WindowsFeature Web-Mgmt-Console,Web-Mgmt-Service,Web-Mgmt-Compat,Web-Metabase,Web-WMI -IncludeManagementTools -Verbose"

echo [2/6] ユーザーキャッシュ削除...
rmdir /s /q "%LOCALAPPDATA%\Microsoft\InetMgr" 2>nul

echo [3/6] administration.config のバックアップ...
set CFG=%WINDIR%\System32\inetsrv\config\administration.config
if exist "%CFG%" copy /y "%CFG%" "%CFG%.bak" >nul

echo [4/6] DISM / SFC を実行...
DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth
sfc /scannow

echo [5/6] ロール状態を出力...
powershell -NoProfile -Command "Get-WindowsFeature *Web* | ? Installed | Sort Name | Format-Table Name,Installed"

echo [6/6] 完了。再起動後に IIS Manager を確認してください。
endlocal 

FAQ

  • Q. サイト自体は動いているのに UI だけ空白です。原因は?
    A. 実行時エンジン(IIS)は正常でも、IIS Manager のキャッシュや管理互換モジュールの不整合で UI が描画できないことがあります。本文の順序で対処してください。
  • Q. 「IIS 6 互換」は必ず必要?
    A. すべての環境で必須ではありませんが、IIS Manager の多くの機能アイコンは互換コンポーネント経由で情報を取得します。UI が白紙のときはまず導入して切り分けるのが近道です。
  • Q. 再起動のたびに消えます。
    A. ユーザーキャッシュの削除(手順 2)と、administration.config の再生成(手順 5)をセットで実施し、最新更新の適用と合わせて恒久化を図ってください。

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